先だっては、照明プランナーの吉澤麻由香さんが所内でプチ照明セミナーを開催して下さいました。

我々の設計では、照明計画は実施設計の一番最後のフェーズで、これまでの設計内容を伏線回収するようにプロットしていきます。照明計画では、ただふわっと明るいという空間を作るというよりは、部屋全体の明るさ(アンビエント照明といいます)と、本を読む、料理をするといった目的を叶えるための灯り(タスク照明といいます)とを分けて考えます。更にそこに加えるとすれば、空間全体のムードを高めるための演出ですね。

この環境光/演出光/目的光の使い方について、とてもわかりやすく解説して下さいました。私はいつもこの照明計画を感覚的にやってしまうのですが、これからはもう少し科学的なアプローチで、JIS照度(lx)なども意識して計画をしていきたいと思っています。

まだ私は感覚的ながらも、経験があるので住宅についてはなんとなく配光の勘所がわかるのですが、若いスタッフはやっぱり基本から教えてあげないとこの難しい計画の要点はなかなか掴みきれません。

また照明カタログの見方などもこの日はスタッフ共々勉強させて頂きました。吉澤さん、ありがとうございました!また具体的な案件でご一緒しましょう。

今年に入ってからも、設計相談のご連絡をちょいちょいと頂いています。大変ありがたい限りです!ただ一方で、全体スケジュールについては建て主さんのご事情に寄り沿うようなお返事が出来ないこともあり、実質お断りするようなことになってしまっている時もあります。

現時点で設計をご依頼頂くと、一般的な戸建て住宅の場合、お引き渡しまでに現在約2年程度のお時間を頂いています(あくまで設計+工事の期間を含めたトータルスケジュールです)。お待ち頂ける方もいますが、そうでないご事情を抱えた方もいると思いますので、こちらはとても心苦しく思っています、、。

そんなことで、ここでもう少し現在の我々を取り巻く仕事状況について、内情も含めて今一度この場でも書いておきたいと思います。

現在我々が抱えるプロジェクトは、こちらの[進行中の計画]に載せているものがメインになります。こちらで現在9件あります。

こちらはまだ未提案だったり設計契約前のものも含まれていますが、すでに土地があり口頭ベースで設計を依頼されているものになります。一方水面下で土地探しの相談に乗っているものなどもありますが、こちらはどうなるかわからないので、現時点ではカウントに含めていません。

うちの事務所は現在、私以外にスタッフが2名おります。ほんとうはもう一人くらいほしいのですが、なかなか良い人がみつかりません・・(引続きスタッフ募集中です!)

うちの仕事の進め方は、私はすべての案件のすべてのプロセスに関わりますが、メインは対外的な活動や交渉、建て主さんとのやりとり、最初の案の提案などです。案が軌道に乗ったら、作図はスタッフにお願いして私はそのチェックや、間違った方向に行かないようそのディレクションにつとめます。現場にも足を運びます。

設計が実施設計(現場や見積りのための詳細設計)に入ると、担当スタッフはその仕事にかかりきりになります。うちはこの設計プロセスにすべてを賭けているといっても過言ではないくらいに集中して向き合いますので、スタッフはとても他の実施設計とカケモチは出来ません。つまりスタッフの数だけしか実施設計は動かないことになります。

うちは現在スタッフが2名なので、ツインエンジン状態。ひとつの実施設計に4ヶ月程度かけますので、当該スタッフが担当するその次の実施設計案件は、それが終わるまでお待ち頂くことになってしまいます。これが時間がかかっている原因です。

ですが、こちらを辛抱強くお待ち頂ける方には、他の事務所にはないような濃厚な設計密度をここに織り込んでいきますので、必ずやご満足頂けるものにはしていけると思っています。

一方でスタッフの数をいたずらに増やしても私の体はひとつしかないので、今の仕事の質を落とさないようにと考えると事務所を大きくすることには興味が向きません。良くも悪くも、これがアトリエ体質というやつかもしれません、、。

現在お待たせしてしまっている方にも申し訳なく思っておりますが、どうかお付き合いの程お願い致します。ご新規の方も、この点だけご了承頂けましたらいつでも全力で取り組ませて頂きますので、こちらも何卒よろしくお願い致します!

24. 02 / 26

建築知識3月号

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sekimoto

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> メディア
> 仕事



建築知識3月号は模型特集。「花小金井の家」をプロのモデラーに模型制作して頂きその制作プロセスを解説いただいたほか、我々がつくるスタディのラフ模型やプレゼン模型の勘所についても解説させて頂きました。

また昨年竣工の「越屋根の家」についても再取材&撮影をいただき、見開き4Pにわたってご紹介頂きました。こちらもご掲載をありがとうございました!

企画段階では、CGが全盛になりつつある今、模型の特集を組むことについて担当編集者さんにも不安や迷いがあるようでした。

うちはいまだに模型主義を貫いています。単にそういうソフトを扱うスキルがないこともあるのですが、模型の本質は設計の抽象化にあるような気もしていて、リアルの追求ではなく、抽象化するからこそ見えてくる骨格やプロポーションの確認は、図面と同じくらい重要なプロセスのような気がします。

何より建主さんに喜ばれるんですよね。模型を見せると「わぁ!」となりますし、担当スタッフにとっても、私が考えた案を自分の手で立体にすることで、自分に引き寄せて空間を理解することにつながっているとも感じます。

最近では事務所にも模型の置き場がなくなり、竣工すると建主さんにプレゼントしてしまうのですが、これもまた喜ばれます。玄関などに特注のアクリルケースを被せてディスプレイして下さっていたり、それを見るのもやっぱり嬉しいものです。

我々は修行した事務所で手描き図面を描いた最後の世代だと思っていますが、今いるスタッフにはプレゼンで模型を作る最後の世代になるよと言っています。そのうち、スコヤを使ってスチレンボードを面取りしながら模型を作った経験を、彼らも懐かしく語って聞かせる時代が来るかもしれませんね。



24. 02 / 20

ピン角合わせ

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sekimoto

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> 仕事
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昨年竣工した川越の「越屋根の家」の向かいにある納屋を、現在二期工事として改修中。

横葺き屋根のコーナー部分の納め方について、これまでは下の写真のような納め方を標準としていて、私の中ではこれでも十分きれいな納まりだと思っていたのだけれど↓↓


板金屋さん(新井勇司さん)の提案でこの納まり(ピン角合わせ)に。正直いって納屋の屋根にしておくにはもったいない…。


この納まり、知らなかったのは私だけなのかな。横葺き屋根がここまでシャープに納められるのだということに驚きました。

どうやって折っているのかなんて、聞かれたって私にはわかりません!でもこれを知ってしまったからには、次の現場もこれでやってほしいと言うのでしょうね笑

たかが納屋、されど納屋。我々以上に職人さんがこだわってしまい、普通の納屋が芸術作品になりそうな予感なのですが、完成が実に楽しみです!

24. 02 / 18

幻のカフェ

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sekimoto

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> 生活
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埼玉の郊外で車を走らせていたら少し小腹が空き、近くのカフェへと立ち寄った。携帯でたまたま出てきたお店。しかしそこは農村ののどかな景色がどこまでも続き、おおよそ洒落たカフェがあるようには思えない。

唐突にあらわれたそのお店は、控えめな中にもこだわりのある佇まい。店内も華美ではないが、清潔感があって置いている家具や置き物を見れば、一定の美意識のあるオーナーだということはすぐわかる。50代くらいのご夫婦がお二人でやっているお店のようだった。

カウンターには徳島のアアルトコーヒーの豆がある。やった、当たりだ。本棚にはアンドリュー・ワイエスの画集とともに、アルヴァ・アールトの作品集。ほかにも建築家・永田昌民さんの本や、センスの良い雑誌が静かに重ねられて置いてある。コーヒーカップはアラビアのパラティーシ。もうまちがいない。

出てきたカレーもコーヒーも本当に美味しくて、食後に頼んだケーキも絶品。流れている音楽も、窓からの景色もすべてが最高だった。カードは使えず、インスタのページもない。それなのに、次から次へと地元の人たちが入ってくる。若いカップルはいない。皆静かに、そのお店の雰囲気を味わっているようだった。こんなカフェが郊外にひっそりとあるなんて奇跡だと思った。

お会計を済ませて帰路につくと、妻がレシートを見ておかしいと言いはじめた。こんなに安いはずはない、レジを打ち間違えたのではないかと。あの手の込んだケーキは350円で、徳島から取り寄せたアアルトコーヒーは400円だった。びっくり!あまり金額も見ないで頼んでいたけど、どうもそれは間違いではなさそうだった。

幻のカフェ、次に行ったらちゃんとあるだろうか?誰にも教えたくないお店というのはこういうお店のことを言うのだろう。