学生時代の設計課題は1年生の時のものから保管してあって、たまに学生が来ると話のタネに見せている。昨日は以前見せた学生がまた見たいといってやって来た。
当時はCADもイラレもないから、当然手描き。写真は3年生前期のセミナーハウスの課題で、フィルムトレペにインキング、着彩は裏からエアブラシを吹いた。フィルムの透過性を利用して、断面図の上に立面を重ねてガラス張りのファサードを表現している。
平面図も含め、今見てもよく描けてるなぁと思う。当時はプレゼンに丸二週間をかけていた。今の学生の手抜き図面(彼らはそう思っていないだろうが)を見ると歯がゆくて仕方がない。
なーんて話をし始めると、今時のワカモノを嘆く老人のようで本当に嫌だ。学生にも、当時はねなんて話をしていると、戦争を知らない子たちに戦時中の話を聞かせている語り部のようで心が折れそうになる。ロットリングって何ですか?と言われる。ついこの間の話のはずなのに!
16. 09 / 19
千畝と私の学生ビザ
author
sekimoto
category
> 生活
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48
休み中に映画「杉原千畝」のDVDを観た。杉原千畝は第二次世界大戦中に日本政府の意に反し、多くのユダヤ難民に独断でビザを発給し命を救ったとされる人物であるが、映画に感銘を受けながらもふと思い出したことがあった。もう10年以上経っているし時効だろうと思うので少し書く。
今から15年も前のこと、フィンランドのヘルシンキ工科大学(現アールト大学)に留学中だった私は、カリキュラムを終え、ビザの有効期限満了を控えたある日、大学の担当者のところにいた。
当時私は大学に籍を置きつつも、留学のもう一つの目的は大学の授業とは別のところにあった。フィンランドの設計事務所で実務を経験すること。ところが、努力もむなしく留学も満了間近になってもそちらの目的はまだ果たせていなかった。
このまま帰国すると後悔すると思った私は、大学の担当者に直談判した。「大学のカリキュラムが終わり、私のビザももうすぐ切れる。大学の在籍を延長する許可はないし理由もない。けれども私はやることがありフィンランドにまだ残りたい。どうすれば良いか?」
どうもこうもないと思う。自分でも何言ってんだろうと思った。大学がアジアから来た名もない学生の不法滞在の片棒を担ぐことなんてありえないことだ。
ところがその担当者は少し考えてからこう言った。「3日後に来てちょうだい」
その3日後に行ったら、学長のサインが入った大学側のレターが用意されていた。そこには私がカリキュラム終了後には研究員として引続き大学に残り、学費も免除される旨の内容が書かれていた。事実上の空手形である。
「これを(ビザを管轄する)警察署に持っていきなさい。あなたは見るところ真面目な学生のようだし、悪いことしちゃだめよ」
警察署の無愛想な窓口の係官は、滞在延長の書類とその大学のレターとを交互に眺めている。映画では千畝の発給したビザが目の前で破られるシーンがあったが、当時の私も同じ心境であった。
ところが実際には目の前で無事ビザ延長のスタンプは押され、あっけなく滞在延長は許可されたのだった。
その後、おかげで当初の目的を果たすことが出来た私は、半年後に遅れて帰国し事務所を設立した。さすがに命を救われたとまでは言わないが、あそこで帰国を余儀なくされていたら少しはその後のストーリーも変わっていたかもしれない。
それはともかくとして、あそこで規則に縛られず、すべて自分の責任と判断で手形を発行してくれた当時の担当者には心から感謝しているし、そのことを思い出すたびにフィンランドという国の素晴らしさを思う。そして、私もそういう判断ができる人間でありたいと思うのだ。
16. 09 / 11
トップライト取材@緩斜面の家
author
sekimoto
category
> メディア
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48
今日はベルックスのトップライト取材@緩斜面の家。
快晴だった昨日と打って変わり、今日の天気予報は前日まで雨。雨でも取材やるのかなぁ?と思っていたら、朝にはくもり、現地に着くと晴れ間すら覗いてきました。
木曜日の板金取材では、自邸の外壁を撮影する予定だったのですが、台風の通過により当日は朝から大雨。雨でも外壁撮るのかなぁ?と思っていたら、彼の到着時間に合わせて雨が止み、眩しいほどの光が後光のように…。
誰ってこの男、建築知識が誇る嵐も逃げる晴れ男、N山こと西山さん。赤いシャツと傘は太陽のメタファー。エクスナレッジは彼に晴天手当を出した方がいいと思う。
緩斜面の家はいつもながらに美しくお住まいです。
N山さんのおかげでトップライトからもきれいな光が!
N山さんのタイアップ企画では必ず設計者がモデルとして登場します。今日も飛び交うモデルへの容赦ないリクエスト。「指さしながら魅力を語っている感じで!」「そこで奥様と見つめ合う感じで!」
エクスナレッジは関本にモデル手当を出した方がいいと思う。
クライアントのMさん、今日はご協力ありがとうございました。またベルックスさん、N山さん、記事も楽しみにしております!(本文はネタですので、あしからず)
16. 09 / 08
伊礼さん講演会
author
sekimoto
category
> 建築・デザイン
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48
昨日は「建築知識ビルダーズ」にて建築家・伊礼智さんを特集した記念講演会が八重洲ブックセンターにてありました。
スタッフはまだ伊礼さんに会ったことがないというので、昨日はオープンデスクの学生さんも含めた全員を引き連れて参加することに。みんな伊礼さんの特集号にサインをしてもらって最後に記念撮影(パチリ)。
以前もブログで伊礼智さんの住宅デザイン学校にゲスト講師として呼んで頂いた事を書きましたが、昨年あたりから伊礼さんとのご縁が続いています。
過去にスタッフに伊礼さんの本を貸したら、私がいつも言っていることと同じ事が書かれていたといって驚かれたことがありました。正直私と伊礼さんでは作風も違いますが、住宅に対する考え方は多々共通するところがあるような気がします。伊礼さんとこうして絡ませて頂けることは、私にとっても大変光栄なことです。
さて講演後の懇親会では、同じように伊礼さんを慕う多くの設計仲間が集まりました。私も初対面の方も多くいらっしゃいましたが、建築知識などで連載を持ったり、ブログや伊礼さんとの絡みの影響もあってか、いつの間にか私自身の知名度も上がっているようで、嬉しくも少し戸惑っています。
私のことなんか誰も知らないだろう、と私自身は今でも思っているのですが…。このブログにもあまり変なことは書けないですね。でもきっと書くと思いますが笑
ここ二週間ほど、弘世蓉子さんという日大の学生さんがオープンデスクに来ていました。オープンデスクというのはインターンのことで、建築では夏休み期間を使って、建築学科の学生さんが設計事務所などに実務体験にやってきます。
うちは事務所も狭くて、学生さんを受け入れる余地はあまりないのですが、この期間は来客予定が少なかったこともあり、ミーティングデスクを使って模型を作ってもらうことに。それを二週間後に予定していたクライアントとの打合せでお披露目をするところまでを一区切りとすることにしました。
そしてこちらがその完成模型。
志木市内に建つ予定の、『deco』というタイトルの住宅です。
特徴はなんといっても、2階のこの梁架構です。単純に梁を飛ばすと6m超のスパンとなるところを、45度に梁を渡すことでスパンを4.5mに留め、梁成も抑えています。またこの45度に振った梁をあらわしにすることで、この特徴的な天井をこの住宅のハイライトにもしています。模型でも一番の見せ所です。
そして今日がそのクライアントとの打合せ日。彼女にとっては、オープンデスクの最終日です。模型はクライアントには内緒で作っていたので、この日はサプライズとなりました。
奥様も思わず「泣きそう」とこぼして、大変感激して下さいました。これには学生の弘世さんも大いに感じるところがあったようです。
実のところ、私としてはまさにクライアントのこのリアクションや表情を見てもらうことが、このオープンデスクの目的であるとも思っていました。
大学の設計課題では、住宅を設計しても評価をするのは講師である我々であり、それも建築家目線でのクリティックになります。だから大学では先生受けする案が好評価を勝ち取ることになるのです。
ところが、設計で最も大切なことは目の前のクライアントに喜んでもらうことです。自分たちが一生懸命考えて作ったモノやコトが、相手に笑顔で受け入れられるという喜びを越えるものが、物づくりにあるでしょうか。
このオープンデスク期間中は、彼女をあらゆる現場やクライアントとの打合せに連れて行き、私と行動を共にしてもらいました。行く先々でもいろんな話をしましたが、それらをすべて理解したとは思っていませんし、忘れてしまってもいいとも思います。
けれども自分が一生懸命作った模型が、最後にクライアントに喜んで受け入れてもらえたというこの体験だけは、深く胸に留めてもらいたいと思います。
2週間お疲れさまでした!後期もがんばってくださいね。
またクライアントのUさん、本日の急な同席をお許し下さり、またご協力を賜り誠にありがとうございました。
category







