先週大きな仕事に区切りが付いたこともあり、先に上げたtobufune展と絡めてスタッフと青山のCASITAでランチをしてきました。
CASITAはその高いホスピタリティで有名なお店で、以前食事した際にはその異次元のおもてなしに心から感動しました。スタッフともこの感覚を共有したいと思いつつも、若いスタッフがふらっと行けるようなお店ではないこともあり、この機会にみんなとここで食事をすることにしました。
この日はランチだったので、ディナーとは異なりカジュアルな雰囲気。CASITAは店員さんが本当に感じが良く、程よい距離感でフレンドリーに話しかけてきて下さいます。食事も本当に美味しくスタッフ達も大満足でした。
ところが最後のデザートを楽しんでいると、頼んでもいないホットミルクがテーブルに運ばれてきました。その泡の上にはなんとリオタデザインのロゴマークが描かれていたのです。
これには本当に腰が抜けそうなくらいびっくりしました!
予約時には個人名しか伝えていませんでしたし、テーブルでの店員さんとの会話では会社の会食であること、また我々は設計事務所であることなどを和やかにお話しした程度で、事務所名などはお伝えしていなかったからです。
おそらくですが、我々との会話や私の名前などを手がかりに、店員さんは我々の事務所が「リオタデザイン」であることを知り、食後にそのロゴマークをサプライズとして泡の上に描いて出してきたのでしょう。
スタッフには私がCASITAのおもてなしがいかに素晴らしいかを話した後だったので、余計に響いたことと思います。みんなも目を丸くして驚いていました。今日スタッフを連れてきて本当に良かったと思いました。
CASITAのポリシーに、ホストはゲストが何者であるかを知らなくてはいけない、というようなことがあると以前なにかで読みました。
設計事務所とは異なり、日々異なるお客さんがやってくる飲食店のような業態で、その日のゲストが何者であるか、予約情報以上のことを知ることは至難の業だと思います。もちろん個人情報もあるので、踏みこむべきではない領域もあるでしょう。
しかし店員さんはゲストとの会話の中から、その人を心底喜ばせるためのヒントをずっと探していたに違いありません。だからそれは毎回出てくるものではないし、人によっては受け取るものも異なるのだとも思います。
詰まるところ我々の設計もそうなのです。言われたことだけをやっていたのでは、飲食店に例えればファミリーレストランみたいなものです。誰も文句は言いませんが、そこには感動は生まれません。
どうして言っていないのにそれがわかるのか?ということを我々はよく建て主さんから言われます。しかしそれは明白なのです。なぜなら設計をするということは、建て主が何者であるかを理解するという行為だからです。
我々は言われずとも、常に二歩三歩先を見ながら、建て主さんの考えをいかに先回りするかということを心がけています。そのヒントは建て主さんとの何気ない会話や、仕草や、表情の中にすでに無数にあるのです。
スタッフに伝えたいのは技術ではなくそういうことです。この日の会食はそんなことを学んでもらう良い機会となりました。
昨年エクスナレッジより刊行された拙著『木造住宅のできるまで』のハングル版が韓国の出版社より発売されることになりました。
担当編集者の伴さんから献本が送られてきたのですが、すごいインパクト!ハングル語全然わからないのですが、日本語ベースでも密度の高いうちの図面が、すべてハングル語表記に置き換わっているのを見るのはとても不思議な感覚です。
しかし最近はすごく便利なツールがあるのですね。「Google翻訳」というアプリをスタッフに教えてもらったのですが、これをスマホに入れて書籍にかざすとあっという間にすべて翻訳してくれます!
驚いたのはその翻訳精度。ありがちなシュールな日本語ではなく、ちゃんとすらすら読めます。この水玉シャツを着ているモデルは私なのですが(似てない、、)、韓国語を話す私のソックリさんの話している意味もわかる!
わかるもなにも、そもそもは私のセリフというこのブーメランさがたまらなくシュールなのですが。このハングル版、一度韓国の書店で平積みされているところを見てみたいものです。
アンケートに協力したりすると、よく企業のロゴ入りボールペンをもらえたりしますよね。またロゴ入りボールペンを作りませんか?みたいなのもあります。でもいつも思うんですけど、ボールペンってもらって嬉しいですかね。
だってボールペンって使い切るのにすごく時間がかかるじゃないですか。しかもノベルティのボールペンって安いからちょっと書きにくいんですよ。というわけで、使わないボールペンが家のペン立てにびっしりと。これってあるあるじゃないですかね。
あるいは500円くらいのQUOカードがもらえることもあります。こちらのほうがまだ気が利いている気もしますが、私の場合財布に入れていても、いつも使いそびれて永遠に財布の番人になりがち。そもそもスマート決済ばかりで財布を持ち歩かなくなっているので、この手のものをもらうといつも息子にあげてしまうんです。
◇
そんな折り、”Tポイント”を運営する会社からちょっとした売り込みがありました。Tポイントを活用しませんか?的な話でした。
日頃事務所にはいろんな売り込みがあります。サイトアクセスを上げませんか?とか、こんな集客サービスがありますよとか。正直一切やりません。なんかお金を払って集客を買うみたいな発想って、ちょっと安易ではしたないというか、あまり好きじゃないんですよね。
でもこの日の「Tポイント」の話は面白いなと思いました。
「設計事務所」なのに「Tポイント」というこのミスマッチ感、なかなかのインパクトです。誰でも知っている国内で最もメジャーなポイントが、設計事務所でもらえるってすごくないですか?
で、こう思ったんですよね。
設計事務所って、行くのはすごく勇気要るじゃないですか。駅前のコンビニには入れても、設計事務所にふらっと入ってくる人はいません。でも本当はもう少し気楽にふらっと相談に来てもらいたいと思っているわけですよね。
だからそこを少し勇気を出して乗り越えてきて下さった方には「ありがとうございます」と思うし、帰るときには「来て良かった」と思ってもらいたい。それをもし形にするとしたら、それはボールペンじゃないし、QUOカードでもないなと。
Tポイントって知名度もあるし、いろんな場面で使えるし案外いいかも!と思って、実験的にはじめてみることにしました。
◇
面白いのは、ミーティングデスクの上に冒頭写真の「Tポイント」のついたてを置いておくと、皆さん「何ですかこれ?」って訊くんです。そこでこの話をするとたいがい皆さん面白がってくれます。まずは掴みはOK!ってやつです。
Tポイントのアプリでは、近所のお店のクーポンが表示されるメニューもあったりします。私はあまり使いませんが、”ポイ活”が好きな人はよく見ているみたいですね。
そこで吉野家とかロッテリアとか、近所でよく行くお店に混ざってリオタデザインの広告も出てくるっていう。
めちゃくちゃ面白くないですか笑。なかなかの破壊力です。
まさか私もポイント目当てで設計相談に来る人がいるとは思っていなくて、こういう日常のお店と同列で設計事務所という選択肢が出てくるということが大切なんだと思うんです。吉野家の隣にこういう写真が出てきたら、まずは「なんだろう?」って思うじゃないですか。
◇
さてこれをうちではどう活用しているかというと、設計相談に来て下さった方に目の前でサイコロを振って頂きます。1が出たら100ポイント、6が出たら600ポイント進呈です。名付けて「Tポイントチャレンジ」!
これはウケます、確実に。500円のQUOカードもらうより楽しいと思うな~
先日ご相談にいらした方は、獲得は「100ポイント」でしたけど笑ってました。たった100ポイントで笑顔になるっていいですよね。ちなみに100ポイントを嗤うなかれ。うちのポイント付与率の設定は200円につき1ポイントなので、20,000円相当のお買い物をして頂いたのと同じくらいの価値があるんですよ。
ちなみに設計料のお支払いにはポイントは付きませんので悪しからず!それやっちゃうと、我々が笑えなくなっちゃうんで。
ちなみにこの6月の夏のボーナス、このTポイント制で私とじゃんけんして勝ったら500ポイント、負けたら100ポイントを進呈しました。500ポイントもらったスタッフは大喜び。もちろん現金のボーナスもちゃんとあげましたよ!
日銀総裁の先日の失言ではないけれど、こういう見出しを見ると「え、どういうこと?」って思ってしまう。我々庶民の肌感覚とあまりに乖離していると思ってしまう。
ウッドショックで木材価格は昨年だけで約2倍になった。価格高騰は建築価格のほぼすべてに及び、工事期間中に契約価格を大きく超えて高騰する原材料費に、建て主への価格転嫁ができない工務店はその差額をある程度呑み込まざるを得ない状況だ。実際に悲痛な声を上げている工務店経営者を何人も知っている。もちろん、これから家を建てようという方も、こういう状況では尻込みしてしまうというのも頷ける話だ。
材料を握っている商社は強気だ。皆横並びで値段を吊り上げれば、それがなくては家が建てられない現場は言い値でそれを買わざるを得ない。まるで戦後の闇市のようだとすら思う。
そんな材料の川上にいる大手建材商社が今期、軒並み過去最高収益だという。
これは業界新聞の記事なのでむしろめでたい空気すら漂っているけれど、消費者の受け止め方は真逆ではないだろうか(商社の社員さんを除けば)。そんなに儲かっているのなら、値上げしすぎた分の価格を今すぐ下げて欲しい。
原材料費が高騰しているから、ウクライナが、石油が、円安が、北米の木材が、と我々は必死に建て主さんに説明をしているというのに、これでは説得力がないではないか。
唯一の救いは、このウッドショックで潤った商社の社員さんのお給料が2~3割増しになって、巡り巡って潤沢な予算でマイホームを建ててくれることだろう。
今日はスタッフを連れてTAGKENさんのオープンハウスへ。この写真だけでは伝わりにくいのですが、我々設計事務所と工務店設計という本質的な違いから生まれる細部の考え方や、素材の選び方などは大変刺激になり、また考えさせられました。
我々はその納まりの細部に至るまで「手間ヒマかけて」「手作りで」仕上げることを良しとします。安易に既製品を使うことにも後ろめたさがあります。
けれども、職人さんが減ってゆくこの時代、そして過去例のない価格高騰を引き金に、一般の方は我々に設計を頼めなくなる日がそこまで来ているんじゃないかという危機感の中、メーカーの既製品を使いながらも、卓越したセンスでそれをまとめあげる、そしておそらくは我々ともまったく引けを取らない顧客満足度を獲得しているであろうTAGKENさんの仕事には脅威を感じます。
そしてずば抜けたデジタル技術。以前から定評のあるTAGKENさんの3Dレンダリングの完成度の高さと、それを建て主と細部に至るまで共有する設計メソッドを聞いていると、ある程度デジタル社会に適応しているつもりの私も、実は絶滅危惧種の恐竜世代なんじゃないかとすら思えてきます。えげつない図面を描く、必要のない社会がすぐそこまで…。
私は下積み時代手描き図面を経験した最後の世代ですが、うちの事務所のスタッフは、下積み時代2Dだけで図面を描いた最後の世代になるに違いありません。
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