17. 03 / 14
ガチのやつ
author
sekimoto
category
> 生活
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今日はホワイトデー。
「ちょっと食べるの待って」
スタッフ
「インスタですか?」
「ちがうよ、関本さんのカメラ、ガチのやつ」
「え?アプリじゃなくてフォトショで修正しちゃうやつ?」
「そうそう」
「うそでしょ?」
「ほんとだって」
・・・ほっとけ!
クライアントでもある、グラフィックデザイナーで装丁家の小口翔平さんの主宰するデザイン事務所tobufuneさんの、初の個展があるということで昨日初日にお邪魔してきました。
第1回 tobufune 展「船と装丁」
2017年3月7日~19日 @神保町 gallery福果
http://tobufune.blogspot.jp/2017/01/blog-post_28.html
仕事柄いろんな職業の方にお会いします。その中で、建築をやっていなかったらこの仕事をやりたい!とたまに思える職業があり、編集者さん、写真家さんなどいろいろあるのですが、グラフィックデザイナーはそのひとつでもあります。
こんなことを言うと、その職業の方にはそんな甘いもんじゃないよと諫められそうですが、もちろんそんなことは百も承知の上で、みなさんが「建築って楽しそうなお仕事ですね」とおっしゃるのと同じようなノリで言わせてもらえれば、グラフィックは楽しそう!とついつい思ってしまいます。
この個展の主旨がとってもユニークなのですが、普段tobufuneさんはビジネス書の装丁をおもにデザインされているそうで、小説の装丁というのはほとんどやらないのだそうです。
そこで、自分たちで”勝手に”小説の装丁をデザインしてみようということで、tobufuneにちなんで”船”が登場する小説を何冊か選び、それを題材としてスタッフ全員がそれぞれ装丁を作られたそうです。
まぁここまでなら、美大の課題制作などにもあるかもしれませんが、ここからが違います。それぞれのテーマを割り振られたスタッフの皆さんは、プロのイラストレーターさんに表紙画を発注。
それを素材としてデザインを起こし、さらにそれを印刷所で高度な印刷技術を駆使して制作されています。この時点で、かなり完成されたプロの業を見ることができます。
またそのどれもが、一般の人があまり見たことのないような技法で作られており、現代の印刷技術はここまで進んでいるのかという驚きと、本当にこんな装丁があったら楽しいだろうなとわくわくする思いで手に取らせてもらいました。
ここに載せているのは小口さん自らの装丁によるものですが、この「老人と海」などはこれを数部刷るだけで途方もない費用がかかっているそうです。文字は金箔。この崩し文字もたまらないですね。
ほかにも、スタッフさん渾身の装丁が勢揃いしています。「ウレタン発砲印刷」や「UVインクジェットを使って絵の具で描いたような文字」など、素人には想像もつかない技術で作られているものも多数あります。
これらはもちろん量産には向かないでしょうが、だからこそこうした個展の題材とするに相応しいテーマであるように思います。なにより発注主のいない仕事をするという気概と自由さにやられました。
小さなギャラリーで開催中ですが、グラフィックに興味のある方、本の好きな方は必見です(あ、だから神保町で開催なのか)。行かれた方は是非在廊のスタッフさんに話しかけてみて下さい。きっと面白い話を聞かせてもらえますよ。
そんな小口さんの家を我々が設計しているということは、小口さんご家族の立体装丁を作っているということになるのかもしれませんね。そんな小口さんの家はどんな住宅なのか、また想像されてみて下さい。
何年かに一度の社員旅行に出かけていました。行き先は福島のホテリ・アアルト、建築家の益子義弘先生が設計されたホテルです。
ホテリ・アアルト|www.hotelliaalto.com
今回の目的は、山口くんの卒業やスタッフとの親睦ももちろんあったのですが、一番の目的は、建築におけるホスピタリティとはなんだろう?という問題を、みんなと共有し、それぞれが考えてもらいたかったということがありました。
ホスピタリティとは、日本的にわかりやすく言えば「おもてなし」ということになるでしょうか。我々は日々住宅設計においてクライアントと向き合っていますが、クライアントにただヒアリングして、それを叶えればそれで良いかと言われれば、私はそうではないと思っています。
レストランで頼んだものが出てくれば誰も文句を言う人はいません。一夜を過ごすベッドさえあれば宿泊の目的は達せられるでしょう。ファミレスや、ユースホステルならそれで十分だと思います。
ところが我々の仕事はそれではだめなのです。クライアントが言葉にしない潜在的な欲求にこそ本質がある。それを掘り起こすのがホスピタリティであり、そこにこそ我々は応えなくてはならないのです。
若い頃はお金がなく、旅行はいつでも貧乏旅行です。うちのスタッフも例外ではないでしょう。しかし素泊まりに近い安いホテルしか知らない者が、どうして最高のホスピタリティある空間を作ることができるでしょうか。
今回益子先生のお取り計らいもあり、オーナーやホテルスタッフの皆様に宿泊以外の部屋や、まだ非公開のロッジなども見学させて頂くことができました。
巷の名の通った外資系ホテルなどでは最高のサービスを提供しています。ホテリ・アアルトのサービスももちろん申し分ありませんが、この両者の質には少し違いがあるような気がしました。
ホテリ・アアルトにある空気はどこまでもパーソナルで、住宅のような温かみがあるのです。至れり尽くせりなのに鬱陶しくない。困ったときにすっと現れて、またすっといなくなってしまうような、そんな絶妙な間や距離感があるのです。
そばに居るわけではないのに、ずっと自分に寄り添ってくれているような安心感。
「私はあなたのことを大切に想っていますよ」というメッセージのひとつひとつを受け取るたびに、宿泊者はとても満たされた気持ちになります。
宿泊者が、そんなメッセージのひとつひとつを宝探しのように探すような、そんな宿泊体験でした。
建築のホスピタリティとは、いわば親の愛情みたいなものなのかもしれません。
押しつければ拒まれる。目を離せば問題を起こす。自由な振る舞いを許しながらも、ずっと後ろからハラハラと見守り続けるというのは、本当に世話が焼けるのですが、それができるのは無償の愛がそこにあるからなのかもしれませんね。
ホテリ・アアルトはオーナーが益子先生に惚れ込んで設計をお願いされたそうです。そんな相思相愛の関係を空間の至る所に見ることができました。幸せな建築ですね。
スタッフの皆さん、おつかれさまでした。
また益子先生、今回の旅行へのご協力とお心遣いに心より感謝申し上げます。
スタッフの山口純くんが本日を最後に事務所を退所することになりました。彼の入所は2013年のFPの計画がはじまる少し前でしたので、約3年半の勤務でした。
山口は私と同じくフィンランドのアールト大学に留学経験があり、留学から帰国するとすぐに事務所に面接にやって来ました。
彼は実家が愛媛のため、面接に来た山口を一旦帰してしまうとまた上京してこなくてはならず、そのため面接ではその場で採用を即決し、その足でアパートを契約させて帰したということもありました。
◇
無口な性格もあり、最初は彼も苦労したようでしたが、仕事の進め方を心得てからはメキメキ頭角を表して、うちのエースとして多くの住宅を担当してくれました。
彼の持ち味は、図面の正確さと、なんといっても仕事の早さ!
短気な私も彼に関しては「もう終わったの!?」ということで、私の中のスタッフレベルのスタンダードが山口によって作られてしまったことは、他のスタッフにとっては不幸なことかもしれません。
退所後は彼は地元の愛媛に戻り、別の環境での修業を考えているようです。リオタデザインで修業を積むと、大谷翔平のストレートが止まって見える、蝿が箸でつかめるようになる、とのもっぱらの噂ですので、このキレッキレの設計スキルを手に、地元でも変わらぬ活躍を期待したいところです。
山口くん、長い間お疲れさまでした!
と言いたいところですが、実は明日より山口を含めスタッフ全員と社員旅行に出かけて参ります。山口くんにとっては卒業旅行といったところでしょうか。こちらの顛末もまた後日書きたいと思いますのでお楽しみに。
事務所のOBスタッフで、akimichi designを主宰する柴秋路くんの住宅「にびいろの舎」のプレ内覧会に、事務所スタッフを連れてお邪魔してきました。
柴くんは過去、百日紅の家やかたつむりハウスなどを担当してくれたスタッフで、OBスタッフの中でも古参スタッフのひとりです。これまでなかなか都合が付かず、新築の仕事をじっくり拝見させてもらったのは、この日が初めてでした。
とにかく細部に至るまで破綻なく丁寧に納められており、また柴くんらしい建築観も芯にあって、それがとても新鮮な印象を持つ住宅でした。光の採り入れ方もきれいでしたね。
リオタデザインのOBスタッフは皆図面巧者で、細部に至るまで繊細な仕事が見て取れるのが、私のささやかな誇りになっています。
我々はディテールという言葉をよく口にしますが、それはなにも取るに足らないものへこだわりや、オタクっぽい作り込みのことを指すのではありません。
むしろその逆で、骨格のあり方や成り立ちを整理し、線をとことんまで少なくしてゆく作業こそが我々の目指すディテールの思想なのです。
柴くんの仕事にも、そんな”ディテールの流儀”を感じることができ、その真摯な仕事の向き合い方にも清々しさを覚えました。
また良くも悪くもまだ確立されていない手法の端々に、迷いとも試みとも取れる作法も読み取りましたが、やがて洗練へと向かう過程で、それがどのように化けてゆくのか今後が楽しみです。
柴くん、今日はご案内ありがとうございました!
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