17. 05 / 30
建築知識ビルダーズ#29|居心地の解き方
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sekimoto
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> メディア
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以前このブログで、元スタッフの山口くんの送迎会を兼ねて、福島のホテル「ホテリ・アアルト」にスタッフと泊まりに行った話を書きました。
ブログ|ホテリ・アアルト (17.03/04)
その際に空間について感じたことなどを、「建築知識ビルダーズ」(エクスナレッジ)という雑誌に寄稿させて頂きました。私も渾身の思いで書きました。そして思いが余って、結果的にかなりのボリュームになってしまいました汗。書店でお見かけの際は是非お手に取ってご覧下さい。
>>建築知識ビルダーズ NO.29
ホテリ・アアルトは建築家の益子義弘先生の設計によるホテルです(正確には益子先生を筆頭に、河合氏、大竹氏ら設計チームによる設計)。
この号には益子先生のご協力もあり、既存図面や改修後の詳細図面まで余すところなく載せていますので、もしホテルで実際の空間を見てみたいとご滞在の折りには、こちらをお持ちになって隅々までディテール探索をなさると良いと思います。
また計画時の益子先生による書き込み入り図面なども収録して頂きました。私自身、当時の筆の痕跡からどう実作が立ち上がっていったのか読み解く大きなヒントとなりました。設計者の思考を知る手がかりとしても、大変貴重な資料(アーカイブ)になっていると思います。
当初は巻頭数ページ~10ページ程度の企画と聞いていたのですが、終わってみたら実に31ページにもなってしまいました。
木藤編集長と益子アトリエにも足を運び、膨大な図面提供や写真家・雨宮秀也氏による撮影、私の細かいディテール解説など丁寧に拾ってくださった結果として、どんどんページ数が膨らんでゆきました。それをその場で即決してゆく木藤さんの力量と肝の据わり方も大したものです。
実はこの企画、いかにも私がホテリ・アアルトに行った後に寄稿を頼まれたように思われると思うのですが、実は裏話がありまして、私がスタッフとホテリ・アアルトに行く直前、いきなり木藤さんから電話があり、ホテリ・アアルトについて書いて欲しいと頼まれました。
私はホテリ・アアルトに行くことを誰にも言っていなかったので、どうして木藤さんがそれを知っているのだろう?と一瞬混乱したのですが、どうも木藤さんはそれを知らずにたまたま私に依頼したようなのです。それを聞いた木藤さんは電話の向こうでガッツポーズをしたらしいですが笑。そんな嗅覚の持ち主なのです、木藤さんという方は。
巻頭にはこの企画の趣旨として、益子先生の建築を次世代に受け継がれてゆくものとし、それを若手である私にあえて案内役を依頼した旨などを書いて下さいました。それを読み、光栄なことと受け止めつつも、その思いに応えられただろうかと自問しています。
本文を私が書くことについて、益子先生にも事前に快諾を頂きました。私などが筋違いのことを書いて、誤解を招いたらどうしよう?という不安もよぎりましたが、「関本さんが感じたことを書けば良いんだよ」とおっしゃって頂き、少し肩の荷が下りた気がします。
それでも私の思いが強すぎて、ずいぶん肩に力の入った文章になってしまったと反省しています。ま、そんなことも含めて読んで頂けたら嬉しいです。
◇
最後に、以下はホテルにも掛けられている益子先生の「とびら」をモチーフにした絵と、それについての文章です。
これを掲載することについて先生は当初抵抗があったようですが、木藤さんの説得に最後は折れてくださいました。とっても素敵な文章で、これを読んだらみんなこのホテルを設計した益子先生のことが大好きになるのではないかと思います。
ここではぼかしておきますので、どうか本文は実際にお手に取ってご覧下さい。
17. 05 / 28
ベガハウスへ
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sekimoto
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> 仕事
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鹿児島のベガハウスという工務店にお呼び頂き、2泊3日で鹿児島に行って参りました。ベガハウスはこちらの方には馴染みはないと思いますが、設計事務所も顔負けの設計力と品質の高い施工力で、業界では全国にその名を轟かせている工務店です。
ベガハウス www.vegahouse.biz
今回どうしてベガハウスさんに呼んで頂いたかというと、昨年ビックサイトのジャパンホームショーで板金のセミナーを行った際、その場に居合わせた関係者を通じてベガの八幡社長の耳に入り、ベガでも板金の話をして欲しいということになったのでした。
噂には聞いていましたが、見ての通り素晴らしい社屋です。
外壁には米杉(レッドシダー)が張られています。この自然素材が風雨に晒されて経年変化している姿は、ベガのあり方を体現しているようでもありますね。
内部は学校っぽいと感じた方もいらっしゃると思いますが、その通り学校のイメージで作ったそうです。学校風の大きな黒板も。ちなみに私はアールトスタジオ(アールトの設計事務所)に似ていると思ったのですが、イメージの参考にされたとのこと。
羨ましいと思ったのは、別室に打合せ室も完備しており、子連れの方でも子供がテレビを見たり遊べるような場所や、授乳室まであるということ。裏手には工房もあり、気軽に試作を作ったりモックアップを作ることもできるそうです。

そして極めつけはここ、「ベガ荘」。社屋に隣接して建てられています。
もとは夏休みに受け入れる学生インターンの宿泊所として作ったそうですが、これとても学生が泊まるような場所ではないというか、ちょっとしたリゾートホテルのようですよね。初日はここに宿泊させて頂きました。
そしてこれがベガ荘の売りの一つ、”五右衛門風呂”。外から薪を焚きます。そして私が入浴するタイミングで、外には無数のキャンドルを灯してくださいました。窓からはビールの差し入れが。こういうおもてなし力がベガハウスの真骨頂なのですね。
ただこれは、まだまだ序の口です。
到着した日のお昼はベガランチ(ベガラン)をご馳走になりました。ベガランはスタッフが持ち回りで自炊するランチのことで、週に二回みんなで食事を共にするようです。先ほどの製図室の上にそんな場所が用意されています。
夜は知人のシェフを呼び、こんなご馳走までご用意下さいました。こちらをスタッフの皆さんと一緒に頂きながら歓待を受けました。本当に美味しかったです。ベガ全力のおもてなしはまだ続きます。
朝は8時にベガ荘に朝食が運ばれてきました。言うまでもなく、ここはホテルではありません。朝食もスタッフさんが社屋で作って下さり、運んで来て下さったのでした。
もう一度確認のために書きますが、ベガハウスは工務店です。この写真に写っている人たちも営業だったり、テクニカルスタッフの方であったりで、客室担当者ではありません(当たり前です)。この行き届いた教育や、意識の高さにただただ圧倒されました。もちろん、朝食も最高に美味しかったです。
朝食の前に散歩に出ると、7時過ぎには皆さん既に出社されて、社屋の前を掃き清めています。聞くと6:30頃には出社されているようです(早い人は5:30だとか!)。昨晩も遅かったというのに関係ないのですね。設計事務所ならありえない光景です。
おっと、私は遊びに行ったわけではありません。つい本来の目的を忘れそうになってしまいますが、ベガさんの社員教育のために呼ばれたからには、ちゃんとその重責を果たさなくてはなりません。

ベガさんの施工された住宅もいくつか見せて頂きました。ダメ出しをして欲しいとおっしゃるのですが、ごめんなさい相当レベル高いです。
それでも責任がありますので、失礼を承知で細かいところを指摘させて頂きましたが、それにしても…普通の設計事務所の設計レベルよりははるかに高いことは確かだと思います。
実際社内にプランナーと呼ばれる、通常なら独立して建築家と名乗ってもおかしくない方達がおり、またその下にテクニカルスタッフと呼ばれる設計事務所のスタッフと現場監督が一緒になったような役回りの方がいて、チームでその設計に当たられているのですから無理もありません。

2日目は私のスライドレクチャーののち、板金職人も交えて、ベガさんの抱える板金納まりの諸問題を解決するディスカッションを行いました。
私の意見や提案に頷く場面もあれば、まわりのスタッフからかぶせるようにいろんな意見や提案も出される場面もありました。私はこういう会が大好きです。若いスタッフたちの熱気に惚れ惚れします。
その後にも板金の現場を見学させて頂きました。そこにはリオタデザインとはまた違う流儀がありました。この若いスタッフがざっと並んでみんなが意見している風景もとっても良かったです。
下の写真は、年始に一字でその年の目標を各自書くのだそうです。こちらもシンプルでとても良いですね。
2日におよぶベガスタッフの皆さんとの濃密な時間が終わりました。今回はベガスタッフの研修目的で呼ばれたわけですが、これは私自身の研修旅行に他ならないものとなりました。
今回の滞在で、とにかく印象に残ったのは”チームで作り上げてゆく力”みたいなことです。我々アトリエ事務所は個人の感覚で問題をブレイクし、ある意味それが生命線のようになっているのですが、若いテクニカルスタッフたちがフラットに議論しながらディテールのひとつひとつを決めてゆく姿は清々しく、また羨ましくも思いました。
そして、ともすると仲良し集団になりがちなその組織のあり方に、ちょっと外側から辛口のコメントを差し挟んでゆく八幡社長のバランス感覚が、やはりベガハウスを未来に向けて推進させてるのだということもわかりました。
◇
これからは工務店の時代です。それも施工だけでなく、高い設計力を持ったクオリティの高い工務店です。そうでない工務店と設計事務所は淘汰してゆくかもしれません。もちろんリオタデザインは負けませんよ!
今回は本当に良い経験をさせて頂きました。お呼び下さり最高のおもてなしを下さいました八幡社長と、そのご縁を取り持って下さいましたmonowaの中嶋さんに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
そしてベガの皆さん、お忙しい中お付き合い下さいましてありがとうございました。またお会いした折には濃いディテールトークで盛りあがりましょう!
大学前期の第一課題である「サードプレイス」の提出がありました。中には心配していた学生もいましたが、最後はなんとか形にして提出したようでほっと胸をなで下ろしました。
即日で採点をして、A~C(たまにD)の採点を付けてゆきますが、Aよりも評価の高い学生にはSを付けます。採点で言えば90点に相当する評価で、学生なら一度は取ってみたいと思うあこがれの評価です。だいたい受け持ちのクラス(20人くらい)でSは2人くらいでしょうか。つまりSは10人に1人くらいということになります。
今日Aを付けた学生から、こんな素朴な質問をもらいました。
「先生、Sを取るにはどうしたら良いですか?」
どうしたら…難しい質問です。
思うに、Sを取る学生の案には特徴があるように思うのです。それはイメージがクリアでブレがないということ。そして何より”リアル”だということです。
イメージがクリアで、リアルであるということは学生課題に限らず建築ではとても大切なことで、モヤモヤした考えでやっていると、最後までモヤモヤした案になります。こういう案は人に伝わりません。
小説に例えるとこういうことになります。
小説家の多くは書く前にプロットを組み立てます。テーマ、状況、登場人物、そしてなんとなくこういう話にしようというあらすじのようなものを考えます。建築で言えば、どんな建物にするか、どんな利用者がどんな風にそこで振る舞うのかを考えるようなことです。
小説家はそこで筆を走らせながら、登場人物の仕草やちょっとした言い回し、窓から見える景色、雨の音に至るまで事細かにディテールを掘り下げてゆきます。そこを丁寧に描くからこそリアリティが生まれるのです。リアリティが生まれると、人は登場人物に共感したり、思い入れを持つようになります。架空の人物なのに、あたかも実在の人物であるかのように感じるのです。
そんな人物に不幸があれば、我々は本を読みながら涙を流します。
建築も全く同じ事なのです。「ここで本を読むんです」じゃなくて「木漏れ日の落ちる縁側に寝転がって、本を読みながらうたた寝をするんです」と言った方が、人はそこにより深く感情移入をすることが出来ます。
そうしたらそこに表現しなくてはいけないのは、「木漏れ日を落とす落葉樹」であり「風が抜ける縁側」であり「無防備でいられる守られ感のある空間」ということになります。もう設計で何をすれば良いか、プレゼンでなにを表現すれば良いか答えは明白です。なんなら、その本は太宰治なのかスラムダンクなのかまでもイメージできれば完璧でしょう。
建築はディテールが大切なのです。
まだそこにはないものを、あたかもそこにあるかのように、そこにあったらさぞ素敵だろうなと相手に思わせるように伝えるのが建築設計なのです。
今の学生に圧倒的に足りないのは想像力です。妄想力と言っても良いかもしれない。これは一朝一夕には身につきません。とりあえず、本を読むところからはじめて下さい。
即日で採点をして、A~C(たまにD)の採点を付けてゆきますが、Aよりも評価の高い学生にはSを付けます。採点で言えば90点に相当する評価で、学生なら一度は取ってみたいと思うあこがれの評価です。だいたい受け持ちのクラス(20人くらい)でSは2人くらいでしょうか。つまりSは10人に1人くらいということになります。
今日Aを付けた学生から、こんな素朴な質問をもらいました。
「先生、Sを取るにはどうしたら良いですか?」
どうしたら…難しい質問です。
思うに、Sを取る学生の案には特徴があるように思うのです。それはイメージがクリアでブレがないということ。そして何より”リアル”だということです。
イメージがクリアで、リアルであるということは学生課題に限らず建築ではとても大切なことで、モヤモヤした考えでやっていると、最後までモヤモヤした案になります。こういう案は人に伝わりません。
小説に例えるとこういうことになります。
小説家の多くは書く前にプロットを組み立てます。テーマ、状況、登場人物、そしてなんとなくこういう話にしようというあらすじのようなものを考えます。建築で言えば、どんな建物にするか、どんな利用者がどんな風にそこで振る舞うのかを考えるようなことです。
小説家はそこで筆を走らせながら、登場人物の仕草やちょっとした言い回し、窓から見える景色、雨の音に至るまで事細かにディテールを掘り下げてゆきます。そこを丁寧に描くからこそリアリティが生まれるのです。リアリティが生まれると、人は登場人物に共感したり、思い入れを持つようになります。架空の人物なのに、あたかも実在の人物であるかのように感じるのです。
そんな人物に不幸があれば、我々は本を読みながら涙を流します。
建築も全く同じ事なのです。「ここで本を読むんです」じゃなくて「木漏れ日の落ちる縁側に寝転がって、本を読みながらうたた寝をするんです」と言った方が、人はそこにより深く感情移入をすることが出来ます。
そうしたらそこに表現しなくてはいけないのは、「木漏れ日を落とす落葉樹」であり「風が抜ける縁側」であり「無防備でいられる守られ感のある空間」ということになります。もう設計で何をすれば良いか、プレゼンでなにを表現すれば良いか答えは明白です。なんなら、その本は太宰治なのかスラムダンクなのかまでもイメージできれば完璧でしょう。
建築はディテールが大切なのです。
まだそこにはないものを、あたかもそこにあるかのように、そこにあったらさぞ素敵だろうなと相手に思わせるように伝えるのが建築設計なのです。
今の学生に圧倒的に足りないのは想像力です。妄想力と言っても良いかもしれない。これは一朝一夕には身につきません。とりあえず、本を読むところからはじめて下さい。
17. 05 / 24
潜入捜査
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sekimoto
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> 仕事
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今日は千葉に潜りに行ってきました!
どこにって床下に。
10年以上前に設計した住宅の床下に、水が溜まっているとのご報告を頂きました。この住宅は当初の工務店さんが倒れてしまったため、こういう時も工務店さんに頼ることが出来ません。
自分が設計した住宅に、床下点検口から潜り込むのは初めての経験。水が溜まっているということだったのでこの日は水着着用。全身水に浸かりながら、ほふく前進で隅々まで洞窟探検してきました。
建築は常に水との戦いです。そしてその原因究明は、迷宮入りの事件で犯人を追い詰める刑事のごとしです。この日ももはや手詰まりか!からの光明を見出し、ほぼ犯人を絞り込みました。逮捕状持ってまた来るから、首を洗って待っとけよ!

一昨日、昨日と開催しました「路地の家」のオープンハウスでは大変多くの方々にお越し頂きました。まずは足をお運び下さった皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。
「路地の家」では細い路地に生まれた小さなオープンスペースを活かした開放的な作りにすること、またただ収容量があるだけでなく、見て楽しめる”見せる書架”としての本棚を作るというのが、クライアントから求められた二つの大きなご要望でした。
前者の路地に開放的な作りにするという点に於いてはプランニングが、後者の見せる書架にあたっては、安全かつ機能的に出し入れが出来るという点に於いて、美観と高い技術的解決とがそれぞれ求められました。
北側玄関側のファサードは、ストイックな切妻屋根とガラス窓、そして玄関扉だけがあります。対照的に、南側路地には大きく開かれ、上部に小さな小窓がアクセントのように付いています。
通常ファサードというものは意図的に作る部分と、”そうなってしまった”部分とがありますが、この住宅のファサードはかなり意識的に、意図的に作られています。
うちの事務所はなぜかグラフィックデザイナーのクライアントが多いのですが、この方達はまず例外なく線の美しさにこだわり、理屈をこねる前に手が動き、こういうものが良いということを直感的に導かれる傾向があるような気がします。
グラフィックデザインで言えば、ある意味窓位置は”文字組み”であり、その大きさは”フォントの級数”みたいなものです。それらが溶け合い、違和感なく”気持ちよい”と感じる状態に落ち着くことが、住まう方の空間の気持ち良さにもつながるような気がします。
前述のグラフィックデザイナーのクライアントが多いという理由は、きっと私自身、とても”グラフィックにうるさい(=めんどくさい?)"人間であるということとも無関係ではないかもしれません笑
リビングの建具を開け放つと、外部と大きくつながります。更に木製の門扉も開け放てば、路地空間とも一体でつながります。オープンハウス時は最高の天気に恵まれましたので、この気持ちよいつながりを皆さんに体感して頂けて良かったです。
リビングは敷地の高低差を利用して床をスキップさせ、玄関側より360mm床を下げています。そのことと併せ、階高を通常より高めの2,910mmにすることで、リビングの天井高を3.2mまで確保しています。
いわゆるこうした住宅密集地で、住宅のリビングを1階に設けると、光が入らず暗く陰鬱な感じになることがありますが、この住宅では開口部を大きく取ったことや、天井を可能な限り高くしたことで、1階であっても明るく開放的な作りにすることが出来たと思います。
一方の書架には、昨日のオープンハウスではクライアント自ら、ご自身のこれまでのお仕事の一部を展示下さいました。これが入ったことで、俄然この空間が引き締まりました。こうしたお仕事を巡っての思考についてもお話が伺えて、とても楽しかったです。

そしてこれがいよいよ目玉の”見せる書架”です。これについては、写真ではなかなか説明しきれないので、以下に動画をアップします。是非こちらで見てみて下さい。
【床パネル開閉動画】
・本棚全景(上から)
・本棚全景(下から)
・可動パネル機構(上から)
・可動パネル機構(下から)
・パネルを固定する

30~40kgにもなる床パネルの上げ下げには、ガスダンパーという機構を使っています。車のハッチバックなどに使われている機構で、建築に使われることは少ないのですが、今回この機構に出会ったことで、ようやくアイデアが実現に向けて動き始めました。最初に言い出したクライアントですら、本当に実現したことに驚かれていたほどです笑
機構の調整にあたっては、メーカーのスガツネさんにも多大な技術協力を頂きました。こちらもこの場をお借りして御礼申し上げます。
個人的には、この最上部に設けた小部屋が気に入っています。
こういう部屋って、意味もなくワクワクしますよね。色使いにもちょっと遊びを入れたりして、小さなお子さんがいるお宅だと、こういう所で想像力が育まれるような気がします。


あとは随所のこんなスイッチや小物、引手などにも反応された方がいっぱいいらっしゃいました。こういう部分は、我々の趣味というよりはクライアントのご趣味に委ねている部分です。今回こうしたアンティーク系のものがお好きな方でしたので、自由に選んで頂き現場に取り付けて頂きました。
家づくりでは、こういうちょっとしたスパイスの部分もとても重要だと常々感じています。
◇
今回の住宅は、去年入社したばかりの新人・砂庭さんに担当してもらいました。私ですら腰が引けるほどの難しい住宅でしたが、既に退所した山口くんのサポートなども借りながら、最後まで立派に務めあげてくれました。上の写真は、見学にいらして下さった建築家の伊礼智さんに労いの言葉をかけて頂いているところです。
彼女は大学の卒業設計に、こうした街に開かれた住宅のあり方をテーマに選んでいましたので、彼女にとっても建築の理想と現実について学ぶ良い機会になったことと思います。けれども、一方では学生が思い描いた夢物語も、しっかり積み上げてゆけば実際にもちゃんとできるのだ、ということも学んでもらえたかなと思っています。
◇
最後に、今回の素晴らしいお仕事の機会を下さいましたクライアントのOさんには心より感謝しております。最後までドキドキしながら現場監理をしていましたが、最後に心から喜んで下さったことが何よりでした。いつもこの瞬間のために仕事をしていると思える瞬間です。
最後に記念写真をパチリ!
関係者の皆さま、お疲れさまでした。
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