来週の土曜日(6月13日)になりますが、北欧建築・デザイン協会(SADI)の総会にあわせて記念講演を企画しております。今年はギャラリーA4(エークワッド)館長でもいらっしゃる岡部三知代さんに「今も輝く作品を残した女性たち」というテーマでお話を頂く予定です。こちらはどなたでもご参加頂けます。

ギャラリーA4では過去にもアルヴァではなくアイノ・アールトにフォーカスを当てた展覧会企画で話題になりましたが、ほかにも、トーヴェ・ヤンソン、バージニア・リー・バートンといった女性作家の展覧会企画、そして現在はノエミ・レーモンド(アントニン・レーモンドの妻)の展覧会も開催されています。講演ではそうした前出の時代を切り拓いた女性作家達の生き方や残した仕事についても触れて頂く予定です。

これまで展覧会といえば「時代の大看板」ばかりに脚光が当てられてきましたが、A4のキュレーションにはよりフラットに社会を捉えようという視点があると感じています。

現在開催中のノエミ・レーモンド展には先週足を運びましたが、これまでアントニン・レーモンドの設計と言われてきた作品のいくつか(特に住宅作品)や家具などはノエミによるものであることは今回初めて知りました。これはアルヴァとアイノの関係にもとてもよく似ていて、二人は分かちがたく”二人で一人のレーモンド”であるとも感じました。

講演会は会員以外の方もお申し込み頂けます。会場の「東陽町ぐりんたす」はギャラリーA4と目と鼻の先ですので、当日「ノエミ・レーモンドの建築と意匠」展とハシゴする形で是非足をお運び下さい!

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『今も輝く作品を残した女性たち』
― ギャラリー エー クワッドでの展覧会を通じて ―
講師:岡部三知代 氏(ギャラリー エー クワッド主任学芸員/館長)

日時: 2026年 6月13日(土) 15:30~17:30(受付15:00~)
会場:Toyocho green+ | 東陽町ぐりんたす 2階ホール
参加費:一般 2,000 円/学生 500 円
定員 : 50名(先着順・事前申込制)
■お申し込み方法と詳細はこちらより
https://sadiinfo.exblog.jp/36477107/

ギャラリーA4
「ノエミ・レーモンドの建築と意匠」展(6/18まで)
https://www.a-quad.jp/

26. 05 / 23

Living Heritage

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sekimoto

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> AALTO
> 動画



美術手帖のYouTubeチャンネルで、建築史家の松隈洋さんが解体がはじまってしまった旧香川県立体育館の問題に言及されています。国内における近代建築を残す意義や意味についてもとてもわかりやすく解説されていて、そんな素晴らしい建築を残せなかったことに胸を痛めつつ、松隈さんの熱弁に引き込まれ心を打たれました。

この中でフィンランドの建築政策についても触れて頂いています。フィンランドでは「The Finnish Architectural Policy」というものが1998年に出されました。これは国の教育省やアートカウンシルが発行元となり、フィンランド建築家協会SAFAが編集を行ったものです。

The Finnish Architectural Policy 1998
https://ace-cae.eu/wp-content/uploads/2024/10/FI-report.pdf

松隈さんも感嘆されていましたが、内容が本当に素晴らしく、序文をまず時の首相が書いていること、またその中でパーヴォ・リッポネン首相は、憲法で定められた「良好な環境に関する国民の権利」を実現する機会を作ること、また「国民には自分たちの環境に責任を持つ権利と義務の両方があり、その権利を行使するためにも建築に関する教育や情報の提供を強化する必要がある」ことを強調し、この建築政策がアールト生誕100年祭の年に出されたことに大きな意義と喜びを感じる、と締めくくっています。

良い環境はすべての市民にとって基本的な権利(A good environment is a basic right of every citizen)という考え方にもしびれますが、私は特にフィンランドの「Living Heritage(生きた遺産)」という考え方に共感を覚えます。

フィンランドでは築90年近いパイミオサナトリウムやマイレア邸といったアールトの建築遺産が、単なる観光スポットとしてではなく、今もなお何らかの形で使われ続けているという「動的保存」の考え方があります。それはまさに建築にとって最も理想的で幸せな状態であるともいえます。

そんなアールトの建築群はユネスコ世界遺産への登録に向けて秒読みの段階に入っています。どうか末長く残って欲しい。松隈洋さんの美術手帖の動画リンクは以下より。素晴らしいコンテンツでした。

◼️美術手帖YouTube・なぜモダニズム建築は壊されてしまうのか?
https://youtu.be/qe5RHnm60BI?si=RTQJ9jsgR0j3F-KK

◇
[追記]
こちらは最新版(2022-2035)のフィンランド建築政策リンクです。

◼️The Finnish Architectural Policy 2022-2035
https://julkaisut.valtioneuvosto.fi/server/api/core/bitstreams/6b2cb52e-2623-46b8-9fb1-467108c34d11/content

1998年の声明から一歩進んで、気候変動や建築的持続可能性(Architectural sustainability)、「Design fo All」の推進、デジタル化の推進などが追加されています。また1998年の声明はEUの多くの国での建築政策モデルとなったことにも触れられています。

建築の価値を「技術的、芸術的、文化的な価値を持つ資本」と捉え、「建築の本質は文化・芸術である」ということを国が宣言している点も素晴らしいです。

冊子も堅苦しいものではなく、ポップでどこかの気の利いた都市の観光案内のようです。国民にまったく響かない国交省の無機質な文書も少しは見習って欲しいですね。

26. 05 / 14

まりこブレンド

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sekimoto

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> 思うこと
> 社会



20年くらい昔、私が本当に駆け出しだった頃に設計を依頼くださった方にIさんという方がいらっしゃいました。Iさんご夫婦とは、家を建てた後も何かとご縁があり、今でもたまにやりとりのあるのですが、そのIさんの奥様まりこさんの訃報が先週届き、あまりの衝撃に報を眺めながらしばし固まってしまいました。

まりこさんは当時まだ一件くらいしか住宅を設計したことのない私に設計をご依頼くださり、その後もなにかと気にかけて食事の席に呼んで下さるなど、ご主人と共に私の仕事をずっと見守って下さっていた方でした。

顔が広く、国内外の一線のデザイナーさんともつながりのある方で、当時もほかにもっと有名で実績のある建築家を何人もご存じだったはずなのに、なんの実績もなく無名だった私に設計をご依頼くださったことは今でも感謝しています。その住宅はその後建築専門誌にも掲載となり、それがきっかけで大学の非常勤講師にも声がかかるなど、私にとっては出世作となった住宅でした。

そんなまりこさんが、ある時別れ際に私にさりげなくかけてくださった言葉があります。

「関本さんなら大丈夫」

言葉で書くとなんと平易でありふれた言葉でしょうか。これまでそんな言葉は無数の方からかけて頂いたような気もするのですが、私はこの日のことを今でも鮮明に覚えていて、今に至るまで時折思い出すのです。

言葉というのは不思議なもので、誰がその言葉を口にするのか、どんな時に言われたのか、そのことでその言葉はその人の心に一生分の楔を打ち込みます。いわゆる言霊というやつかもしれません。

その時の私はまだまだ駆け出しで、これからのこともまだ見えず不安でいっぱいだった時だったのだろうと思います。そんな時に目利きのまりこさんにかけられたこの一言は、まるで予言のように響き、「私は大丈夫なんだ」と自分に言い聞かせる暗示と呪文にその日からなりました。これまで何度その言葉に救われてきたことでしょう。まりこさんは私にとってそんな方でした。

今日小さなギフトが届きました。送り主はまりこさん。思わずドキッとしました。

中を開けるとメッセージとともに小さなコーヒーの箱が入っていました。ラベルには「mariko」とあります。「まりこブレンド」コーヒー好きだったまりこさんのご家族が送って下さったものでした。メッセージにはいかにもまりこさんがおっしゃいそうな言葉が詰まっていて、おもわず胸がいっぱいになりました。なんとあたたかな贈り物だろう。

これまでのたくさんの思い出と共に頂きます。
まりこさん、出会いとこれまでのすべてに感謝します。ほんとうにありがとうございます。いつの日か、いつの日か、また会いましょうね!

26. 05 / 08

職業欄

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sekimoto

category
> 思うこと
> 社会



職業欄にはいつも「自営業」とか「サービス業」みたいなところにチェックせざるを得なくて惨めな思いをしていたのですが、とあるカードの申し込みで、職業欄に医師や弁護士、大学教授らに混ざって「一級建築士」というのがあって思わず感動。最近普通なんでしょうか?私ははじめてです。

我々建築士はずっと医師、弁護士と並ぶ職能なのだと言い続けてきましたが、社会の認知には程遠く、、。ようやく職業欄に「一級建築士」と書ける時代が来たのであれば嬉しい。次は「建築家」という職能を認知してもらえるようにしないとですね。

26. 05 / 05

デジタル時計

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sekimoto

category
> 子ども
> 思うこと



仕事をはじめた息子も連日終電帰りのような日々。勤め先のご厚意で、勤務先の近くに安い部屋を用意して頂けることになり、今日はそんな息子の引越し手伝い。彼にとっても念願の一人暮らしとなります。

寂しくなるか?と人から聞かれるのですが、同じ家に住んでいても生活の時間帯が違いすぎてたまにしか顔を合わせないので、出ていっても何も変わらない気がしています。でもよく考えると、これは22年間の子育てがここで一区切りしたことを意味するんですよね。彼が幼かった頃、またほんの10年前であっても今日のことは想像できませんでした。

社会に出た彼は夢中になって日々を生きています。自分の居場所と世界を見つけた彼は覚醒したように表情が明るくなり、言葉は自信に満ち、親としてこれほど嬉しいことはありません。かつて私も彼の歳で建築に向かう長い旅の帳に立ったように、彼にも自由にクリエイティブに生きてもらいたい思います。

今日は大きなレンタカーに荷物をいっぱいにして車を走らせました。でもこれが家族3人でドライブをする最後になるかもしれないことには途中で気づきました。部屋に壁掛け時計を買ってやろうと思っていたら、自分のお金で買いたいと言って彼が選んだ光るデジタル時計。新生活の時とともに思い出も刻んでいくのでしょうね。