20年くらい昔、私が本当に駆け出しだった頃に設計を依頼くださった方にIさんという方がいらっしゃいました。Iさんご夫婦とは、家を建てた後も何かとご縁があり、今でもたまにやりとりのあるのですが、そのIさんの奥様まりこさんの訃報が先週届き、あまりの衝撃に報を眺めながらしばし固まってしまいました。
まりこさんは当時まだ一件くらいしか住宅を設計したことのない私に設計をご依頼くださり、その後もなにかと気にかけて食事の席に呼んで下さるなど、ご主人と共に私の仕事をずっと見守って下さっていた方でした。
顔が広く、国内外の一線のデザイナーさんともつながりのある方で、当時もほかにもっと有名で実績のある建築家を何人もご存じだったはずなのに、なんの実績もなく無名だった私に設計をご依頼くださったことは今でも感謝しています。その住宅はその後建築専門誌にも掲載となり、それがきっかけで大学の非常勤講師にも声がかかるなど、私にとっては出世作となった住宅でした。
そんなまりこさんが、ある時別れ際に私にさりげなくかけてくださった言葉があります。
「関本さんなら大丈夫」
言葉で書くとなんと平易でありふれた言葉でしょうか。これまでそんな言葉は無数の方からかけて頂いたような気もするのですが、私はこの日のことを今でも鮮明に覚えていて、今に至るまで時折思い出すのです。
言葉というのは不思議なもので、誰がその言葉を口にするのか、どんな時に言われたのか、そのことでその言葉はその人の心に一生分の楔を打ち込みます。いわゆる言霊というやつかもしれません。
その時の私はまだまだ駆け出しで、これからのこともまだ見えず不安でいっぱいだった時だったのだろうと思います。そんな時に目利きのまりこさんにかけられたこの一言は、まるで予言のように響き、「私は大丈夫なんだ」と自分に言い聞かせる暗示と呪文にその日からなりました。これまで何度その言葉に救われてきたことでしょう。まりこさんは私にとってそんな方でした。
今日小さなギフトが届きました。送り主はまりこさん。思わずドキッとしました。
中を開けるとメッセージとともに小さなコーヒーの箱が入っていました。ラベルには「mariko」とあります。「まりこブレンド」コーヒー好きだったまりこさんのご家族が送って下さったものでした。メッセージにはいかにもまりこさんがおっしゃいそうな言葉が詰まっていて、おもわず胸がいっぱいになりました。なんとあたたかな贈り物だろう。
これまでのたくさんの思い出と共に頂きます。
まりこさん、出会いとこれまでのすべてに感謝します。ほんとうにありがとうございます。いつの日か、いつの日か、また会いましょうね!
職業欄にはいつも「自営業」とか「サービス業」みたいなところにチェックせざるを得なくて惨めな思いをしていたのですが、とあるカードの申し込みで、職業欄に医師や弁護士、大学教授らに混ざって「一級建築士」というのがあって思わず感動。最近普通なんでしょうか?私ははじめてです。
我々建築士はずっと医師、弁護士と並ぶ職能なのだと言い続けてきましたが、社会の認知には程遠く、、。ようやく職業欄に「一級建築士」と書ける時代が来たのであれば嬉しい。次は「建築家」という職能を認知してもらえるようにしないとですね。
仕事をはじめた息子も連日終電帰りのような日々。勤め先のご厚意で、勤務先の近くに安い部屋を用意して頂けることになり、今日はそんな息子の引越し手伝い。彼にとっても念願の一人暮らしとなります。
寂しくなるか?と人から聞かれるのですが、同じ家に住んでいても生活の時間帯が違いすぎてたまにしか顔を合わせないので、出ていっても何も変わらない気がしています。でもよく考えると、これは22年間の子育てがここで一区切りしたことを意味するんですよね。彼が幼かった頃、またほんの10年前であっても今日のことは想像できませんでした。
社会に出た彼は夢中になって日々を生きています。自分の居場所と世界を見つけた彼は覚醒したように表情が明るくなり、言葉は自信に満ち、親としてこれほど嬉しいことはありません。かつて私も彼の歳で建築に向かう長い旅の帳に立ったように、彼にも自由にクリエイティブに生きてもらいたい思います。
今日は大きなレンタカーに荷物をいっぱいにして車を走らせました。でもこれが家族3人でドライブをする最後になるかもしれないことには途中で気づきました。部屋に壁掛け時計を買ってやろうと思っていたら、自分のお金で買いたいと言って彼が選んだ光るデジタル時計。新生活の時とともに思い出も刻んでいくのでしょうね。
昨晩は久しぶりにスタッフを連れてちょっと一杯。
先月には室本航希くんという新スタッフも入り、佐藤くんが担当していたクリニックの現場も無事竣工、クライアントにも大変喜んで頂きました。難航するかと思っていた複数の見積調整や、遅々として進まなかった申請にもある程度見通しが立ちました。ほかにもスタッフの個人的なおめでたいニュースもあったりで、ここにきてうちの事務所にも遅まきの桜が咲き始めたようです。
テーブルで楽しそうなスタッフ達を眺めながら、これまで数え切れないほどのスタッフ達がこの事務所を巣立っていったことを思いました。スタッフはその都度入れ替わり、その組み合わせにもまた無数の形がありましたが、面白いもので一人一人の個性は同じでも、それがどう組み合わさるかによって事務所のカラーは変わります。
最近のリオタデザインスタッフの傾向としては、かつては独身スタッフがほとんどでしたが今は結婚している者も増えてきました。自分のことだけを考えれば良い独身時代から、家族やさらに将来のことまで考えながら仕事をするのでは、その重みや深みはまったく違うものになるように思います。
今や事務所の番頭を任せている佐藤くんはもともと勘の良い子でしたが、益々仕事の責任感と手際の良さが磨かれてきました。地頭が良いのでどんな仕事にもミスがなく、彼に任せておけば安心という存在にまで育ちました。ほかのスタッフからも慕われ、これからの更なる成長がとても楽しみです。
吉岡さんは事務所にとっては太陽のような存在で、いてくれるだけで事務所がぱっと明るくなります。彼女は諸事情から事務所には週三日(うち一日はテレワーク)の勤務にしているのですが、覚えが早く、頭の回転が速いので短時間でもどんどん仕事をこなしてくれます。過去に例のない不思議なポジションですが、みんなから助けてもらえる愛されキャラをこれからも大切にしてもらいたいと思います。
新しく入った室本くんは、その貪欲な好奇心とやる気で、不慣れな仕事環境のなかでも必死でリオタデザインの仕事を吸収してくれています。気配り力のある子なので、仕事に慣れればどんどんプロジェクトを動かしていってくれることと期待しています。そのうちにスタッフ紹介にもアップしたいと思います。
滅多にスタッフを褒めない私が珍しくこんなことを書いてみました。もうすぐ死ぬのかもしれない、笑。これからもみんなで仕事を楽しく盛り上げていきましょう!
風を受けて舞いあがる凧ー自分の仕事のモチベーションを言い表すとこれに尽きる。風が強ければどこまでも舞いあがる。風がなくなった瞬間に力を失い落下する。
この風とは何かというと、人からの期待や好意のようなもの。私の仕事はいつもここからはじまる。だからここからはじまらない仕事は基本的にできない。腹に力が入らないのだ。
少なくともうちの事務所に設計をご依頼くださる方は、少なからずこれがあって我々の事務所の門を叩いてくださる。そしてそれを受けて私は舞いあがる。
そこにたくさんの期待を感じると、私はぐんぐんと高度を上げてゆく。それはまるで成層圏を破るかのよう。おだてでもいい、嘘でもいい。そこに風がなくては凧はあがらないのだ。
でも中には、風がなくても自ら備えたジェットエンジンでどんどん高度を上げてゆく人たちもいる。グライダーのような私から見ると、そんな人はとても眩しく映る。強い意志を持ち、仕事を自らの創作の意識で向き合う。
だからそんなジェット機からは、「そんな風に流されてばかりいないで、自分が行きたいところに行けばいい」と発破をかけられることもある。確かにそんなエンジンがあれば、国境を超えて世界のどこにでも行けるのだろう。正直憧れる気持ちもある。
でも私は風を読む。強い風には高く舞いあがり、弱い風には墜落しないようギリギリの水平滑空を試みる。風は追い越さない。風とともに生きる。
なんだか映画のタイトルみたいだ。
この風とは何かというと、人からの期待や好意のようなもの。私の仕事はいつもここからはじまる。だからここからはじまらない仕事は基本的にできない。腹に力が入らないのだ。
少なくともうちの事務所に設計をご依頼くださる方は、少なからずこれがあって我々の事務所の門を叩いてくださる。そしてそれを受けて私は舞いあがる。
そこにたくさんの期待を感じると、私はぐんぐんと高度を上げてゆく。それはまるで成層圏を破るかのよう。おだてでもいい、嘘でもいい。そこに風がなくては凧はあがらないのだ。
でも中には、風がなくても自ら備えたジェットエンジンでどんどん高度を上げてゆく人たちもいる。グライダーのような私から見ると、そんな人はとても眩しく映る。強い意志を持ち、仕事を自らの創作の意識で向き合う。
だからそんなジェット機からは、「そんな風に流されてばかりいないで、自分が行きたいところに行けばいい」と発破をかけられることもある。確かにそんなエンジンがあれば、国境を超えて世界のどこにでも行けるのだろう。正直憧れる気持ちもある。
でも私は風を読む。強い風には高く舞いあがり、弱い風には墜落しないようギリギリの水平滑空を試みる。風は追い越さない。風とともに生きる。
なんだか映画のタイトルみたいだ。
category







