元スタッフの矢嶋くんによるマンションリノベーションを見せて頂いた。
ひとつ前の戸建てリノベーションでは、独立間もなかったこともあってリオタデザイン色を強く感じたけれど、熊澤さんとの仕事も彼にとって良いアク抜きになったようだ。素材の丁寧な使い方や外部との繋げ方に彼らしさを感じた。それがとても良かった。
どんなに上手く納まっていても、オリジナリティのない空間には価値がない。その人でなくてはできない空間をやらなかったら独立した意味がないと思う。彼のこれからが楽しみだ。
矢嶋宏紀|ヒロヤジマ・デザイン
https://hiroyajima-design.com/
先だって某所でセミナーを行ったときのこと、とある工務店さんから納まりについての質問を受けた。うちでは一般の工務店さんがやらないような素材の納め方をすることも多いので興味を持って下さったようだ。
しかしうちの納まりは手が込んでいるようでいて、実はほとんど図面指示はしておらず、現場で職人さんと筆談のようにスケッチを交わしたり、過去の写真を見せながらイメージ共有をしていることが多い。だからどうやって納めたのかと訊ねられても、その施工の詳細については正確に答えられないことがほとんどだ。
だからより良いものをつくるためには、現場で職人さんのハートに火を付けるような言葉をかけながら作るんだという話をすると、「うちではそういうことはできないんです」という答えが返ってきた。効率重視の設計施工型ビルダーでは、理不尽に手間がかかるような納め方は職人さんに露骨に嫌がられてしまうのだそうだ。
確かに素地として、決まりきった素材や納まりで手早く作ることを良しとしてきた職人さんにとって、思いつきでいきなり時間のかかる面倒くさいことを言われたら拒みたくなるのも人情だろうと思う。そんな場面に触れると、我々が日頃向き合っている建築のつくりかたは、いかに純粋にもの作りと向き合った取り組みであるかがよく分かる。
そんな風に向き合ってくれる工務店や職人は時代と共に減る一方だけれど、我々とチームを組んで下さる工務店さんはどこもそんな気概に溢れ、それを思うといかに我々は恵まれた環境で仕事をしていることかと感じる。
◇
我々のような設計事務所は施工部隊を持たない。純粋に設計と現場監理だけを行い、施工は工務店に請け負ってもらうことになる。
一般的に言われる設計専業事務所のメリットは、設計と施工を分離させることで建築主の立場や利益をまもり、第三者の視点で適切な現場監理が行えることなどが挙げられる。しかし、どうもそれだけじゃなさそうだ。
我々が施工を行わない専業の設計者であるということは、現場においても一定のアドバンテージを持つことになる。それは立場だけではなく、その言葉が現場でもとても強い影響力を持つのだ。
設計者の意志ある言葉やこだわりは、時に「わがまま」とも受け止められることもあるかもしれないけれど、それが心に届けば現場の職人を発奮させる起爆剤にもなる。実際現場に行くと、私がそうしてくれと頼んだわけではないのに、先回りしてより繊細な納まりにしてくれていることも多々ある。
そんな部分に気づいて職人さんに声をかけると「関本さんの現場なので」という言葉が返ってくる。私がどんな反応を示すか思い浮かべながら作っているとも。自分ではそんなに難しいことを言っているつもりはないのだけれど、どうも現場の受け止め方は違うようだ。
我々の現場の神施工の職人さんたちは、大変そうだけどいつも楽しそうだ。自分の持てる技術を惜しげもなく使い、それを超える納まりを模索し、乗り越えてまたひとつスキルアップする。これこそが仕事の醍醐味であり、ものづくりの本懐ではないかと思う。
これはもしかしたら私が設計専業でずっとやってきていることとも無縁ではないのかもしれない。施工部隊を持たないことが施工に対する自由度を生み、施工者にとっても自社案件にはない飛躍の機会と捉えてくれるとしたら、ものづくりにとって、また設計者施工者双方にとって、この上ない幸せのかたちではないだろうか。
それはもちろん設計施工型のつくりかたを否定するものではない。コスト高や設計施工型ビルダーの勢いに押されている我々設計事務所にとって、これは大きな希望になる生き残りの道ではないかと思えるのだ。
留学中から使っていたアラビアのTEEMAの皿を、2枚あるうちの1枚を割ってしまった。TEEMAの皿は今も買えるけれど、現行品はIittalaのラベルになっていて個人的には興醒め。やっぱり陶器は(ブランド統合前の)アラビアのものに限る。
スタンプだけでなく、割ってしまったTEEMAは直径19.5cmのもので、このサイズも現行品にはないものだ。どうでも良いことかもしれないけれど、20年以上毎朝同じ皿を使っていると、少しだけサイズが違うというのはどうしても違和感になってしまう。朝のルーティンは重要なのだ。
そこから当時のTEEMA皿を探す旅が始まった。この19.5cmのアラビアのTEEMA皿というのはレアもののようでなかなか見つからない。このなかなかないというのも宝探しのようで楽しい。メルカリなどで見つけてはコツコツ買い足し、今では4枚にまで増えた。
しかし値段こそ言わないが、今では結構な値で取引されていることにびっくりする。当時はアラビア工場で数百円で売っていた皿だ。古いもの持ち続けていると、価値は上がる一方だというのをつくづく実感する。
いよいよ今週末になりますが、弊社設計による「FPR(K邸)」が、建もの探訪にてオンエアされます。
渡辺篤史の建もの探訪「FPR」
3月30日(土)4:25〜 テレビ朝日(関東圏)
https://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/
早朝の時間帯ですので、寝坊に備えてタイマー録画の準備をお願いします!関東圏以外の方のオンエア日については、上記のサイトをご覧ください。
なお見逃した方は、4月7日(日)8:30より、BS朝日でも再放送があります。
ご興味ある方はぜひ!
金曜日は彦根アンドレアさん企画による、アアルト財団のJonas Malmbergさんによるパイミオサナトリウムのレクチャーに参加させて頂きました。
数あるアアルトの作品のうち、パイミオはマイレア邸と並んで私が最も好きな作品のひとつ。若きアールトのエッセンスが凝縮され、アアルトらしさやオリジナリティが高いと感じるからです。
パイミオサナトリウムが完成して約90年、結核療養所として建てられ、結核が根絶したのちも用途を変えながら今も建物は存続しています。アルテックの初期ラインナップの多くはパイミオのために作られ、アルテック創業の原動力にもなりました。2026年に向けて、ユネスコ世界遺産登録への動きもあるそうです。
一方で高額な維持費、不便な立地、建物の老朽化に何度も身売りの危機がありました。オリジナルのデザインを守りながら、時代の変化に追従すべく一貫して改修計画を担ってきたアアルト財団きっての研究者が「果たしてオリジナルとは何か?」と問いかける言葉に深く考えさせられました。
また単なるうわべの建物解説ではなく、そもそも結核とは何か?からはじまるヨーナスさんの話は、噂通り世界一マニアックでめちゃくちゃ面白かったです。見たことない図面や写真が次々出てきて、そのレア度がわかる身としては、まさに鳥肌ものでした。
アンドレアさんの自邸もご案内頂き、またヨーナスさんとはみんな帰った後もアアルト談義が止まらず、二人でアアルトのディテール写真を見ながら世界一マニアックなトークができたのは本当に幸せな時間でした!(終電でした)
アンドレアさん、素晴らしい企画をありがとうございました。またごちそうさまでした!
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