
ようやくこの告知ができることを心から嬉しく思います。JIA住宅部会の主催にて、11月8日に益子義弘氏のオンラインセミナーを行います。
益子先生のセミナーは、私の部会長任期中にどうしても実現したいと思っていた企画のひとつです。私が今期部会長をお引き受けしたのも、先生も過去に部会長を務められたということも大きかったように思います(私は第43代、益子先生は第10代)。固辞される先生を説得して約1年、、ようやく実現にこぎ着けました。
今回のセミナーのために、これまでのご自身の歩みを総俯瞰したお話をご準備くださっているようです。M&Nでの永田昌民氏との協働や師吉村順三氏のこと、これまでの住まいづくりに対する思考の変遷から近作ホテリアアルトまで、、。
私は進行役と後半の聞き役を務めますが、今から楽しみでなりません!一般参加が可能ですので、是非ご参加頂けたらと思います。
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【JIA住宅部会特別企画|益子義弘氏オンラインセミナー】
『時代-自分史-住まいづくり』
講師:益子義弘 氏(建築家・益子アトリエ主宰)
日時:2022年 11月8日(火)18:30~20:30(ZOOM 入室 18:15~)
会場:オンライン開催(ZOOM ウェビナー予定)
参加費:無料 (事前申込をお願いします)
対象:すべての方(JIA 会員/一般)
定員:500 名 (申込先着順)
■参加を希望される方は下記 google フォームよりお申し込みをお願いします。
https://forms.gle/N1NpS76aKiXwEhAZ7
申込締切:11月7日(月)まで
■セミナー詳細情報はこちらより
https://www.jia-kanto.org/jutaku/news/2426/

昨日は代官山で開催中の写真家・髙橋恭司さんの個展「Ghost」へと足を延ばした。恭司さんとは20年も前にフィンランドで出会った。
エクスナレッジが社運をかけて創刊するという雑誌「エクスナレッジホーム」が、その創刊特集号に選んだのはアルヴァ・アアルトだった。そして編集部がその目玉であるアアルトの建築を撮影する写真家に選んだのは、建築写真家ではけしてない髙橋恭司さんだった。
当時私はフィンランドに留学中で、たまたまその創刊号の現地コーディネーターを引き受けることになった。ほかにも一線のクリエイター陣で固められた創刊号のキャスティングは錚々たるものだった。
恭司さんは不思議な写真家だった。私は最初の夜の食事をご一緒させて頂いた。インディアンのような風貌の大男だった。その傍には不釣り合いに華奢な女性のカメラアシスタントがいた。
次の日から取材は始まった。取材班は二つに分かれ、私は別の取材班をガイドしていたのだけれど、これはもう一つの取材班で恭司さんのガイド役をしていた友人から聞いた話だ。
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マイレア邸が近づき、小高い丘にハンドルを切ろうとしたら、恭司さんはおもむろに「真っ直ぐ進んで欲しい」と言った。そっちはマイレア邸ではないのに、と思いながら言われた通りに車を走らせると、川のほとりに辿り着いた。恭司さんはおもむろにそこで写真を切り始めた。
同行した編集者は撮ってほしいのはその景色ではないのにと困惑していたそうだが、のちにマイレア邸に着いてその話を管理人に話すと「どうしてその川がわかったのか?」と言われたそうだ。その川のほとりは、アアルトが最初にマイレア邸の敷地として選んだ場所だったという。マイレ夫人の反対にあって翻意したものの、そこには何か念のようなものが残っていたのかもしれない。
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マイレア邸では、その川の写真を含めて、恭司さんが切った写真はわずか6枚ほど。海外ロケである。普通の写真家なら内外観含めて何十枚も切ったかもしれない。創刊号には、そんな川の写真もなんのキャプションもなく挿入されているので、ページをひらいた人には一体なんの写真だかわからなかっただろう。
恭司さんの個展にはまさかアアルトの写真はないだろうと思って行ったら、あった。マイレア邸のグリーンルームでの一枚だった。見た瞬間に、あっと声をあげてしまった。
作品集にはもう一枚フィンランドでの写真が収録されていた。苔むした岩の写真。これはアアルト夏の家の近くで撮られた一枚だ。ここでも切られたのはわずか数枚。岩の写真は雑誌にも収録されていた。相変わらず、アアルトの建築写真ではないのだけれど。
恭司さんはスピリチャルな写真家だ。目の前の被写体ではなく、その向こう側の、あるいは手前の霊的な何かを切り取る。それはある意味、広義の心霊写真とも言えるのかもしれない。今回の個展のタイトル「Ghost」もまた示唆深いタイトルだ。
今回限られた展示の中に、あの時の写真が2枚もあるとは思わなかった。20年ぶりに私が恭司さんのことを思い出し、会場に足を運ぶことを予期していたのかもしれない、というのは考えすぎだろうか。


写真は左側は髙橋恭司さんの作品集から。右側はエクスナレッジホームの誌面より。

徳島にアアルトコーヒーがオープンしたのが2006年。そこから現在に至るまでずっとアアルトコーヒー。朝はこれがないと始まらない。昨年徳島に行った目的のひとつもアアルトコーヒーに行くことだった。
アアルトが好きだからではなくて、完全に豆が好みだから。深煎りのアルヴァブレンド以外は注文しない。たまに他の店の豆も試すけど、すぐに戻ってくる。やっぱりこれだ。朝のルーティンを変えると一日のリズムも狂うような気もする。
そんなアアルトコーヒーオーナーの庄野さんが新しい本を上梓し、代官山蔦屋でちょっとしたイベントをやっているとのこと。豆も買えるそうだったので行ったら、豆は売り切れたそうだ。本を買って読む。2時間で読み終えた。心が満たされた。淹れたてのアルヴァブレンドのようだ。特にタイトルにもなっている「融合しないブレンド」という文章には深く共感した。
アアルトコーヒーはとうとう新規オーダーの受付をやめてしまった。これまでのお客さんを大事にしたいという考えのようだ。アアルトコーヒー歴16年の私としては、少し申し訳なく、そしてとても嬉しい。

昨日は今年度部会長を務めるJIA住宅部会の企画として、多摩産材見学会を実施しました。部会員を中心に16名ほどのメンバーがご参加下さいました。
日頃木造住宅を扱う設計者でありながらも、その産地である山にはなかなか足を運ぶ機会がありません。「多摩産材」と名が付くように、東京都内にもちゃんと山があり、あきる野市周辺の山から採れる良質な木材があるということはあまり知られていません。この日は中島木材店さんのご協力のもと、そんな貴重な見学や体験をさせて頂きました。

この日は秋から一転して冬のような寒さと雨に祟られてしまいましたが、バスをチャーターしたおかげもあって、行程はとてもスムーズでした。
都内唯一の原木市場である多摩木材センターには、広い敷地内にうずたかく切られたばかりの丸太が積まれていました。製材された柱材などを見ることはあっても、製材前の丸太を見る機会はそう多くありません。切り口に顔を近づけると、とても良いヒノキの香りがしました。



その後も、中島木材店さんの製材行程を一通り見学させて頂きました。
中島木材店の社員さんがそれぞれをとても細かくご説明下さり、知られざる製材行程をよりリアルに理解することが出来ました。
中でも乾燥工程がクオリティを大きく左右するとのこと。スチームを当てて乾燥させるなど、そのノウハウもとても興味深く、部会員からも矢継ぎ早に質問が飛び交いました。



昼食の後は、檜原森のおもちゃ美術館、瀬音の湯といった、多摩産材を使った公共施設のいくつかも見学させて頂きました。
当たり前のことですが、我々が「杉」「桧」と樹種名で指定している木にも、そこには産地があり、林業家や製材所など多くの人たちの手を経て我々の現場に届けられています。
頭ではわかっているこうしたことも、現地に足を運ぶことで、よりリアルに実感に落とすことができるというのは、今回の大きな収穫だったように思います。
中島木材店の皆さま、また今回主査を務めて下さいました高橋隆博さん、ご手配を誠にありがとうございました。スタッフも含めてとても勉強になりました!
