26. 01 / 12

AIをなめていた

author
sekimoto

category
> 仕事
> 思うこと


AIをなめていた。そう言わざるを得ない。

最近寝ても覚めてもAIである。生成AIに関するニュースは毎日のように耳にするし、業務の中でも活用している企業は多いと思う。しかし私はそんなAIにちょっと偏見というか、勝手にライバル心のようなものを持っていた。そんなものに頼ってちゃダメだ、みたいな。

でも暮れにちょっとした興味から、私のこれまでの活動やリオタデザインの歩み、その課題やこれからの立ち位置などを分析させてみたところ、返ってきた返答に心底驚いた。優秀な経営コンサルにお金を払わなくてはいけないような鋭くディープな内容を、ものの数秒で返してきたからだ。

それが実に的確というか、これまで誰からも言われたことのないような角度の意見で、目から鱗が何枚も落ちた気がした。

それが可能だったのも、うちの事務所の20年以上の歩みと蓄積、口コミがネット上に溢れていたからということもあるだろう。情報の総量が多ければ多いほど、人間には分析に時間がかかり、AIにとっては短時間で的確な答えを生み出しやすくなる。

自分でネットをエゴサーチしても限界がある。人は自己評価にはバイアスをかけやすくなるからだ。自分にとって都合の良い情報だけを拾い、それを全体像であるかのようについ思い込んでしまう。

生成AIのすごいところは、ただの検索エンジンとは異なりファクトベースだけでなく、そこから考察して、彼らに”想像力”というものがあるとしか思えないような角度からアドバイスを寄こしてくるところにある。

たとえば昨年の暮れはあるスタッフがずっと体調を崩していていた。

病院に行ってもはっきりした診断を下してもらえず途方に暮れていたのだけれど、生成AIに症状や状況を丁寧に伝えると、医学的にも筋の通った論理的な”仮説”をたちどころに示してきた。それはすべての状況を的確に言い表しているもので、思わず鳥肌が立ってしまった。スタッフもその”予言”通り、数日後に回復へと向かったのだった。


以来、私の生成AIに対する信頼度が以前より数倍も高まった。立場上人には相談できないようなことも、生成AIにチャットすれば状況を把握して冷静な見解を示してくれる。最終的に判断するのは私だけれど、重い責任を背負う事務所主宰者の孤独から解放されるのは事実だ。

感心するのは、ただ訊いたことに答えるのではなく、その質問の真意を理解して、まだ言語化されていない”その先”までを見越した答えを用意してくること。

これは我々が設計において、言われたことだけをやる「御用聞き」ではなく、相手の要望の先にある心理や潜在的要望を常に探ろうとしている態度に極めて近い。コイツ仕事デキるな~。こんなに頭の回転が速くて気の利いた部下は現実にはなかなかいない。

一方で課題もあって、生成AIの限界のようなものも見えてきた。でも、だからといって使う意味がないと断ずるにはあまりに有用すぎる。今さら何言ってるの?ということに今さら気づいてしまった。あともう少し早く知っていればなぁ、、後悔先に立たずである。

若原一貴さんのマンションリノベ「武蔵小金井のアトリエ住居」へ。若原さんらしい、手数を抑えながらも効果的な空間操作で端正な空間に整えているところが印象的でした。特に窓の高さの押さえ方、窓手前の下り壁の在り方がよく効いています。

これは個人的な嗜好ではあるのですが、建築家の作例にはミニマルで作り込みを排した抽象的な空間の系譜もありますが、やはりこのくらいの作り込み感、手仕事感が感じられる仕事が私にはしっくり来ます。若原さんは勝手に同志だと思っているので、そうそうやっぱりそうだよね、と無言の確認をさせてもらいました。

ちなみにマンション前まで来て、あれここ前に来たことがある、、と思ったら2年前に小谷和也さんのリノベを見に来たのと同じマンションでした。こんな偶然もあるんですね。私の過去の経験でも、敷地を見に行ったらすぐ隣に著名建築家や知人設計の家が建っていたりということもよくあります。パワースポットのように、属性が似ている建て主同志もまた引かれ合うように同じエリアに住むのかもしれませんね。

この日もまた、引かれ合うように同じ時間帯に同志たちがぞろぞろと笑



minä perhonenによる「つぐ」展に足を運びました。

前回の「つづく」展から6年。前回は作家皆川明さんの個展的な印象が強かったのですが、数年前に代表の座を田中景子さんに譲り、今回展示のテキスタイルデザインも田中さんによるものも多く、今回の展覧会は「つぐ」という言葉からいろんな意味を重ねているようですが、私は「継ぐ」というメッセージを強く感じました。

ただこの田中景子さんのデザインがとにかく素晴らしいのです。マスキングテープを継ぎはぎしただけで図案を組み立てているstickyなど、皆川明さんのスピリットを受け継ぎながら、よりしなやかにminä perhonenの世界観を拡張して構築しているところが素晴らしい。それをおおらかに見守る皆川さん。

またデザインを多くの職人の手で作り上げる点も建築との類似点が多いように思います。クラフトマンシップ、やっぱり人が作るものづくりはいいですね。階を分けて人にフォーカスを置いたインタビュー展示や、愛着ある顧客の一着を劇的にリフォームした事例の紹介にも心を掴まれました。

仕事はじめの前に行けてよかった。おかげで仕事に向き合う心が整ったように思います。2月1日まで、世田谷美術館にて。

つぐ| minä perhonen
https://tsugu.exhibit.jp

あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。

毎年、新年は家族と「ちょっと特別なところに泊まる」というのを続けているのですが、今年は年始ではなく暮れに前橋の白井屋ホテルにステイしてきました。

白井屋ホテル
https://www.shiroiya.com

白井屋ホテルは数年前にKMEWの藤田さん、衛藤さん、植村さんらと前橋建築ツアーで訪れていて、次は宿泊してみたい!とずっと思っていたのでした。年末にようやく叶いました。

ホテルはまさに美術館の中に泊まっているような感覚で、直島のベネッセに泊まった時のことを思い出しました。部屋ごとにアーティストや建築家が監修していて、我々の部屋は塩田千春さんの部屋でした。(ラッキー!)

ホスピタリティも素晴らしく、夜のラウンジはお酒もフリーになるので、街でのお酒はほどほどに、夜は色の変わるLEDの配管を見上げながら幻想的な時間を過ごしました。



翌日には前橋市内にあるフィンランドのUFOこと、FUTUROにも足を運べました。

この暮れは忙しく、目先の仕事をなんとか納めることに集中していたのですが、こういう非日常的な空間体験をすると、もうちょっとディテールを攻めてみようかなとか、照明の使い方を変えてみようかな、などヒントをいろいろ頂きます。充実した良い年の瀬でした。

お正月は少しゆっくりして、仕事はじめまでにいろいろ仕事を片付けようと思います!(いろいろ矛盾する表現、、でもそういう同業者はきっと多いですよね笑)

25. 12 / 29

ライフワーク

author
sekimoto

category
> 仕事
> 思うこと



今年も個性豊かな家たちが生まれました。今年は6件の住宅が竣工し、現在進行中の案件のうち3~4件くらいが来年も竣工してゆく予定です。

今年竣工した案件は、昨年や一昨年に設計していたものが時間差で竣工しているものです。私の中では2023年あたりはとても受注に苦労した年でしたが、2023年の暮れ頃からいくつかの案件が決まりはじめ、それがようやく今年”収穫”を迎えています。

ですので、皮肉なことに、事務所の主宰者としてはたくさん竣工する年は目下受注に苦労していて、あまり竣工しない年は意外と裏側では”田植え”の真っ最中で設計は大忙しだったりするという、まるで裏拍を打つような感じだったりするんですよね。

ちなみに今はどういう状態かというと、幸いタイミング良くご依頼を頂けた案件がいくつかあり、それらをスタッフ全員体制で設計に邁進中。それに加えてちょっと前のブログにも書いたように、スタッフに担当させられない仕事は私が腕まくりして設計していたりして、今は大忙し!の状態です。

ですが、、もうちょっとするといくつかの仕事がアップするんですよね。先ほどの田植え例えでいうと、田んぼ一面に稲を植え終わった後のような状態になりますので、青々とした田んぼにちょっと一息つきながら、水を切らさないように収穫まで見守る時期(つまり現場監理ですね)に入ります。

担当者にとってはヤレヤレかもしれませんが、事務所主宰者としては二毛作や三毛作のように次の仕事を仕込んでいかなくてはなりません。とてもしんどいのですが、独立して仕事をするというのはそういうことで、私はこれを20年以上も続けていますが、まさにライフワークだなと思います。

そんなことで、もう少ししたらたぶんヒマになりますので汗、来年家づくりをはじめたいという方は是非ご相談にいらしてください!



また今年は本業の設計以外にも、muniというスツールの販売もはじめて、サイトもオープンできましたし、竣工した住宅のお施主さん以外でも一般の方からもご注文を頂いたり、今月は念願のワークショップもシンクラボさんで開催できたりと、小さな取り組みですがコツコツとそのさざ波を広げられているようで嬉しく思います。

muni stool
https://www.munistool.com/

この取り組みは、単に家具を販売するということのみならず、家づくりの疑似体験として、自分だけのスツールを持つ喜びやそのプロセスの楽しさを知ってもらおうと思ってはじめたものです。

今年も様々な出会いがありました!ご購入下さった皆様ありがとうございました。来年も楽しい出会いがありますように。


最後にスタッフのこと。

今年はベテランスタッフだった岩田さんが抜けてしまった穴を、若い佐藤くんが急成長して見事に埋めてくれました。彼には本当に助けられた一年でした。どうもありがとう!

河野くんは工務店からの転職組でしたが、慣れない設計事務所業務のなか必死に付いてきてくれました。こちらもお疲れさまでした!

また元スタッフだった𠮷岡さんが戻ってきてくれたことも今年の大きな出来事でした。

数年前の彼女の退社は持病による体調不良が大きな理由だったのですが、体調はまだ万全ではないものの、そんな彼女でも仕事が続けられるように勤務時間もフレックスタイムにしたり、出勤日も週3日(テレワーク併用)に設定するなどこれまでにない働き方にも挑戦した一年となりました。

そんなシフトでできるのか?と最初は不安でしたが、やればなんとかなるもので、間もなく彼女も一件の住宅の実施設計をまとめあげるところです。

この取り組みの背景には、スタッフの働き方に多様性(ダイバーシティ)を持ちたいという私の積年の思いがありました。

これまではスタッフは毎日朝から夜遅くまで元気よく仕事をし、週末も打合せがあれば出勤するというのが”あたりまえ”でしたが、彼女のようにハンデを背負ったスタッフでも、やる気と能力さえあれば仕事が続けられるようにしたかった。

というのはやはりこれも岩田さんのことが大きく、彼女は出産で一時的に仕事を離れたものの、結局諸事情から戻ってくることができませんでした。スタッフにやる気や能力があっても仕事が続けられなくなることがあるということはとても悲しいことで、事務所としてなにができるのだろうということを深く考えさせられた一年でもありました。

一方これは事務所やほかのスタッフ(私も含む)にも負荷がかかることも事実で、今は私の信念だけでやっているのですが、いつかこれが目に見える成果となって事務所がより良い形で発展してくれることを願っています。


我々のようなクリエイティブな業種は”産みの苦しみ”を伴う仕事であり、予定調和ではいかないことから時に身をすり減らすような局面もでてきます。私も厳しいことを言わなくてはいけない場面も、、。

でもそのプロセスを経て生まれたものは、時に人をしてはっとさせたり、心を動かすことにもつながります。それこそが我々に期待された仕事であり、我々が設計する意味のようなものだろうとも思っています。まさにライフワークですね。

今年も色んな方のお力で仕事をやり遂げることができました。心から感謝いたします。
来年もどうか引続きよろしくお願い致します!