
一昨日は、津で開催の工務店設計塾の前乗りで熊野まで。家から6時間半、、遠かった!目的は念願のnojimoku訪問です。こういうことがなければ一生?来れないと思っていました。
原木置場から製材工場、木挽座までつきっきりでご案内頂きありがとうございました!野地さんの「木はどこから腐るかわかりますか?」という話から始まり、林業の抱える問題、木取りの難しさなどとてもわかりやすく教えて頂きました。
何より、熊野という過疎の進む地域を逆手にとって場所の取る自然乾燥の設備導入を進めたり、またのじもく酒場といった攻めた広報戦略、どれもが一本の線で繋がった一日でした。やっぱりすごい!そして逞しいと思いました。
木挽座にも行けてよかったです。まちに開かれた場所を持つという考えにも共感します!夜も遅くまで、じつに実に深いい、そしてすべらない話が続いたのでした。野地さん、遅くまでお付き合いくださりありがとうございました!!是非またリアルのじもく酒場やりましょう〜!




プランの初期スケッチをしている時って、きわめて音楽的だなと思う。心地よい旋律を考えているみたい。動線とか機能も大事だけど、良いプランができる時って、そんなこと考えないで自由に鉛筆を走らせている時が圧倒的に多いように思う。
まるでグラフィックデザインのように美しい形にプランがまとまると、結果として機能もバッチリだし、法的にも穴はないし、スケールを当てればすべてが辻褄が合う。そういう体験をするたび、プランニングは人には教えられないとつくづく思う。
人が描いたプランにコメントすることはできる。でもどうやったら描けますか?という質問には答えられない。だから音楽的。どうやったら曲が書けますか?と聞かれて答えられないのと同じように。
教えてできることは、AIに置き換えができることだと思う。人には教えられないことが、その人にしかできない仕事なのだと思う。

飯田善彦×宮崎晃吉×菅原大輔「場の運営で変わる設計論」
トークセッションにお邪魔してきました。
これからの事務所のあり方についてことあるごとに考えます。建築家が侍であるならば、時代は明治維新に差しかかっているのでしょう。いつまでちょんまげ姿で歩くのか、我々はその決断を迫られているような気もしています。
そんな折刊行された菅原大輔さんによる『プロジェクト図解 地域の場を設計して、運営する』は、ここ数年考えていたことが分かりやすく実例を交えて紹介されているタイムリーな一冊でした。
セッションは管原さんの仕切りのもと、それぞれが設計事務所の傍らカフェなどを運営する飯田善彦さんや宮崎晃吉さんによる話は、実践者にしか言えない言葉ばかりでとても説得力がありました。
設計事務所を街にひらこうとする取り組みはもはや珍しくはないかもしれませんが、それを「採算なんて合わない」とする飯田さんと、そこに経営のリアリティを見出そうとする宮崎さんや管原さん。そこにも時代のフェーズの変節点を感じたりして、新しい時代の感触を感じました。
久しぶりに、これは行かなくては!と思わせるイベントで、実際足を運べて良かったです。ありがとうございました。

今日は久喜の「双庭の家」の撮影があった。建主さんは60代の女性。自分なら60代から家づくりをできるだろうか?家づくりは、ある意味自分の人生をリセットするような出来事に近い。
でもこの女性にとってはリセットではなかった。より活き活きと生きるための通過点、そんな気もした。本当に若々しく10歳は若く見えるのに、おっしゃることはいつも人生経験に裏打ちされた含蓄ある言葉で説得力がある。
この日は五月晴れの絶好の撮影日和。この住宅は庭のあり方に住宅のコンセプトの大半を割いたような住まいだったのだけれど、それに応えるように庭は隅々まで手入れが行き届き、光に輝く新緑は本当にため息しか出なかった。
家の中だってちり一つ落ちていない。随所に観葉植物が置かれ、ちらっと覗いた納戸の中だって完璧に整っている。覗かれて困る部屋なんてひとつもない。
うちの建主さんは皆さんおしゃれ番長ばかりで、撮影といえばビシッと整えた住まいにしてくれる。この建主さんも例外ではなかったけれど、なんというか別格だった。
高価なデザイン家具が並んでいるわけではなく、むしろ無名の家具であったり民芸品のようなものが棚には飾られているだけなのだけれど、その方の生きてきた人生の深みや見識の高さ、人としての品格のようなものが滲み出ていて、唯一無二の空間を作り出していた。そのことに心から感動してしまった。
あぁ住まいって、その人そのものなんだ。
いつもそう思っているし、何度もそう語ってきたけれど、この日は心底そう思った。我々設計者が設計したことなんて、これっぽっちのことしかないのだ。それを我々の作品だなんて、どう逆立ちしたって言えるはずがない。
あるいはこうも言えるかもしれない。その方は、自分だけの住まいを手に入れたことで、ようやく自分本来の姿になれたのだと。そうであったら嬉しい。

坂戸市で進める「回廊の家」が先週末に上棟しました。
構造はAtledの小倉直幸さん。ほぼ平屋の構成を覆う大屋根の切妻頂部は棟木を省き、垂木が合掌の形で接合されます。
今回はスラストを抑えるテンションロッドも折半構造も使わずにこれを成立させているのですが、一番の懸念は垂木の合掌部。
木の反りやクリープによって接合部がずれたり、ひらいたりする不安があったのですが、工務店の方でモックアップを作って検討して下さり、梁に手刻みで契りをつくり上から楔を打ち込むという方法で精度の高い、非常に美しい架構に仕上げて頂きました。松本建設さんの技術力に脱帽です!




構造家の小倉さんはプレカット打合せ用に架構模型まで作って下さり、今日もこれを現場に持ち込んで一緒に検証しました。
この合掌垂木を見上げるリビングは天井高5m。両妻壁はガラス張りになるので、この美しい架構の連続が通りからもこぼれる予定です。これからの現場の進捗が楽しみです!

