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sekimoto

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> 社会
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とある計画で,土地を買ったクライアントより「不動産取得税の軽減措置」のための必要書類について問合せを受けた.不動産取得税の軽減措置というのは,土地を取得してから3年以内に住宅を新築すると,土地の減税措置が得られるというもの.

ところが問題はここからはじまる.

クライアントによると,都税事務所からは地方税法73条にもとづき,これらの手続きは土地を取得後30日以内にやらなければならず,しかもその際の提出書類には平面図に加え,確認申請書と工事契約書が必要になると言われているのだという.

ちょっと待ってください.

都税事務所の要求を言い換えるとこういうことになる.
「土地を買ったら1ヶ月以内に,設計を完了し,確認申請を下ろし,工務店と契約して,書類を提出しなくてはならない」

実際には確認申請にももろもろ2週間くらいかかるし,工事見積りだって2~3週間はかかる.確認申請と工事見積り・契約を同時に進めたとして,差し引くと「設計は土地取得後1~2週間以内にはすべて完了しなくてはならない」ことになる.

こんな馬鹿な話ってあるだろうか.

ただ巷にはこういう話は事欠かない.例えば銀行.
銀行に至っては住宅ローンを組む場合,土地の取得時に銀行への提出書類として「図面と工事見積書」が求められる.つまり土地を取得すらしていないのに,そこにはすでに図面が存在していて,工務店が決まっていて,見積書まで揃っている必要があるのだ.

トータルするとこういうことになる.日本では官民あげて,
「住宅を建てる際は,建て売り住宅かハウスメーカーでなくてはならない」

(設計事務所?へぇ,おたく変わってますね)

これっておかしくないですか?
どうして問題にならないのだろう?

13. 10 / 04

わかるわかる

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sekimoto

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> 大学
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大学2年生の設計演習がはじまりました.今年ははじめての担当になりますが,はじめは本間至さんの「久我山の家」の図面トレース.なかなか良い課題です.

本間さんと言えば枠廻りのスペシャリスト.さりげなく描かれた細部にはびーっしりとそのノウハウと思想が詰まっています.学生に渡しているのはまだまだ初級編なわけですが,そこにしたためられたさりげない情報に「ですよね」「なるほどね」「わかるわかる」と一人ほくそ笑む怪しいわたしです.

学生の作業中,ひまになる私はホワイトボード一面に張られた本間事務所の実施図面に片っ端から目を通して行きます.よく描かれてます.もうね,ずっとニヤニヤしてるわけです.「ですよね」「なるほどね」「わかるわかる」

実は別のコマで本間さんとご一緒しているので,そこで感じた疑問を矢継ぎ早に質問の嵐.返ってくる返事には,やはり「ですよね」「なるほどね」「わかるわかる」.
あぁ幸せ!この領域に早く彼らを連れて行ってあげたい.まぁ10年はかかるけどね.

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sekimoto

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> 大学
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スーパージュリー悲喜こもごも。土曜日は日大の優秀課題作品を対象にした、外部講師を招いての公開プレゼンテーションがありました。受賞に絡めなかった人は悔しい思いをしたでしょうが、オリンピックみたいなもので出場できるということが、どれほど名誉なことか考えてみてください。

その中で見事金メダル(最優秀)を取った亮輔、本当におめでとう!一年生から成長を見てきて、計画に進むか悩んでいたこともあったね。良かった!本当に嬉しくて涙が出ました。

13. 09 / 26

メトロタイル

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sekimoto

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> 仕事
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「ほら,今人気のニューヨークメトロのタイルってあるじゃないですか」
クライアントにそう振られたって,涼しい顔で「あぁ,ハイハイ」と言わなくちゃいけない時だってあるわけです.

そんな「某人気スタイリストさんが広めたとされる今巷で人気のニューヨークメトロに張られていたタイル」なわけですが,プロであるはずの私はなにも知りませんでしたが,なにか.

このタイル,精度がひどくて厚みのばらつきが半端ないらしいんですが,このばらつき感がウリなのだとか.翌日,わが優秀な部下ウシジマ君は早速このタイルが実際に使われている店舗を調べあげ,メモをこっそり手渡してくれたわけです.見に行きましたよ,さっそく.ふ~むなるほど.

で,早速今日から使おうと思います.タイルじゃなくて.
「ほら,今人気のニューヨークメトロのタイルってあるじゃないですかぁ?」

先日とある小説を読み終わりました.
いわゆるアトリエの建築設計事務所を舞台にしたお話です.
「火山のふもとで」(松家仁之・新潮社)

世に建築家を主人公にした小説やドラマはあまたありますが,どれもこっちが恥ずかしくなるような設定が多くて,中にはそういう人もいるんでしょうけど,おおよそ事実とかけ離れていることも多く,そういうものを目にするたび社会の建築家に対する誤解や偏見(ときに悪意)が反映されているようで微妙にへこみます.

この小説は実にリアルです.こんなに誠実に,そしてさわやかに建築に対する愛情や哲学を散りばめた小説ははじめてです.実際私が読んでも違和感を感じないどころか,そのまなざしには共感するところも多く,登場する”先生”の言葉には尊敬の念すら覚えます.

『建築というのは,トータルの計画が大事で細部はあとでいい,というものではけっしてないんだよ.(中略)細部と全体は同時に成り立ってゆくものなんだ』

『(胎児の)指はびっくりするくらい早い段階でできあがる.(中略)建築の細部というのは胎児の指と同じで,主従関係の従ではないんだよ.指は胎児が世界に触れる先端で,指は世界を知り,指が世界をつくる.椅子は指のようなものなんだ.椅子をデザインしているうちに,空間の全体が見えてくることだってある』

『設計をするとき,火事になりにくい家,地震で崩れ落ちない家をできるかぎり心がける.それは建築家の大事な仕事だ.でもかりにだよ,東京全体が焼け野原になるような大震災があったとして,自分の家だけが燃えず崩れずでいいのか.(中略)防災をあまりに徹底した家というのは,これは要塞であって,住宅ではない.居心地がいいかどうか,はなはだ怪しい.要塞に住むなんて,つねに災厄を考えながら暮らすようなものだからね』

『建築は芸術ではない.現実そのものなんだよ』


主人公である建築家・村井俊輔のモデルとなっているのは,建築をかじっている人であればその思想,断片的なエピソードから,故・吉村順三氏であることは容易に察しがつきます.

そして村井事務所の家具担当で,ちょっと皮肉っぽい「内田さん」は誰がモデルになっているかも,また村井のライバルで国家的建築家・船山が誰を差しているのかも想像がつくことでしょう.(実際,作者の松家さんは”内田さん”に自宅を設計してもらったクライアントさんでもあります)

また村井の北欧建築に対する造詣の深さや,アスプルンドやアールトの建築を語る場面も多く出てきます.私も知らなかった事実も多く書かれていて勉強になりました.

ちなみに,ストーリーはそんなコテコテの建築小説ということではありません.そこがいいところです.ベースは設計事務所を舞台にスタッフの目から描いたラブロマンスであり,夏の間は軽井沢にある「夏の家」に事務所の拠点を移す村井事務所の,国立現代図書館コンペを巡ってのスタッフ相互の心理や人間関係などを丁寧に描いた作品です.

建築が好きな方には特にお勧めの小説です.もちろん建築に無知な人でも十分に引き込まれると思いますので,是非秋の夜長に読んでみてください.