11. 10 / 31

IRONHOUSE

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sekimoto

category
> 建築・デザイン



構造家・梅沢良三さんのご自宅であり,建築家・椎名英三さんが設計された住宅,IRONHOUSEを見学させて頂く機会を得た.

IRONHOUSEは2007年に竣工し,2011年の建築学会賞を受賞した住宅である.今回は受賞を期に,まだ実物を見ていない建築関係者を対象に,すでに生活されている住宅の内部を特別公開して頂いた.

実際に見るIRONHOUSEは,一言で言えば「異次元空間」だった.
構造,そして内外装のほとんどは4.5mmの赤錆の浮いたコールテン鋼とコンクリートだけでできている.それまで見たこともないその空間は,住宅というより建築の根源的な空間のあり方を示しているようでもあり,ゾクゾクと鳥肌が立つような体験だった.

椎名英三さんの住宅には友人がアトリエに勤めていたこともあり,昔から何度か見学させて頂く機会はあった.そしてその都度,その完成度の高い空間とディテールには,教わるというよりただため息をついて帰ってくることも多かった.

今回の住宅には椎名さんの建築家としてのすべてが詰まっているようだった.
現地では椎名さんとも少しお話しができたのだけれど,言っていることが昔から一貫して変わっておらず,この一点に向けて一直線に建築家として生きてきたのだろう.尊敬の念とともに,そのことにむしろ学ぶべきところがあるような気がした.

ちなみにこの住宅の植栽を施工されているのは,自邸をはじめ,私の設計した住宅のほとんどの植栽を手がけて下さっている”ストライカー”こと,耕水の湊さんである.

今回の湊さんの仕事も,建築に少しも引けを取ることなく素晴らしかった!
今回の受賞は椎名さんや梅沢さんのものであると同時に,その一部は湊さんのものでもあると思うと自分のことのように嬉しく,また誇らしくもあった.

我々も湊さんの植栽に負けない建築を作らなくては!
そんな思いをあらたにして家をあとにしたのでした.




 

11. 10 / 29

モノコト更新

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sekimoto

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> はまりもの



モノコト,久しぶりに更新しました.
今回は独立以来愛用のスケッチブックです.これがないとはじまりません.
他の方はどんな道具を使っているのか,いろいろ知りたくなりますね.

モノコト
https://www.riotadesign.com/mono_koto

11. 10 / 28

カバーをつける

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sekimoto

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> 思うこと


なにかにカバーを付けるという行為があまり好きでない.

我々はなにかと色んなものにカバーをつけたがる.ところがモノにカバーをつけた瞬間,モノから確実に損なわれるものがあるような気がしてならない.なぜならデザイナーはそこにカバーがかけられることを想定していないからだ.

モノにカバーをかける,の典型的な例は携帯電話だ.とくにスマートフォンを持ち歩く人のほとんどは,各々のカバーをつけているのではないかと思う.理由は単純で傷つけたくないからだと思うけれど,それは間違った保護のベクトルだといつも思う.傷つく=モノの価値を損なう,だとすると,カバーを付けた時点で傷がつく以上に大きなダメージをモノに与えてしまっているからだ.

きっとデザイナーはその実機サンプルをいくつも作り,ためつすがめつ眺めてはその手触り,機能性と連動したフォルムを納得のいくまで詰めていることと思う.コンマ何ミリという単位にこだわって,いかに薄く,小さく,軽いモデルを作ろうと日々徹夜の日々を送っていることだろう.それがプラスチックの無粋なカバーを付けられた瞬間に台無しである.

僕はiPhoneを使っているのだけれど,同様にiPhoneを使っている人は是非思い切ってそのカバーを外してもらいたい.その裸の状態で使う美しさに是非触れてもらいたいと思う.

ただこのiPhone,薄い割には意外にずしりと重量があって,ポケットから取り出す時に思わず手からすべり落ちそうになるのだ.カバーを付けていないだけに毎回ひやひやする.できればストラップを付けたいのだけれど,iPhoneにはストラップを付けるところがないのである.

きっとこれは製作開発者,あるいはスティーブ・ジョブズ氏の「そんなのいらない」の一言でそうなっているような気もするけれど,美しさと同時に実用性も求めたい自分としてはそこが唯一の不満点でもある.

そこで,ここまで書いてきてなんなのですが,ひとつだけ僕はモノの価値を決定的に損ねるようなことをしてしまいました.天国のジョブズさん,ごめんなさい!

11. 10 / 24

リカルデント

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sekimoto

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> はまりもの



すこし前になるけれど,コンビニのレジに並んでいて,ふと目を向けた陳列棚をつい見とれて眺めてしまった.リカルデントガムのパッケージが一新されたようだった.

すごく良いデザインだと思う.単体だけではなく,陳列された際の全体系を憎いくらいよく計算している.こんど店頭で気づいたらよく眺めてみてもらいたい.このさりげないデザインは各種フレーバーがずらっと並んだ時にはじめてその威力を発揮するのだ.単体で主張するパッケージは多いけれど,陳列された際の全体系をトータルにデザインされているパッケージというのは,この手の嗜好品ではありそうであまりないと思う.

それに以前のパッケージもそうであったように,この手のパッケージは中身の味をいかにストレートに表現するかに力点が置かれることが多い.フルーツであればいかにジューシーなイメージを喚起するか.例えば果汁の滴る輪切りのフルーツ写真を使うというのが定番だと思うけれど,それをフルーツの写真をひとつも使わずにジューシーさを表現するという冒険はなかなかできるものではない.デザインサイドの提案力と,それを許容した企業がすごいと思う.

子供に媚びたようなパッケージがあふれる中で,久しぶりに潔いストレートなパッケージデザインに出会って嬉しくなった.リカルデント,やるじゃん!

昨年末竣工したFILTER/U邸の取材があり,約半年ぶりにお邪魔してきました.
建物に近づいていくと駐車場の前に一枚の立て看板.ん,カフェ?
よく見たら住宅で余った棚板.そこにはお子さんの絵でかわいらしい絵が描かれていました.「パンのおみせ」…ハテ.

聞くとUさんがプロデュースして,ご友人の焼いたパンや食材などを住宅の軒先で売ることにしたのだそう.この日はたまたま取材日と重なってしまったようです.

この住宅,FILTERというコンセプトを設けたのも,まわりの雑然とした風景や街並みへの開き方や閉じ方が重要な意味を持っていたためで,そのくらいこのUさん方のおしゃれで洗練されたライフスタイルは,この地域になじむのか当初不安だったところもありました.

でも結局Uさんはその安全に巡らされた殻の中に閉じこもることなく,フィルターの目に自ら風穴をあけて地域へと飛び出していったようです.住宅の軒先にいきなりオープンした「パンやさん」.ところがこれが近所の方に大変好評で,不定期に開催されるこのお店にどこからともなく人が集まり,あっという間に売り切れてしまうのでした.

何かをはじめるのに期を熟すのを待ってはいられない.体裁は気にせずどんどん前に進むべき!これは僕の人生のモットーでもあり,Uさんともそんな話で盛り上がりました.

お店がなかったらお店はできない?
資格がなかったら独立はできない?

いやそんなことは全然ありません.すべては本人のやる気次第!どんどん体当たりしていくしかないのです.そうすれば自ずと道は開ける.僕もそうやってフィンランドに渡りました.そんなエネルギッシュなUさんに,この日もパワーをもらって帰ったのでした.

あ,僕も買い占めて帰ったパン,とってもおいしかったですよ!!
次回の開催も楽しみです.