この夏は上勝町に行こう。そう決めたのは5月ごろのことでした。

徳島県にある上勝町ゼロ・ウェイストセンター(設計:中村拓志)が今年度の建築学会賞作品賞に選出されましたが、この建築の構造設計を担当したのは、我々の構造パートナーでもある山田憲明さんで、担当された中太郎さんもまた長らくうちの住宅を担当してくださっていた方でした。

建築家の中村拓志さんによる空間は、過去に見たどの空間も私には到底真似のできないスケールと細やかな神経の通ったものばかりで、このゼロ・ウェイストセンターも是非一度見ておかなくては!と思ったものの、しかし徳島県…しかも上勝町ってどこだ?と調べてみると、これまた辺鄙な山の中(失礼!)。この山奥の一点の建築のためにここに行くのか?という思いもよぎりつつも、だからこそ見る価値がある!(たぶん)とも思ったのでした。

ところが、時はコロナ禍の真っ只中。夏にはなんとかなるだろうと踏んでいたところが、事態はどんどん深刻化してゆく一方。行くかやめるかと迷っているうちに出発直前になってしまい、もうこうなったら行くしかない!と、意を決して(こっそり)飛び立ったのでした。

ちなみに、こちらは行ってからずいぶん経ってから書いています。


しかし徳島は平和そのもの。というか人がいなかった。人がいなさすぎて、ゴーストタウンのような徳島市内はちょっと恐ろしくもありました。

東京都の一日の新規感染者数が数千人規模になって大騒ぎしているときに、徳島県はわずか50人。たぶん、空港とレンタカー屋さん以外では誰ともすれ違っていないので、感染も拡大しようがありません。(あ、ちょっと盛りました。こんどは徳島県民に怒られそう!)

上の写真は徳島駅の駅前の様子。県庁所在地の駅の真ん前に小学校がある!というのも結構な衝撃でした。





■上勝町ゼロ・ウェイストセンター
https://why-kamikatsu.jp/

さてこれは何の施設かというと、要は町のごみ収集施設なんです。

今やゴミゼロに対する上勝町の取り組みは全国的に知られていて、様々なメディアでも紹介されているので感度の高い人はすでによくご存じのことと思います。私はそういうエシカル的なことに疎い後進的人間なのですが、そんな人間だからこそ、むしろすごく感じるところの多い宿泊体験になりました。

そうそう、ここは泊まれるんですよ。一番トップの写真が建築の全体像なんですが、上空から見ると「?(はてなマーク)」みたいな形をしているんですね。この下のドーナツ状の丸い建物が宿泊施設になっています。







この宿泊棟もそうなんですが、建物全体の特徴はなんといっても、建物全体が「廃材でできている」ことなんです。

窓は町で廃棄された古い建物の窓が2枚合わせ(ペアガラス?)で使われていたり、引手が現地の小石で作られていたり、ホールの床が建材メーカーの余ったタイルの寄せ集めだったり、家具が廃棄される予定だったものを転用していたりなど、とにかく細部に至るまでそれが徹底されています。

構造材だけはさすがに廃材利用というわけにもいきませんが、地元の山で取れた木を地元の製材所でできる加工技術だけを使って、とても工夫されたディテールで随所に使用されています。

こういうところの徹底が建築家の中村拓志さんらしさでもあって、いつも途方もない、、と思ってしまうところです。構造家の山田憲明さんもさぞや苦労されたことと思います。







そして何より新鮮だったのは、ゴミの分別体験です。

宿泊で出たごみは、通常なら客室のごみ箱に突っ込んでおけば客室係がきれいに処理してくれますよね。この宿泊施設では、宿泊者自身がその分別に参加するということが大きな滞在目的の一つにもなっているのです。

宿泊時に「6分別」のバスケットを渡されるのですが、宿泊時に出たごみはここに細かく分別します。この時点で、「このごみはリサイクル出来るのか?」と考え、できないとわかった瞬間にすごい罪悪感を感じます。

それを翌朝に、町民も利用する実に「45分別」(!)もの細かい分別所に持っていきます。スタッフの方が丁寧に、どこに捨てれば良いか教えてくれます。今回は建築以上に、このごみの分別のことについても深く考えさせられました。



この分別トレーには、それぞれそこにどういうものを入れるかの表示があるのですが、そこにはそれが日本のどこで処理されるのか、そのことによってかかる処理コストについても細かく書いてあります。

その処理コストは、最終的には町民が負担するものになるので、「これって捨てると高いんだよな」というごみに対するコスト意識も芽生えるというものです。そしてゴミゼロの意味は、ごみを出さないということではなく(そんなことは不可能です)、それを最小限化した上で、出したごみのほとんどをリサイクルすることで、可能な限り焼却処分等はしないということを意味しているようです。

こんなにも分別を徹底している上勝町ですら、ゼロウェイスト100%にはできないそう。それは製造側の問題もあって、消費者側がリサイクルごみにしたくてもできないようなものが、社会にはまだまだたくさんあるようです。


我々は日頃ごみを朝出せばお昼にはなくなっていますから、ごみは誰かが片付けてくれるものだと心のどこかで思っているような気がします。

町内にはごみ収集車は走っておらず、町民は自ら車でここまでごみを捨てに来るそうです。これを毎日実行されている町民の方には頭が下がる一方で、ゴミの”流通”を知ることは、見えないものを見える化するという意味でも、とても有意義な取り組みのように思いました。

また町民が出したごみの一部(まだまだ使えるもの)は、こうやってホールに置かれて、誰でも自由に持って帰って良いことになっています。中にはどこかの家で使われていた徳利とか、味わい深いものもたくさんありました。

ごみは処分した瞬間にごみになるわけで、こうしてそれが欲しい人の元に行くことで、結果的にここでもごみは減らせるんですよね。そこでお金を取らないというのも良いと思いました。(お金を取ったらただのリサイクル屋さんになってしまいますしね)



さて、このゼロウェイストセンターの近くにあるこんな施設にも行ってきました。宿泊の際は必ずここで食事を取られることをお勧めします。

■RISE & WIN BREWING
https://www.kamikatz.jp/

ここも同じく中村拓志さんの設計で、構造設計も山田憲明さんが担当されています。ここの上勝ビールがとにかく美味しいのです!都内でも買えるところがあるようですが、ここでは日替わりでいろんな変わった地ビールを楽しむことが出来ます。

お料理も凝っていて、とっても美味しいのです。




ここのお店で働いているおしゃれなお兄さんとも話したのですが、皆さん上勝町への移住組とのこと。もちろん中には地元出身の人もいますが、皆さん口を揃えるのは、この上勝町のゼロウェイストの取り組みをとても誇らしげに思っているということ。地方の小さな町が、今や全国的にその名が知れているというのはとても嬉しいことに違いありません。

その取り組みの一端を、行政主導ではなく、町民みんなが考えて「うちのお店ではこういうことをやっている」というのを、このお店のみならずほかのお店でもメニューや器など、様々な形で表現されていたのがとても印象的でした。

上勝町は、町長がお料理に添える葉っぱが都市部で高く売れるということを知り、高齢者に山で葉っぱを採ってもらって出荷している町としても有名です。ゼロウェイストはそんな町長のいる町だからできる取り組みなのかもしれませんね。

またフィンランドのように、人口密度が低いからこそできるということもあるかもしれません。地方から発信出来ることはまだまだあるのだなということにも気づかされました。


少し前にも書きましたが、私はSDGsとかエシカルという言葉が、どうも上滑りした言葉のように聞こえてしまって、あまり好きではありません。

もともと私がそういうのに疎い人間であることも大きいのですが、そういうふわっとした概念の話ではなく、実際に自分の出したごみがどこに行くのだろう?というものを実際目で見て体験に落とすと、途端に実感として感じられ、見えている世界も変わってくるような気がします。私は”体感”として感じられないことは、どうも腑に落ちない性格のようです。

そんなことから、ただ建築を見るという目的を超えて、この夏に上勝町に訪れることが出来たのはとても大きな体験になりました。

21. 09 / 20

大量廃棄社会

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sekimoto

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「1年間に10億枚の新品の服が、一度も客の手に渡ることもないまま捨てられているらしい-」

こんな衝撃的な書き出しからはじまる。売れ残りが廃棄されるならまだしも、世の多くの商品は一度も棚に並ぶことすらなく焼却される。どうしてそんなことが起こるのか?という内容は本を読んで頂くとして、一消費者として深く考えさせられた。

私はSDGsという言葉が好きではない。その理念にはもちろん共感するし、否定しようのない正論だとも思う。しかしその実践にはとてつもなく大きなハードルがあって、とても泥臭い地道な努力がいるし、覚悟のいることだとも思う。

そんなことを言いながらも、我々は一消費者としてより安く物を買いたいと思っているし、コンビニに行って商品が少なければがっかりする。それって矛盾じゃないの?そんなことがぐるぐると頭の中を巡った。

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sekimoto

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昨日、ようやく2回目のコロナワクチンを打ちました。ワクチンはファイザー製。1回目を打った際は、直後にちょっとだけ倦怠感に襲われたものの、翌日も含め発熱もなくほぼ無症状でした。

しかし今回は2回目ということで覚悟をしていました。う~ん緊張する…
一般的にモデルナ製の方が副反応が大きく、相対的にファイザーのほうが軽いようですが、周りにはファイザーでも発熱で苦しまれた方もいましたので油断は禁物です。

2回目の接種を終えると、直後に前回よりも気持ち強めの倦怠感に襲われましたが、大きな異常はなくその後もそのまま仕事を続けました。私の場合、多少の風邪や微熱でも仕事をしていると元気になってしまうほうなので、昨日はほぼいつも通りでした。

ただ多くの場合、接種当日はなんともなくても翌日以降に熱が出ることが多いようなので、翌日以降の仕事に穴を開けないよう、昨日はいつも以上にピッチを上げて仕事を片付けることになりました。マシンガンのようにキーボード叩きまくり!

その心持ちは、さながら死期の迫った身で必死に身辺整理をする末期患者のよう。風邪やインフルエンザはある日突然来ますが、ワクチンの副反応は予見出来ることなので、ある意味準備が出来て助かります。

さて夕方に近づくと、ようやく我が身に異変が起こり始めます。気分が悪くなることはないのですが、私の場合頭がぼうっとしはじめて、湯上がりにのぼせているような感覚。喉がすぐにカラカラになるので、いつも以上にお茶を飲んでいました。

そのうち、複雑なことが考えられなくなってきて思考停止、いろんなことが億劫になってきました。これは明日はダウン確定だな、、そう悟って、ダウンに備えて各所に遺言のような申し送りメールを送りまくりました。

これはもう既に熱が出ているのだろうと思い、家に戻ってから体温を測ると拍子抜けするような平熱。あれ?夕食をとると少し元気も回復。しかし私にとっては最後の晩餐、明日はつらい日が待っている!

そのままこの世におさらばするつもりで涅槃に入ると、翌日の朝(つまり今朝)は快調そのもの。腕は痛いものの、熱も平熱で食欲も普通。そうしてこのキーボードを叩いています。

昨日遺言を送った皆さま、私は死にませんでした。
本日もよろしくお願いします。

今年度より、JIA(日本建築家協会)関東甲信越支部の会報誌Bulletin(ブリティン)の編集長を務めさせて頂くことになり、そんな私の責任編集による2021年度Bulletin夏号がようやく発刊されました。

たかが会報誌、されど会報誌。多くの方が関わり、人選から執筆依頼、取材、校正作業まで全てに関わることになります。今回はそれに加えて、表紙のデザインや、思い切って記事バナーを含めたデザインも一新させて頂きました。緊急事態宣言中のGWはこの作業に明け暮れ、、。

ようやく形になってくれて嬉しい!会報誌のため書店などには並びませんが、会員以外の方も、こちらより一部の記事はお読み頂くことが可能です。

Bulletin2021 夏号
https://www.jia-kanto.org/kanto/bulletin/2021/index.html

特集で取り上げた「エンジニアとの協働」では、古い友人でもあるArupの与那嶺氏にもご協力を頂きました(彼の自宅は私の設計で、私の自邸は彼の構造設計です)。ご興味ある方は是非お読み下さい!



さてそんなBulletinですが、すでに次の秋号に向けて取材が動き始めています。次に取り上げる「協働のかたち」は『ビルダーとの協働』です。

取材させて頂いたのは、江戸時代から創業180年を数える大和工務店の初谷仁さん、電気・空調設備のスペシャリスト、トミデンコンスの富永茂さん、そしてスーパー板金職人である新井勇司さんの3名です。

先の夏号ではエンジニアとのフラットな関係について取り上げました。エンジニアは意匠設計者の下請けではなく、対等なパートナーなのだということを伝えたかったのですが、秋号のビルダーとの協働でもまた伝えたいのは「現場の作り手との対等な関係」についてです。

我々建築家は、現場に出れば時に「先生」と呼ばれ、ある種特権的な立場に置かれることも多々あります。そして時にビルダーを下に見て、礼を失した対応をする人も少なからずいるようです。

しかし我々は図面は描けても、板金を折ることも、電気配線を結ぶことも、またそれらの職人を束ね現場の隅々まで目を配ることもままなりません。彼らは我々の仲間であり、エンジニアと同様に、対等にリスペクトを持って付き合うべき同志なのです。

この日はそんな彼らの仕事へのモチベーション、我々建築家と仕事をする喜び、そしてがっかりする瞬間など本音の数々を引き出し、誰でも膝を打つ”現場あるある”の数々に大いに盛りあがりました。

しかし一方では盛りあがりすぎて、たぶん一番過激な発言を連発していたのは編集長の私だったかもしれません。同席者からは、面白かったけれど2/3は使えない話では?と心配の声も、、汗。最後は責任を持って編集したいと思います。

「建築家は裸の王様になってはいけない」というメッセージが伝わることを願って。

21. 05 / 16

カセットテープ

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sekimoto

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息子のどこかで手に入れたらしいウォークマン。とても懐かしい。その昔、はじめてヘッドホンで音楽を聴いた時の衝撃を思い出す。

カセットテープにFMからエアチェックしたり、友達から借りた音源をダビングした。レンタルのレコードやCDには必ず時間が書いてあって、それが収まるカセットテープを買って帰った。

時代はその後MDとなり、そしてiPodになった。レンタルすらもなくなり、音楽はサブスクリプションの時代になった。

自宅にあったテープは、引越しの際に大量に捨てた。もう二度と聴くことはないだろうと思ったから。

なぜ今テープで、Bluetoothを使わないヘッドホンで聴くのか?そして、なぜテープを捨てたのかと責められる。録音できる機械がないので、音の入ったカセットを買うらしい。

それって新しいのか?
お父さんはよくわからない。