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いろいろ仕事が一区切り付いたので、以前から懸案だった事務所の収納問題について向き合うことにしました。

事務所には年々増え続ける模型、そして雑誌や出版社などから頂く献本類が増え続け、泣く泣く処分したり、どこにも収納できずデスクの上に万年平積みになっていました。

住まいも同じだと思いますが、物理的に面積を増やすことが出来なければ、あとは空間の気積(立体)を使うことを考えなくてはなりません。狭い我が事務所で注目したのは、ミーティングデスク下の空間です。


これが事務所のミーティングデスクです。

我ながら画期的な作りになっているのですが、860x1700サイズのテーブルが3x6版の18mmのシナ積層合板2枚のみで、固定金具を一本も使わずにできています。いわゆる、現場で大工さんが作業台として使う”ウマ”と同じ原理です。



分解するとこんな感じ。原理的には、これなら畳んでどこにでも簡単に持ち運ぶことが出来ます。(ま、持ち運びませんけどね)

この天板だけを残して、下の脚部に収納を付加できるようにしたらどうかと考えました。収納として使うのは我々が腰かける側だけで、ゲスト側はありません。図面化するとこんな感じ。


こんな時、自分がこういう仕事をしていて良かったと思う瞬間です。”こんな風にしたい”を自ら簡単に図面化することが出来ます。製作はいつも家具工事でお世話になっている藤沢木工所さんにお願いすることにしました。

さて約1ヶ月後、藤沢さんがやってきました。



特徴的なのは魚の骨みたいなトゲが四方に出ていることです。
これをひっくり返して、その上に既存の天板を乗せれば…



はいできあがり!とても簡単な作りです。

見た目は元のテーブルとあまり変わりません。先ほどのトゲの部分は、このように持ち出された天板を支える役割を果たしています。


ゲスト側のパネルには下部にスリットを設けています。靴のつま先が入るようにです。そうしないと、つま先でいつも蹴飛ばされる部分が真っ黒になってしまいます。

こういうちょっとしたことが、家具のデザインでは重要になってくるのですね。


反対側は収納になっています。わずかこれだけのスペースでも劇的な収納力を得ることが出来ます。重要なのは何を収納するかをはっきりさせることで、ここでは下部に過去の掲載誌やそのスクラップなどを、そして上部には模型が載せられるようにしました。

模型棚は、事務所の小さな模型の平均サイズを測り、有効高さを100mm程度取ればすっぽり入ることから、220mm程度の隙間に模型棚を2段に分けてぴったり収納しました。ちなみに、模型を下にすると蹴飛ばして壊してしまうかもしれないので上にしています。

ということで模型置き場に困っていたのに、一転してまだまだ置けるスペースが出現しました。これは嬉しい!


脇には無印良品のキャスター収納を置きました。こういうところは既製品に頼るのが一番です。中には過去の製本図面を入れています。

この製本図面も年々増えて困っていました。ここに置けばスタッフも取りやすいし、打合せ中に過去の図面をちょっと引き出すにもとても便利です。


それにこんな感じで動くので、打合せの際にサンプルを載せたり、どかしたりすることもできます。また最近たまにあるのですが、事務所に6人くらいの大人数がいらした際も、以前のテーブルよりは多くの人が楽に座ることが出来ます。


さてこの日はオマケで、藤沢さんにはもう一つお仕事をして頂きました。以下は私の自宅の下足入れなのですが、


自分で設計しておきながら、これは失敗したと思ったのは、下足入れの扉下に十分なスペースを設けなかったこと。今では絶対にやらないことですが、住み始めてすぐ気付きました。靴が出ていると扉が開かないのです。

それでも、まぁいいかとばかり10年を過ごしてきましたが、簡単に改善できることなのでこれを機に改良をすることにしました。


運ばれてきたもう一つの魚の骨。

これは台輪と呼ばれるものですが、下足入れの下に付いている低い台輪を高いものに付け替えて頂きました。幸い下足入れ自体が固定されておらず、床に置かれているだけでしたので作業は簡単に済みました。


あぁスッキリ!

いつも思うことですが、家は建てておしまいではなく、生活の変化や、小さな「まぁいいか」の蓄積をどこかで精算するように改善すると、本当にストレスがなくなるのと同時に、体のアンチエイジングと同じように、また家が若返ったような気がして嬉しくなるものです。

事務所を併設している我が家も丸10年を経て11年目に入りました。建て主の模範となるよう、手入れを怠らず暮らしてゆきたいと思っています。

作業して下さいました藤沢木工所の皆さま、ありがとうございました!

17. 06 / 01

講評会

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> 大学
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非常勤で教える日大理工学部2年生の第一課題「サードプレイス」の全体講評会がありました。私は非常勤は楽しいのですが、この全体講評会がなければいいのに、といつも思います。

講師というものは、教え子が発表で他の先生から集中砲火を浴びたり、箸にも棒にも引っかからなかったりすると、ずっしりと責任を感じるものです。自分の教え方がまずかったんだろうなと暗澹たる気持ちになるのです。

逆に評価されたらもちろん嬉しいのですが、そうしたら不思議なもので、自分の指導が良かったからだとは思わず、学生ががんばったからだと思うのです(他の方はどうか知りませんが)。

この日は、我がクラスから選出した2名とも優秀作として作品集に収録となり、うち1人は最優秀賞こそ逃したものの、スーパージュリー(外部講師を招いての総合講評会)への選出となりました。久しぶりの快挙。

おめでとう!義務が果たせて良かった。
でもやっぱり、講評会は苦手です…。

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以前このブログで、元スタッフの山口くんの送迎会を兼ねて、福島のホテル「ホテリ・アアルト」にスタッフと泊まりに行った話を書きました。

ブログ|ホテリ・アアルト (17.03/04)

その際に空間について感じたことなどを、「建築知識ビルダーズ」(エクスナレッジ)という雑誌に寄稿させて頂きました。私も渾身の思いで書きました。そして思いが余って、結果的にかなりのボリュームになってしまいました汗。書店でお見かけの際は是非お手に取ってご覧下さい。

>>建築知識ビルダーズ NO.29


ホテリ・アアルトは建築家の益子義弘先生の設計によるホテルです(正確には益子先生を筆頭に、河合氏、大竹氏ら設計チームによる設計)。

この号には益子先生のご協力もあり、既存図面や改修後の詳細図面まで余すところなく載せていますので、もしホテルで実際の空間を見てみたいとご滞在の折りには、こちらをお持ちになって隅々までディテール探索をなさると良いと思います。

また計画時の益子先生による書き込み入り図面なども収録して頂きました。私自身、当時の筆の痕跡からどう実作が立ち上がっていったのか読み解く大きなヒントとなりました。設計者の思考を知る手がかりとしても、大変貴重な資料(アーカイブ)になっていると思います。



当初は巻頭数ページ~10ページ程度の企画と聞いていたのですが、終わってみたら実に31ページにもなってしまいました。

木藤編集長と益子アトリエにも足を運び、膨大な図面提供や写真家・雨宮秀也氏による撮影、私の細かいディテール解説など丁寧に拾ってくださった結果として、どんどんページ数が膨らんでゆきました。それをその場で即決してゆく木藤さんの力量と肝の据わり方も大したものです。


実はこの企画、いかにも私がホテリ・アアルトに行った後に寄稿を頼まれたように思われると思うのですが、実は裏話がありまして、私がスタッフとホテリ・アアルトに行く直前、いきなり木藤さんから電話があり、ホテリ・アアルトについて書いて欲しいと頼まれました。

私はホテリ・アアルトに行くことを誰にも言っていなかったので、どうして木藤さんがそれを知っているのだろう?と一瞬混乱したのですが、どうも木藤さんはそれを知らずにたまたま私に依頼したようなのです。それを聞いた木藤さんは電話の向こうでガッツポーズをしたらしいですが笑。そんな嗅覚の持ち主なのです、木藤さんという方は。

巻頭にはこの企画の趣旨として、益子先生の建築を次世代に受け継がれてゆくものとし、それを若手である私にあえて案内役を依頼した旨などを書いて下さいました。それを読み、光栄なことと受け止めつつも、その思いに応えられただろうかと自問しています。

本文を私が書くことについて、益子先生にも事前に快諾を頂きました。私などが筋違いのことを書いて、誤解を招いたらどうしよう?という不安もよぎりましたが、「関本さんが感じたことを書けば良いんだよ」とおっしゃって頂き、少し肩の荷が下りた気がします。

それでも私の思いが強すぎて、ずいぶん肩に力の入った文章になってしまったと反省しています。ま、そんなことも含めて読んで頂けたら嬉しいです。


最後に、以下はホテルにも掛けられている益子先生の「とびら」をモチーフにした絵と、それについての文章です。

これを掲載することについて先生は当初抵抗があったようですが、木藤さんの説得に最後は折れてくださいました。とっても素敵な文章で、これを読んだらみんなこのホテルを設計した益子先生のことが大好きになるのではないかと思います。

ここではぼかしておきますので、どうか本文は実際にお手に取ってご覧下さい。

17. 05 / 28

ベガハウスへ

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> 仕事
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鹿児島のベガハウスという工務店にお呼び頂き、2泊3日で鹿児島に行って参りました。ベガハウスはこちらの方には馴染みはないと思いますが、設計事務所も顔負けの設計力と品質の高い施工力で、業界では全国にその名を轟かせている工務店です。

ベガハウス www.vegahouse.biz

今回どうしてベガハウスさんに呼んで頂いたかというと、昨年ビックサイトのジャパンホームショーで板金のセミナーを行った際、その場に居合わせた関係者を通じてベガの八幡社長の耳に入り、ベガでも板金の話をして欲しいということになったのでした。


噂には聞いていましたが、見ての通り素晴らしい社屋です。

外壁には米杉(レッドシダー)が張られています。この自然素材が風雨に晒されて経年変化している姿は、ベガのあり方を体現しているようでもありますね。




内部は学校っぽいと感じた方もいらっしゃると思いますが、その通り学校のイメージで作ったそうです。学校風の大きな黒板も。ちなみに私はアールトスタジオ(アールトの設計事務所)に似ていると思ったのですが、イメージの参考にされたとのこと。

羨ましいと思ったのは、別室に打合せ室も完備しており、子連れの方でも子供がテレビを見たり遊べるような場所や、授乳室まであるということ。裏手には工房もあり、気軽に試作を作ったりモックアップを作ることもできるそうです。


そして極めつけはここ、「ベガ荘」。社屋に隣接して建てられています。

もとは夏休みに受け入れる学生インターンの宿泊所として作ったそうですが、これとても学生が泊まるような場所ではないというか、ちょっとしたリゾートホテルのようですよね。初日はここに宿泊させて頂きました。



そしてこれがベガ荘の売りの一つ、”五右衛門風呂”。外から薪を焚きます。そして私が入浴するタイミングで、外には無数のキャンドルを灯してくださいました。窓からはビールの差し入れが。こういうおもてなし力がベガハウスの真骨頂なのですね。

ただこれは、まだまだ序の口です。


到着した日のお昼はベガランチ(ベガラン)をご馳走になりました。ベガランはスタッフが持ち回りで自炊するランチのことで、週に二回みんなで食事を共にするようです。先ほどの製図室の上にそんな場所が用意されています。


夜は知人のシェフを呼び、こんなご馳走までご用意下さいました。こちらをスタッフの皆さんと一緒に頂きながら歓待を受けました。本当に美味しかったです。ベガ全力のおもてなしはまだ続きます。



朝は8時にベガ荘に朝食が運ばれてきました。言うまでもなく、ここはホテルではありません。朝食もスタッフさんが社屋で作って下さり、運んで来て下さったのでした。

もう一度確認のために書きますが、ベガハウスは工務店です。この写真に写っている人たちも営業だったり、テクニカルスタッフの方であったりで、客室担当者ではありません(当たり前です)。この行き届いた教育や、意識の高さにただただ圧倒されました。もちろん、朝食も最高に美味しかったです。


朝食の前に散歩に出ると、7時過ぎには皆さん既に出社されて、社屋の前を掃き清めています。聞くと6:30頃には出社されているようです(早い人は5:30だとか!)。昨晩も遅かったというのに関係ないのですね。設計事務所ならありえない光景です。

おっと、私は遊びに行ったわけではありません。つい本来の目的を忘れそうになってしまいますが、ベガさんの社員教育のために呼ばれたからには、ちゃんとその重責を果たさなくてはなりません。


ベガさんの施工された住宅もいくつか見せて頂きました。ダメ出しをして欲しいとおっしゃるのですが、ごめんなさい相当レベル高いです。

それでも責任がありますので、失礼を承知で細かいところを指摘させて頂きましたが、それにしても…普通の設計事務所の設計レベルよりははるかに高いことは確かだと思います。

実際社内にプランナーと呼ばれる、通常なら独立して建築家と名乗ってもおかしくない方達がおり、またその下にテクニカルスタッフと呼ばれる設計事務所のスタッフと現場監督が一緒になったような役回りの方がいて、チームでその設計に当たられているのですから無理もありません。


2日目は私のスライドレクチャーののち、板金職人も交えて、ベガさんの抱える板金納まりの諸問題を解決するディスカッションを行いました。

私の意見や提案に頷く場面もあれば、まわりのスタッフからかぶせるようにいろんな意見や提案も出される場面もありました。私はこういう会が大好きです。若いスタッフたちの熱気に惚れ惚れします。

その後にも板金の現場を見学させて頂きました。そこにはリオタデザインとはまた違う流儀がありました。この若いスタッフがざっと並んでみんなが意見している風景もとっても良かったです。

下の写真は、年始に一字でその年の目標を各自書くのだそうです。こちらもシンプルでとても良いですね。


2日におよぶベガスタッフの皆さんとの濃密な時間が終わりました。今回はベガスタッフの研修目的で呼ばれたわけですが、これは私自身の研修旅行に他ならないものとなりました。

今回の滞在で、とにかく印象に残ったのは”チームで作り上げてゆく力”みたいなことです。我々アトリエ事務所は個人の感覚で問題をブレイクし、ある意味それが生命線のようになっているのですが、若いテクニカルスタッフたちがフラットに議論しながらディテールのひとつひとつを決めてゆく姿は清々しく、また羨ましくも思いました。

そして、ともすると仲良し集団になりがちなその組織のあり方に、ちょっと外側から辛口のコメントを差し挟んでゆく八幡社長のバランス感覚が、やはりベガハウスを未来に向けて推進させてるのだということもわかりました。


これからは工務店の時代です。それも施工だけでなく、高い設計力を持ったクオリティの高い工務店です。そうでない工務店と設計事務所は淘汰してゆくかもしれません。もちろんリオタデザインは負けませんよ!

今回は本当に良い経験をさせて頂きました。お呼び下さり最高のおもてなしを下さいました八幡社長と、そのご縁を取り持って下さいましたmonowaの中嶋さんに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

そしてベガの皆さん、お忙しい中お付き合い下さいましてありがとうございました。またお会いした折には濃いディテールトークで盛りあがりましょう!

大学前期の第一課題である「サードプレイス」の提出がありました。中には心配していた学生もいましたが、最後はなんとか形にして提出したようでほっと胸をなで下ろしました。

即日で採点をして、A~C(たまにD)の採点を付けてゆきますが、Aよりも評価の高い学生にはSを付けます。採点で言えば90点に相当する評価で、学生なら一度は取ってみたいと思うあこがれの評価です。だいたい受け持ちのクラス(20人くらい)でSは2人くらいでしょうか。つまりSは10人に1人くらいということになります。

今日Aを付けた学生から、こんな素朴な質問をもらいました。
「先生、Sを取るにはどうしたら良いですか?」

どうしたら…難しい質問です。

思うに、Sを取る学生の案には特徴があるように思うのです。それはイメージがクリアでブレがないということ。そして何より”リアル”だということです。

イメージがクリアで、リアルであるということは学生課題に限らず建築ではとても大切なことで、モヤモヤした考えでやっていると、最後までモヤモヤした案になります。こういう案は人に伝わりません。

小説に例えるとこういうことになります。

小説家の多くは書く前にプロットを組み立てます。テーマ、状況、登場人物、そしてなんとなくこういう話にしようというあらすじのようなものを考えます。建築で言えば、どんな建物にするか、どんな利用者がどんな風にそこで振る舞うのかを考えるようなことです。

小説家はそこで筆を走らせながら、登場人物の仕草やちょっとした言い回し、窓から見える景色、雨の音に至るまで事細かにディテールを掘り下げてゆきます。そこを丁寧に描くからこそリアリティが生まれるのです。リアリティが生まれると、人は登場人物に共感したり、思い入れを持つようになります。架空の人物なのに、あたかも実在の人物であるかのように感じるのです。

そんな人物に不幸があれば、我々は本を読みながら涙を流します。

建築も全く同じ事なのです。「ここで本を読むんです」じゃなくて「木漏れ日の落ちる縁側に寝転がって、本を読みながらうたた寝をするんです」と言った方が、人はそこにより深く感情移入をすることが出来ます。

そうしたらそこに表現しなくてはいけないのは、「木漏れ日を落とす落葉樹」であり「風が抜ける縁側」であり「無防備でいられる守られ感のある空間」ということになります。もう設計で何をすれば良いか、プレゼンでなにを表現すれば良いか答えは明白です。なんなら、その本は太宰治なのかスラムダンクなのかまでもイメージできれば完璧でしょう。

建築はディテールが大切なのです。
まだそこにはないものを、あたかもそこにあるかのように、そこにあったらさぞ素敵だろうなと相手に思わせるように伝えるのが建築設計なのです。

今の学生に圧倒的に足りないのは想像力です。妄想力と言っても良いかもしれない。これは一朝一夕には身につきません。とりあえず、本を読むところからはじめて下さい。