24. 02 / 18

幻のカフェ

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sekimoto

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> 生活



埼玉の郊外で車を走らせていたら少し小腹が空き、近くのカフェへと立ち寄った。携帯でたまたま出てきたお店。しかしそこは農村ののどかな景色がどこまでも続き、おおよそ洒落たカフェがあるようには思えない。

唐突にあらわれたそのお店は、控えめな中にもこだわりのある佇まい。店内も華美ではないが、清潔感があって置いている家具や置き物を見れば、一定の美意識のあるオーナーだということはすぐわかる。50代くらいのご夫婦がお二人でやっているお店のようだった。

カウンターには徳島のアアルトコーヒーの豆がある。やった、当たりだ。本棚にはアンドリュー・ワイエスの画集とともに、アルヴァ・アールトの作品集。ほかにも建築家・永田昌民さんの本や、センスの良い雑誌が静かに重ねられて置いてある。コーヒーカップはアラビアのパラティーシ。もうまちがいない。

出てきたカレーもコーヒーも本当に美味しくて、食後に頼んだケーキも絶品。流れている音楽も、窓からの景色もすべてが最高だった。カードは使えず、インスタのページもない。それなのに、次から次へと地元の人たちが入ってくる。若いカップルはいない。皆静かに、そのお店の雰囲気を味わっているようだった。こんなカフェが郊外にひっそりとあるなんて奇跡だと思った。

お会計を済ませて帰路につくと、妻がレシートを見ておかしいと言いはじめた。こんなに安いはずはない、レジを打ち間違えたのではないかと。あの手の込んだケーキは350円で、徳島から取り寄せたアアルトコーヒーは400円だった。びっくり!あまり金額も見ないで頼んでいたけど、どうもそれは間違いではなさそうだった。

幻のカフェ、次に行ったらちゃんとあるだろうか?誰にも教えたくないお店というのはこういうお店のことを言うのだろう。