23. 08 / 04

HAKKOについて

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sekimoto

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一昨日、2005年に竣工した「HAKKO」という住宅が売りに出されたという件についてブログに書きました。

思いのほか反響も大きく驚いていますが、一方では私にとって初期の代表作であるにもかかわらず、サイトにも写真が少なく少し謎めいた住宅のようになっています。

私にとって約20年前の仕事…もうそんなになりますか。そんなことで、この機会に当時のことを振りかえってみたいと思います。


HAKKOの設計依頼を頂いたのは、2004年の頃だったと思います。建て主のIさんは、もともと私が過去に設計したカフェmoi(荻窪にあった時代)の常連さんで、お店で紹介されてお話をしたことがあったという程度でした。

Iさんは北欧にも多くのつながりを持つ方で、美意識やデザインに対する感度が高く、ポストカードの制作や輸入雑貨なども扱ういわゆる”目利き”の方でした。

一方当時の私といえば、仕事は小さなカフェの設計やリフォーム仕事ばかりで、戸建てはようやくはじめての住宅(ILMA)を友人から依頼されて設計していたくらいで、実績を作品としてお見せできるようなものはほとんどないという状況。

そんな”どこの馬の骨かわからないヤツ”によくも設計を依頼してくださったものだと、今思ってもその勇気に敬意を表したくなります。思えばそういう建て主に支えられて今があるわけですが、このことについては、Iさんには今でもとても感謝しています。

ただご予算は厳しかった!

でも若いってすごいことですね。そして怖い。経験がないので、それがどれだけ厳しい予算かというのがわからないんです。やればできるのかな、みたいな。結果として出来ましたが、今思うと奇跡以外のなにものでもありませんでした。工務店さんのご協力や努力にも心から感謝です。

今でもこの住宅を下回るローコストはありません。金額は書きませんが、たぶんこれを読んでいる方が想像する額の、たぶん”半分”くらいじゃないでしょうか笑。今なら絶対できないし、やりません。


敷地は山中湖の管理別荘地の傾斜地。最初にこんな感じのシンプルなボリュームを提案しました。というか、これしか思い浮かびませんでした。

これしかないと思い込んでいたので、建て主に他にも案を出して欲しいと言われても全然浮かばなくて困りました。私は「コレッ」って思うとそれしか考えられないので、良くも悪くもオンリーワンプランなんですよね。これは今にもつながっているスタイルでもあります。

ここからの設計プロセスは、小さな家なのでプランが二転三転することこそありませんでしたが、建て主さん側も色のテイストや金物の選定、ちょっとしたディテールにも強いこだわりを示されたので、トントン拍子というわけでもありませんでした。

たとえば、内部について私は「もっと木質感を見せるべき」、建て主さんは「見せない方が良い」など、そのデザインを巡って意見が食い違って議論になったこともありました。化粧のヒノキの柱をペンキで塗りつぶすと言われたときは、必死に説得して、せめてオイルステイン塗装にさせて頂いたことも笑。

当時は経験不足から完成形がイメージできず不安もありましたが、出来上がってみると大いに納得!私の拙い感覚ではとても到達できなかった領域に、建て主さんに引き上げて頂いた感覚がありました。




この仕事ではじめてだったことがあります。それは「木造」です。

今では『木造住宅のできるまで』なんて本も出していますが、考えられません。独立前の前職ではRCの集合住宅や鉄骨造の医院などの担当がほとんどで、床伏図や軸組図はもちろん、プレカット打合せすらしたことはありませんでした。

そのため、いつも『建築知識』をひっくり返して「今さら聞けない木造」なんていう特集号を取り寄せて、隅々まで眺め回していました。人のディテールも片っ端から盗みまくって、自分らしく構成したりなど、この時期の仕事がのちの私の基礎をつくりあげたようにも思います。

今でも私は、構造は木造でも建築の発想はRCのように考えるクセがあります。最近は出しますけど、過去はあまり軒も出さなかったのはそういうキャリアの原点があったからかもしれません。




完成して、オープンハウスには友人知人など多くの方が駆けつけてくださいました。私も若いですね!当時33才です。

前職の事務所の所長(棚橋廣夫さん)も愛車のモーガンを飛ばしてやって来て下さいました。息子の写真もありました。ちっちゃい!時の流れを感じますね。



憧れの専門誌「新建築住宅特集」にも掲載して頂きました。私にとってはじめての掲載でした。これは嬉しかったですね!

結果的に、これがきっかけで母校の非常勤講師にも呼んで頂くことができました。だからこの仕事は文字通り、私にとっての出世作になったわけです。

にも関わらず、当時のデジカメ性能の問題や、あまり後先のことを考えていなかったので、まともな写真があまり残っていないんですよね。これが残念でなりません。

無理をしてでも、ちゃんとプロに竣工写真を撮って頂くべきだったと思います。でも当時の私は、本当にそれどころじゃないというか、、写真を頼むお金もなかったんですよね。思い出はすべて心の中にという感じです。初代スタッフ、二宮一平と高速を飛ばして通った現場も懐かしいです。

そんなHAKKOが竣工して18年、これが子どもなら大学に入学して独り立ちの時期ということですかね。どうか良い新しいオーナーさんが見つかりますように!そして更に手を入れながら末永く維持して頂けますことを願っております。

Iさま、あらためてこの度の出会いとご縁に心より感謝しております。
ありがとうございました!


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独立して最初期(2005年)の仕事「HAKKO」が売り出されることになったそうです。山中湖の管理別荘地にある小さな平屋の木造住宅です。

延べ床はわずか16坪。1300万円です。
OMソーラーも載ってます。

■HAKKO(2005年)
https://www.riotadesign.com/works/05_hakko/#wttl

■物件詳細
https://www.sambigaoka.co.jp/sale/info.php?no=69

この住宅は私にとって、はじめて新建築住宅特集に掲載された住宅でもあります。こんなにシンプルな家でよく載ったなと思います。先日売り出された「空の家」にも似ているかもしれませんね。私はこういう形が好きなんだと思います。そういう意味では原点かもしれません。

「箱」のような素っ気なさだから「HAKKO」
ご興味ある方はどうかご検討ください!!

23. 07 / 28

藤沢木工所へ

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sekimoto

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昨日はここ数年、うちの家具建具の製作を一手に引き受けて下さっている藤沢木工所に足を伸ばしました。

藤沢さんは家具と建具両方を作れる工房で、ほかの家具屋さんに言うと嫌がるような細かい仕事を何も言わなくてもやって下さるとても気持ちの良い業者さんなんです。

新潟の長岡の田園風景の中にある社屋には、田んぼを吹き抜ける涼しい風が吹いていました。工場の窓からはこの景色!


志木から長岡まで片道3時間。でもこの距離を飛ばしていつも現場に来て下さっているんですよね。都内現場だとそれ以上ですね。もう感謝しかないです!

会社にはすでに30年選手の機械が現役で働く傍ら、高周波プレスなど最新鋭の機械も並んでいました。

30年前の加工機なんて時代遅れだと思うじゃないですか。それが違うんです。今の機械掘りはルーターなので丸い穴なんですね。この加工機は角の立った平ノミの溝をきれいに掘ってくれる機械なんです。これが壊れたらもうこの機械は手に入らないそう!

機械に張られたメモ用紙にびっしり入力値が書かれています。これは藤沢木工所の歴史そのものですね。




職人さんもキビキビ働いていて、いろいろ製作風景も実演して見せて頂きました。別の棟の倉庫にはお宝のような材木がびっしり!

いつも神精度の家具建具を製作下さる藤沢さん。そのクラフトマンシップを存分に体感しました!


行きには元スタッフの吉里が内装を手がけたへぎそばの名店、わたや平沢店にも寄らせて頂きました。こっちのお蕎麦も絶品でした。もちろん吉里の仕事も!

スタッフにとっても良い研修になったことと思います。藤沢さん、お忙しい中ご対応ありがとうございました!

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sekimoto

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昨日ははるばる奈良まで。ケイミューさんの奈良テクノセンターにて社員さん向けのセミナーをさせて頂きました。

ケイミューさんといえば、外装のサイディングや屋根のカラーベスト(コロニアル)で有名ですが、これまでそれらを一度も使ったことがなく、どちらかといえば否定派の私。いったいどんな話をすればと思っているところに、到着早々「板金派の関本さんですよね」とカウンターパンチ!

事前質問でも「なぜカラーベストを使わないのか?」というものが多く、軽く責められている感じ?これまでの人生ではじめてカラーベストのことを考えた一日になりました。セミナー最後に「どうして私がカラーベストを使わないのか」について話した時の、地獄のような空気が忘れられません!!

でもケイミューさんは、私がなぜカラーベストが使えないか?に応えたラインナップをちゃんと用意しているんですよね。これSOLIDOの影に隠れてあまり知られていないかもしれないのですが(私だけ?)、画期的な外装材もあって、現在全面採用を前提に進めている案件もあります。最後にはそんな打合せも。

だからケイミューさん許して下さい!板金派からケイミュー派に乗換えを検討中です!?




こいずみ道具店に行った話を先日書きましたが、その時に「面定規」なるものがありました。

これは家具などのコーナーエッジをどのくらい丸めるか(アールを取るといいます)の目安に0.5mm刻みのアールを木材につけたもので、そこに親指を当てて直感的にアールの大きさを決めることが出来るというスグレモノ。

■面定規+花びらR定規
http://www.koizumi-studio.jp/item_kiki_hanabira.html

同じく小泉さんによる「花びらR定規」はすでに持っていたのですが(元スタッフ砂庭さんからのプレゼント)、この面定規も是非欲しいと思って買おうとしたら、小泉さんがひとつプレゼントしてくれるとのこと。

やった!!と思ったのも束の間、この面定規、角には最初はアールが付いておらず、「花びらR定規」を使って自分で削ってアールを付けるものなのだとか。

好きな樹種を選んでいいよ~と言われて選んだモンキーツリーでしたが、戸惑いつつも、折角なのでこの連休に自分で削って面定規を完成させることにしました。


さっそく平らな金ヤスリでゴシゴシと削り始めたのですが、これが思いのほか楽しい!

少し削っては「花びらR定規」を当て、アールがフィットするように注意深く削っていきます。R定規だけでなく自分の親指も当てながら、わずか0.5Rの違いを感じながら微調整をしていきます。


削りながらなるほどと思いました。

この面定規をつくる作業自体が、すでに一定の教育的効果があるんですね。自分で削りながら何度も何度も角を触っていると、そのうち目隠ししていてもそれが何アールか当てられるような気がしてくるのです。

ちなみに小泉さんの家具の角アールは「2.5R」指定なのだとか。以前その話を聞いたときは、「え、2Rか3Rでよくない?」「そんなに違いあるかな」と思いましたが、今はこう断言します。「それ、全然ちがいます!」

我々の仕事はつまるところ、この微差を「全然ちがう」ものとして認識できるかどうかなのでしょうね。


最後にオイルを塗ると、美しいモンキーツリーの木目が浮き上がりました。おもわず手を伸ばして弄んでしまいます。

これからはちょっと角アールにもうるさい(メンドクサイ)人になりそうです笑
小泉さん、こちらもありがとうございました!