美術手帖のYouTubeチャンネルで、建築史家の松隈洋さんが解体がはじまってしまった旧香川県立体育館の問題に言及されています。国内における近代建築を残す意義や意味についてもとてもわかりやすく解説されていて、そんな素晴らしい建築を残せなかったことに胸を痛めつつ、松隈さんの熱弁に引き込まれ心を打たれました。
この中でフィンランドの建築政策についても触れて頂いています。フィンランドでは「The Finnish Architectural Policy」というものが1998年に出されました。これは国の教育省やアートカウンシルが発行元となり、フィンランド建築家協会SAFAが編集を行ったものです。
The Finnish Architectural Policy
https://ace-cae.eu/wp-content/uploads/2024/10/FI-report.pdf
松隈さんも感嘆されていましたが、内容が本当に素晴らしく、序文をまず時の首相が書いていること、またその中でパーヴォ・リッポネン首相は、憲法で定められた「良好な環境に関する国民の権利」を実現する機会を作ること、また「国民には自分たちの環境に責任を持つ権利と義務の両方があり、その権利を行使するためにも建築に関する教育や情報の提供を強化する必要がある」ことを強調し、この建築政策がアールト生誕100年祭の年に出されたことに大きな意義と喜びを感じる、と締めくくっています。
良い環境はすべての市民にとって基本的な権利(A good environment is a basic right of every citizen)という考え方にもしびれますが、私は特にフィンランドの「Living Heritage(生きた遺産)」という考え方に共感を覚えます。
フィンランドでは築90年近いパイミオサナトリウムやマイレア邸といったアールトの建築遺産が、単なる観光スポットとしてではなく、今もなお何らかの形で使われ続けているという「動的保存」の考え方があります。それはまさに建築にとって最も理想的で幸せな状態であるともいえます。
そんなアールトの建築群はユネスコ世界遺産への登録に向けて秒読みの段階に入っています。どうか末長く残って欲しい。松隈洋さんの美術手帖の動画リンクは以下より。素晴らしいコンテンツでした。
◼️美術手帖・なぜモダニズム建築は壊されてしまうのか?
https://youtu.be/qe5RHnm60BI?si=RTQJ9jsgR0j3F-KK
このたび2025年竣工の「回廊の家」が、建もの探訪にてオンエアされます。
建もの探訪には去年の2月に越屋根の家をオンエア頂いて以来1年ぶり。累積だと10件目になります(FP・路地の家・KOTI・縁側の家・扇の家・壇の家・通り土間の家・FPR・越屋根の家・回廊の家)
設計事務所に頼みたいという方は、毎週録画して観ているという方も多いようです。この番組のおかげでご縁がつながり、設計をご依頼下さった方もとても多くて、我々にとっても大変ありがたい番組です。
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■ 渡辺篤史の建もの探訪「回廊の家」
・5月23日(土)4:25〜|テレビ朝日(関東圏)
https://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/
・5月31日(日)8:30~|BS朝日(全国)
https://www.bs-asahi.co.jp/tatemono/
早朝の時間帯ですので、寝坊に備えてタイマー録画の準備をお願いします!
BS放送版のほうは全国でご視聴頂けると思います。ご興味ある方はぜひご視聴下さい。
回廊の家
日芸2年生のスペースデザインⅠ、前期第一課題「Folding Space」の今日は中間発表を行いました。A4サイズのケント紙に切り込みを入れて単純操作を繰り返してできる造形、その偶然の発見を大切にする。考えるのではなく感じて欲しい。美大生のポテンシャルを最大に引き出すために考えた課題です。
それにしても日芸の学生はみんなとても個性的。髪の毛もカラフルで、それがとっても良い!こういう子たちは大好きです。この日も思いもよらない造形が並びました。私は評価には参加せず、みんなで投票し合ってもらうことに。
授業後半は私が設計した電車で二駅の「ながめの家」に移動して課外授業。設計事務所が設計した住宅を見たことがない彼らに、建築をつくるとはどういうことなのか、空間体験をもとに学んでもらいたい。考えるのではなく感じてほしい。屋上のルーフテラスはそんな彼らには一番人気のスペースでした。
少人数の学生を自由に教えられるこの教育環境は素晴らしいと思います。
開院前のお忙しい時期にお時間を頂き、「minäこころのクリニック」の内覧会を開催させて頂きました。設計期間2ヶ月、開院まで半年という制約の中、予期せぬトラブルも多々ありましたが、施工のエークラフトさんのご尽力もありなんとかこの日を迎えることができました。
心に光をあてる心療内科の医療行為に寄り添う「ひかりの空間」を提案させて頂きました。連続するひかり壁が患者さんの背中を少しだけ押し、不安に寄り添い、心を落ち着かせてくれるような居場所を待合室につくりました。
ひかり壁は空間に奥行きをつくり出し、人の心の持つ多面性や個の尊重といったことも同時に表現しています。
入口正面に下げたアールトのビンテージ照明A335Aは、院長先生自らが待合室に下げてほしいとご用意された特別なもの。各診察室にも先生が選ばれた思い思いのアールトランプが下げられました。
クリニックの計画というのは、一般的にはクリニック設計に長けた業者が担い、我々のような設計事務所が計画に関わる機会は少ないのが実情です。今回は先生のご自宅を私が設計していたことから、設計者として白羽の矢を立ててくださり、不慣れながら短期間の設計を全力でまとめました。やれることは限られますが、小規模クリニックのあり方として少しは爪痕が残せたのではないかと思います。
見学では人数を制限しつつも、多くの方々にお越しいただきました。前日には近所に事務所のあるTOIVOさんご一行や、蔵楽さん、福井からわざわざお越しくださった伊藤瑞貴さんもご案内し、夜は事務所で楽しい会も催してくださいました。友政さん、ありがとうございました!
お越しくださいました皆様にも、この場を借りて深くお礼申し上げます。
練馬区「ながめの家」もあと少し。今日は完了検査。週明けから造園がはじまります。
もともとここにお住まいの方で、今回は建て替えの計画。2階の窓からいつも見ていた遠景の高木があり、これを毎日眺められるようにというご要望がありました。
ところが今回は平屋の計画。この木は一階の窓からは見えないのです。そのために、これを眺めるためのルーフテラスを設けました。屋根の上から景色を眺めるから「ながめの家」。
ところがこの日、びっくりしたことがありました。
玄関から入って正面に大きめのハイサイド窓を設けたのですが、ここからやけに向こうの緑がよく見えることに気づきました。おや、この先は自転車集積場で木なんてなかったはず?
なんと今回眺めようとしていた木が、そこだけ切り取られて部屋の窓から見えていたのでした。1階からは見えないと思っていた木が奇跡的なトリミングで室内に取り込まれたというミラクルと、あんなに遠くにある木がこんなに近くに感じられるという驚き!
家の近くにも、ある位置から富士山を見るとすぐ近くにあるかのように大きく感じる場所があるのですが、これもそういう現象なのでしょうか。向こうの木に想いが通じたというのか、祝福されたかのよう。建主さんも思わぬギフトに大喜びでした。
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