今回ノルウェー行きの目的のひとつは、ノルウェーが生んだ巨匠建築家スヴェレ・フェーン(Sverre Fehn)の建築を見ることでした。オスロから日帰り圏内のハーマルには、フェーンの最高傑作と言われるヘドマルク博物館があります。

少ない滞在期間の1日をこの建築を見るために確保し、直前にサイトで詳細を調べてみると、どうやら3月は閉館しているらしい?ということがわかりました。このために来たのに・・と途方に暮れましたが、諦めきれずに駅のインフォメーションで聞いてみると「今も開いている」との答えが。

これは朗報!と予定通り、今日は片道1時間半の鉄道に揺られてハーマルまで足を延ばすことにしました。


ところがこのヘドマルク博物館、とんでもない場所にあるんですね。駅についても案内もなにもありません。バスの運転手さんに聞きまくって、ようやく辿り着きました。(めちゃくちゃ寒かったです!)

ところが・・。現地に着いてみると閑散としているんですね。たまたま通りかかった人に聞くと、今の時期はクローズだとの答えが。

え!?やっぱりそうなんだ。はるばるここまで来たのに・・。それでも諦めきれずに、建物の外をぐるぐる回っていると中に人の気配が。

どうやら博物館の学芸員はオフシーズンも仕事をしているようです。この学芸員の方に声をかけ、事情を話してお願いすると「しょうがないわね」という感じで、中に入れて頂くことができました。ほぼ貸し切り状態で、しかもつきっきりでガイドまでしてくれるという幸運!

これが日本ならあり得ないでしょうね。クローズの日にスタッフの独断で外国人を入れてしまうのですから。北欧の人はこういう融通の利かせ方が素晴らしいといつも思います。

余談ですが、昨日市内の美術館の受付でフリーチケットをなくしてしまい、ポケットを探って焦っていると、入場料も取らずに入れてくれたということもありました。北欧のこういう(良い意味で)ゆるいところが、私は大好きです。



ヘドマルク博物館は、二つの建築によって成り立っています。ひとつは800年前のカテドラルの遺構を、ガラスですっぽりと包み込んだシェルター(上の写真)。こちらの設計はフェーンではありません。

そしてもう一つが、司教の要塞跡を復元し、なおかつそこに現代建築を挿入して博物館として蘇らせたカテドラル博物館。こちらがフェーンの設計によるものです(トップの写真も)。





遺構と現代建築が見事に調和した佇まいに鳥肌が立ちました。単に遺跡を残すということではなく、それを手がかりにしてまったく新しい建築を作りだしているという点において、見たことのない空間でした。

フェーンは同じ北欧でも、アールトよりはイタリアのカルロ・スカルパのような空間に近いと感じました。それは今回の遺構がそのように見せているのか、本当はそうではないのか、他の建築も見て判断しないといけませんが、今回はフェーンの作る建築に触れる大変貴重な機会となりました。

これでオスロに思い残すことはなさそうです。

ちなみにこのように書くと、家族はどうしているのかと不思議に思われるかもしれません。

こうした建築を巡る旅は、我が家では普通のことなので文句を言われることはありません。息子もずっとカメラで写真を撮っていました。奥さんも建築を見るのが好きのようです。家族には感謝しないといけません。

16. 03 / 30

オスロへ

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sekimoto

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ノルウェーのオスロにいます。

この一週間をつくるために、この3ヶ月間スケジュール調整に明け暮れました。家族を連れて11年ぶりの北欧、そしてノルウェーは初めての国です。

オスロはヘルシンキとも、ストックホルムとも違う街です。印象をひとことで言うと「静かな街」。街を歩いていても、お店に入っても、オスロ中央駅であっても、人はいるのにざわざわ感がない。寂しさや廃れ感とは全く違う、活気のある静けさ。大人の街という気がします。



一般に「北欧」と一括りにされますが、アジアの中でも日本と韓国と中国が違うように、北欧の国々はそれぞれ異なる文化や国民性を持っています。それでもやっぱり、私は北欧の国に共通して理屈を越えた共感と居心地の良さを感じるのです。

「ああ私の国がここにある」という感覚。この深い根はどこにあるのだろう。

15. 04 / 05

名護市庁舎

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名護市庁舎。一本の巨大なガジュマルの木のようだ。

象設計集団はこの市庁舎の設計で建築学会賞を受賞している。私は18年ほど前に一度訪れているが、今回の再訪には正直鳥肌が立った。時が経つほどに魅力が増し、市民に開かれ、風土をこれほどまでに反映した建築の例を私は知らない。

沖縄には琉球王国の城(グスク)の数々が世界遺産に登録されている。古代遺跡のような佇まいのこの市庁舎もまた、世界遺産に相応しいと私は思う。琉球王国が現代にあれば、こんなグスクだったに違いない。

15. 04 / 04

逃避行

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sekimoto

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先の予定が立てられないのは、この仕事の宿命かもしれない。現場は予定通り進んでくれた試しはないし、クライアントからは昼夜を問わずメールが来る。そして問題はいつでも起こるべくして起こるのだ。

事務所に勤めていた頃、現場が終わったら行こうと何ヶ月も前から計画していた北海道旅行が、直前になって現場の遅延で流れたことがあった。「行くの?」との所長の一言に、行きますとは言えなかった。

この春休みに沖縄に行こうと決めた。
私は所長だ。何が起こったって知るもんか。

14. 01 / 06

掘る男

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新年あけましておめでとうございます.
今日が仕事始めとなります.本年もどうか変わらぬお付き合いをお願い致します.

昨日宮古島から帰ってきました.昨年のお正月は石垣島に行ったので,二年続けての沖縄旅行です.寒いときに暖かいところに行くというのは,とにかく穏やかに開放的な気分になれます.避暑ならぬ避寒といったところでしょうか.

この時期の宮古島は雨期というか,とにかく晴れることがとても少ない時期です.空はどんよりと,それでも気温は20度くらいあるので寒くはありません.さすがに泳げるような気候ではないので,小さい島の中をドライブしたり,いくつかある海岸や展望台のような場所を巡るような滞在でした.

ちょっと気の毒だったのは子どもで,我々に車で連れ回されながら終始つまらなそうにしています.移動中も景色を眺めるわけでもなく,ずっと手持ちのゲームに没頭しています.土をこねるのは好きだろうと思って,陶芸体験のようなところにも連れて行ったのですが,なんとなくふてくされています.でも正面切ってつまらないと言うでもなく,とにかく無気力なのです.

昔は家族旅行というと,子どもに手がかかって仕方がないものでした.お店では走り回るし,ベッドでは飛び跳ねていたものです.それが今では大人しくホテルでもお店でもゲームばかりしている.ああ,なんだか限界だなあ.子どもにとって,もはや家族旅行は特別楽しいものではないという時期に差しかかってきているのかもしれません.寂しいことですが.

最終日を残した晩,食事をしながら子どもに「明日は何をしたい?」と訊いてみました.その時は「べつに」と答えていましたが,夜寝る前になって,急に思い出したように「明日は海で遊びたい」とはじめて自分の希望を伝えてきました.

それならと次の日はひたすら海で遊ばせることに.とはいっても,海岸には誰もいないし,泳ぐこともできない.そんなところでうちの子は何をしていたかというと,ひたすらに砂を掘っていました.砂を掘って,何かを作っては次の瞬間には壊して,を繰り返しているのでした.あちこちで,もう飽きずに何時間も.

思えばうちの子が外で何時間も遊んでいること自体,久しぶりのような気がします.昔は喜んでついてきたサッカーも,最近では誘っても乗ってきません.そんな風になって久しいのです.それが自然の中で何時間も実に楽しそうに遊んでいる.

そして急に無邪気な声をかけられました.「ねえお父さん,一緒に山つくろう!」
子どもと一緒に砂遊びをするなんて,それこそ何年ぶりでしょうか.なんだか遠い昔に引き戻されたような気分です.

そうか.自然は自由だから楽しいんですね.大人はどうしても型にはまった遊びをしようとします.海ならシュノーケリング,眺めを見るならあの岬,夜はあのお店で,という具合に.子どもにとっては,陶芸教室のお決まりのお題より,何もない砂浜の方が100倍も楽しく創造力をかきたてられる場所なのかもしれません.

かくして,大人にとっては退屈だった何もしない数時間は,子どもにとってはこの旅行で最高に楽しかったひとときとなったのでした.

うちの子は今10歳で4年生です.ちょっと大人びたところのある子どもです.この調子だと親離れは思いのほか早く来るかもしれません.中学生になったら,もう親と一緒にはお正月も過ごさなくなるかもしれません.

お正月の家族旅行も,もしかしたらあと行けても2回くらい?そう考えると愕然とします.子どもの成長を見守りながら,親は少しずつ”その時”が来る覚悟をしないといけないのかもしれませんね.

まあとりあえず,来年はどこ行こうか?
そう考えてこの一年を過ごすこととします.