16. 04 / 02
ヘルシンキへ
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sekimoto
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とうとうフィンランドに帰ってきました。我々にとっては実に11年ぶりの”里帰り”になります。
今の私がいるのは、すべてフィンランドのおかげです。建築に、人生に必要なすべての事を私はフィンランドから学びました。ヘルシンキでのわずか3日間は、かつての思い出のトレースと、現地に住む旧友達との時間であっという間に費やされていきます。なんという幸せな時間。
あっという間に空白は埋められ、これまでも、これからもずっとヘルシンキでの生活が続いてゆくかのような錯覚を覚えます。こここそが我が家。ヘルシンキは私にとって永遠に心の故郷であり続けることでしょう。
Kiitos kaikille!
今回ノルウェー行きの目的のひとつは、ノルウェーが生んだ巨匠建築家スヴェレ・フェーン(Sverre Fehn)の建築を見ることでした。オスロから日帰り圏内のハーマルには、フェーンの最高傑作と言われるヘドマルク博物館があります。
少ない滞在期間の1日をこの建築を見るために確保し、直前にサイトで詳細を調べてみると、どうやら3月は閉館しているらしい?ということがわかりました。このために来たのに・・と途方に暮れましたが、諦めきれずに駅のインフォメーションで聞いてみると「今も開いている」との答えが。
これは朗報!と予定通り、今日は片道1時間半の鉄道に揺られてハーマルまで足を延ばすことにしました。
ところがこのヘドマルク博物館、とんでもない場所にあるんですね。駅についても案内もなにもありません。バスの運転手さんに聞きまくって、ようやく辿り着きました。(めちゃくちゃ寒かったです!)
ところが・・。現地に着いてみると閑散としているんですね。たまたま通りかかった人に聞くと、今の時期はクローズだとの答えが。
え!?やっぱりそうなんだ。はるばるここまで来たのに・・。それでも諦めきれずに、建物の外をぐるぐる回っていると中に人の気配が。
どうやら博物館の学芸員はオフシーズンも仕事をしているようです。この学芸員の方に声をかけ、事情を話してお願いすると「しょうがないわね」という感じで、中に入れて頂くことができました。ほぼ貸し切り状態で、しかもつきっきりでガイドまでしてくれるという幸運!
これが日本ならあり得ないでしょうね。クローズの日にスタッフの独断で外国人を入れてしまうのですから。北欧の人はこういう融通の利かせ方が素晴らしいといつも思います。
余談ですが、昨日市内の美術館の受付でフリーチケットをなくしてしまい、ポケットを探って焦っていると、入場料も取らずに入れてくれたということもありました。北欧のこういう(良い意味で)ゆるいところが、私は大好きです。
ヘドマルク博物館は、二つの建築によって成り立っています。ひとつは800年前のカテドラルの遺構を、ガラスですっぽりと包み込んだシェルター(上の写真)。こちらの設計はフェーンではありません。
そしてもう一つが、司教の要塞跡を復元し、なおかつそこに現代建築を挿入して博物館として蘇らせたカテドラル博物館。こちらがフェーンの設計によるものです(トップの写真も)。
遺構と現代建築が見事に調和した佇まいに鳥肌が立ちました。単に遺跡を残すということではなく、それを手がかりにしてまったく新しい建築を作りだしているという点において、見たことのない空間でした。
フェーンは同じ北欧でも、アールトよりはイタリアのカルロ・スカルパのような空間に近いと感じました。それは今回の遺構がそのように見せているのか、本当はそうではないのか、他の建築も見て判断しないといけませんが、今回はフェーンの作る建築に触れる大変貴重な機会となりました。
これでオスロに思い残すことはなさそうです。
ちなみにこのように書くと、家族はどうしているのかと不思議に思われるかもしれません。
こうした建築を巡る旅は、我が家では普通のことなので文句を言われることはありません。息子もずっとカメラで写真を撮っていました。奥さんも建築を見るのが好きのようです。家族には感謝しないといけません。
16. 03 / 30
オスロへ
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sekimoto
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ノルウェーのオスロにいます。
この一週間をつくるために、この3ヶ月間スケジュール調整に明け暮れました。家族を連れて11年ぶりの北欧、そしてノルウェーは初めての国です。
オスロはヘルシンキとも、ストックホルムとも違う街です。印象をひとことで言うと「静かな街」。街を歩いていても、お店に入っても、オスロ中央駅であっても、人はいるのにざわざわ感がない。寂しさや廃れ感とは全く違う、活気のある静けさ。大人の街という気がします。
一般に「北欧」と一括りにされますが、アジアの中でも日本と韓国と中国が違うように、北欧の国々はそれぞれ異なる文化や国民性を持っています。それでもやっぱり、私は北欧の国に共通して理屈を越えた共感と居心地の良さを感じるのです。
「ああ私の国がここにある」という感覚。この深い根はどこにあるのだろう。
昨日、さいたま市にて竣工しましたVALO(G邸)のオープンハウスがありました。今回はクローズドでの開催とさせて頂きました。お越し下さいました皆さま、誠にありがとうございました。
この住宅の計画は、北欧アンティークのコレクターでもあるクライアントとの出会いから始まりました。持込の家具リストに目を通した時には興奮し、おこがましいですがこれは私がやるべき、あるいは私にしかできない仕事だと感じました。
クライアントのGさんはとても温厚な方で、我々のこれまでの仕事の中で、私の自邸(OPENFLAT)が一番好きだとおっしゃって下さいました。求められていた条件も私の自邸に近く、またクライアントが私と非常に近い感覚をお持ちだったこともあり、意識的にOPENFLATと同様のディテールを採用した部分もいくつかありました。
OPENFLAT (2007)
https://www.riotadesign.com/works/07_openflat/
当時は独立してまだ5年程度でしたが、設計ではその時点での蓄積をすべて吐き出したつもりでした。当時の自分としては金字塔を作ったようなつもりでいましたが、今思うとまだまだ底が浅かったと思います。
あれから約10年。今回はOPENFLATの内容を更に上書きし、あらたな「ベストアルバム」を作るような意気込みで臨みました。
OPENFLATと決定的に異なるのは、今回の構造は木造だということです。私の自邸では、スパンの制約などもありRC造となっています。
ところが近年、構造家の山田憲明さんとの協働が続いており、国内トップクラスの木構造家である山田さんには、是非これを木造で実現してもらいたいとの期待もありました。
実際、ここではかなり高度な木造解析が行われています。リビングの屋根を架け渡した張弦梁と呼ばれる特殊架構もそうですが、2台分の駐車スペースを確保するための大スパンと耐力の確保や、道路側を全面ガラス張りにするために要した構造解析の話は、オープンハウスの時にも構造担当者から聞きましたが、「難しかった」と言われると完成した今ではなんだか嬉しくなってしまいます。
また今回は造園にもかなり力を注ぎました。その全容を写真で紹介できないのは残念ですが、いつもお願いする造園家、耕水の湊さんによる渾身の作となりました。
今回は庭が広く、木を数本植えただけでは全く形にならない庭でした。いつもはもう少し敷地も小さいので、庭らしい庭はほとんど造れないのですが、湊さんにはどうもこのくらいの規模の庭をやって頂くと、本当に底力を発揮してくれるようです。クライアントにも大変喜んで頂きました。
地味ですが、今回個人的にとても気に入っているディテールは、リビングのこの開き扉です。
開き戸といえば、普段は閉まっている状態で、開けたら閉めるというのが常となります。ところが、より開放的な設えにしたいと考えたとき、普段は開いているのが常態で、たまに閉めることができる扉というのは、引込み戸と同じ考え方で理想的とも言えます。
この扉は開いた状態で壁にぴったり納まるので、出っぱりもなく全く違和感もありません。かなりの施工精度と、設計上の計算が必要になるのでかなりドキドキしていましたが、ぴったり納まって胸をなで下ろしました。
他にもいろいろあるのですが、今日はこの辺で。また家具が揃った状態で竣工撮影もさせて頂く予定です。空間も今よりも確実に良くなっていることでしょう。
Gさん、最後まで深いご理解とご協力をありがとうございました。Gさんのおかげで、私にとっても思い入れの深い仕事を残すことができました。これからも末永いお付き合いをどうかよろしくお願いします。
また厳しい工期の中、誠実に最後まで最善の施工と対応をして下さいましたニートの阿部さん、感謝しています。本当にお疲れさまでした!
※VALOというのは、フィンランド語で光(light)という意味です
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