21. 10 / 05

収穫の秋

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sekimoto

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> 仕事



川越のさつまいも農家さんからのご依頼で、母屋建て替えのご相談。

農家さんの家をやるのははじめてだったので、畑仕事から帰ってきてからの動線処理など想像力が追いつかず。また農家らしい佇まいと現代らしい暮らしとのあいだで行ったり来たり。大いに手こずって、プランニングだけで2ヶ月もかかってしまいました。延べ67坪…でかい。

今日はそんなラフ提案でしたが、拍手喝采せんばかりの大喜びで受け入れて頂き、長かった苦悩も報われました。これはその方の性格にもよるとは思いますが、日々自然を相手にお仕事をされておられる方は、本当に懐が大きくてその寛容さにこちらも包み込まれる思いです。

最後はさつまいもと大根を山ほど!さつまいも農家さんは今が最盛期。週末の観光農園はさつまいも渋滞になるほどだそうです。



『建築の難問』内藤廣、読了。

内藤廣さんは私にとって重要なメンターのひとり。内容は一言で言えば「禅問答集」。文字通り「建築の難問」の数々を投げかけられた内藤さんが、それに真摯に答えるというものなのだけれど、それにしても答えがありそうでないような“禅問答”に、かくも的確に、自身の感覚と乖離せずに答えられる内藤廣さんの頭の中って一体どうなっているのだろう??と、建築思考版シルクドソレイユを見せられているような気分になる。

言説の裏付けとして、さまざまな建築家や思想家の名前、本の一節の引用などが無数に出てくるのだけれど、内藤さんの読書量や教養が我々とは次元の越えたレベルにあることもわかる。

難解な話もあったり文字数もそれなりで、この手の本はかなりの確率で最後まで辿り着かずに私は挫折してしまうことも多いのだけれど、これは内容にも共感することが多く、毎日少しずつページをめくるのが楽しみな本だった。

それにしても内藤さんの東北復興に際し関わった膨大な委員会の数や、建築と土木とを架橋した活動、教鞭など、その守備範囲の広さには本当に舌を巻く。それでいながら、一方で質の高い建築をつくり続けるそのバイタリティは、とても同じ人間とは思えない。

私もいくつかの活動に板挟みになりながら、自身の創作活動との時間の両立が最近の悩みの種になっていたのだけれど、これは次元が違う。なんてちっぽけな悩み。この本の伝えたい意図とは全く違うところに大きな励ましをもらったような気がした。

ありがとうございます。

21. 10 / 01

重さは比例する

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sekimoto

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> 生活
> 社会



いつもお世話になっている家具屋さんからいきなり米が届く。職人さんの一人が作っているお米とのこと。ずっしり重い。ありがたい。

人から物を頂いた時に思うありがたさはその「重さ」に比例する、というのは以前から思う私の中のありがたさ理論。箱いっぱいに詰められたみかんやりんご、そしてお米。まちがいなくありがたい。

暮れの挨拶に工務店さんがわざわざ届けてくれるビールの箱。送ればいいのにと思いながら、両腕にかかるずっしり感。大変なものもらっちゃった感。やっぱりここでも重さは正義なのだ。

ちなみに今回は、箱を開けた瞬間から止まらない「年貢 for you」(by レキシ)

Fさん、届いたよ!

この夏は上勝町に行こう。そう決めたのは5月ごろのことでした。

徳島県にある上勝町ゼロ・ウェイストセンター(設計:中村拓志)が今年度の建築学会賞作品賞に選出されましたが、この建築の構造設計を担当したのは、我々の構造パートナーでもある山田憲明さんで、担当された中太郎さんもまた長らくうちの住宅を担当してくださっていた方でした。

建築家の中村拓志さんによる空間は、過去に見たどの空間も私には到底真似のできないスケールと細やかな神経の通ったものばかりで、このゼロ・ウェイストセンターも是非一度見ておかなくては!と思ったものの、しかし徳島県…しかも上勝町ってどこだ?と調べてみると、これまた辺鄙な山の中(失礼!)。この山奥の一点の建築のためにここに行くのか?という思いもよぎりつつも、だからこそ見る価値がある!(たぶん)とも思ったのでした。

ところが、時はコロナ禍の真っ只中。夏にはなんとかなるだろうと踏んでいたところが、事態はどんどん深刻化してゆく一方。行くかやめるかと迷っているうちに出発直前になってしまい、もうこうなったら行くしかない!と、意を決して(こっそり)飛び立ったのでした。

ちなみに、こちらは行ってからずいぶん経ってから書いています。


しかし徳島は平和そのもの。というか人がいなかった。人がいなさすぎて、ゴーストタウンのような徳島市内はちょっと恐ろしくもありました。

東京都の一日の新規感染者数が数千人規模になって大騒ぎしているときに、徳島県はわずか50人。たぶん、空港とレンタカー屋さん以外では誰ともすれ違っていないので、感染も拡大しようがありません。(あ、ちょっと盛りました。こんどは徳島県民に怒られそう!)

上の写真は徳島駅の駅前の様子。県庁所在地の駅の真ん前に小学校がある!というのも結構な衝撃でした。





■上勝町ゼロ・ウェイストセンター
https://why-kamikatsu.jp/

さてこれは何の施設かというと、要は町のごみ収集施設なんです。

今やゴミゼロに対する上勝町の取り組みは全国的に知られていて、様々なメディアでも紹介されているので感度の高い人はすでによくご存じのことと思います。私はそういうエシカル的なことに疎い後進的人間なのですが、そんな人間だからこそ、むしろすごく感じるところの多い宿泊体験になりました。

そうそう、ここは泊まれるんですよ。一番トップの写真が建築の全体像なんですが、上空から見ると「?(はてなマーク)」みたいな形をしているんですね。この下のドーナツ状の丸い建物が宿泊施設になっています。







この宿泊棟もそうなんですが、建物全体の特徴はなんといっても、建物全体が「廃材でできている」ことなんです。

窓は町で廃棄された古い建物の窓が2枚合わせ(ペアガラス?)で使われていたり、引手が現地の小石で作られていたり、ホールの床が建材メーカーの余ったタイルの寄せ集めだったり、家具が廃棄される予定だったものを転用していたりなど、とにかく細部に至るまでそれが徹底されています。

構造材だけはさすがに廃材利用というわけにもいきませんが、地元の山で取れた木を地元の製材所でできる加工技術だけを使って、とても工夫されたディテールで随所に使用されています。

こういうところの徹底が建築家の中村拓志さんらしさでもあって、いつも途方もない、、と思ってしまうところです。構造家の山田憲明さんもさぞや苦労されたことと思います。







そして何より新鮮だったのは、ゴミの分別体験です。

宿泊で出たごみは、通常なら客室のごみ箱に突っ込んでおけば客室係がきれいに処理してくれますよね。この宿泊施設では、宿泊者自身がその分別に参加するということが大きな滞在目的の一つにもなっているのです。

宿泊時に「6分別」のバスケットを渡されるのですが、宿泊時に出たごみはここに細かく分別します。この時点で、「このごみはリサイクル出来るのか?」と考え、できないとわかった瞬間にすごい罪悪感を感じます。

それを翌朝に、町民も利用する実に「45分別」(!)もの細かい分別所に持っていきます。スタッフの方が丁寧に、どこに捨てれば良いか教えてくれます。今回は建築以上に、このごみの分別のことについても深く考えさせられました。



この分別トレーには、それぞれそこにどういうものを入れるかの表示があるのですが、そこにはそれが日本のどこで処理されるのか、そのことによってかかる処理コストについても細かく書いてあります。

その処理コストは、最終的には町民が負担するものになるので、「これって捨てると高いんだよな」というごみに対するコスト意識も芽生えるというものです。そしてゴミゼロの意味は、ごみを出さないということではなく(そんなことは不可能です)、それを最小限化した上で、出したごみのほとんどをリサイクルすることで、可能な限り焼却処分等はしないということを意味しているようです。

こんなにも分別を徹底している上勝町ですら、ゼロウェイスト100%にはできないそう。それは製造側の問題もあって、消費者側がリサイクルごみにしたくてもできないようなものが、社会にはまだまだたくさんあるようです。


我々は日頃ごみを朝出せばお昼にはなくなっていますから、ごみは誰かが片付けてくれるものだと心のどこかで思っているような気がします。

町内にはごみ収集車は走っておらず、町民は自ら車でここまでごみを捨てに来るそうです。これを毎日実行されている町民の方には頭が下がる一方で、ゴミの”流通”を知ることは、見えないものを見える化するという意味でも、とても有意義な取り組みのように思いました。

また町民が出したごみの一部(まだまだ使えるもの)は、こうやってホールに置かれて、誰でも自由に持って帰って良いことになっています。中にはどこかの家で使われていた徳利とか、味わい深いものもたくさんありました。

ごみは処分した瞬間にごみになるわけで、こうしてそれが欲しい人の元に行くことで、結果的にここでもごみは減らせるんですよね。そこでお金を取らないというのも良いと思いました。(お金を取ったらただのリサイクル屋さんになってしまいますしね)



さて、このゼロウェイストセンターの近くにあるこんな施設にも行ってきました。宿泊の際は必ずここで食事を取られることをお勧めします。

■RISE & WIN BREWING
https://www.kamikatz.jp/

ここも同じく中村拓志さんの設計で、構造設計も山田憲明さんが担当されています。ここの上勝ビールがとにかく美味しいのです!都内でも買えるところがあるようですが、ここでは日替わりでいろんな変わった地ビールを楽しむことが出来ます。

お料理も凝っていて、とっても美味しいのです。




ここのお店で働いているおしゃれなお兄さんとも話したのですが、皆さん上勝町への移住組とのこと。もちろん中には地元出身の人もいますが、皆さん口を揃えるのは、この上勝町のゼロウェイストの取り組みをとても誇らしげに思っているということ。地方の小さな町が、今や全国的にその名が知れているというのはとても嬉しいことに違いありません。

その取り組みの一端を、行政主導ではなく、町民みんなが考えて「うちのお店ではこういうことをやっている」というのを、このお店のみならずほかのお店でもメニューや器など、様々な形で表現されていたのがとても印象的でした。

上勝町は、町長がお料理に添える葉っぱが都市部で高く売れるということを知り、高齢者に山で葉っぱを採ってもらって出荷している町としても有名です。ゼロウェイストはそんな町長のいる町だからできる取り組みなのかもしれませんね。

またフィンランドのように、人口密度が低いからこそできるということもあるかもしれません。地方から発信出来ることはまだまだあるのだなということにも気づかされました。


少し前にも書きましたが、私はSDGsとかエシカルという言葉が、どうも上滑りした言葉のように聞こえてしまって、あまり好きではありません。

もともと私がそういうのに疎い人間であることも大きいのですが、そういうふわっとした概念の話ではなく、実際に自分の出したごみがどこに行くのだろう?というものを実際目で見て体験に落とすと、途端に実感として感じられ、見えている世界も変わってくるような気がします。私は”体感”として感じられないことは、どうも腑に落ちない性格のようです。

そんなことから、ただ建築を見るという目的を超えて、この夏に上勝町に訪れることが出来たのはとても大きな体験になりました。

21. 09 / 20

大量廃棄社会

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sekimoto

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> 生活
> 社会



「1年間に10億枚の新品の服が、一度も客の手に渡ることもないまま捨てられているらしい-」

こんな衝撃的な書き出しからはじまる。売れ残りが廃棄されるならまだしも、世の多くの商品は一度も棚に並ぶことすらなく焼却される。どうしてそんなことが起こるのか?という内容は本を読んで頂くとして、一消費者として深く考えさせられた。

私はSDGsという言葉が好きではない。その理念にはもちろん共感するし、否定しようのない正論だとも思う。しかしその実践にはとてつもなく大きなハードルがあって、とても泥臭い地道な努力がいるし、覚悟のいることだとも思う。

そんなことを言いながらも、我々は一消費者としてより安く物を買いたいと思っているし、コンビニに行って商品が少なければがっかりする。それって矛盾じゃないの?そんなことがぐるぐると頭の中を巡った。