少し先にある人気のあるパスタ屋を目指していたのに、なぜか引き寄せられて入ってしまった。
昭和から時間が止まったような店内。老いた店主がとても気の利いた接客をしてくれた。静かな音楽の流れる空間に、我々以外に常連さんがひと組だけ。
料理はどれもとても美味しく、素晴らしい時間を過ごさせてもらった。とびきりの名店を見つけてしまったかもしれない。
かつて2020年~2022年頃にかけて、建築業界を覆った流行語大賞に「ウッドショック」というのがあった。すでに懐かしい。はたして今は何ショックなのだろう?
「ウッドショック」というワードが流行ったときは、実際に木材調達に難があって上棟が数ヶ月遅れた案件もあった。また当時はウッドショックに端を発した物価高騰を受けて、建築業界もパニックになっていた。着工時の請負金額が、想定を越える資材高騰によって赤字になり悲鳴を上げている工務店もあった。
そのあたりから、工事を重ねる度にどんどん単価が右肩上がりで上がってゆくという現象が起こり、それは今もなお続いている。「ウッドショック」と呼ばれていた現象はとっくに沈静化し、むしろ木材の市場価格は少し下がったくらい。けれどもそれはなかなか工事金額の減少にはつながらず、ここに来てまた木材が値上がりをはじめたとの報道。
ウッドショックは去ったけれど、それ以外の設備機器や建材は今もなおじわじわと値上げが続いている。それに職人さんの労務費も上がっている。我々も毎回頭を抱えて見積調整をしながら、これまで通りの価格を工務店にお願いしているのだけれど、交渉も難しく、一方では元請け企業が下請けからの価格転嫁を認めないという問題が報じられたりして、我々がやっていることは一体正義なのか悪なのかわからなくなるときもある。
◇
すでにコロナ前の2019年頃から比べると、この5年で工事費は3割は確実に上がったと思う。これは私の事務所だけの話ではなく業界全体の話。3,000万の家なら3,900万、、ちょっと尋常じゃない。飲食関係の方から聞いた話では、この半年だけで食材が2~3割も値上がりしたそう。どの業界も似たり寄ったりのようだ。
我々も建て主さんのご予算感に寄り沿い、がんばってローコストにやりたいと思いながらも、そもそもうちはいつも基本はローコスト住宅。先日着工した住宅はかなりがんばったコストで着工できたけど、毎回できるかと言われるとなかなか、、いろんな条件が噛み合わないと難しい。
このままいくと、この先の展開は以下の二通りしかないかもしれない。
・このまま値上がりが続いて誰も家を建てられなくなり、巡り巡って工務店もメーカーも(もちろん我々も)みんな干上がってしまうというパターン
・値上がりによって建て主さんの企業の業績が右肩上がりとなり、年収もそれに伴い爆上がりして、結果値上がり分を吸収できるようになるというパターン
どちらも荒唐無稽のように見えて、あながち間違ってもいないような気もする。でも後者のパターンに着地するには、まだ時間がかかりそう。そのまえに我々が干上がってしまわないことを祈るばかりだ。
金メダルを取りたいといつも思う。でも取れない。
オリンピックでも「ノーミスの演技!」と実況されたとしても10点満点は出ない。見る人が見たらどこかに粗はあって、それは本人も認識していたりするものだ。地元ではナンバーワンでも、世界中のナンバーワンが集まる場ではそうはいかない。わずかなボタンの掛け違いが命取りになってしまう。
それを「人間だもの」で済ませるのは簡単だ。けれどオリンピックのアスリートたちはそうは考えていない。彼らは心底完璧なプレーや演技をしたいと願って、求道者のように4年間を費やしてきたのだ。それが本当に尊いことで、アスリートの本質というのはそういうことなんじゃないかと思う。
我々もまたアスリートのようなもので、何年もかけて一つの仕事をまとめ上げていく。そのプロセスではクライアントの要望やデザイン、法規、予算、技術などありとあらゆる分野にわたって細やかな対応が求められる。それらすべてに満点を取ることはきわめて難しい。そもそも採点基準も明らかにされていないわけだし、なにが何が正解かすら我々もわからずにやっているのだから。
それでも我々は完璧な仕事をしたいと願う。この仕事をノーミスで終えたい!そして最後に金メダルを首にかけてもらいたい。その一心で、今日も仕事の隅々にまで神経を行き渡らせる。
きっとそれはアスリートや我々のような設計者に限らず、職人や料理人、営業職やトラックの運転手に至るまできっと同じに違いない。その心意気こそが尊い。皆心の中にオリンピックがあるのだ。
オリンピックでは「完璧を目指した結果としてのほぼ完璧」を日々我々は見せられている。そのわずかなボタンの掛け違いに、今日も我が人生を見る。
オリンピックでも「ノーミスの演技!」と実況されたとしても10点満点は出ない。見る人が見たらどこかに粗はあって、それは本人も認識していたりするものだ。地元ではナンバーワンでも、世界中のナンバーワンが集まる場ではそうはいかない。わずかなボタンの掛け違いが命取りになってしまう。
それを「人間だもの」で済ませるのは簡単だ。けれどオリンピックのアスリートたちはそうは考えていない。彼らは心底完璧なプレーや演技をしたいと願って、求道者のように4年間を費やしてきたのだ。それが本当に尊いことで、アスリートの本質というのはそういうことなんじゃないかと思う。
我々もまたアスリートのようなもので、何年もかけて一つの仕事をまとめ上げていく。そのプロセスではクライアントの要望やデザイン、法規、予算、技術などありとあらゆる分野にわたって細やかな対応が求められる。それらすべてに満点を取ることはきわめて難しい。そもそも採点基準も明らかにされていないわけだし、なにが何が正解かすら我々もわからずにやっているのだから。
それでも我々は完璧な仕事をしたいと願う。この仕事をノーミスで終えたい!そして最後に金メダルを首にかけてもらいたい。その一心で、今日も仕事の隅々にまで神経を行き渡らせる。
きっとそれはアスリートや我々のような設計者に限らず、職人や料理人、営業職やトラックの運転手に至るまできっと同じに違いない。その心意気こそが尊い。皆心の中にオリンピックがあるのだ。
オリンピックでは「完璧を目指した結果としてのほぼ完璧」を日々我々は見せられている。そのわずかなボタンの掛け違いに、今日も我が人生を見る。
あまりの猛暑に逆ギレしたような稲光と突然の激しいにわか雨。久しぶりに事務所も停電になりました。30分経っても復旧しないので、長いなあと思っていたらブレーカーが落ちていたようで、こちらを上げたら復活しました。
束の間の30分、ラジオの音もなく、パソコンの電源が落ちてしまったのでキーボードやマウスの音も聞こえない事務所は静寂に包まれました。悪くないです。携帯電話の灯りで仕事をするスタッフ。平行定規を使って手描きで図面を描いていた時代をふと思い出しました。
元スタッフの矢嶋くんの結婚式が国際文化会館でありました。彼が入籍したのは2年ほど前でしたが、コロナ中だったため、今この時期にあらためて挙式をしたとのこと。
20年以上事務所をやっていて、もう何人もスタッフを送り出しましたが、結婚はしても披露宴はやらないケースも多くて、スタッフの結婚式に出るのも、主賓挨拶をするのも今回がはじめての経験でした。というか、スーツを着たのも10年ぶりくらいかもしれません。
矢嶋くんは2021年まで6年間ものあいだ在籍してくれた不動の番頭さんでした。彼の正確無比な図面は工務店からは「バイブル」と言われ、拙著『伝わる図面の描き方』では彼の描いた図面を私が全力解説をし、リオタデザインの図面精度を知らしめた立役者にもなってくれました。
彼の実直な人柄を反映して、とても慎ましやかであたたかな、深く印象に残る良い式でした。久しぶりに会うOBスタッフもいて、彼ら彼女らとの語らいの時間もとても楽しく、矢嶋くんのみならず様々な立場や環境で活躍する近況を聞きながら、とても誇らしく幸せな気分になりました。
どうか末永くお幸せに!
うちの図面もまた手伝って下さいね笑
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