その昔川原で拾った異常に丸い石で、夏休み中に関守石を作りました。神々しいくらい丸い石なので、関守石にしても、やっぱり神々しいくらいの存在感です。
まだ子供が小さかった頃、川原で遊ばせていたらふとこの石に目が留まりました。ん?なんか丸い!?
全体には溶岩質のような多孔質の素材感なのですが、表面はすべすべで、まるで恐竜の卵のように形が左右対称になっています。川原では水に洗われて表面がすべすべの石はよくありますが、たいがい扁平だったり歪な形をしています。
かといって人工的に作られたような意志も感じられず、本当になんだろうという感じです。調べると、生き物の死骸の周りに砂などが結晶化してゆくノジュールと呼ばれる現象もあるようですが、ここまで整った形ではないようです。
今のところ謎すぎてよくわかりません。
我が家の守護神として、関守石にして祀りたいと思います。
留学中から使っていたアラビアのTEEMAの皿を、2枚あるうちの1枚を割ってしまった。TEEMAの皿は今も買えるけれど、現行品はIittalaのラベルになっていて個人的には興醒め。やっぱり陶器は(ブランド統合前の)アラビアのものに限る。
スタンプだけでなく、割ってしまったTEEMAは直径19.5cmのもので、このサイズも現行品にはないものだ。どうでも良いことかもしれないけれど、20年以上毎朝同じ皿を使っていると、少しだけサイズが違うというのはどうしても違和感になってしまう。朝のルーティンは重要なのだ。
そこから当時のTEEMA皿を探す旅が始まった。この19.5cmのアラビアのTEEMA皿というのはレアもののようでなかなか見つからない。このなかなかないというのも宝探しのようで楽しい。メルカリなどで見つけてはコツコツ買い足し、今では4枚にまで増えた。
しかし値段こそ言わないが、今では結構な値で取引されていることにびっくりする。当時はアラビア工場で数百円で売っていた皿だ。古いもの持ち続けていると、価値は上がる一方だというのをつくづく実感する。
禅問答に「富士山を三歩前に歩かせてみよ」というのがある。
富士山が歩くわけないじゃないか!と言ったら負け。禅問答はいつだってこんな調子でムチャ振りからはじまるのだ。思えば我々の仕事だっていつもそう。この模範回答のひとつに「自分が前に三歩歩けば良い」というのがある。私はこれがとても好きで、問題に行き詰まったらいつもこれを思い出す。相手が動かないなら、自分が動けばいいのだ。
小泉さんの仕事って、いつも禅問答みたいだなと思う。とんちの得意な一休さん。「この橋渡るべからず」だったら”端”を歩かず”真ん中”を歩けばいい、みたいな。切れ味鋭いとんちで、誰も解決できなかった問題をすっと引いた一本の線で解決してしまう。
解決したらなんとも当たり前の形で、それ以外のデザインなんてありえないと思えるくらいなのに、誰もそこには行き着けない。だから今もなお地方にはいろんな問題が山積している。
え、ズルい!そんなことしていいの!?
いいんです!だってルールは常に自分の中にあるものなのだから。もうちょっと柔軟に考えてみたら?小泉さんのデザインにはいつもそう語りかけられているように思えるのだ。
◇
そんな小泉誠さんの本が出た。
『小泉誠のものづくりの方程式|素材x技術=デザイン30 』
エクスナレッジ刊
出ると聞いてすぐに予約!届いてひらくと、本当に面白くてあっという間に読み終わってしまった。これまで全国各地のメーカーや職人さんと協働し、数え切れないほどのデザインや空間を生み出してきた小泉さんの、これまでのライフワークを網羅した一冊だと思う。
網羅したというのは、けしてこれまでの作品がすべて載っているという意味ではなく、小泉流の”禅問答”があらゆる切り口で紹介されているという意味において。
最初の問題提起から、現地に出向き、人と会い、素材と触れる中で発見に至り、最後は円満解決!という良くできた読切り小説を読んでいるようでもあって、一度読んだら最後までページをめくる手が止まらない。長町美和子さんによる文章の力もあるけれど、ここでもまた小泉マジックにかかってしまう。
私が小泉さんのデザイン手法で好きなのは、「人と人との接点でものを考える」ところ。頭でっかちなコンセプトではなく、現地に足を運び、いつも人との対話のなかに答えを見いだそうとする仕事のスタンスはとっても共感を覚える。いつも答えは人と人の間にしか存在しない。それは私も人生で経験的に学んできたことだ。
そして「短所は個性になる!」ということ。ダメなところを直すんじゃなくて、ダメだと思っているところが、実は長所でありいちばんの個性なんだという逆転の発想。
南部鉄器の銑鉄を使ったプロジェクトでは、鉄の持つ重さをいかに軽くするかではなく「重いんだから重いなりに、重くてよかったというものをつくればいいじゃないか」と、「どっしり動かないテープカッター」をつくりだす。思わず涙が出そうになるくらい優しいデザインアプローチだ。
◇
できあがるデザインはシンプルで美しく、さらにこの本で語られているような軽妙なデザインプロセスを読むと、読者は小泉さんはいつも飄々と、そして軽々と仕事を成し遂げている人のように思うかもしれないけれど、私は知っている。小泉さんはそんな簡単な人ではないということを。
この本の元となっているのは、全日空の機内誌『翼の王国』で2007年から2013年にかけて連載されていたものを再編集したものだという。しかも2020年に武蔵野美術大学を退官した際の退官記念書籍として刊行されたものだとも。でもどう考えても時制がおかしい。
すでにある過去の連載記事がベースにあるのであれば、どんなにのんびり編集したって半年で本になるはずだ。追加取材があったとしても1年もあればなんとかなる。
その本が今年、2024年にようやく刊行されたという事実こそが、小泉さんの仕事の真実なんじゃないかと私は睨んでいる。そうは問屋が卸さない!複雑怪奇なコイズミワールド。
だがしかし、刊行された本はどこまでも美しく、読みやすく、ところどころでクスッと笑えて、勇気をもらって、よしガンバルゾ~!ってなれる。途中に何があったかなんて関係ない。終わりよければ全てよし。これぞまさしくコイズミワールド!
こんな本、なかなかない。いやない!やっぱりすごいな小泉さんは。これからも元気をもらうために何度も読み返します。小泉さん、ご出版おめでとうございます!!
国立のこいずみ道具店にて(2023.7)
観葉植物は床に置くと邪魔になるし、何より部屋が狭くなってしまいます。必然とハンギングに行き着くのですが、後から石膏ボードの天井にフックをつけるのは、跡も残るし天井下地の野縁を狙う必要もあって、一般の人にはなかなかハードルがあります。
と思っていたらこんなのがありました。Jフックセミトライアングル。天井に取り付けられるボードフックです。壁のボードフックはありましたが、天井用は画期的!早速取り付けてみました。
耐荷重が2.7kgとのことですが、写真の大きなネフロレピスが約2kgくらいなので、これより小ぶりのものなら余裕で下げられそうです。
外しても跡がほとんど目立たないので、クロス天井なら賃貸の方でも使えそうです。我が家も今後は天井にも植物がどんどん侵蝕しそう、、!
こいずみ道具店に行った話を先日書きましたが、その時に「面定規」なるものがありました。
これは家具などのコーナーエッジをどのくらい丸めるか(アールを取るといいます)の目安に0.5mm刻みのアールを木材につけたもので、そこに親指を当てて直感的にアールの大きさを決めることが出来るというスグレモノ。
■面定規+花びらR定規
http://www.koizumi-studio.jp/item_kiki_hanabira.html
同じく小泉さんによる「花びらR定規」はすでに持っていたのですが(元スタッフ砂庭さんからのプレゼント)、この面定規も是非欲しいと思って買おうとしたら、小泉さんがひとつプレゼントしてくれるとのこと。
やった!!と思ったのも束の間、この面定規、角には最初はアールが付いておらず、「花びらR定規」を使って自分で削ってアールを付けるものなのだとか。
好きな樹種を選んでいいよ~と言われて選んだモンキーツリーでしたが、戸惑いつつも、折角なのでこの連休に自分で削って面定規を完成させることにしました。
さっそく平らな金ヤスリでゴシゴシと削り始めたのですが、これが思いのほか楽しい!
少し削っては「花びらR定規」を当て、アールがフィットするように注意深く削っていきます。R定規だけでなく自分の親指も当てながら、わずか0.5Rの違いを感じながら微調整をしていきます。
削りながらなるほどと思いました。
この面定規をつくる作業自体が、すでに一定の教育的効果があるんですね。自分で削りながら何度も何度も角を触っていると、そのうち目隠ししていてもそれが何アールか当てられるような気がしてくるのです。
ちなみに小泉さんの家具の角アールは「2.5R」指定なのだとか。以前その話を聞いたときは、「え、2Rか3Rでよくない?」「そんなに違いあるかな」と思いましたが、今はこう断言します。「それ、全然ちがいます!」
我々の仕事はつまるところ、この微差を「全然ちがう」ものとして認識できるかどうかなのでしょうね。
最後にオイルを塗ると、美しいモンキーツリーの木目が浮き上がりました。おもわず手を伸ばして弄んでしまいます。
これからはちょっと角アールにもうるさい(メンドクサイ)人になりそうです笑
小泉さん、こちらもありがとうございました!
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