少し前に[ブログ10年分]というブログを上げましたが、こちらがようやく発刊の見通しとなりました。

『すごい建築士になる!』
関本竜太著|エクスナレッジ刊
https://amzn.asia/d/dKo9KtF
出版予定日:6月5日

・・このタイトル、ちょっとえぐすぎないですか?

はい、そう思ったそこのあなた。先に謝っておきます。ごめんなさい。でも私が付けたタイトルではありません!

というかこれ、私が絶対言わなそうなセリフだと思うんですが、まあいいです。一周まわって受け入れることにしましたのでここは軽く流して頂いて、まずはこの本が出来るまでの話を聞いてやってもらえますか。ここまでくる道のりはなかなか大変なものがあったんですから!


エクスナレッジのエース編集者、別府絹美さんが事務所にご相談にいらっしゃったのは去年の7月初旬のこと。持ってきたのは書籍の企画でした。そこにはこう書かれていました。


「設計がふつうに上手くなって稼げる本」

なるほど、、わかる。わかりますよ。全国の建築設計の実務者がどんなにキレイゴト言ったって、つまりはこれなんですから。わかるんですけどね、、でもワタクシ言うほど稼げてないんですよぉ涙

・・て言いながら、その場で最後の部分にバッテン書いてました。これを消してくれるなら(私が設計が上手いかどうかはさておき)まあ、なんか考えてみましょう。

そうやってこの企画は始まりました。

対象は建築の初学者というより、設計事務所の若いスタッフさんや、これから独立しようという方、あるいは独立したてでいろいろと迷いや悩みを抱えている建築家の卵みたいな人たちの心に届くような、羅針盤になるような、そんな本にしたいという別府さんの企画主旨を、どう膨らませるかを考えました。

確かどこかの打合せに出かける道すがらだったと思いますが、頭に浮かんだ言葉をどんどん携帯のメモ帳に打ち込んでアウトプットしたのが、こんなキーワードたちでした。


翌日別府さんにこれをそのまま送り、それを編集会議にかけたら通ったという嘘みたいな本当の話です。どうでしょうか、こんなキーワードの本なら読んでみたいですか?

今回の編集には、別府さんのほかに先行の共著「伊礼智の住宅デザイン学校」の本をまとめ上げて下さった敏腕フリー編集者である加藤泰朗さんも加わり、文字通り三つ巴による万全の編集体制で書籍の執筆がはじまりました。


最初は設計にあたっての日々の心構え的なことや、私の設計初期のエスキースメソッドみたいな事をメインコンテンツにしようという話だったのですが、雑談のたびに私が話す事務所運営の内情みたいな内容が次々と採用されてしまい、最後は「これ何の本?」というくらいコンテンツがパンパンに詰め込まれたものになってしまいました。

ページ数も、最初は200ページと言っていたものが300ページにもなってしまったのですが、そのための執筆期間は10月から12月までのわずか3ヶ月。

もちろん私は職業作家ではありませんから、平日や日中はほとんど原稿に向き合う時間が取れません。毎週末に10時間くらい事務所にこもって原稿を書き続ける日々が続きました。

私としてはスケジュールに間に合わせなくてはという思いだったのですが、こんなに順調に原稿を書く人はいないのでしょう。私のあまりの執筆スピードに別府さんもびっくりしていましたが、昨年の暮れまでになんとか10万字超の原稿を一通り書き終えました。

そこからのくだりは、先日の[ブログ]に書かせて頂いたとおりです。


さて、次はようやくブックデザインです。

実は今回の書籍で一番楽しみにしていたのがこれでした。別府さんの計らいで、今回のブックデザインはtobufuneの小口翔平さんが手がけて下さることになっていたからです。

tobufuneさんは100万部突破のベストセラー『FACTFULLNESS』の装丁をはじめ、大ベストセラーのブックデザインを数多く手がける超売れっ子ブックデザイン事務所で、実はtobufuneの事務所インテリアもリオタデザインが手がけているというご縁があります。

tobufune
https://www.riotadesign.com/works/19_tobufune/

実は当初は別の書籍タイトル案があり、それを前提としたデザインを小口さんもイメージしていたようなのですが、土壇場になって書籍タイトルが大きく変わってしまい、私はもとより関係者が一斉に頭を抱えるというちょっとした”事件”もありました。

まぁ、この辺は書籍あるあるなんですけどね、、汗

tobufuneさんも装丁案を何案も出して下さいました。
これが素晴らしいのなんの!本当に感動してしまいました。

本当にいろんな装丁案があった中で、最終的にはイラストを使わず「文字だけ」で勝負しようということになったのですが、どうも何かが足りない。


本来は装丁デザインの詳細には著者はタッチしないのですが、なんといっても小口さんは私のクライアントでもあるので、誰よりも私のことをわかって下さってもいます。

そこで私自身がtobufune事務所に出向き、その場で議論しながら最終デザインをまとめて頂くことになりました。(実は事務所の本棚に不具合があって、その打合せのついででもあったんですけどね笑)

こちらがその時の様子です。


小口「じゃあこんな感じで丸を入れてみましょうか。好きな色とかあります?」
関本「いいですね!じゃあ水色で」

そんな感じで最後、右下にリオタデザインを象徴する「水玉」と「フィンランド」とを連想させるアイコンが加わりました!流れるようなデザイン作業で目の前でぱぱーっとデザインが組まれていく様は、ずっと曇っていた空が急に晴れていくような爽快感がありました。

続いてその場でカバーの紙サンプルまでいろいろ出してくれました。


上質で魅力的な紙は無数にあるのですが、出版社にも予算があるのでなんでも選べるわけではありません。

通常は、ここでも著者は紙質までは指定できないのですが、その場で予算と紙質を天秤にかけて、それこそお施主さんが壁紙を選ぶときのように「あれもいいな」「これもいいな」とか言いながら選ばせて頂きました。

これも本当に贅沢な体験でした!目の前でブックデザインができあがる瞬間に立ち会えて、紙まで選べるなんて、たぶん私は日本一幸せな著者だと思います。

結果的に選んだ紙は「ブンペル」のホワイトです。これが質感もあって、上品でとてもいい紙なんですよ。やっぱり手摺りに木を使うように、本の表紙の紙質って手が触れるだけにとても大事ですよね。ディテールが命!今回はそこまでこだわれたのが良い思い出になりました。


そんなことで、書籍は間もなく発刊になります。出版は6月5日予定です。
みなさんにとって有益な本となりますように!書店で見かけましたら是非お手に取ってみて下さい。

『すごい建築士になる!』
関本竜太著|エクスナレッジ刊
https://amzn.asia/d/dKo9KtF
出版予定日:6月5日



先週末のことですが、少し遅めのGW休みに、島根県の隠岐の島に行ってきました。

流刑の地の歴史を持つ隠岐の島は、まず来るだけで大変!流刑の地に選ばれるだけのことはあります。そこから他の島に渡ろうものなら、船が少なくてもっと大変!!今回の旅程はまさに針の穴を通すようでした。

島には何もないけど、すべてがある。そんな印象です。本当に豊かな島ですね。ジオパークの認定を受けた自然はワイルドで、手付かずの素朴さもとても良いです。

そんな隠岐の島の西郷港地区のコンペを取った建築家の菅原大輔さんとも空港でばったり!ニッチなところでニッチな人に会うと嬉しいものですね。



ところで私は、毎年全国のいろんなホテルを訪ね歩いています。今回の隠岐の島行きの目的のひとつは、ずっと行ってみたかったENTOというホテルに泊まることでした。

ENTO https://ento-oki.jp/

設計はMount Fuji Architects Studio。昨年度のJIA優秀建築賞も受賞された建築です。



構造は木造CLTパネル構法によるモノコック構造。職人不足から、島での建設を最小限として、本島側で材料をほとんど刻み、島ではほぼ組み立てだけというプロセスにすることで驚異的な短工期を実現しているそうです。

構造設計は、山田憲明さんの事務所の元スタッフでもある蒲池さんと中さん。中さんは、過去にリオタデザインとの仕事でもパーゴラテラスの家、VALO、TOPWATERなどの構造設計を担当下さっています。

プロジェクト全体の歯切れの良さと、唯一無二の環境を活かし切った設計に感服しました。客室からのこの眺めも大迫力です!

ロビーなどには、このCLT構造がデザインとしてもうまく活かされています。地上階には隠岐の島の悠久の歴史が地球の歴史と重ね合わせて展示されたギャラリーが併設されています。こちらもなかなか見応えがありました。



わずか2泊3日の隠岐の島滞在でしたが、ほかにもここでは語りきれない様々な出会いや発見がありました。

なによりもこの大自然には圧倒されました!季節も良かったですね。ご縁にも恵まれて、もう二度と来れないかもという思いと、もしかしたら二度三度と来ることになるんじゃないかという予感とが交錯しています。

最後にいくつかの写真だけ挙げておきます。きっとこれだけで十分伝わるはず!!隠岐の島、皆さまも是非足を伸ばしてみて下さい。





23. 05 / 09

春のパンまつり

author
sekimoto

category
> STAFF
> 社会


先月退社したスタッフが、山ほどパンを抱えてやって来ました。

これまでのお礼にと、自分の人生で一番美味しかったパンたちだそう。ダンディゾンにTRUFFLE、これは確かに自分じゃ買わないな。それに「そうだ、パン買って行こう」という発想もすごくいい。

ユニークな感性のスタッフでしたが、最後まで彼女らしくて、いなくなったら急に寂しくなってしまいました。

またパンを抱えて遊びに来てくださいね!



先日のオープンスタジオで、仙台から一人の若い女性がご参加下さいました。地元の工務店に勤めているという方でした。

その方は学生時代に私のセミナーを聞いて、住宅の道に進みたいと思ったとのこと。埼玉はおろか東京にも行ったことがなかったそうですが、遠路はるばるそれを私に伝えるために、そして私の仕事を見学するためにわざわざいらして下さいました。

そのセミナーは一昨年の2021年の暮れ、友人でもある東北工業大学の石井敏先生が企画されたオンラインセミナーでした。当時の石井先生のお話では「仙台の学生は住宅に興味を持っている子が多いのに、卒業後は大手に就職する子も多く、もう少し建築家のように個人と向き合って設計をすることの喜びや魅力についても知ってほしい」とのこと。

そこで私は、我々の仕事というのは「街に放った小石そのもの」だという話をしました。

「小さな住宅ひとつ建てたところで街は変わらない」
本当にそうだろうか?

小さな住宅ひとつで街が変わるということが実際にはある。放った小石の波紋はやがて静かに街に伝播してゆく。我々の仕事はそういうものだというそんな話です。私がそこで放った小石の波紋は、さざ波のように広がって、ひとりの学生の心を動かしたようです。

我々が街の中に小さな住宅を作り続けること。
セミナーに登壇すること。
原稿を書き本を出すこと。
諸団体の雑務を引き受け運営すること。
オープンデスクの学生を受け入れ渾身の指導をすること。
スタッフを何年もかけて育て上げること。

すべてやっていることは同じなんです。それが何の役に立つの?どんな意味があるの?忙しいのに、どうしてお金にもならないようなことをやっているの?

すべては社会に放る小石のようなものなんです。

私の投げた小さな小石が社会になんらかの波紋をつくることが出来るのなら、私がこの世に生きている意味も少しはあることでしょう。

先日のオープンスタジオでのささやかな出会いは、私にとって心から勇気をもらえる出来事でした。Oさん、ご来場下さりありがとうございました。

昨日のオープンスタジオにお越し下さった皆様、ありがとうございました!

3月も盛況だったのですが、庭の緑がまだ不十分で、我が家の庭が本気を出した姿を是非お見せしたく、この時期にもう一度開催させて頂きました。今回は前回を上回る68名の方がいらして下さいました。

開始時間前にひょっこり現れたのは、今進める現場の大工さん。インスタを見て気になって来たとのこと。こういうのが一番嬉しいですね!

他にも岩手や仙台からわざわざお越し下さった方もいらっしゃいました。こちらは遠い所からありがとうございました。

他にもJIAつながりの建築家仲間や、尊敬する先輩方も。口々に頂いた感想やコメントが沁みました。16年越しの答え合わせをしているような気分でした。

最後にSADIの塚田さん。10時の予約だったのに、いらしたのは16時。来ないかと思った。今回は3月の開催も含めて塚田さんが「どうしても見たい」とのことから企画した見学会でした。

建物は年月と共にエイジングしていきますが、庭は年月と共にどんどん良くなっていく気がします。

建築費や土地の高騰があって、なかなか建築予算の設定が難しくなってきています。ですが、10年以上かけて仕上げていく「お庭仕上げ」は人生を豊かにしてくれます。太陽と水さえあればお金はいりません!これが豊かさの秘訣といえるかもしれませんね。