17. 10 / 17

困った問題

author
sekimoto

category
> 仕事
> 思うこと


書籍の出版やトークイベントといったキラキラしたことばかりではなく、設計事務所を主宰するということは一方でとても重い責任を背負うことでもあります。

私は今年で独立して15年になりますが、それはある意味、独立して手がけてきた住宅が一斉に10年以上もの時間の洗礼を浴びてゆくことも意味します。最近では過去に手がけた住宅の改修や、ちょっとした”困った問題”についてのご相談を受けることも多くなってきました。


困った問題…。

ひとつはわかりやすく雨漏りですね。あってはならないこととはいえ、建築の仕事をしていたら避けては通れない問題です。経験のなさは、ある意味先鋭的な仕事を残す原動力にはなりますが、一方で…。

あの頃私は若かった、とばかりに言い訳をしていてもはじまりません。

雨漏り対応は本当に大変です。施工は一瞬ですが、そこにミスやボタンの掛け違いがあった場合、そのボタンをひとつひとつ掛け直してゆく作業は、途方もない手間と時間がかかります。我々も原因を究明するために、現場にも何度も何度も足を運ばなくてはなりません。

逆に言うと、この雨漏りを経験すると「もう絶対に嫌だ!」と思いますから、設計にも監理にもより一層注意を払うようになります。もちろん若い頃だって払っていましたよ。でもだめです。建築は圧倒的に経験がものを言うのです。

経験って何の経験だかわかりますか?ここでは失敗の経験のことを差します。

ちなみにこの案件、まだ原因特定に至っておりません。じわじわと犯人を追い詰めているのですが、「犯人は、、お前だ!」とやった後に冤罪が確定したりして、肩すかしが続いています。でも背中は見えているといったところでしょうか。


雨漏りだけではありません。今別件で対応しているのは床下の漏水です。ある日床下点検口を開けたら、床下が海のようになっていた…という恐ろしいケースです。

これはかれこれ半年がかりで対応を続けています。なかなか原因が掴めず、迷宮入りしかけていたのですが、ようやく糸口が掴めました。銅管です。

当時設備工事屋さんが給湯配管に銅管を使っていたようで、これが劣化してお湯を大量に漏らしていました。なぜ今までわからなかったかというと、配管が水に浸かっていて、漏れているかどうかが判別できなかったからです。

水をどう掻き出したかわかりますか?これはもう語りたくもないです。本当に、超~大変だったんですから!だからここでも誓いました。床下なめたらいかんと。皆さん、ちゃんと床下にも潜れる設計にしないとダメですよ!


現在この二つの難事件が、私の中では新規の設計や進行中の現場案件と同じくらいのウェイトで占められています。

この事件を難事件にしている要素がもうひとつあります。それは、当時施工した工務店にお願いできなくなっているという点です。一社はこの10年で倒産してしまいました。もう一社は、工務店の方が高齢化し、機動力のある動きをしてもらえなくなってしまったということがありました。

最初の工務店がやらかした不始末を、好んで対応する工務店などなかなかいるものではありません。実際、後者の住宅でも何社も対応を断られました。でもいるんですね、請けて下さるところが。

こういうのを神対応というのだと思います。ようやく素晴らしい後継の工務店と巡り会うことが出来て、事件は少しずつ解決に向かっています。H建設さん、D工務店さん、本当にありがとうございます!

だから今つくづく思うのです。

当時は予算が厳しくて、背に腹変えられず、相見積もりをして一番安い工務店にすがる思いでお願いしたりしていましたが、そういう現場はことごとくトラブルが頻発したりして、その後の対応も何度連絡しても来てくれないとか、そんなことが続いてクライアントを怒らせてしまった家もたくさんあります。

工務店は大事です。予算オーバーをすると、見積り調整の時はなかなかそんな気持ちになれませんが、少し高くても、良心的な信頼の置ける工務店にすべきです。なんといっても家は一生ものですから!

そしてもう一つはクライアントとの信頼関係ですね。工務店の対応が神なら、クライアントの対応も神です。本来なら「訴えてやる!」とばかりの叱責を受けそうですが、寛容にこちらにもお気遣いを下さいます。

そんなとき、10年という生活の時間と当時の設計プロセスは、一部にエラーはありましたが、あながち間違ったものではなかったのではないかと救いを感じる瞬間だったりするのです。

ともあれ、設計スキルが飛躍的に伸びるのは、書物からではなく、こうしたリアルな実地体験からだったりします。クライアントさんには申し訳ない思いですが、今もなお大変貴重な勉強をさせて頂いています。

さて、今回会場となった書店、ブックスキューブリックさんについても少し書きたいと思います。

今回の会場はエクスナレッジさんが決めて下さったものですが、博多にありながら書店業界では全国にその名を知られる有名書店とのこと。建築で例えれば、鹿児島にありながら全国にその名を知られる工務店、ベガハウスさんのようなものかな?

そのキューブリックのオーナー大井実さんも当日いらしていて、私の著書と引き換えに、ご自身の著書もプレゼントして下さいました。


ローカルブックストアである福岡ブックスキューブリック
http://amzn.asia/2mGswnN

こちらを帰りのフライトでじっくり読ませて頂きました。まだ読了はしていないのですが、すでに心の中では「しまった!」と後悔がはじまっています。

この本、とっても面白くて、できれば行く前に読んでおきたかったです。大井さんの取り組みや志のようなものに触れて、とても共感すると共に、僭越ながら私のこれまでの経歴とも重なるところもあり、事前に読んでいれば当日もっとお聞きしたかったことや、お話ししたかったこともいろいろありました。

またこの日ご案内下さった花山という屋台は、過去には角田光代さんなどを招いてのブックイベントで打ち上げを行った場所とのことで、この辺りのエピソードも著書に書かれています。大井さんの著者との打ち上げを大切にする考えなども読み、なんだか漫然と打ち上げに参加してしまったことも少し反省しています。



以下はちょっとまじめに。
今回あらためて思ったのは、人との一期一会ということについてです。

私もけして人との出会いを疎かにしているつもりはありませんが、またいつでもお会いできる方々とは違い、こうした地方のイベントではその時その場所が全てで、中にはなかなかもうお会いする事のない(かもしれない)関係者も多くいらっしゃいます。

来場者もそうだと思うんですね。私のことをよく知って下さっている方なら、そういう素地の上に私を見てくれますが、そうではない方との限られた時間で、どれだけ相手の心を打つことができるかというのはとても大切なことだと思うのです。

最近はこういうイベントにひっぱりだこになってきて、私はそれをとても光栄なことだと思っているのですが、一方では私が場慣れしてきてしまっているということも、自分の中では問題意識も持ちつつあります。

聞いている方にとっては流れるような話のほうが聞きやすいとは思いますが、例えば大学の授業を聞いていると無性に眠くなるという経験はないでしょうか?時には朴訥な話し方の方が人の心を打つこともあります。

だから慣れって怖いな、と思うのです。これからも丁寧に、足を運んで下さる方のためにも言葉を選び、一期一会を心がけたい。これはもちろん設計においてもそうですね。今回なお一層、そんなことを思いました。

今回のイベントでセッティングに奔走して下さいましたエクスナレッジの皆さま、一緒に登壇して下さいました横関さん、そして会場をご提供くださり、このような気付きを与えてくださいましたキューブリックの大井さんには、この場をお借りして深く御礼申し上げたいと思います。

皆さまお疲れさまでした。そしてありがとうございました。

author
sekimoto

category
> イベント
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



博多のブックスキューブリック(箱崎店)さんでのイベント無事終了しました。

気心知れてるJAMMS横関さんとのイベントだったので、終始リラックスして楽しませてもらいました。会場もほぼ満席!エクスナレッジ猫犬本全国ツアーの千秋楽を無事飾ることができて、こちらもホッとしています。

会場には博多に赴任中の日大の教え子だった大野さんや、同じく郷里福岡に戻られた建築家の池田さんも駆けつけて下さり、アウェイを一気にホームにしてくれました。こちらもどうもありがとうございました。


終了後はお店からほど近い屋台「花山」さんにて懇親会を設けて下さいました。この花山という屋台は筥崎宮の鳥居の前で50年も前から営業しているという名物屋台。雑誌Dancyuの表紙を飾ったこともあるそうです。

屋台というにはあまりに大きな屋台骨!。隅には茶室のような個室もあります。個室のある屋台というのもはじめて見ました笑

締めにはやっぱり博多ラーメン。本場の屋台もまた最高でした!

17. 10 / 13

街の灯火

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



昨日は2015年に竣工した代々木八幡A-FLATへと足を運びました。
1階のフレンチレストランPathは今や予約の取れないお店になり、限定スイーツを売り出した日は100mくらい街中に行列が出来たのだとか。

ビルの谷間に建つ、一軒の小さなお米屋さんの建て替え計画でした。八百屋さんや魚屋さんが並び、活気ある個人商店の街は、いつの間にかどこにでもあるようなチェーン店やコンビニエンスストアへと替わっていったそうです。

建て替えにあたっては、街の灯火を消さないようにしよう、コンビニや大手チェーンだけは入れないようにしよう、と頑なに言い続けた計画でした。

この灯火を消さないよう。
街から愛される建物であり続けますよう。


イベント告知が続きますが、どうかご容赦下さい。

私にとって、フィンランドから帰国してはじめての仕事がカフェmoiの仕事でした。カフェmoiは2002年に荻窪にオープンし、その後2007年に吉祥寺に場所を移して現在に至ります。もちろん内装デザインはリオタデザインによるものです。

カフェmoiは生まれては消えてゆく北欧系カフェの中で、今ではすっかり老舗になりました。カフェmoiの歴史はリオタデザインの歴史そのものとも言えます。

さてそんなカフェmoiで、今回の書籍出版を記念してトークイベントを開催させて頂きます。内容としては、先日二子玉川で開催した出版記念トークイベントの内容をもう少し一般の方寄り(北欧寄り)にしたもので、もう少しフレンドリーなお話が出来たらと思っています。


関本竜太トークイベント「おもてなし住宅のつくり方」
日時/2017年10月19日(木)19:15~20:30(18:45開場)予定
会場/moi(カフェモイ) 吉祥寺駅より徒歩7分[地図
出演/関本竜太(建築家・リオタデザイン主宰)
参加費/1,000円 当日精算・おつりの出ないようご用意下さい
※事前申し込み制です。お申込など詳しくは以下のページをご覧下さい。
http://moicafe.hatenablog.com/entry/2017/10/06/151249


お店はとっても小さくて、15人も入れば満席になってしまいますので、ご希望の方はお早めに申し込まれますことをお勧めします。

先日の二子玉に行けなかったという方や、前回いらした方も前回とは違うお話にする予定ですので、是非またいらして下さい!


こちらもよろしくお願いします↓
『上質に暮らす おもてなし住宅のつくり方』
http://amzn.asia/fSP7Meh