author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



いろいろ仕事が一区切り付いたので、以前から懸案だった事務所の収納問題について向き合うことにしました。

事務所には年々増え続ける模型、そして雑誌や出版社などから頂く献本類が増え続け、泣く泣く処分したり、どこにも収納できずデスクの上に万年平積みになっていました。

住まいも同じだと思いますが、物理的に面積を増やすことが出来なければ、あとは空間の気積(立体)を使うことを考えなくてはなりません。狭い我が事務所で注目したのは、ミーティングデスク下の空間です。


これが事務所のミーティングデスクです。

我ながら画期的な作りになっているのですが、860x1700サイズのテーブルが3x6版の18mmのシナ積層合板2枚のみで、固定金具を一本も使わずにできています。いわゆる、現場で大工さんが作業台として使う”ウマ”と同じ原理です。



分解するとこんな感じ。原理的には、これなら畳んでどこにでも簡単に持ち運ぶことが出来ます。(ま、持ち運びませんけどね)

この天板だけを残して、下の脚部に収納を付加できるようにしたらどうかと考えました。収納として使うのは我々が腰かける側だけで、ゲスト側はありません。図面化するとこんな感じ。


こんな時、自分がこういう仕事をしていて良かったと思う瞬間です。”こんな風にしたい”を自ら簡単に図面化することが出来ます。製作はいつも家具工事でお世話になっている藤沢木工所さんにお願いすることにしました。

さて約1ヶ月後、藤沢さんがやってきました。



特徴的なのは魚の骨みたいなトゲが四方に出ていることです。
これをひっくり返して、その上に既存の天板を乗せれば…



はいできあがり!とても簡単な作りです。

見た目は元のテーブルとあまり変わりません。先ほどのトゲの部分は、このように持ち出された天板を支える役割を果たしています。


ゲスト側のパネルには下部にスリットを設けています。靴のつま先が入るようにです。そうしないと、つま先でいつも蹴飛ばされる部分が真っ黒になってしまいます。

こういうちょっとしたことが、家具のデザインでは重要になってくるのですね。


反対側は収納になっています。わずかこれだけのスペースでも劇的な収納力を得ることが出来ます。重要なのは何を収納するかをはっきりさせることで、ここでは下部に過去の掲載誌やそのスクラップなどを、そして上部には模型が載せられるようにしました。

模型棚は、事務所の小さな模型の平均サイズを測り、有効高さを100mm程度取ればすっぽり入ることから、220mm程度の隙間に模型棚を2段に分けてぴったり収納しました。ちなみに、模型を下にすると蹴飛ばして壊してしまうかもしれないので上にしています。

ということで模型置き場に困っていたのに、一転してまだまだ置けるスペースが出現しました。これは嬉しい!


脇には無印良品のキャスター収納を置きました。こういうところは既製品に頼るのが一番です。中には過去の製本図面を入れています。

この製本図面も年々増えて困っていました。ここに置けばスタッフも取りやすいし、打合せ中に過去の図面をちょっと引き出すにもとても便利です。


それにこんな感じで動くので、打合せの際にサンプルを載せたり、どかしたりすることもできます。また最近たまにあるのですが、事務所に6人くらいの大人数がいらした際も、以前のテーブルよりは多くの人が楽に座ることが出来ます。


さてこの日はオマケで、藤沢さんにはもう一つお仕事をして頂きました。以下は私の自宅の下足入れなのですが、


自分で設計しておきながら、これは失敗したと思ったのは、下足入れの扉下に十分なスペースを設けなかったこと。今では絶対にやらないことですが、住み始めてすぐ気付きました。靴が出ていると扉が開かないのです。

それでも、まぁいいかとばかり10年を過ごしてきましたが、簡単に改善できることなのでこれを機に改良をすることにしました。


運ばれてきたもう一つの魚の骨。

これは台輪と呼ばれるものですが、下足入れの下に付いている低い台輪を高いものに付け替えて頂きました。幸い下足入れ自体が固定されておらず、床に置かれているだけでしたので作業は簡単に済みました。


あぁスッキリ!

いつも思うことですが、家は建てておしまいではなく、生活の変化や、小さな「まぁいいか」の蓄積をどこかで精算するように改善すると、本当にストレスがなくなるのと同時に、体のアンチエイジングと同じように、また家が若返ったような気がして嬉しくなるものです。

事務所を併設している我が家も丸10年を経て11年目に入りました。建て主の模範となるよう、手入れを怠らず暮らしてゆきたいと思っています。

作業して下さいました藤沢木工所の皆さま、ありがとうございました!

17. 05 / 28

ベガハウスへ

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



鹿児島のベガハウスという工務店にお呼び頂き、2泊3日で鹿児島に行って参りました。ベガハウスはこちらの方には馴染みはないと思いますが、設計事務所も顔負けの設計力と品質の高い施工力で、業界では全国にその名を轟かせている工務店です。

ベガハウス www.vegahouse.biz

今回どうしてベガハウスさんに呼んで頂いたかというと、昨年ビックサイトのジャパンホームショーで板金のセミナーを行った際、その場に居合わせた関係者を通じてベガの八幡社長の耳に入り、ベガでも板金の話をして欲しいということになったのでした。


噂には聞いていましたが、見ての通り素晴らしい社屋です。

外壁には米杉(レッドシダー)が張られています。この自然素材が風雨に晒されて経年変化している姿は、ベガのあり方を体現しているようでもありますね。




内部は学校っぽいと感じた方もいらっしゃると思いますが、その通り学校のイメージで作ったそうです。学校風の大きな黒板も。ちなみに私はアールトスタジオ(アールトの設計事務所)に似ていると思ったのですが、イメージの参考にされたとのこと。

羨ましいと思ったのは、別室に打合せ室も完備しており、子連れの方でも子供がテレビを見たり遊べるような場所や、授乳室まであるということ。裏手には工房もあり、気軽に試作を作ったりモックアップを作ることもできるそうです。


そして極めつけはここ、「ベガ荘」。社屋に隣接して建てられています。

もとは夏休みに受け入れる学生インターンの宿泊所として作ったそうですが、これとても学生が泊まるような場所ではないというか、ちょっとしたリゾートホテルのようですよね。初日はここに宿泊させて頂きました。



そしてこれがベガ荘の売りの一つ、”五右衛門風呂”。外から薪を焚きます。そして私が入浴するタイミングで、外には無数のキャンドルを灯してくださいました。窓からはビールの差し入れが。こういうおもてなし力がベガハウスの真骨頂なのですね。

ただこれは、まだまだ序の口です。


到着した日のお昼はベガランチ(ベガラン)をご馳走になりました。ベガランはスタッフが持ち回りで自炊するランチのことで、週に二回みんなで食事を共にするようです。先ほどの製図室の上にそんな場所が用意されています。


夜は知人のシェフを呼び、こんなご馳走までご用意下さいました。こちらをスタッフの皆さんと一緒に頂きながら歓待を受けました。本当に美味しかったです。ベガ全力のおもてなしはまだ続きます。



朝は8時にベガ荘に朝食が運ばれてきました。言うまでもなく、ここはホテルではありません。朝食もスタッフさんが社屋で作って下さり、運んで来て下さったのでした。

もう一度確認のために書きますが、ベガハウスは工務店です。この写真に写っている人たちも営業だったり、テクニカルスタッフの方であったりで、客室担当者ではありません(当たり前です)。この行き届いた教育や、意識の高さにただただ圧倒されました。もちろん、朝食も最高に美味しかったです。


朝食の前に散歩に出ると、7時過ぎには皆さん既に出社されて、社屋の前を掃き清めています。聞くと6:30頃には出社されているようです(早い人は5:30だとか!)。昨晩も遅かったというのに関係ないのですね。設計事務所ならありえない光景です。

おっと、私は遊びに行ったわけではありません。つい本来の目的を忘れそうになってしまいますが、ベガさんの社員教育のために呼ばれたからには、ちゃんとその重責を果たさなくてはなりません。


ベガさんの施工された住宅もいくつか見せて頂きました。ダメ出しをして欲しいとおっしゃるのですが、ごめんなさい相当レベル高いです。

それでも責任がありますので、失礼を承知で細かいところを指摘させて頂きましたが、それにしても…普通の設計事務所の設計レベルよりははるかに高いことは確かだと思います。

実際社内にプランナーと呼ばれる、通常なら独立して建築家と名乗ってもおかしくない方達がおり、またその下にテクニカルスタッフと呼ばれる設計事務所のスタッフと現場監督が一緒になったような役回りの方がいて、チームでその設計に当たられているのですから無理もありません。


2日目は私のスライドレクチャーののち、板金職人も交えて、ベガさんの抱える板金納まりの諸問題を解決するディスカッションを行いました。

私の意見や提案に頷く場面もあれば、まわりのスタッフからかぶせるようにいろんな意見や提案も出される場面もありました。私はこういう会が大好きです。若いスタッフたちの熱気に惚れ惚れします。

その後にも板金の現場を見学させて頂きました。そこにはリオタデザインとはまた違う流儀がありました。この若いスタッフがざっと並んでみんなが意見している風景もとっても良かったです。

下の写真は、年始に一字でその年の目標を各自書くのだそうです。こちらもシンプルでとても良いですね。


2日におよぶベガスタッフの皆さんとの濃密な時間が終わりました。今回はベガスタッフの研修目的で呼ばれたわけですが、これは私自身の研修旅行に他ならないものとなりました。

今回の滞在で、とにかく印象に残ったのは”チームで作り上げてゆく力”みたいなことです。我々アトリエ事務所は個人の感覚で問題をブレイクし、ある意味それが生命線のようになっているのですが、若いテクニカルスタッフたちがフラットに議論しながらディテールのひとつひとつを決めてゆく姿は清々しく、また羨ましくも思いました。

そして、ともすると仲良し集団になりがちなその組織のあり方に、ちょっと外側から辛口のコメントを差し挟んでゆく八幡社長のバランス感覚が、やはりベガハウスを未来に向けて推進させてるのだということもわかりました。


これからは工務店の時代です。それも施工だけでなく、高い設計力を持ったクオリティの高い工務店です。そうでない工務店と設計事務所は淘汰してゆくかもしれません。もちろんリオタデザインは負けませんよ!

今回は本当に良い経験をさせて頂きました。お呼び下さり最高のおもてなしを下さいました八幡社長と、そのご縁を取り持って下さいましたmonowaの中嶋さんに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

そしてベガの皆さん、お忙しい中お付き合い下さいましてありがとうございました。またお会いした折には濃いディテールトークで盛りあがりましょう!

17. 05 / 24

潜入捜査

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



今日は千葉に潜りに行ってきました!
どこにって床下に。

10年以上前に設計した住宅の床下に、水が溜まっているとのご報告を頂きました。この住宅は当初の工務店さんが倒れてしまったため、こういう時も工務店さんに頼ることが出来ません。

自分が設計した住宅に、床下点検口から潜り込むのは初めての経験。水が溜まっているということだったのでこの日は水着着用。全身水に浸かりながら、ほふく前進で隅々まで洞窟探検してきました。

建築は常に水との戦いです。そしてその原因究明は、迷宮入りの事件で犯人を追い詰める刑事のごとしです。この日ももはや手詰まりか!からの光明を見出し、ほぼ犯人を絞り込みました。逮捕状持ってまた来るから、首を洗って待っとけよ!





一昨日、昨日と開催しました「路地の家」のオープンハウスでは大変多くの方々にお越し頂きました。まずは足をお運び下さった皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

「路地の家」では細い路地に生まれた小さなオープンスペースを活かした開放的な作りにすること、またただ収容量があるだけでなく、見て楽しめる”見せる書架”としての本棚を作るというのが、クライアントから求められた二つの大きなご要望でした。


前者の路地に開放的な作りにするという点に於いてはプランニングが、後者の見せる書架にあたっては、安全かつ機能的に出し入れが出来るという点に於いて、美観と高い技術的解決とがそれぞれ求められました。

北側玄関側のファサードは、ストイックな切妻屋根とガラス窓、そして玄関扉だけがあります。対照的に、南側路地には大きく開かれ、上部に小さな小窓がアクセントのように付いています。



通常ファサードというものは意図的に作る部分と、”そうなってしまった”部分とがありますが、この住宅のファサードはかなり意識的に、意図的に作られています。

うちの事務所はなぜかグラフィックデザイナーのクライアントが多いのですが、この方達はまず例外なく線の美しさにこだわり、理屈をこねる前に手が動き、こういうものが良いということを直感的に導かれる傾向があるような気がします。

グラフィックデザインで言えば、ある意味窓位置は”文字組み”であり、その大きさは”フォントの級数”みたいなものです。それらが溶け合い、違和感なく”気持ちよい”と感じる状態に落ち着くことが、住まう方の空間の気持ち良さにもつながるような気がします。

前述のグラフィックデザイナーのクライアントが多いという理由は、きっと私自身、とても”グラフィックにうるさい(=めんどくさい?)"人間であるということとも無関係ではないかもしれません笑




リビングの建具を開け放つと、外部と大きくつながります。更に木製の門扉も開け放てば、路地空間とも一体でつながります。オープンハウス時は最高の天気に恵まれましたので、この気持ちよいつながりを皆さんに体感して頂けて良かったです。

リビングは敷地の高低差を利用して床をスキップさせ、玄関側より360mm床を下げています。そのことと併せ、階高を通常より高めの2,910mmにすることで、リビングの天井高を3.2mまで確保しています。

いわゆるこうした住宅密集地で、住宅のリビングを1階に設けると、光が入らず暗く陰鬱な感じになることがありますが、この住宅では開口部を大きく取ったことや、天井を可能な限り高くしたことで、1階であっても明るく開放的な作りにすることが出来たと思います。



一方の書架には、昨日のオープンハウスではクライアント自ら、ご自身のこれまでのお仕事の一部を展示下さいました。これが入ったことで、俄然この空間が引き締まりました。こうしたお仕事を巡っての思考についてもお話が伺えて、とても楽しかったです。



そしてこれがいよいよ目玉の”見せる書架”です。これについては、写真ではなかなか説明しきれないので、以下に動画をアップします。是非こちらで見てみて下さい。

【床パネル開閉動画】

本棚全景(上から)
本棚全景(下から)
可動パネル機構(上から)
可動パネル機構(下から)
パネルを固定する




30~40kgにもなる床パネルの上げ下げには、ガスダンパーという機構を使っています。車のハッチバックなどに使われている機構で、建築に使われることは少ないのですが、今回この機構に出会ったことで、ようやくアイデアが実現に向けて動き始めました。最初に言い出したクライアントですら、本当に実現したことに驚かれていたほどです笑

機構の調整にあたっては、メーカーのスガツネさんにも多大な技術協力を頂きました。こちらもこの場をお借りして御礼申し上げます。



個人的には、この最上部に設けた小部屋が気に入っています。

こういう部屋って、意味もなくワクワクしますよね。色使いにもちょっと遊びを入れたりして、小さなお子さんがいるお宅だと、こういう所で想像力が育まれるような気がします。


あとは随所のこんなスイッチや小物、引手などにも反応された方がいっぱいいらっしゃいました。こういう部分は、我々の趣味というよりはクライアントのご趣味に委ねている部分です。今回こうしたアンティーク系のものがお好きな方でしたので、自由に選んで頂き現場に取り付けて頂きました。

家づくりでは、こういうちょっとしたスパイスの部分もとても重要だと常々感じています。



今回の住宅は、去年入社したばかりの新人・砂庭さんに担当してもらいました。私ですら腰が引けるほどの難しい住宅でしたが、既に退所した山口くんのサポートなども借りながら、最後まで立派に務めあげてくれました。上の写真は、見学にいらして下さった建築家の伊礼智さんに労いの言葉をかけて頂いているところです。

彼女は大学の卒業設計に、こうした街に開かれた住宅のあり方をテーマに選んでいましたので、彼女にとっても建築の理想と現実について学ぶ良い機会になったことと思います。けれども、一方では学生が思い描いた夢物語も、しっかり積み上げてゆけば実際にもちゃんとできるのだ、ということも学んでもらえたかなと思っています。


最後に、今回の素晴らしいお仕事の機会を下さいましたクライアントのOさんには心より感謝しております。最後までドキドキしながら現場監理をしていましたが、最後に心から喜んで下さったことが何よりでした。いつもこの瞬間のために仕事をしていると思える瞬間です。

最後に記念写真をパチリ!
関係者の皆さま、お疲れさまでした。

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



昨日上げたDECOについて、変わった架構(構造)をしているなと思われた方も多いと思うので、少し補足でご説明を。

我々のような設計事務所が設計する家は、変わっていると思われがちです。またデザイン重視で設計をしているとも捉えられているかもしれません。どちらも間違いではないかもしれませんが、本質ではありません。

そうするのが一番合理的だから、そうしているのです。

この程度でしたら難しい架構技術はほとんど要りません。ほぼプレカットのみ(化粧垂木の仕口のみ一部手刻み)でできます。DECOはこの架構のおかげで、2階の空間には柱が一本もありません。

設計するというのは、本来そういうことだと思うのです。