今から25年前、フィンランド留学中に現地コーディネートを担当した「エクスナレッジHOME創刊号/アールト特集」。建築知識社はこの時エクスナレッジ社になり、編集長はのちに社長になる澤井聖一さんが就任、アートディレクターに角田純一さんを起用という、当時超保守系出版社だった建築知識社が社運をかけて、攻めに攻めて出した雑誌がこの「エクスナレッジHOME」だった。
どのくらい攻めたかというと、日本から連れてきた写真家の一人が高橋恭司さんだったということがそれを象徴していた。
高橋恭司さんは90年代を代表するカルト写真家。けして雑誌の取材で編集者の指示で写真を撮るような人ではない。エイトバイテン(8x10)という大型写真機を使って、一日数枚しかシャッターを切らないというカリスマがアールトを撮る。それが逆に創刊号の目玉の一つにもなっていた。
そんな恭司さんの行く先々で当時どんな事件(ハプニング)が起こったのか、それはことあるごとに話しているのでここでは書かない。
そんな高橋恭司さんがこの雑誌のために撮った2001年のアールト写真が現在、新井薬師前の「スタジオ35分」にて展示されていて、今日ようやく足を運ぶことができた。
ギャラリーは隣のバーと繋がっていて、来場者は必ずバーでワンドリンク頼むというシステム。これ初めてきた人は、もしかしたら扉開けた瞬間に閉じちゃうかもしれない。
恭司さん、あろうことか当時のネガを全部燃やしちゃったそうで、ここに飾られているのは恭司さん自身が当時暗室で焼いたオリジナルプリントで、この世にこれしかもう残っていないという。すごく欲しかったのだけれど値段見たら心折れる金額で、流石に写真一枚にそこまで出せないと潔く諦めもついた。
最後ワンドリンク飲んで帰ろうと思っていたのに、一人バーカウンターで飲んでいると酔いが回ったのか「このまま帰っていいのか?」とぐるぐるしはじめ、、
結局買ってしまった!
高橋恭司さんによるアールト自邸のオリジナルカット。いい写真だ。25年前の私から、今の私にタイムスリップして届いた一枚。遠い昔の忘れ物をいま取り戻したような不思議な体験だった。
バーの店主も写真家で恭司さんと親しいらしく、私が25年前に現地コーディネーターを務めたのだと伝えるとすごくびっくりしていた。スピリチャルカメラマン高橋恭司さんのまわりでは今も不思議な事件が起こり続けている。
美術手帖のYouTubeチャンネルで、建築史家の松隈洋さんが解体がはじまってしまった旧香川県立体育館の問題に言及されています。国内における近代建築を残す意義や意味についてもとてもわかりやすく解説されていて、そんな素晴らしい建築を残せなかったことに胸を痛めつつ、松隈さんの熱弁に引き込まれ心を打たれました。
この中でフィンランドの建築政策についても触れて頂いています。フィンランドでは「The Finnish Architectural Policy」というものが1998年に出されました。これは国の教育省やアートカウンシルが発行元となり、フィンランド建築家協会SAFAが編集を行ったものです。
The Finnish Architectural Policy 1998
https://ace-cae.eu/wp-content/uploads/2024/10/FI-report.pdf
松隈さんも感嘆されていましたが、内容が本当に素晴らしく、序文をまず時の首相が書いていること、またその中でパーヴォ・リッポネン首相は、憲法で定められた「良好な環境に関する国民の権利」を実現する機会を作ること、また「国民には自分たちの環境に責任を持つ権利と義務の両方があり、その権利を行使するためにも建築に関する教育や情報の提供を強化する必要がある」ことを強調し、この建築政策がアールト生誕100年祭の年に出されたことに大きな意義と喜びを感じる、と締めくくっています。
良い環境はすべての市民にとって基本的な権利(A good environment is a basic right of every citizen)という考え方にもしびれますが、私は特にフィンランドの「Living Heritage(生きた遺産)」という考え方に共感を覚えます。
フィンランドでは築90年近いパイミオサナトリウムやマイレア邸といったアールトの建築遺産が、単なる観光スポットとしてではなく、今もなお何らかの形で使われ続けているという「動的保存」の考え方があります。それはまさに建築にとって最も理想的で幸せな状態であるともいえます。
そんなアールトの建築群はユネスコ世界遺産への登録に向けて秒読みの段階に入っています。どうか末長く残って欲しい。松隈洋さんの美術手帖の動画リンクは以下より。素晴らしいコンテンツでした。
◼️美術手帖YouTube・なぜモダニズム建築は壊されてしまうのか?
https://youtu.be/qe5RHnm60BI?si=RTQJ9jsgR0j3F-KK
◇
[追記]
こちらは最新版(2022-2035)のフィンランド建築政策リンクです。
◼️The Finnish Architectural Policy 2022-2035
https://julkaisut.valtioneuvosto.fi/server/api/core/bitstreams/6b2cb52e-2623-46b8-9fb1-467108c34d11/content
1998年の声明から一歩進んで、気候変動や建築的持続可能性(Architectural sustainability)、「Design fo All」の推進、デジタル化の推進などが追加されています。また1998年の声明はEUの多くの国での建築政策モデルとなったことにも触れられています。
建築の価値を「技術的、芸術的、文化的な価値を持つ資本」と捉え、「建築の本質は文化・芸術である」ということを国が宣言している点も素晴らしいです。
冊子も堅苦しいものではなく、ポップでどこかの気の利いた都市の観光案内のようです。国民にまったく響かない国交省の無機質な文書も少しは見習って欲しいですね。
開院前のお忙しい時期にお時間を頂き、「minäこころのクリニック」の内覧会を開催させて頂きました。設計期間2ヶ月、開院まで半年という制約の中、予期せぬトラブルも多々ありましたが、施工のエークラフトさんのご尽力もありなんとかこの日を迎えることができました。
心に光をあてる心療内科の医療行為に寄り添う「ひかりの空間」を提案させて頂きました。連続するひかり壁が患者さんの背中を少しだけ押し、不安に寄り添い、心を落ち着かせてくれるような居場所を待合室につくりました。
ひかり壁は空間に奥行きをつくり出し、人の心の持つ多面性や個の尊重といったことも同時に表現しています。
入口正面に下げたアールトのビンテージ照明A335Aは、院長先生自らが待合室に下げてほしいとご用意された特別なもの。各診察室にも先生が選ばれた思い思いのアールトランプが下げられました。
クリニックの計画というのは、一般的にはクリニック設計に長けた業者が担い、我々のような設計事務所が計画に関わる機会は少ないのが実情です。今回は先生のご自宅を私が設計していたことから、設計者として白羽の矢を立ててくださり、不慣れながら短期間の設計を全力でまとめました。やれることは限られますが、小規模クリニックのあり方として少しは爪痕が残せたのではないかと思います。
見学では人数を制限しつつも、多くの方々にお越しいただきました。前日には近所に事務所のあるTOIVOさんご一行や、蔵楽さん、福井からわざわざお越しくださった伊藤瑞貴さんもご案内し、夜は事務所で楽しい会も催してくださいました。友政さん、ありがとうございました!
お越しくださいました皆様にも、この場を借りて深くお礼申し上げます。
北欧建築・デザイン協会SADIでは会員相互で特定のテーマについて語り合うSADIサロンという定期企画があります。
今月のテーマは「アールト」。最初に私がスターターを務めて、その後会員それぞれの視点から自由にアールトの解釈や惹かれるポイントについての意見交換、とっても盛り上がりました!
この日嬉しかったのは平山達さん(SADIでは「先生」という呼称は禁止なのであえてさん付け)が久しぶりにご参加くださり、私に続けてご自身のアールト観についてもお話くださったこと。SADIでアールトといえば平山さんを置いてなく、私などがアールトを語るなど20年早いとすら思えます。まさにレジェンドです!
理事を退任されてご健康も心配していたのですが、とてもお元気そうで、何よりアールトの話をされている平山さんがとても楽しそうで、理事会後の居酒屋さんのように、この場で一緒にアールト話ができていることが嬉しすぎて思わず涙が出そうでした。
平山さんからは、私のアールト解釈のいくつかにご意見も頂きましたが、表現こそ違っても見ているポイントは同じなんだと思い、ここでもじんわり。また参加者の筒井さんからはアールト事務所でアールトと2時間歓談した話なども飛び出して、このSADIにはどれだけレジェンドがいるんだとびっくり。
それに比べて私の知識のいかに薄っぺらいことか。人間国宝のようなレジェンドメンバーには心から長生きをして頂きたいと願った夜でした。ご参加くださった皆さまありがとうございました!
昨年9月、JIA住宅部会とSADI北欧建築・デザイン協会の仲間とともに、フィンランドにアールトの建築を訪ねる研修旅行に行って参りました。こちらは昨年のブログでもご報告したとおりですが、昨年末にこちらの旅行報告会をJIA住宅部会でひらかせて頂きました。
報告会は住宅部会のメンバー向けのものでしたが、この内容をこのたびYouTube動画として公開させて頂きましたのでお知らせします。動画編集は昨年末紅白歌合戦を見ながら自分でやりました笑
■JIA住宅部会|アールトツアー報告会YouTube動画 (案内役:関本)
https://youtu.be/qJjEPAProME?si=NHIVrC9XytixFG6g
内向きな旅行報告というより、フィンランドやアールトを知らない方にもその魅力が伝わるようにわかりやすく建物解説を交えてお話ししていますので、アールトのことをよく知らない方にも是非見て頂けると嬉しいです!
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報告会は住宅部会のメンバー向けのものでしたが、この内容をこのたびYouTube動画として公開させて頂きましたのでお知らせします。動画編集は昨年末紅白歌合戦を見ながら自分でやりました笑
■JIA住宅部会|アールトツアー報告会YouTube動画 (案内役:関本)
https://youtu.be/qJjEPAProME?si=NHIVrC9XytixFG6g
内向きな旅行報告というより、フィンランドやアールトを知らない方にもその魅力が伝わるようにわかりやすく建物解説を交えてお話ししていますので、アールトのことをよく知らない方にも是非見て頂けると嬉しいです!
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