今週一週間は、日大理工学部2年生の長谷川理奈さんのオープンデスクでした。現在設計進行中の横浜市の敷地をケーススタディとして、一週間で四案ほど作ってもらいましたが、今日はたまたまその当該の建て主さんとの設計打合せがあったため、建て主さんにはサプライズで学生案をプレゼンしてもらいました。

大学の設計課題では、非常勤の先生(私)からの容赦ないつっこみに晒されるところですが、今日は優しい建て主さんのおかげで温かなお褒めのお言葉を頂くことができました。Fさん、気を遣わせてしまい申し訳ありません笑

その後はそのまま実施設計の打合せにも同席してもらいましたが、建て主さんの高い生活意識や、図面への関心の高さ、会話のキャッチボールから設計がどんどん変わってゆくプロセスなど、大学ではけして経験できない体験に大変勉強になったようです。

今週はたまたま外出や打合せの多い週だったので、連れ回された長谷川さんも得るものが多かったのではないでしょうか。スポンジのように何でも吸収する貪欲さは若さもありますが、その日取ったメモを毎日ノートに清書して記録として残すなど、彼女の意識の高さにも驚かされました。

彼女にはこの一週間が一ヶ月くらいに長い時間に感じられたそうですが、成長のため身長も1センチくらい伸びているかもしれません笑。長谷川さん、一週間お疲れさまでした!


学生さんは試験も終わり、楽しい楽しい春休み。この春休みはどうしたことか学生のオープンデスク(インターン)希望者がやたらと多く、5人も受け入れることになってしまいました。今週は1人、3月からは4人が4週連続でやってきます。

大学は日大理工学部から3名、日大芸術学部から1名、共立女子大から1名。実は、それとは別に他大からもう2名の希望者があったのですが、さすがに無理なので夏休みにということでお願いしました。

うちは基本的に、オープンデスクといっても事務所の仕事には触らせません。設計課題を出して、即日設計ベースで毎日エスキース(設計指導)をします。いわばマンツーマンの住宅設計塾のようなもので、これは企業なら結構いいお金を頂けるやつなのですが、学生なので特別に無料です笑。これをやると、休み明けから飛躍的に設計が伸びるのが出てきます。

期間中は私と行動を共にしてもらうので、建て主さんとの打合せやら現場やら、あらゆる会合に連れ回します。建築は社会との接点やいろんな人との関わりから生まれていることを感じてもらいたいと思います。

もっとも、スタッフにはそんなに丁寧に教えないので、オープンデスクへの待遇が良すぎかもしれません(スタッフは嫉妬しているかも?)。今回事務所に来る5人はしっかり学んで下さい!

20. 02 / 16

ずきっとする

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sekimoto

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民間検査機関の処分報道。これから書くことは今回の処分内容とは直接関係はないという前提で読んでください。

建築に限らず、法規というものは作っているのも人間、それを判断するのも人間。そしてそこに書かれているのは常に原則論でしかないので、各論については解釈が生まれる。ある人はそれで良いといい、ある人はダメだという。我々なら、ある民間検査機関で法解釈を巡ってダメだと言われて出口がなくなり、でもそれっておかしくない?という理不尽だけが残り、別の民間検査機関に持ち込んだらあっさりOKがもらえたということもよくある。

こういう話をヒリヒリした実務に携わっていない人が聞くと、ズルしてるんじゃないかとか、脱法行為なんじゃないかとか思われるかもしれないけれど、そうじゃない。当事者である建築士は、いつも冤罪事件の弁護人みたいなものだ。有罪になったら上告して最高裁で戦うみたいな。最高裁から「無罪」と書かれた札を抱えて飛び出す日を夢見て。

建築法規も学校の校則みたいだなと思うことがよくある。襟足は何センチとか、ソックスは白しかダメだとかばかみたい。元々は風紀を守るという目的だったはずなのに、それを細則に落としてゆくと途端に理不尽になっちゃうみたいな。それにわかりやすく背けば校門で体育教師に指導されちゃうわけだけど、賢い生徒は解釈で戦う。じゃあクリーム色は白か?みたいな。ベージュはアウトか?っていう。体育教師も困っちゃう。

今回の処分は、物分かりの良い先生がいて、生徒の喫煙を見て見ぬふりをしたとか、さらにちょっと酒を飲ませちゃったみたいなことに近い。そもそもタバコ吸った生徒が一番悪いわけだけれど、でもそれを見逃した上に酒まで飲ませちゃったら完全にアウト。この一線の越え方には同情の余地はない。

でもね。あの時あの先生「お前の言ってることわかるぞ」って言ってくれたから今があるみたいな、そういう恩義をちょっと感じてる生徒はその先生が教育委員会でめっちゃ吊し上げ喰らっているのを、ちょっと心痛めて見てるみたいなことってあるかもしれないなぁ、て思う。

こうやって微妙に庇うようなこと言うと、めちゃくちゃ炎上しそうなので怖いんだけど。ちょっと心の奥がずきっとするという話。
スタッフが糸井さんの「ほぼ日」のコンテンツで、北欧家具taloさんのインタビュー記事があり、そこに私らしき人物とのエピソードが書かれていたというので、どれどれと見てみました。

伊藤まさこさんがtaloを訪ねて、山口太郎くんにインタビューをするという記事でした。フィンランドに留学していた幼なじみの○○くん(私)。懐かしい…。

ヴィンテージ家具を売る仕事
https://www.1101.com/n/weeksdays/contents/14652

北欧家具taloさんは、うちの建て主さんなら一度はお世話になった方も多いですよね。太郎くんは相変わらず大活躍だなあ。

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sekimoto

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人というのは一度便利なものを見つけるとなかなか手放せなくなる。構造材ならベイマツ材。強度の高いベイマツを使えば梁成をひとまわり小さく出来る。階高をなるべく小さくしたい、ロングスパンを飛ばしたいと考えると、おのずと梁材のスペックはベイマツ表記となりがちだ。しかも安いときている。

しかしそれが固定化すると、次は「梁=ベイマツ」なのだと思い始める。天井の懐があってもベイマツ。スパンが短くてもベイマツ。国産材をもっと使っていこうと言っているのに、そろそろ安易にベイマツばかり使うのは卒業しようよということで、今進めている建物では梁と柱をすべて国産の杉材にすることにした。ベイマツにしたい気持ちをぐっとこらえて、梁をちょっと大きめに。

しかし杉と書くだけなら誰でも出来る。セットで必要になるのが性能表示だ。杉を梁に使うならE70は欲しい。そこで性能表示材、JAS製材の話になる。

そこであらためて古川泰司さんと山田憲明さんの対談記事を読み返した(以前はちゃんと読んでいなかった)。ふむふむ。そうやって問題意識を自分の中に落としてから読むとすんなり内容が入ってくる。なるほど、そういうことだったのか。やっとわかった。(理解が遅いんです、、いつも)

それでもいくつか知りたいことがあり、古川泰司さんに直接電話した。考えたら、本の中の人に直接電話して聞くというのは、なんという贅沢だろうとあとで気づく。山田憲明さんにもあとで教えてもらおう。私のまわりには師がいっぱい。古川さん、ありがとうございました!