建築の設計をしていて、こういうプランや納まりをすると大変そうだなと思うことが多々ある。けれどもそれをやったらすごく良くなる、ということが分かっているとおのずと難しい方の道を選ぶことになる。

詰まるところ建築というのは二択があれば、困難を選ぶ確率がすこぶる高い分野であると言える。特に独立して設計を生業としているような者は、これまでの人生に於いてもそういう選択肢を選択し続けてきた者とも言えるかもしれない。

そういう意味では、建築には本質的に「マゾヒスト(M)的な気質」がどこかにある。自分をどんどん窮地に追いやり、それを嬉々として受け入れているようなところがあるように思えてならない。

一方で、その受け入れた困難はそこでは終わらない。設計をすれば今度はそれを実現する施工者という立場の者が現れる。するとこの者の立場は一転する。自ら選んだ困難の道を、今度は人を巻き込み、これを強いる立場となるのだ。

その者は出来ないと言う者を説得し、時に上から時に下から、また時には脅し(?)、拒めばどうして出来ないのかと責めたてる。その者の下に付いた部下はもっと悲惨であろう。そういう意味において、建築には本質的に「サディスト(S)的な気質」があると言わざるを得ない。

建築の創作のプロセスにおいては、このSとMとが交互に現れる。

自らの背後には常に批判的な”黒い”人格がいて、自分のやることなすことをコテンパンにこき下ろす。それに対して負けじと必死に反論を試みながら設計は進んでゆく。この場合の背後の人格は、いわば「世間という名の悪意」というべきものであろう。

その血も涙もないようなツッコミの数々には、自分の中にこんなにも底意地の悪い一面があったのかと自分でも引くくらいであるが、一方では「建築はSである」という論証がここでも証明されることになる。

ところが、その状況は他ならぬ自らが作り出したものであり、その批判を甘んじて受け入れている自分を認めるならば、やはり「建築はMである」とも言えよう。

というわけで、もし私が建築に必要な素養とは何ですか?と問われれば、迷わず「SとMです」と答える。重要なのはそのバランスで、Sが強すぎれば人の心は離れ、Mが強ければ状況に流されてしまう。いずれも優れた建築はできない。

ちなみに私の周囲をタイプ分けするならば、Sが8割 Mが2割である。(当社比)

学生時代の設計課題は1年生の時のものから保管してあって、たまに学生が来ると話のタネに見せている。昨日は以前見せた学生がまた見たいといってやって来た。

当時はCADもイラレもないから、当然手描き。写真は3年生前期のセミナーハウスの課題で、フィルムトレペにインキング、着彩は裏からエアブラシを吹いた。フィルムの透過性を利用して、断面図の上に立面を重ねてガラス張りのファサードを表現している。

平面図も含め、今見てもよく描けてるなぁと思う。当時はプレゼンに丸二週間をかけていた。今の学生の手抜き図面(彼らはそう思っていないだろうが)を見ると歯がゆくて仕方がない。

なーんて話をし始めると、今時のワカモノを嘆く老人のようで本当に嫌だ。学生にも、当時はねなんて話をしていると、戦争を知らない子たちに戦時中の話を聞かせている語り部のようで心が折れそうになる。ロットリングって何ですか?と言われる。ついこの間の話のはずなのに!

16. 09 / 08

伊礼さん講演会

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sekimoto

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> 建築・デザイン
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昨日は「建築知識ビルダーズ」にて建築家・伊礼智さんを特集した記念講演会が八重洲ブックセンターにてありました。

スタッフはまだ伊礼さんに会ったことがないというので、昨日はオープンデスクの学生さんも含めた全員を引き連れて参加することに。みんな伊礼さんの特集号にサインをしてもらって最後に記念撮影(パチリ)。

以前もブログで伊礼智さんの住宅デザイン学校にゲスト講師として呼んで頂いた事を書きましたが、昨年あたりから伊礼さんとのご縁が続いています。

過去にスタッフに伊礼さんの本を貸したら、私がいつも言っていることと同じ事が書かれていたといって驚かれたことがありました。正直私と伊礼さんでは作風も違いますが、住宅に対する考え方は多々共通するところがあるような気がします。伊礼さんとこうして絡ませて頂けることは、私にとっても大変光栄なことです。

さて講演後の懇親会では、同じように伊礼さんを慕う多くの設計仲間が集まりました。私も初対面の方も多くいらっしゃいましたが、建築知識などで連載を持ったり、ブログや伊礼さんとの絡みの影響もあってか、いつの間にか私自身の知名度も上がっているようで、嬉しくも少し戸惑っています。

私のことなんか誰も知らないだろう、と私自身は今でも思っているのですが…。このブログにもあまり変なことは書けないですね。でもきっと書くと思いますが笑

ここ二週間ほど、弘世蓉子さんという日大の学生さんがオープンデスクに来ていました。オープンデスクというのはインターンのことで、建築では夏休み期間を使って、建築学科の学生さんが設計事務所などに実務体験にやってきます。

うちは事務所も狭くて、学生さんを受け入れる余地はあまりないのですが、この期間は来客予定が少なかったこともあり、ミーティングデスクを使って模型を作ってもらうことに。それを二週間後に予定していたクライアントとの打合せでお披露目をするところまでを一区切りとすることにしました。

そしてこちらがその完成模型。
志木市内に建つ予定の、『deco』というタイトルの住宅です。




特徴はなんといっても、2階のこの梁架構です。単純に梁を飛ばすと6m超のスパンとなるところを、45度に梁を渡すことでスパンを4.5mに留め、梁成も抑えています。またこの45度に振った梁をあらわしにすることで、この特徴的な天井をこの住宅のハイライトにもしています。模型でも一番の見せ所です。

そして今日がそのクライアントとの打合せ日。彼女にとっては、オープンデスクの最終日です。模型はクライアントには内緒で作っていたので、この日はサプライズとなりました。



奥様も思わず「泣きそう」とこぼして、大変感激して下さいました。これには学生の弘世さんも大いに感じるところがあったようです。

実のところ、私としてはまさにクライアントのこのリアクションや表情を見てもらうことが、このオープンデスクの目的であるとも思っていました。

大学の設計課題では、住宅を設計しても評価をするのは講師である我々であり、それも建築家目線でのクリティックになります。だから大学では先生受けする案が好評価を勝ち取ることになるのです。

ところが、設計で最も大切なことは目の前のクライアントに喜んでもらうことです。自分たちが一生懸命考えて作ったモノやコトが、相手に笑顔で受け入れられるという喜びを越えるものが、物づくりにあるでしょうか。


このオープンデスク期間中は、彼女をあらゆる現場やクライアントとの打合せに連れて行き、私と行動を共にしてもらいました。行く先々でもいろんな話をしましたが、それらをすべて理解したとは思っていませんし、忘れてしまってもいいとも思います。

けれども自分が一生懸命作った模型が、最後にクライアントに喜んで受け入れてもらえたというこの体験だけは、深く胸に留めてもらいたいと思います。
2週間お疲れさまでした!後期もがんばってくださいね。

またクライアントのUさん、本日の急な同席をお許し下さり、またご協力を賜り誠にありがとうございました。

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sekimoto

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> 建築・デザイン
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アンドウ・アトリエの安藤さん+田野さん夫妻は、私のご近所でもある東武東上線の和光市に事務所を構える建築家。今月の「住宅建築」で特集されており、今日はその関連講演会があり足を運ばせて頂いた。

アンドウ・アトリエの仕事の特徴は、雑誌の表紙にもあるように「建築と家具のあわい」、つまり家具のように建築を作り、建築のように家具を作るところにある。

私も住宅をひとつの家具のように捉え、細やかな作りに関してはひそかな自負もあるけれど、アンドウ・アトリエにはとてもかなわない。オープンハウスに足を運べば、もううなだれて帰るほかない。それは一言でいえば「おもてなしの建築」とでも言うべきものであり、その質においても、”匠の仕事”とはこういうものかといつも考えさせられるのだ。

アンドウ・アトリエさんとのお付き合いは、私がまだ駆け出しだった10年以上昔に遡る。フィンランドにアールトを見に行こうとされていた安藤さん+田野さん夫妻から話が聞きたいとある日メールを頂き、同じ沿線だったご縁もあり、和光市のアトリエにフィンランドの資料を持って訪ねたのが最初だった。

前職ではRC造が多く、木造や小住宅の設計にまだ不慣れだった当時、アンドウ・アトリエの作る木造住宅をいつも拝見させて頂いては、詳細にいたるまで勉強させてもらった。いや、正直かなり盗ませてもらった。今のリオタデザイン仕様は多くの私の尊敬する建築家たちのエッセンスが凝縮されているのだけれど、その少なからぬ影響は確実にアンドウさんからのものといえる。

もっとも私のそんな思いとは裏腹に、格の違いから、アンドウさんは私の仕事の中にご自身の仕事との類似点はあまり感じておられないかもしれないけれど…。

私の知る限り、アンドウ・アトリエのお二人がこういう講演会をされるのはかなり珍しいことのように思う。そんな貴重な講演会にお邪魔でき、また設計の考え方をあらためて聞くことができ満足だった。しかもトム・ヘネガンさんによるゲストクリティークまで付いて、これもまた面白かった。

私はいつも講演会があると最後に必ず手を挙げて質問をするのだけれど、この日は時間が押して会場からの質問時間はなくなってしまった。

もっとも、安藤さんとは講演会でなくてもオープンハウスのたびに気さくに話はできるのだけれど、こういう時にしかできない質問がこの日はいくつも浮かんだ。また次の作品を見せてもらう楽しみとともに、そんな機会も取っておきたいと思う。