私の著書もデザインして下さった細山田デザイン事務所さんが本を出されたということで、先日開催された出版記念イベントへと足を運んできました。

自分の本の時は編集者さんを介してのやりとりだったので、直接お会いするのは初めて。一言ご挨拶をと思い参加させて頂きました。

どんな方なんだろう?と思っていたら、表紙のイラストそっくりの方が出てきてびっくり!

グラフィックデザインと建築というのは、二次元と三次元の違いはあるものの、考え方や美意識の根拠の求め方などに親和性があるようにも感じています。私自身、自分でグラフィックを手がける時は、素人なりにもかなりこだわってしまいますので…。

グラフィックデザイナーは、憧れの職業のひとつです。

誰も教えてくれないデザインの基本
細山田デザイン事務所

18. 03 / 28

隅切りの家取材

author
sekimoto

category
> メディア
> 仕事



今日はとある雑誌の撮影のために、久しぶりに「隅切りの家」へ。隅切りの家は、私の拙著「おもてなし住宅のつくり方」のカバーにも使わせて頂いている住宅です。

撮影は藤塚光政さん。最初写真家の名前を聞いて、おもわず二度見ならぬ二度聞きしてしまったくらい。

藤塚光政さんといえば、私の学生時代から第一線級の建築家の写真を撮り続けている憧れの写真家の一人です。まさか、自分の住宅を藤塚さんに撮って頂ける日が来ようとは…!(それなのにスタッフは誰も知らない。一人興奮する私。哀しい)

満開の桜を撮るために撮影日程をギリギリまで調整し、これ以上ないコンディションでの撮影が実現しました。今日は夕景のみの撮影。そして明日は早朝から内観を納めて頂きます。

誌面に使う私のポートレートも藤塚さんに撮って頂きました。わかりますか?藤塚さんにポートレートですよ。篠山紀信に履歴書の証明写真撮ってもらったぐらい、私の中では大事件なんです。(伝わらんかなあ!)

で、これいつ出るのかって?
来年の2月です。冷静に考えたらそうですよね。満開の桜を5月に載せたって意味がないのですから。あぁ、この誌面を1年も待たないといけないなんて。なんという贅沢!!


拙著のカバーにお母さんに抱かれて写っていた息子さんも、もう4歳だそうです。毎年この桜とともに育ってゆくのですね。感慨深いです。

流山市で進む住宅の現場では、私が最も信頼を置く板金職人、新井勇司さんによる板金外壁が間もなく完成します。間もなく現場を去る新井さんには、この機会に現場で板金納まりについていろいろと解説して頂きました。

実のところ、板金納まりは図面指示をするのが極めて難しい部位のひとつになります。匠の大工にその仕口をいちいち図面指示できないのと似ています。何がベストかというのは、頭で考えるが先に手が動くというのが職人だからです。職人ではない我々にはそのノウハウはありません。

こういう場合、設計者が伝えられるのは「こうしたい」というイメージの提示と、「こうすれば」という具体的な手段の提示までです。

前者がなければ話になりませんが、現場で正確に仕事をして頂くためには、後者の「こうすれば」の提示も不可欠だったりもします。ただ板金の場合、その後者の伝達が極めて難しいのです。

今回も新井さんはイメージ通りにばっちり決めてくれたのですが、その技術についてあらためて解説をしてもらうと、ちょっと気が遠くなるような繊細さと気遣いの連続でした。

頭では理解しましたが、それを別の板金屋さんに説明したら、絶対に「そんなことできないよ!」って言われるんだろうなと思います。それは職人の技術や経験、そして知恵や感性に依存するもののような気がします。

我々は図面を描く仕事です。
図面をろくすっぽ描かない設計者を私は軽蔑します。しかし図面を描けばできるというのもまた、設計者の思い上がりなのです。世の中には図面には描けない世界がある。図面に描いたからといって、誰にでもできるわけじゃない。これもまた現場の真実です。

「この人しかいない」
設計者もそう思ってもらわないと仕事を頂けないのと同じように、職人の世界もそうであって欲しいと思います。私が尊敬する職人というのは、そういう職人です。


この週末は絶好の日和に恵まれ、行楽に出かけた方も多かったのではないでしょうか。私は家族と小田原~鎌倉方面に小旅行に行ってきました。

目的の一つは、昨年のオープン以来ずっと行きたかった「江之浦測候所」へ行くこと。場所は小田原にあります。

「江之浦測候所」とは、美術家の杉本博司氏が私財を投じて壮大なスケールで作り上げた美術施設であり、「建築」であり「彫刻」でもあり、はたまた「庭」であり「インスタレーション」のようでもありと、過去に例のない施設なだけに説明が難しいのですが、ひとつだけ言えるのは「測候所」の名が示すとおり、それらはすべて”自然観測”のために作られているということです。

広大な敷地に設定されたいくつもの軸線は、夏至や冬至、春分秋分の日の日の出線を示しており、大きな地球時間に合わせて、この建築群は様々な表情を見せることになります。まるで太古の時代のストーンヘンジといった遺跡群を彷彿とさせます。

私の中では、これまでで見た美術作品の中でも最も素晴らしいものでした。行った時期も良く、菜の花の香る敷地はただ佇んでいるだけで幸せな気分になりました。

完全予約制の施設です。小さいお子さんは連れて行けませんが、大人の方はこの春のドライブに是非足を延ばしてみてください!

江之浦測候所
http://www.odawara-af.com/ja/enoura/






アールトはディテール。
ディテールにこそ、アールト建築のエッセンスは宿っていると思います。

建築の実現の前には必ず技術の壁があり、これを乗り越えてはじめて建築は世に誕生するわけですが、問題解決のために「芸術」と「技術」との交点に存在するもの、それこそがディテールです。

アールトらが設立したartekの社名が示すように、「芸術(Art)と技術(Technology)の融合」は、そのままアールトの建築世界そのものを表現しています。

そんなことで昨年、多くのアールト、北欧建築に関わる著書をお持ちの九州産業大学の小泉隆さんに、SADIでアールトをディテールで切る講演をして欲しいと打診をしましたら、「ちょうど3月にアールトをディテールで切る本を出すんですよ」とのこと。なんと!

小泉さんの著書はすでに発売されています。是非お手に取って頂きたいのですが、アールトのハンドルコレクションを含め、実に丹念にディテール採取をされ、的確な解説を寄せて下さっています。そして思いました。やはりアールトはディテールなんだと。

そんなことで、SADIとして私の肝いりで企画を進めてきました小泉隆さんの、書籍と同名タイトルのSADI講演会が今週金曜日(3月23日)にあります。アールトってよくわからない、という方はまずは視点をディテールに移すことをお勧めします。

(もちろん、ディテールには文字通りの”細部”という意味もありますが、全体構成を司るのもディテールであるということは付け加えておきます)


SADI|小泉隆講演会
「アルヴァ・アールトの建築|エレメント&ディテール」

3月23日(金)19:00~
新宿・工学院大学中層棟8階ファカルティクラブ
※詳細はこちらより
https://sadiinfo.exblog.jp/28077872/

※事前申し込みはいりません。
※満席が予想されますので、お早めのご来場をお勧めします。