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友人であり、尊敬する建築家であった伊藤裕子さんがお亡くなりになった。あまりの衝撃に、その報を受けた瞬間時間が止まってしまった。

1年半ほど前に末期癌の宣告を受けていたとのことだった。信じられない。この1年半で私は伊藤さんに何度お会いしたことだろう。いつお会いしても明るく活発で、変化など微塵も感じられなかった。もちろんご病気のことは一切口にされなかったし、どこからどう見ても病人には見えなかった。

それを一切表情に出さなかったのかと思うとますます切なくなる。人に気を遣わせまいとする、実に伊藤さんらしい振る舞いだったように思う。

伊藤事務所のホームページを覗くと、新規の受付を休止しているとの告知があった。それでもブログの内容はいつもの明るい伊藤さんのままだった。
http://www.itoyuko-arch.com/

伊藤さんとはどこでどうやって知り合ったのかはっきり覚えていない。もしかしたら建築家の奥山裕生さんの紹介だったかもしれない。けれども初めてお会いした際に伊藤さんは私にこうおっしゃった。

「私は関本さんのことを、独立した当時から知っている。この人は絶対に伸びる!と思っていたらあれよあれよと活躍するようになった。私の目に狂いはなかった」

それがとても嬉しかった。そして、いつも私の「ファン」だと言って憚らなかった。私がセミナーをしたりオープンハウスをするといつも駆けつけて下さった。自分より10歳も年下の建築家に「ファン」だなんて言えるだろうか。私なら絶対に言えない。そのくらい心が広く、私心のないまっすぐな方だった。こんな方がいるんだと驚き、私は伊藤さんを人としてとても尊敬していた。

伊藤さんは人と人とを結びつける達人だった。私のオープンハウスに足を運んで下さる時は必ず人を同伴し、私とその方とを結びつけて下さった。今も親しくさせて頂いている建築家の松井郁夫さんもその一人だった。

またあるときはパートナーの構造家・山田憲明さんの中学時代の恩師と親友だということで、山田さんとこの恩師との再会を取り持って下さったということもあった。どうしたらそんなにつながるんだろうと思うくらい、不思議なご縁をいくつも持っている方だった。

正直私は伊藤さんとそこまで深い付き合いということではなく、これまでお会いした回数ももしかしたら10回くらいかもしれない。でもそういう方の方が、その人の印象は鮮烈で深く記憶に刷り込まれているような気がしてならない。

今年の建築知識7月号で、私のタニタガルバの取材記事の隣に掲載されていたのが、同じくタニタガルバを採用された伊藤裕子さん設計のモデルハウスだった。

掲載を知らせるフェイスブックの投稿では「隣の関本さんの爽やかな笑顔には負けちゃいますが!笑」とおどけたコメントを載せておられた。私もコメントを返した。つい先月のことだった。

奇しくもこれが伊藤さんとの最後の会話になってしまった。
これまでたくさんの愛情溢れるお言葉をありがとうございました。伊藤さんのことを考えていたら、ちょっと涙腺がまずいことになりそうです。心よりご冥福をお祈り致します。

16. 08 / 21

手をのばせば

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sekimoto

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> 思うこと
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本日のプレゼンはクライアントの反応に、こちらのテンションもつい上がってしまいました。ご予算が厳しく、建築家に頼みたいけど頼めない。だけど頼みたい!ということで最後にエイヤッとうちの事務所に飛び込んでいらした方です。

コンパクトなプランに納め、ローコストに抑える提案もしていますが、話をしていると盛り上がり、ケチケチしたこと言ってると良いものはできないな、、とつい思ってしまいます。

住宅に限らず何でもそうですが、世の中のものは「いま」と「ここ」で成立しています。「身の丈に合った」とは良く言ったものですが、本当にそれで良いのでしょうか。予算が限られているから、手が届けばそれで良いのでしょうか。

人は無理をしないで、手を伸ばせば届くものを求めたがりますが、少し無理をすれば手が届くものは世の中にはいっぱいあると思うのです。お金はかかるかもしれません。リスクもあります。でもそれを避けていては何も手に入れることは出来ません。

私は仕事を辞めてフィンランドに渡ったことで得がたい経験をしました。横着をしないで、立ち上がればいいのに。勇気を出してエイヤッと飛び込めばいいのに。尻込みした人を見るといつもそう思います。あともう少し…と指の先が触れるかどうかのものを手に入れるからこそ尊いのです。

このクライアントにとっての冒険はここからはじまります。けれども、不安そうに事務所を訪れた日の顔ではなく、希望に溢れた今日の表情を見る限り、この家はきっと大丈夫でしょう。

家づくりは、未来に希望を描けた人だけに微笑むのでしょうね。


16. 08 / 19

ハードル

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> 思うこと
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昨日は建築家の伊礼智さんが塾長を務める住宅デザイン学校の最終講評があり、私も遅ればせながら後半の発表と講評に参加させて頂きました。

今期の住宅デザイン学校では先月にゲスト講師として呼んで頂き、講義と講評をさせて頂いたのですが、最終回はさすがの豪華メンバーで、建築家の横内敏人さんと造園家の荻野寿也さんといった重鎮がゲスト講師としていらしていました。

お二人とも私にとっては雲の上のようなお仕事をなさる方ですが、このような布陣の末席に今回加えて頂けたことが何より嬉しかったことです。

私はどうも今では「建築知識で連載を持っている建築家」として認知されているようで、受講生の方々は連載を熱心に読んでおられたり、私のブログや経歴を見てピンポイントな質問をされる方、またサインまで求められるなど、私などはとてもそのようなステージに立っている人間ではないのにと、嬉しくも少し気後れする場面もありました。


さて今回、建築家の伊礼智さんにゲスト講師を頼まれたことは、私にとってはとても大きな意味を持つことでした。実力や実績では到底及ばない私を、伊礼さんは自分たち側のステージに引き上げて下さったのだと感じています。本当にありがたいことです。

このところ同じような経験を多くさせて頂いています。大学の講師や原稿、講演の依頼、イベントへの参加など、少し前なら考えられなかったような大きな機会を振られることも多くなってきました。

その裏側にはこれまでずっとお世話になってきた、あるいは尊敬し目標とさせて頂いてきた先生や建築家、編集者さんなどがいて、そのような経験のない私を引き上げて挑戦させよう、機会を作ってあげようという愛情をとても大きく感じるのです。

他の人から見て、私がどのように見えているのかはわかりませんが、私は今与えられている課題はどれも私の実力には見合わない、どれもとてつもなく高いハードルであると感じています。飛び越えるだけで精一杯で、とても周りを見る余裕などありません。

それでも客観的に見て、「この仕事は関本ならできるはず」と思って、期待を持って私に依頼して下さっているのだろうと思うと、その期待に応えたいと強く思わざるを得ません。

今年もまだまだ乗り越えなくてはいけないハードルが山のようにあります。まだまだ先は長そうで気が遠くなります。

16. 08 / 12

原稿が

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> 仕事
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ブログは頼まれていなくてもいくらでも書けるのに、頼まれた原稿はどうして一向に進まないのだろう。パソコンの前に朝から座っているのに何も書けない。しめきり怖い…。

そうだ、ブログでも書こう。

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> 大学
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<ワークショップ・5日目(最終日)> 8月11日(木)

5日間に及ぶワークショップもいよいよ最終日となりました。今日は各班のプレゼンテーションです。

お昼過ぎに大学に行くと、既にぐったりした学生達が笑。昨日は大学の計らいで泊まりが許されたようです。数時間の睡眠の者もいれば、徹夜の者もいたようです。皆さん本当にお疲れさまでした!

我々の成果もいよいよお披露目です!




タイトルは「ふとん空間の拡張」、、だそうです。
前の日にはタイトルが決まらず悩んでいましたが、そうですか、そうきましたか笑。

ちょっと現実逃避したいときなど、布団を頭からすっぽりかぶりますよね。このシェルターはそんな利用者の安心感を担保する”ふとん空間”を表現しているようです。

ちなみに私の中では”ダンゴムシ”です笑


このシェルター、とても画期的な構造によってできています。まず”帆”を張った竹を弓形に絞ってテンションをかけます。弓が何本も折り重なったような形状となります。


これを起こしてゆきます(パタパタ)。
すると…





このように、一瞬にしてシェルターができあがるという仕組みになっています。

非常時のために、倉庫にこのような弓なりの部材を(もしくは中央のテンション部を外してまっすぐに伸ばした状態で)倉庫に保管しておけばかさばりません。

キャンプのテントなどと違って、難しい組み立てなどせずに一瞬で形が出来上がるということ、そして軽いので女性や子供でも持ち運びが可能だということも売りの一つです。

材料も、今回は竹と伸縮生地を使いましたが、布などは家庭のシーツなどでも転用が可能です。製品化するとしたら今回は竹で作ったアーチ部材を他のバネ鋼などに置き換えたり、生地もマグネットで挟み込むなんていうのも簡単で良いかもしれません。もうちょっとパーツ構成を工夫すれば、十分に実用化できると思います。

ちなみに端部のディテールはこんな感じ。



またこれも学生のアイデアですが、この構造を半分開けた状態で保持したいときなどは、このように重りをつけて半開状態にすることも可能になっています。これなどは屋外でのピクニック、プールサイドなど日除け代わりに使いたいときなどにも重宝しそうです。


他の班の先生方も興味津々で中に潜り込みます。このシェルターは中に入ると、また別世界があるんですよね。他の先生方からも高い評価を頂きました。

改善点を挙げるとすれば、やはり構造(竹)と布とを密着させるディテールでしょうか。今回は短期間のワークショップであり、道具や技術にも限界があったので、両面テープで張り付けるという単純な解決にしていますが、この辺りはいくらでも改善の余地はありそうです。



ここからは他の班の作品の紹介です。

A班(指導:山中新太郎先生)
100円ショップのビニール傘を使って、天井から吊すシェルター。
傘の骨を活かした秀逸なディテールと、コストパフォーマンスが魅力(原価5000円)


C班(指導:鹿内健先生)
トイレットペーパーを重ねて作るシェルター。
避難物資のトイレットペーパーに着目。使い終わった頃に避難所生活も終了!?


D班(指導:遠藤克彦先生)
養生用のプラ段を使ったシェルター。
上下にも伸び縮みをします。単純なシステムで形が自由に変えられるのも魅力。


それぞれの解説まで書き始めると大変なので割愛させてもらいますが、どれも細部まで本当によく考えられていました。とにかく力作揃いで、素晴らしい作品ばかりです。

今回は各班ごとにチームで製作をするという方針だったため、皆力を合わせて今回のように一人では出来ないようなものを作り上げられたというのは、大きな収穫だったと思います。彼らも勉強になったと思いますが、私自身も今回は本当に興奮する体験をさせて頂きました。


最後に我がチームの紹介です。

右から、
堀元悠雅/石曽根斐子/古泉紫帆/山﨑理瑛/内田春菜/木村愼太郎/田村隼人/弘世蓉子/大野史織

リーダー田村くんを中心に、とても仲が良く活発なチームでした。私がいないところで、みんなで良く話し合いをしていましたね。最高のチームワークでした。

私もつい言い過ぎてしまう癖があるので、今回はかなり抑えた方でしたが、それでも後半は自分がやりたくてウズウズしていました。実際ずいぶん手も出してしまいました笑

作業中は私も声をかけづらく、本当はみんなともっと個人的に話をしてみたかったなぁと思います。最後の打ち上げで、ようやくみんなと打ち解け(遅い?)腹を割った話ができたのは良かったです。


また過去の私の教え子である大野さんが参加してくれたり、同じく過去のとある教え子の妹であることを最後の最後に打ち明けられたりと、嬉しいサプライズもありました(先に言ってよ!)。

このワークショップについてブログに書いていることを、学生には途中から打ち明けたのですが、みんな思いのほか喜んでくれたので、きっとこの回も読んでくれていることでしょう。

本当にお疲れさまでした。君たちとチームが組めて私は幸運だったと思います。終わったらもう少し解放感があるものかと思っていましたが、今はちょっと寂しいです。

皆さん、良い夏休みを!また大学で見かけたら声をかけて下さいね。


”チーム関本”

<バックナンバー>
日大デザインワークショップ~その3
日大デザインワークショップ~その2
日大デザインワークショップ~その1