昨日は都内の現場とハシゴして、小山光さんのD-Scape Kandaまで。場所は神田の駅前、用途は飲食テナントビルということなので、普通に考えたらEVシャフトと避難階段位置を決めたらそれでおしまいくらいのプログラムなのに、条件を整理して突き詰めると、ここまで複雑なファサード操作ができるのかと驚かされました。

それもクライアント側が求めた“映える”外観や、建ものそのものが広告塔になるような存在という要件に見事に応えていて、そこがBtoBの建築にめっぽう強い小山さんの勘所なのだなと思いました。次から次に建物が完成するので、ものすごいスピードで仕事しているのか思いきや、実際にはその真逆でどの建築も3〜4年くらいかかっているという。まるで蝉みたい!

高所が苦手な私は、震える足で屋外階段を降りてきました。(スタッフに笑われました)


この日はお盆休み前最後ということで、夜はスタッフと近くの美味しい中華屋さんで暑気払い。取り止めのない話からディープな話まで、たまにこんなふうに腹の中を語り合うような機会も楽しくて貴重だなぁとあたらめて感じました。

これからしばらく夏休み!私ものんびり、そして会いたい人に会って、行きたいところに行って過ごします。皆さん、良い夏休みを。

26. 07 / 29

思想が大事

author
sekimoto

category
> 仕事
> 思うこと


過去事務所のスタッフには新卒もいれば転職組もいる。ただ私の経験上、新卒に比べて転職組の定着率は低いという傾向がある。これは私の偏った考えかもしれないけれど、構わず進める。

新卒に比べて転職組は前職の積み上げた経験が活かせるので、即戦力としてカウントできるのは採用者にとっては大きなメリットだ。一方の新卒は右も左もわからないところから地道に仕事を教えていかないといけないので、バリバリ仕事をこなしてくれるまでには1~2年の育成期間が必要になる。根気も必要だ。

ところがそのあと実力が伸びて、長く事務所に貢献してくれるのは圧倒的に新卒の場合が多い。転職組も、新卒で入った会社を1年以内に辞めて来た人は新卒と同じ傾向を見せるけれど、3年以上勤めて転職してくる人はちょっと厳しい。

もちろん仕事は一通りできるし、社会人としての常識も備えているのでその点は問題ないのだけれど、あえて言うなら「思想が違う」と感じてしまう。

それくらい、大学を出て初めて勤める会社の影響というのは大きい。とてつもなく大きい。人はそこで社会を教え込まれる。

同じ業界であればどこに行っても同じような慣例はある。けれど会社が変われば思想が変わる。昨日の当たり前が、今日から非常識になる。サッカーがバスケになるくらい変わる。多くの場合、そのパラダイムシフトに苦しむ。

ある程度個人に裁量が与えられた組織系の会社なら、転職してもあまりギャップはないと思う。でも我々のようなアトリエ事務所は違う。主宰者が個人で積み重ねた仕事観や価値観が、思想の前提にあるからだ。

大学を出て最初の会社に勤めようというとき、人はすごく考えると思う。自分の得意分野や、やりたいこと、将来の夢など。それを踏まえて選んだ会社に入社する。

つまりその時点でその人は「思想」を選んでいるのだ。それが数年経ったら思想が変わるなんてあり得ない。よく分からずに入ってしまったとしても、その環境に3年以上もいたということはそれなりに居心地が良かったからで、つまりその職場選択は間違っていなかったとも言える。あるいは相当に鈍感だったかのいずれかだ。

だからその人が転職するとしたら、その思想の延長線上にあるものを選ばないと後悔する。人の好みは変わっても、思想はなかなか変わらないからだ。

何が言いたいかというと、転職の話ではなく、最初に選ぶ仕事がいかに大切であるかということ。

嫌だったら辞めれば良いなんて絶対に思わない方がいい。終身雇用の時代ではないとしても、一生その会社に骨を埋めるくらいの覚悟で仕事や会社を選ばないと後悔する。人生何度でもやり直しは利くけれど、最初に良い選択をした人には敵わない。それは私が人生で学んだことだ。

転職で失敗する人を見ながら、ちゃんと最初に良い会社選ぼうよって思う。会社の規模とかお金じゃなくて、思想が大事。学生さんにはそう言ってあげたい。

韓国の釜山でひらかれていたユネスコ世界遺産委員会は、AALTO WORKS(アルヴァ・アールト設計による13の建築群)をユネスコ世界遺産に認定する決定をしました。

このニュースは、アールト財団をはじめ、アールト関連アカウントやアールト建築を擁する各行政のオフィシャルアカウントでも一斉に配信され、昨日のインスタグラムはこれ一色で埋まりました。まさに打ち上げ花火のような「アールト祭り」状態!フィンランド人にとってこれがどれほど誇らしいことかが伝わってきて、胸が熱くなりました。

アールトの建築は、これまでも世界遺産の登録に関わらず行政やアールト財団の献身的な活動によって手厚く守られてきました。今回登録されなかったとしても、それは変わらなかったと思います。その上で今回の世界遺産登録の意味を考えると、

・コルビュジェ、F.L.ライトと肩を並べて、アールトの建築群が近代建築の傑作として世界遺産として認められたこと。
・世界遺産に指定されることで、単に建物を維持するだけでなく、将来の世代へ継承するための国際的な保存基準と保護体制がより確固たるものになること。
・これまで個別に評価されてきたアールトの単体の建築が「AALTO WORKS」という群として、つまり「アールトの建築」として包括的に認知され評価されたこと。

といったことがあると思います。

つまりアールトの建築が「フィンランドが守るべき財産」から「人類全体で守るべき財産」になったことで、商業主義や政治力から建築が半永久的に守られることも同時に意味します。建築団体や市民の声を無視して解体が決行されてしまった丹下健三氏の旧香川県立体育館の例を考えれば、これほど強い保存への意思表示はないと思います。

以下に、昨晩配信されたアールト財団からの声明文の要約(翻訳)を添付します。
https://www.alvaraalto.fi/en/news/aalto-works-series-inscribed-on-the-unesco-world-heritage-list/

◇
【アールト作品群(AALTO WORKS)がユネスコ世界遺産リストに登録】

人間味あふれるデザイン・アプローチを特徴とし、アルヴァ、アイノ、エリッサ・アールトによる近代建築の決定的な役割を示す13の建築群「アールト作品群」が、ユネスコの世界遺産リストに登録されました。この決定は、韓国・釜山で開催されたユネスコ世界遺産委員会において2026年7月26日になされたもので、フィンランドで8番目の世界遺産となります。

登録された13の建築・建築群は、モダニズム、フィンランドの福祉国家の発展、そして人間的な視点を象徴しています。現地に出席していたアルヴァ・アールト財団のCEOトンミ・リンダ氏は「ユネスコ世界遺産への登録は、アールト夫妻の生涯の仕事が国内のみならず国際的な建築・デザイン史においても重要であると認められた明白な証であり、フィンランド人として誇りに思います」と喜びを語りました。

登録されたアールト作品群:
1. パイミオのサナトリウム(1929–33、パイミオ)
2. アールト自邸(1935–36、ヘルシンキ)
3. スニラ製紙工場・住宅街(1936–38、1947、1951–54、コトカ)
4. マイレア邸(1938–39、ポリ)
5. セイナッツァロの町役場(1949–52、ユヴァスキュラ)
6. ユヴァスキュラ大学 アールト・キャンパス(1951–71、ユヴァスキュラ)
7. セイナヨキ・シヴィックセンター(1951–87、セイナヨキ)
8. ムーラッツァロの実験住宅(1952–54、ユヴァスキュラ)
9. 文化の家(1952–58、ヘルシンキ)
10. 国民年金局(KELA)(1953–57、ヘルシンキ)
11. スタジオ・アールト(1954–55、1962–63、ヘルシンキ)
12. 3つの十字架の教会(1956–58、イマトラ)
13. フィンランディア・ホール(1962/1967–75、ヘルシンキ)

「長年にわたる準備作業が実を結びました。アールトの遺産は、建築が獲得し得る最も権威あるグローバルな評価を受けました」とリンダ氏は述べています。

◼️デザインの核心にある人間的アプローチ
建築家アルヴァ・アールト(1898–1976)の偉大な業績には、最も身近な協力者であったアイノ・アールト(1894–1949)やエリッサ・アールト(1922–1994)、そして事務所のスタッフたちが不可欠な役割を果たしました。

1920〜80年代に設計されたこれら13の建築は7つの地域に点在し、住宅、コミュニティ、労働、家庭生活のニーズに応えてきました。教育、地方自治、行政、福祉、精神生活、余暇といった課題を建築の力で解決しようとしたものです。

20世紀のモダニズム精神に基づき、身分や富、健康、年齢、性別に関わらず、すべての人の快適で機能的な日常環境を追求しました。市民のウェルビーイング(幸福)は社会発展の核心であり、近代建築はフィンランドのアイデンティティの一部となりました。

◼️長年にわたる準備の背景
今回の登録は40年に及ぶ準備の成果です。1986年のスニラ地区の提案や、2004年のパイミオのサナトリウムの暫定リスト入りなどを経て、複数の建築をセットにした「アールト作品群」構想が浮上。2021年に暫定リストへ掲載され、2025年2月1日に正式提案されました。
今回の登録は、ル・コルビュジエ(2016年)やフランク・ロイド・ライト(2019年)の作品群に続くものであり、20世紀のフィンランド近代建築として世界遺産リストを補完することになります。

◼️世界遺産登録の意義
アルヴァ・アールト財団のミュージアム・ディレクターであるユッカ・サヴォライネンは、「この登録によりフィンランド・デザインへの国際的評価が高まり、デザイン先進国としての地位がより強固になります。また、保全、教育、文化観光など多様な分野での新たな協力の機会が生まれます」と強調しています。

私が所属するJIA住宅部会では、今年度部会長の小山光さんの企画で「建築家の家づくりトーク」と称した建築家による家づくりトークシリーズを展開しています(内容はすべてYouTube公開されます)。

こちらはいわゆる設計者目線の”作品紹介”ではなく、実際の住宅事例をもとに、リアルな建て主さんとの家づくりプロセスを紹介するというもの。第2回目は私がご指名頂きましたので、2023年竣工の「越屋根の家」の家づくりプロセスについてお話しさせて頂きました。

「越屋根の家」は竣工までに2年半もの時間がかかりました。おかげさまで数多くの賞も頂きまして、我々にとっても代表作となった住宅です。その浮世離れしたビジュアルから、一体どんな人が暮らしているのだろう、自分たちとは縁のない世界の人なんじゃないかと誤解される方もいるかもしれませんが、実際の建て主さんは本当に素朴で、ほかの建て主さんとも何ら違いのない建て主さんです。

今回の話の中では、この建て主さんとの出会いや設計依頼のメール、実際にどんな要望を頂いたのかなど、建て主さんのご許可を頂いてかなり赤裸々な情報まで紹介させて頂きました。

最後には建て主さんからのお手紙まで。その文面を見ると、一般の建て主さんが設計事務所を選ぶ際に一体どこに迷い、そしてなにが依頼の決め手となるのかなどのヒントが詰まっています。

聞き手の小山光さんの引き出し方がうまいので、ついつい余計なことまでしゃべってしまったと動画を見返しながら反省しているのですが(恥ずかしい、、)あえてノーカットで公開していますので、普段セミナーや公開の場では話さないあれやこれやについてもお楽しみ頂けたらと思います。

◇
■建築家の家づくりトーク#2
越屋根の家/関本竜太| 地域の風景を受け継ぐ越屋根という選択

https://youtu.be/q0-7TSh-p30?si=0EJFhWkHEPWgwek_

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テオ・ヤンセンはオランダの造形作家。物理学を専攻していた彼の作り出す「ストランド・ビースト」と呼ばれる“生物”は、風だけを唯一の動力にして動き出す。海岸を本物の生き物のように歩き回るその姿はまるでSF映画を観ているようで、一度実物を見てみたかった。

そんなテオ・ヤンセン展が富山県美術館で開催されるということで富山まで。事前に映像等で見てはいたけれど、目の前で動く姿は圧巻というか凄すぎて笑うしかなかった。

ディテールがどうなっているのかが一番興味があったのだけれど、塩ビパイプを結束バンドなどで簡単に束ねただけの簡単なジョイントで、それらは一冬をかけてヤンセン自身が作り出すという。




建築で言えばまさにトラス構造が動き出すみたいなものだけれど、その動きはまさに生き物そのもので、帆を魚のエラのように動かし、各部がそれと連動して関節のように動く様は、身近で見ても仕掛けが理解できないくらいに複雑で、その滑らかな動きに感動する。

何より「風を食べる」という表現がぴったりで、現代文明が滅びた後に生まれた自然と共生する生物、もしくは人間が文明を築く数万年前も前に存在した高度文明の遺物、そんな説明をされた方がしっくりくる。まさにジブリのハウルの動く城とかナウシカの世界観。是非実物を見て欲しい!

会期は9月23日まで。内藤廣さん設計の富山県美術館にて。

■こちらは会場のストランドビーストのリール動画です。
https://www.instagram.com/reel/DbBARHdpINQ/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==