連日の授賞投稿になってしまうのですが、先だってかわごえ都市景観表彰を受けた「越屋根の家」にて、このたび埼玉県環境住宅賞において【埼玉県知事賞】(最高賞)を授賞させて頂きました。

本日はその授賞式があり、授賞プレゼンもさせて頂きました。選評としては、越屋根や深い軒、縁側、土間といった伝統的手法をとりながらも現代の生活に合致させ、高い断熱性能と一次エネルギー消費量で高性能も達成している点などが高く評価されたとのこと。

私としては「環境」の定義を狭義の断熱や省エネ性能に留めず(それは当たり前のこととして)、敷地をとりまく環境や、快適性という住環境をふくめた総合的な環境住宅を目指したつもりだったので、その点を含めてご評価頂けたことがとても嬉しかったことでした。

私の妻は「県知事賞」というワードがフックしたみたいで、珍しく授賞式まで来てくれました。しかし県知事はいらっしゃらず、、こちらは残念でした笑





そして、、実は本日もうひとつ良い知らせがありました。

今年最後まで結果が発表されなかった埼玉建築文化賞の発表が本日あり、同じく「越屋根の家」にて同賞の住宅部門最優秀賞を受賞致しました。

■埼玉建築文化賞|住宅部門最優秀賞
https://www.ksaitama.or.jp/info/info464.pdf

この賞は今年最後の大トリ(レコード大賞?)みたいに思っていたので、授賞できて本当に嬉しいです!

これで「かわごえ景観賞」「埼玉県環境住宅賞」「埼玉建築文化賞」という埼玉県内の公的な主要賞をすべて受賞することができました。

埼玉生まれ、埼玉育ちで事務所も埼玉。県内をホームエリアとして活動している身としては、この「さいたま三賞」の制覇はほんとうに身の余る光栄です!!一年の苦労が年末に報われました。

建て主さま、施工会社の堀尾建設さん、担当スタッフの岩田さん始めスタッフのみなさん、本当にありがとうございました!

author
sekimoto

category
> 生活
> 社会



今年は平日のクリスマス。クリスマスは早く帰りましょうキャンペーンを実施、自分も早めに上がって年に一度のチキン担当。今年は俺が焼こうかの息子の声を制し、年に一度だけ料理を作る日のルーティンを死守しました。

クリスマスのプレゼント制度を廃止した我が家ですが、今年はサンタさんから気まぐれのプレゼント。たまにはいいでしょ。メリークリスマス!




昨日は秋晴れの中、成瀬猪熊事務所の集合住宅「風の道テラス」のオープンハウスへ。地勢を読み、南北に抜けるスリット(切り通し)を何本も通した複雑な構成。斜面に埋め込むように、地上に地下に何層にも重ねた住戸構成はまるで迷宮のよう。

各住戸のインフィル設計を複数の事務所で行うなど、ある意味「変数x変数」の構成は作るほうも束ねるほうも、想像を絶する大変さだと思いますが、それをまとめ切った手腕に拍手を送りたくなりました!(内部撮影不可のため外部写真のみ)


帰りは建物のすぐ斜向かいにある林芙美子記念館へ。設計は山口文象氏。前を通っただけで中を覗かずにはいられなくなるほどのオーラを放つ門構えに、我々も例外なく吸い込まれてしまいました。

山口文象氏の設計もさることながら、庭の作りや建物のプロポーション、空間構成など終始唸らされました。本当に素晴らしい邸宅で、本物の文化人の住まいだと感じました。現代は性能の時代、もう今の時代はこういう住宅は作れないのでしょうね、、。

紅葉もきれいで、オープンハウスとのセットで贅沢な時間を過ごさせて頂きました。


24. 10 / 06

砂底

author
sekimoto

category
> 思うこと
> 生活


金曜日に急に熱が出てダウンしてしまった。大事な打ち合わせがあったのに迷惑をかけてしまった。風邪を引いたといえばそれまでなのだけれど、それだけじゃなかった気がする。

ここのところずっと心と体が重かった。夜もよく眠れず、昼間は眠かった。それでも次から次に対応しなくてはいけないことが起こり、ずっとアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような日々だった。きっとブレーカーが落ちたのだと思う。

二日間体を沈めたらだいぶ気持ちが楽になった。砂底をわずかに蹴った。ここから浮上がはじまる。

author
sekimoto

category
> STAFF
> 仕事



2020年の入所以来、4年半に亘って事務所を支えてくれていたスタッフの岩田舞子さんが、出産のため産休に入ることになりました。出産後1年の育休ののち、予定では2025年11月頃を目安に再び復職してもらう予定です。

彼女の休業中は私を含め残ったスタッフで業務をカバーして参ります。しばしご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、皆さま何卒ご理解の程お願い致します。


さて、彼女の出産をめぐっての私の葛藤や事務所のバタバタについては、これまで書けなかったこともいろいろあるので、この場をお借りて記しておきたいと思います。以下長文ですがお許し下さい。

彼女を知る方ならわかると思いますが、うちの事務所において岩田さんの存在というのはとても大きく、彼女から出産予定の話を聞いたときは正直頭が真っ白になってしまい、とっさに「おめでとう」の言葉が出てきませんでした。当時はそのくらい私も動揺していました。

彼女の明るい性格と気配り力、難しい設計を最後までまとめ上げてくれる粘り強さには、いつも本当に助けられていました。最近では後輩に対する指導力もつけてきて、事務所の番頭として、また私の片腕としても全幅の信頼を置いてきたスタッフです。

昨年結婚したこともあり、いつかはこの日が来るであろうと思っていましたが、こんなに早くやってくるとは…。私も長く事務所をやってきましたが、女性スタッフが出産するというのははじめての経験で、本当に考えることが山ほどありました。


ひとつは彼女の復職時期のことです。出産後は彼女も復職を希望していましたが、そのためには子どもを保育園に預けなくてはなりません。

保育園の入園時期は4月なので、半年後の4月に入園を希望すれば入れる可能性も高くなりますが、彼女の希望はできれば育休を1年は取りたいということでした。そうなると復職は来年の11月、果たしてそんな時期に希望の保育園になど入れるのか、彼女の長期不在中の穴はどう埋めれば良いのか、不確定要素ばかりでどこから手をつければ良いのかわかりませんでした。

うちのようなスタッフが2~3人の零細アトリエにとって、一年という時間はとても長い期間です。この先の仕事の受注状況も読めませんし、忙しくなるようなら人を増やさなくてはなりません。しかし一方では彼女が復職してくることを考えると、彼女の席はそれまで残しておかなくてはなりません。

半年くらいならなんとかなるとしても、一年ものあいだ彼女の居場所を果たして残しておけるのか、当時の心境としては「それはさすがに無理!」というものでした。

また復職しても、保育園のお迎えなどがあるので今までと同じように夜遅くまで働くことは難しくなります。建て主さんとの打合せが入りやすい土日も家を空けることは難しくなるでしょう。設計事務所の仕事というのは、日中は現場やメーカーなどとの打合せが多く入るので、静かに集中して図面が描けるのは18時以降になってからというのが日常です。

それが復職後は定時よりも早く上がり、土日も打合せに参加できないとしたら…それは設計事務所では働けないということを意味してしまうのです。

これは今どきの一般企業からしたら考えられないことですよね。でも設計事務所ってそういうところなのです。私は長いあいだ設計事務所を運営してきましたが、今回この当たり前のようでいて当たり前でない、設計事務所の抱える矛盾や問題にはじめてぶつかったような気がしました。


一方で、これが男性ならどうでしょう?

子どもができたことを告げれば、会社からは祝福されて、なんなら「これからは子どもの分までバリバリ働かないとね」なんてハッパをかけられる場面すら思い浮かびます。一方の女性は「無理をしないようにね」「家庭を優先してね」と、誰もが悪意なく声をかけることと思います。きっとこんなことがなければ、私もそんな言葉をかけると思うんですね。

つまり子どもを授かったら、男性はより仕事に専念し、女性は仕事をセーブしなくてはならない。これが設計事務所なら辞めなくてはならない。女性だって男性と同じように働く権利があるというのに、これっておかしいですよね。

途中からそんなことも思い始めて、なんだか無性に腹が立ってきました。実際に岩田さんも「リオタデザインを辞めなくてはいけないかもしれない」ということでずっと悩んでいたようです。彼女ともこの件では何度も話し合ってきましたが、お互い歩み寄れない一線があり、なかなか問題はクリアにはなりませんでした。


建築家仲間の丸山弾くんに相談したのはそんな時でした。彼の事務所でも女性スタッフが立て続けに産休に入り、不在中は彼がスタッフの分まで図面を描いてその穴を埋めるべく奮闘していたことを知っていたからです。

同じ設計事務所の主宰者として、そこまでしてスタッフを残す決断をした思いを知りたくて、彼にも電話をして話を聞きました。いろいろと相談に乗ってもらったのですが、先の問いに対する答えは「ほかに替えのきかないスタッフだから」というもので、それが妙に腑に落ちました。(弾くん、その節はどうもありがとうございました)

求人をかければ新しいスタッフは入ると思いますが、彼女と同じスタッフが入ることはありません。彼女の存在は、事務所にとって唯一無二なのです。それに今回出産を理由に彼女が辞めたとしたら、以後入所する女性に対してもそういう悪しき前例をつくることにもなります。

ようやく吹っ切れて、翌日彼女には「育休は一年取っていいから、事務所に残って欲しい」と伝えました。出産後も安心して仕事を続けられるよう、すべてのリスクテイクは事務所が背負うことを決めました。

一方で残るスタッフの佐藤くんにも過剰な負担がかからないように、スタッフを一人増やすことも決めました。岩田さんが帰ってくればスタッフは3人になります。正直人を雇う余裕はあまりないのですが、そこも腹を括ろうと思います。


今どき産休育休なんてあたりまえの世の中ですよね。テレワークを併用して子育てと仕事を両立している女性もたくさんいることと思います。建築の仕事は、現場監理や所内での密な図面打合せもあるので、復職後もすべてテレワークでというわけにはいかないかもしれませんが、今回のケースを設計事務所のこれからの働き方を考えるケーススタディとして、私自身にとっても学びの機会にできればと考えています。

正直に言えば、今もすべてをそんなにドライに割り切れているわけではないんですけどね…。(スタッフが一時的にでも抜けるのはやっぱり寂しいですし)

そんなことで、年内は佐藤くんと二人で事務所は回してゆきます。途中からはヘルプをお願いする予定もあり、年明けからはもう1人新しいスタッフも合流予定です。

岩田さんも、担当する現場についてはテレワークベースで産休中もフォローを続けてくれるそうです。リオタデザインはつくづく良いスタッフに恵まれている事務所だと思います。みんな、どうもありがとう!私は彼らを養うためにどんどん新しい仕事を取らなくては…汗

岩田さん、体調に気をつけて元気な赤ちゃんを産んで戻ってきてくださいね。みんなその日を心待ちにしています!!