鹿児島のベガハウスという工務店にお呼び頂き、2泊3日で鹿児島に行って参りました。ベガハウスはこちらの方には馴染みはないと思いますが、設計事務所も顔負けの設計力と品質の高い施工力で、業界では全国にその名を轟かせている工務店です。
ベガハウス www.vegahouse.biz
今回どうしてベガハウスさんに呼んで頂いたかというと、昨年ビックサイトのジャパンホームショーで板金のセミナーを行った際、その場に居合わせた関係者を通じてベガの八幡社長の耳に入り、ベガでも板金の話をして欲しいということになったのでした。
噂には聞いていましたが、見ての通り素晴らしい社屋です。
外壁には米杉(レッドシダー)が張られています。この自然素材が風雨に晒されて経年変化している姿は、ベガのあり方を体現しているようでもありますね。
内部は学校っぽいと感じた方もいらっしゃると思いますが、その通り学校のイメージで作ったそうです。学校風の大きな黒板も。ちなみに私はアールトスタジオ(アールトの設計事務所)に似ていると思ったのですが、イメージの参考にされたとのこと。
羨ましいと思ったのは、別室に打合せ室も完備しており、子連れの方でも子供がテレビを見たり遊べるような場所や、授乳室まであるということ。裏手には工房もあり、気軽に試作を作ったりモックアップを作ることもできるそうです。
そして極めつけはここ、「ベガ荘」。社屋に隣接して建てられています。
もとは夏休みに受け入れる学生インターンの宿泊所として作ったそうですが、これとても学生が泊まるような場所ではないというか、ちょっとしたリゾートホテルのようですよね。初日はここに宿泊させて頂きました。
そしてこれがベガ荘の売りの一つ、”五右衛門風呂”。外から薪を焚きます。そして私が入浴するタイミングで、外には無数のキャンドルを灯してくださいました。窓からはビールの差し入れが。こういうおもてなし力がベガハウスの真骨頂なのですね。
ただこれは、まだまだ序の口です。
到着した日のお昼はベガランチ(ベガラン)をご馳走になりました。ベガランはスタッフが持ち回りで自炊するランチのことで、週に二回みんなで食事を共にするようです。先ほどの製図室の上にそんな場所が用意されています。
夜は知人のシェフを呼び、こんなご馳走までご用意下さいました。こちらをスタッフの皆さんと一緒に頂きながら歓待を受けました。本当に美味しかったです。ベガ全力のおもてなしはまだ続きます。
朝は8時にベガ荘に朝食が運ばれてきました。言うまでもなく、ここはホテルではありません。朝食もスタッフさんが社屋で作って下さり、運んで来て下さったのでした。
もう一度確認のために書きますが、ベガハウスは工務店です。この写真に写っている人たちも営業だったり、テクニカルスタッフの方であったりで、客室担当者ではありません(当たり前です)。この行き届いた教育や、意識の高さにただただ圧倒されました。もちろん、朝食も最高に美味しかったです。
朝食の前に散歩に出ると、7時過ぎには皆さん既に出社されて、社屋の前を掃き清めています。聞くと6:30頃には出社されているようです(早い人は5:30だとか!)。昨晩も遅かったというのに関係ないのですね。設計事務所ならありえない光景です。
おっと、私は遊びに行ったわけではありません。つい本来の目的を忘れそうになってしまいますが、ベガさんの社員教育のために呼ばれたからには、ちゃんとその重責を果たさなくてはなりません。
ベガさんの施工された住宅もいくつか見せて頂きました。ダメ出しをして欲しいとおっしゃるのですが、ごめんなさい相当レベル高いです。
それでも責任がありますので、失礼を承知で細かいところを指摘させて頂きましたが、それにしても…普通の設計事務所の設計レベルよりははるかに高いことは確かだと思います。
実際社内にプランナーと呼ばれる、通常なら独立して建築家と名乗ってもおかしくない方達がおり、またその下にテクニカルスタッフと呼ばれる設計事務所のスタッフと現場監督が一緒になったような役回りの方がいて、チームでその設計に当たられているのですから無理もありません。
2日目は私のスライドレクチャーののち、板金職人も交えて、ベガさんの抱える板金納まりの諸問題を解決するディスカッションを行いました。
私の意見や提案に頷く場面もあれば、まわりのスタッフからかぶせるようにいろんな意見や提案も出される場面もありました。私はこういう会が大好きです。若いスタッフたちの熱気に惚れ惚れします。
その後にも板金の現場を見学させて頂きました。そこにはリオタデザインとはまた違う流儀がありました。この若いスタッフがざっと並んでみんなが意見している風景もとっても良かったです。
下の写真は、年始に一字でその年の目標を各自書くのだそうです。こちらもシンプルでとても良いですね。
2日におよぶベガスタッフの皆さんとの濃密な時間が終わりました。今回はベガスタッフの研修目的で呼ばれたわけですが、これは私自身の研修旅行に他ならないものとなりました。
今回の滞在で、とにかく印象に残ったのは”チームで作り上げてゆく力”みたいなことです。我々アトリエ事務所は個人の感覚で問題をブレイクし、ある意味それが生命線のようになっているのですが、若いテクニカルスタッフたちがフラットに議論しながらディテールのひとつひとつを決めてゆく姿は清々しく、また羨ましくも思いました。
そして、ともすると仲良し集団になりがちなその組織のあり方に、ちょっと外側から辛口のコメントを差し挟んでゆく八幡社長のバランス感覚が、やはりベガハウスを未来に向けて推進させてるのだということもわかりました。
◇
これからは工務店の時代です。それも施工だけでなく、高い設計力を持ったクオリティの高い工務店です。そうでない工務店と設計事務所は淘汰してゆくかもしれません。もちろんリオタデザインは負けませんよ!
今回は本当に良い経験をさせて頂きました。お呼び下さり最高のおもてなしを下さいました八幡社長と、そのご縁を取り持って下さいましたmonowaの中嶋さんに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
そしてベガの皆さん、お忙しい中お付き合い下さいましてありがとうございました。またお会いした折には濃いディテールトークで盛りあがりましょう!
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