
恒例の夏のオープンデスク、一人目は芝浦工大2年生の中村莉緒さん。
設計課題を出し、初日は2年生にありがちなセオリーを無視した観念的建築?でしたが、ひとつひとつ住宅の基本を教え、彼女も事務所の本を持ち帰って勉強。毎日1時間のエスキースを重ねるとみるみる上達。わずか一週間で別人のような案を作るようになりました。これまでのオープンデスク生で一番伸びしろがあったかもしれない。最後に模型までちゃんと作ってプレゼンしたのも見事でした。
リオタデザインではオープンデスク生には、仕事を一切触らせません。学生に触らせられるような仕事はうちにはないからです。その代わり、私が設計課題を出して毎日のように設計指導をします。大学ですら10分くらいのエスキースを、私がマンツーマンで毎日1時間も指導するというのはスタッフですらないことです。中村さんはそれを知っていてうちを選んだとのこと。我ながら授業料を取りたいくらい。
大学では課題を出して、次の週に案を持ってくる学生はほとんどいません。口先だけでコンセプトを語る者。ノートの片隅に抽象的なスケッチを描いてくる者。どうして唯一無二の敷地に向き合って、三角スケールを使って図面を引かないのか。答えはそこにしかないのに。
一週間を使っても一案も作れなかった子が、一日で何案も作るようになり、わずか一週間でプレゼンが出来るクオリティまで持って行くことが出来る。この成功体験を作ることが我々のオープンデスクの目的なのです。
うちのオープンデスクを経験すると、後期からすごく伸びるという話をしたら、目を輝かせて「後期課題が楽しみです!」と言って帰って行きました。彼女の”真夏の大冒険”も終了です。
☆ 来週からも別のオープンデスクが来るので、案の詳細は伏せておきます笑


一昨年に刊行されました建築知識2019年7月号にて、「木造住宅できるまで図鑑」というタイトルで弊社設計「路地の家(2017)」ができるまでの現場プロセスを一冊まるごと特集をして頂いたのですが、こちらがこのたび書籍化されることになり、本日その見本誌が届きました。
詳細図解 木造住宅のできるまで|関本竜太著
エクスナレッジ・8月23日ごろ発売予定(予約受付中!)
https://www.amazon.co.jp/dp/476782916X/
中身は先の建築知識の内容とほぼ同じなのですが、判型がひとまわり大きくなり、またオールカラーで大変見やすくなりました。また、追加で各所にコラムや板金のちょっとした納め方など、内容を大幅に加筆させて頂いています。
ちなみにまだ発売前で、書店発売は8月23日ごろの予定です。
◇
内容は設計者が現場監理のために知っておかないといけない内容から、「それ設計者が知ってる必要ある?」というようなものまで網羅した一冊になっています。
しかし案外図面を描いていると、ここってどうやって作るんだろう?とか、壁と天井はどちらを先に施工するのだろう?とか、意外とつまらないことで設計の手が止まってしまうことがあるものです。
本書はそんな施工プロセスを一つの住宅を軸に、コマ送りするように通しで見てゆけるので、初学者から中堅の設計スタッフさんまで、幅広く木造住宅の現場を学んで頂けるものになっていると思います。発刊されましたら、どうかお手に取ってみて下さい!




ちょっと前からだいぶ残念な感じになっていた事務所のスタッフの椅子を、このたび一新しました。
vertebra03 / ITOKI
design: 柴田文江
https://vertebra.jp
座り心地もさることながら、デザインの良い椅子をずっと探していました。このvertebra03 は、事務家具大手のITOKIが出しているという点にまず驚いたことと、そのデザインを外部のデザイナー(柴田文江氏)に委託し、しっかりそれをクレジットしている点が素晴らしいと思います。
張地も自由に選べて、問い合わせたら山ほど送られてきた生地の中から、Knollの鮮やかなオレンジをスタッフと相談して選びました。このKnollのテキスタイルを選べるあたりも、デザイナーの意向が入っていそうで好感が持てます。
そして座り心地。これは最高に素晴らしいです!スタッフも大喜び。後ろにもたれかかると、座面が前にスライドするので、ちょっとリラックスする姿勢にもちゃんと追従してくれます。
私は別の椅子なのですが、私も欲しくなっちゃいました!


合わせるべきは屋根か、はたまた外壁か…。
軒どいの色を決めるときに、いつも悩みます。屋根や鼻隠しの色は濃いめの色で引き締めたい。しかし外壁は明るい色にしたい。軒どいをこげ茶にして、縦どいも共色にすると白い外壁にこげ茶色の縦どいのシルエットが入ってしまう。それならばと縦どいをシルバーにすれば、折角引き締めた軒先のラインもシルバーに…。
それなら軒どいと縦どいの色を変えればいいじゃないかと思うでしょう?そこのアナタはわかっていない。街を歩いていると軒樋と縦どいの色を変えている家をよく見るのですが、これがことごとく失敗している。とってもみっともないことになっている。
原因はおそらく縦どいと軒どいとのジョイント部。ここがすっきりしていないから、そこにどうしても目が行ってしまう。
現在進んでいる現場でもまたこの問題にぶつかりました。またこの問題か…。うんざりしながらどうしようかと悩んでいると、ふと去年の暮れにタニタハウジングウェアに訪問した際に見せられた、とある試作品のことが頭に浮かびました。それは同社のスタンダード半丸のトレードマークであるラッパ型の集水器ではなく、T形のジョイントにしたパーツでした。
これどう思いますか?と訊ねられたものの、正直私は現行のラッパ型集水器が気に入っていたので、これをどういう状況で使うのが良いかわかりませんでしたが、今はっきり理解しました。そうか、こういう時に使うんだ!
ジョイント部のサンプルを急遽取り寄せて現場に当ててみると、想像以上に良い感じ。実際に取り付けてもらいましたが、言わないとわからないくらいに馴染んでいる。長年の問題が今一気に解決した感じ!たぶんこういう用途に開発した商品ではなかったのかもしれませんが、今後はうちのスタンダードになるかもしれません。
この「T形ドレン」は、スタンダード半丸のラインナップに今年の5月末から加わっているようですよ。

21. 08 / 02
「通り土間の家」お引渡し
author
sekimoto
category
> 仕事
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「通り土間の家」につき、昨日引渡しを終えました。建主さんからは、なんと住宅のプランを象った真鍮製のキーホルダーをプレゼントして頂きました。これにはびっくり!こんなの作れるんですね。
それ以外にも、私の好きなSOUSOUの手ぬぐいまで。Uさん、心のこもったプレゼントをどうもありがとうございました!

「通り土間の家」の敷地は、上空から見るとT字型をしたような変形地でした。そこにどう建物を配置して、どんなプランにすれば求める生活が出来るのかは、当の建て主さんにはとてもイメージはつかなかったことと思います。
先週にかけて実施した内覧会では、何人もの方から、その一風変わった設えに「建て主さんのご要望だったのですか?」と聞かれましたが、必ずしもそういうわけではなかったような気もします。ただ結果的には、建て主が求められていたものにはなったのではないかと思っています。
家づくりにおいて、最初からどのようなプランにしたいかや、各所の設えなど、具体的に細かくどうすれば良いかわかっていれば、それを言われたとおりに実現してくれる人に頼むのが一番良いかもしれません。たとえばハウスメーカーの担当者さんなどは、従順にその通りにしてくれるような気もしますし、、。

我々は建て主さんのご要望のみならず、周辺環境や将来の変化、コストバランス、機能や実用性と同じくらい美しさなども天秤にかけて建物をつくることを信条としています。また建て主さんに対しても、我々は単なる御用聞きになってはいけないとも思っています。たぶんこれは、人によっては面倒くさいと思われるでしょうね、、。
広い視野で住まいや建築のあり方を考えることは、大学の建築学科を出ただけでは簡単に身につくものではありません。専門知識と同じくらい、実生活で身についた常識や生活感覚というものも同じように大切だからです。それは家づくりのために”にわか勉強”をされた建て主さんであっても同様であるとも言えます。家事動線や収納など、生活感覚だけで作った家もまた、遊びがなく単調な空間になってしまいがちだからです。

今回は時に大胆な提案をした場面もありましたし、施工なども人間の手によるものなので完璧というわけにもいかなかった部分もありましたが、どんなことにも面白がって、好奇心を持って対応して下さったことは、我々にとっても大きな救いとなりました。
打合せを通じて、Uさんには多様性や自分の考えとの違いを楽しんで受け入れるという寛容さや懐の深さが備わっているように感じました。その器には尊敬の念しかありません。
そんなUさんだったからこそ、この大らかな家が出来たのでしょうね。我々の創造性をぐいぐいと引っ張って下さった、Uさんご夫婦の笑顔だけが今浮かびます。本当にありがとうございました。
わんぱくなお子さんが走り回るワイルドな家になることを願って!

