ヘルシンキの旅が続きます。
今回はある意味私の原点を辿る旅になっています。この日は私がフィンランドに行くきっかけともなったミュールマキ教会(設計:ユハ・レイヴィスカ)からはじまり、かつて何度となく通ったアールトの建築を見て歩きました。
レイヴィスカの空間には、やはり今回も言葉になりませんでした。私の建築への思いがすべてここに詰まっています。もうここに来るのは何度目でしょうか。
同じ建築に何度も足を運ぶというのは、名作の文学を何度も読み返すのと同じ効果があるように思います。初心に還るとはこういうことなんですね。
来て本当に良かった。そして当時これを見てフィンランドに渡ったのは間違いではなかったと、あらためて確信しました。
そしてアールト自邸。
ここも約15年ぶりの来訪です。あれから私は独立し、いくつもの住宅を作ってきました。そうした経験を経てこの住宅を見ると多くの発見があり、アールトの奥深さを感じ、また共感もありました。
この住宅を経て、アールトはモダニストからヒューマニストへと変貌してゆきます。このヘルシンキの自邸は、この数年後のマイレア邸へとつながる極めて重要な住宅です。
そしてこの頃のアールトに非常に重要な役割を果たしたのは、日本文化であると私は思っています。実際にそうしたアイコンがこの住宅にもいくつも見ることができました。この話はまたの機会に。
アールトスタジオ。アールトは先の自邸兼スタジオを建てた約20年後に、自宅の近くに独立した事務所を建てます。
この建物をどう評価して良いのか、昔はわかりませんでした。でもここは今回私の中で大きく評価が変わりました。
例えていうと、この建物はアールトの得意とする油絵の抽象画のようです。ひと目ではその正体を掴ませない。アールトって本当に何者なんだろう。今でも理解しきれていませんが、少しずつその理解が深まっていることはわかります。
また数年後に来てみたい。アールトは建築家の年齢と共に理解が深まってゆく建築なんですね。
この日はその後エスポー在住の遠藤悦郎さんとも合流。いろんなレア&コアなアールトスポットにも連れて行ってもらいました。悦郎さん、いつもながらにありがとうございます!
そしてこの日の最後には、ヘルシンキのアテネウム美術館で開催中のアルヴァー・アールト展へと足を延ばしました。
実は今回ヘルシンキ旅行を決めたのは、どうしてもこの展覧会が見たかったからなんです。
本当に素晴らしい展覧会でした。アールト財団、アルテック、そしてアテネウム美術館が本気を出すとこんなものが見られるのかと、心底感動しました。滞在中もう一度行ってもいいくらいです。
これまでアールトの建築展とか、家具だけというのは随分ありました。正直私はもうお腹いっぱいで、もういいやと思ってしまいます。
でも今回は違います。建築はアールトの一部に過ぎないのだということ。でもその一部である建築の見せ方もすごい。
ここにあるのは全て本物なんです。アールトの原図や直筆スケッチはもちろん、世の中に出回っている全てのコピーのオリジナルがここにあります。これは本当にすごいことなんです。
そしてあんな映像やこんな仕掛けまで。私は終始興奮が止まらず、ずっと鳥肌が立っていました。本当に来て良かったです。
さて明日はクライマックス。
聖地巡礼の旅は続きます。
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