JIA支部広報誌Bulletin取材のため、いま最も活躍する校正者のひとりである牟田都子さんにインタビュー。

牟田さんは私が設計したカフェmoi の常連さんで、昔からうっすら繋がりはあったものの、こうして対面でお話を聞くのははじめて。私も最近本を出したばかりで、校正の難しさや奥深さを実感していたので、とても良い機会となりました。

お話をお伺いして、我々設計者と同じような悩みもあり、深く共感するお話ばかりでした。間違いを正す仕事に最も求められるのは「謙虚さ」なんですね。牟田さんのお人柄に触れた気がしました。またお話をしていると、思いのほか共通の知人が多くいることもわかり、、。ご縁の深さを感じた次第です。

私の本も、事前に隅々まで熟読下さったみたいで冷や汗が。誤植については怖くて聞けませんでした笑



拙著 『すごい建築士になる!』 が6月5日(月)に晴れて発刊となりました。
https://amzn.asia/d/bWhKwtx

私の手元には先週には届いていたので、すでにもう一度自分で読み直したり、献本をお送りしたりする作業もしていたので、自分の中ではとっくに発刊していたのですが、実は一般には今週からです(あたりまえか、、)。

過去何冊か上梓させて頂きましたが、今回の本は事務所のスタッフや建て主さん、私の身近にいる人しか知り得ないようなコアな情報を詰め込んだ一冊になっています。

すでにお読み下さった何人もの方から、「こんなに赤裸々に書いて大丈夫ですか?」と心配されていますが、人の悪口は書いていませんのでたぶん大丈夫です笑。事務所が借金背負った話とか、私がしくじった話などはいろいろ書いていますが。

過去の本も、「こんなに手の内を開かして大丈夫なの?」と良く言われていました。うちの図面全公開とか、秘伝の(とは私は思っていませんが)ディテールを包み隠さず公開してしまうので、料理人でいえば”隠し味(テレビだとモザイクかかるやつ)”まで教えてしまうようでもあり、パクられたらどうするの?と思われるのでしょう。でも大丈夫。

「安心して下さい。はいてますよ」 (by とにかく明るい安村)

安村ならパンツをはいてるわけですが、私の場合は何をはいているかというと、それは「自分」というアイデンティティかもしれません。

たとえば、モノマネ芸人が声音からしぐさまで本人ソックリに真似たとしても、その人本人にはなれませんよね。私も、私の仕事に関わるすべてを開示したとしても、誰も私にはなれません。私の考え方、感情や感覚。これには法則がありそうでないからです。

これってほんと、困りますよね。たぶんスタッフが一番困っているんじゃないでしょうか?このあいだはこう言っていたのに、また違うこと言い始めたみたいな。だから本に書いてあることも真に受けちゃダメですよ。こんなこと全部徹底できるわけないんですから。

だからいくらノウハウを開示したって、誰も私にはなれないんです。アレクサやChatGPTであっても太刀打ちできません。私の中の一番大事なアカウントには鍵がかかっていて、それは家族であっても開かないようになっています。もしかしたら、それは自分でも開けられないものかもしれません。

これからの時代、AIに勝てる方法はそれしかないんじゃないでしょうか?


ところで、以下は発売当日(6月5日)のAmazonの売れ筋ランキングです。「建築」の総合ランキングで2位に入りました!



でも悔しい。折角なら1位になりたいですが、1位に鎮座している書籍はKindle版といって、Amazonプライムなどに登録している人なら無料で読める本なんです。登録していなくても数百円。こんな本に勝てるわけないですよね、、

自分でも恥ずかしいタイトルなので複雑な思いもありますが、折角なら多くの方に読まれてほしい!と思います。応援よろしくお願いします。

23. 05 / 09

春のパンまつり

author
sekimoto

category
> STAFF
> 社会


先月退社したスタッフが、山ほどパンを抱えてやって来ました。

これまでのお礼にと、自分の人生で一番美味しかったパンたちだそう。ダンディゾンにTRUFFLE、これは確かに自分じゃ買わないな。それに「そうだ、パン買って行こう」という発想もすごくいい。

ユニークな感性のスタッフでしたが、最後まで彼女らしくて、いなくなったら急に寂しくなってしまいました。

またパンを抱えて遊びに来てくださいね!



先日のオープンスタジオで、仙台から一人の若い女性がご参加下さいました。地元の工務店に勤めているという方でした。

その方は学生時代に私のセミナーを聞いて、住宅の道に進みたいと思ったとのこと。埼玉はおろか東京にも行ったことがなかったそうですが、遠路はるばるそれを私に伝えるために、そして私の仕事を見学するためにわざわざいらして下さいました。

そのセミナーは一昨年の2021年の暮れ、友人でもある東北工業大学の石井敏先生が企画されたオンラインセミナーでした。当時の石井先生のお話では「仙台の学生は住宅に興味を持っている子が多いのに、卒業後は大手に就職する子も多く、もう少し建築家のように個人と向き合って設計をすることの喜びや魅力についても知ってほしい」とのこと。

そこで私は、我々の仕事というのは「街に放った小石そのもの」だという話をしました。

「小さな住宅ひとつ建てたところで街は変わらない」
本当にそうだろうか?

小さな住宅ひとつで街が変わるということが実際にはある。放った小石の波紋はやがて静かに街に伝播してゆく。我々の仕事はそういうものだというそんな話です。私がそこで放った小石の波紋は、さざ波のように広がって、ひとりの学生の心を動かしたようです。

我々が街の中に小さな住宅を作り続けること。
セミナーに登壇すること。
原稿を書き本を出すこと。
諸団体の雑務を引き受け運営すること。
オープンデスクの学生を受け入れ渾身の指導をすること。
スタッフを何年もかけて育て上げること。

すべてやっていることは同じなんです。それが何の役に立つの?どんな意味があるの?忙しいのに、どうしてお金にもならないようなことをやっているの?

すべては社会に放る小石のようなものなんです。

私の投げた小さな小石が社会になんらかの波紋をつくることが出来るのなら、私がこの世に生きている意味も少しはあることでしょう。

先日のオープンスタジオでのささやかな出会いは、私にとって心から勇気をもらえる出来事でした。Oさん、ご来場下さりありがとうございました。

以前も少し書きましたが、ある書籍企画が進んでいます。これまで単著として3冊を刊行させて頂いたので、これで4冊目ということになります。

これまでの書籍は、住宅のディテールを扱ったものや図面の描きかた、また現場の施工手順などを扱ったもので、ページ数にして120~150ページ程度のもの。うち半分は図版や写真などなので、私が実際に執筆した文章量としては実質その半分くらいだったかもしれません。

ところが今回の本はボリュームにして約300ページ、しかも図版や写真は少なめで、あとはびっしり文章!1ページをすべて文章で埋めると600字になる計算なので、300ページびっしりだと約18万字にもなります。

たださすがに一部に図版やイラストなどもあるので、ここからそれらを差し引くと、実際に書いたのは仮に7掛けとして12~13万字くらいでしょうか。執筆期間は昨年10月から12月までの約3ヶ月間。平日は仕事があるので、夜や週末に引きこもってずっと書いていました。すべて自筆による書き下ろしです。

サイトで少し長めのブログを書いた場合で1,200~1,300字程度になるので、この3ヶ月で長めのブログを約100本書いた計算になります。まさにブログ10年分!

ここ数ヶ月ほど、あまり長文のブログをアップしていなかったのは、こういう事情によるものでした。(それでもちょいちょい書いていましたけどね)


しかし出版というのは、当たり前ですけど、ここでは終わらないんですよね。

原稿執筆というのは、設計でいえば基本設計みたいなもので、それが編集者の手に渡ってここから編集作業が始まります。これは設計に例えれば実施設計のようなものでしょうか。

編集を通ったものは、次にゲラと呼ばれる校正刷となってふたたび著者の元に届きます。これをチェックするのも著者の大切な仕事です。これは所内の実施図チェック、もしくは施工図チェックにあたります。

校正は、「初校」を経て「再校」、そして「念校」へと至ります。それぞれのプロセスで最初から最後まで通読し、誤字脱字のほか、意味の通らないところ、あるいは意味は通るのだけれど違和感のある表現や言い回しなどを細かく細かくチェックしていきます。

これは私が図面チェックの際に、機能は満たしているけど違和感のある寸法やプロポーションを、徹底して掘り下げていく作業にきわめて近いように感じます。

今回は念校でも終わらず、再念校まで出してもらったので、私はこの300ページもある本を、たぶん5~6回くらい(部分的にはそれ以上!)読み込んだことになります。そろそろ暗記できそうです。

冒頭の写真は、これまでの校正刷りのチェックバックを積み上げたもの。終盤はプリントアウトをしないでPDFベースで読み込んでいたので、作業量は実際にはこの倍ぐらいになるかもしれません。

そんな作業もようやく終わりました。

というか終わらせました。読み込んでいるといくらでも直せてしまうので、キリがないのでここで筆を置くことにしました。あとは編集サイドにお任せしたいと思います!


こんな風に書くと、本を出すって本当に大変なんだとお感じになると思いますが、実際にはどうかというと、我々が普段設計の実務でやっていることと何も変わらないので、私自身は大して大変だとは思いませんでした。むしろとても楽しかったです!こちらも設計と同じですね。

苦労しながらも、編集者さんの意見を聞いたり、出版社の大人の事情?なども汲み取りながら、人の目に触れる本を作っていく作業というのは本当にやりがいのある作業だとあらためて感じました。ブログだと、それを添削してくれる人はいませんからね。この第三者の目というのは、本当に勉強になるのです。

本書籍の現在のプロセスをマラソンに例えるならば、ようやくゴールの国立競技場が遠くに見えてきたところでしょうか。本の詳細はまだ書けません。刊行時期も現時点ではまだ確定していませんので、このあたりもクリアになったら、この場でもお伝えしたいと思います!