伊礼さんのトークゲストとして呼んで頂きました、エディオン蔦屋家電@広島でのエクスナレッジ書店イベントは無事終了!伊礼さんの全国ネットワークのおかげで、私まで広島の皆さんに良くして頂きました。

地元広島の建築家川端さん、田村さんには、地元設計者の集まりである「レモンの会」の皆さんに声をかけて下さり、イベント前に広島の建築に案内して下さったり、会場の集客へのご協力、イベント後の打ち上げまでセッティングして頂きました。この場をお借りして御礼申し上げます。

またドレスコードとして?私のトレードマークである”水玉”着用で来て下さった方もありがとうございました!ベガハウスの鹿児島に引き続き、広島も私にとって思い入れ深い街になりました。



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sekimoto

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> 建築・デザイン
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先週土曜日は、住宅遺産トラスト主催の中山邸(1983年・設計:宮脇檀)の取り壊し前最後の見学会がありました。宮脇檀さんといえば多くの住宅建築家にとっての憧れの存在であり、その設計手法は今もなお手本であり続けています。

残念ながら宮脇さんは今は既に他界されておられますが、「玄関の軒は低く低く!」「アプローチは脇から取れ!」など多くの格言は、私も今もプランニングの際に反芻して意識するキーワードになっています。

そんな宮脇さんの住宅を実際に見られるという機会は非常に貴重で、この日は大変な数の建築関係者が集まり、その数500人!久しぶりに上昇した気温と共に、皆汗だくで見学していました。


この住宅は、モダンで箱形の傑作住宅を多く残した宮脇氏には珍しく、民家のような深い軒を持つ瓦屋根が載せられています。ひとつには施主からの、「ボックスだけはかんべん願いたい」とのご要望があったことも明かしていますが、もともとこの敷地にあった古い蔵や長屋門との調和や尊重もその意図にはあったようです。

それでもただの瓦屋根の住宅とせず、RC造を併用した混構造で解くところが、安易な予定調和を嫌う宮脇さんらしい設計アプローチです。解説にも「和風の住宅を創ろうとは決して思わなかった」と強調されています。

でもぱっと見たらきっと誰でも「あれ、和風なんだ?」と思いますよね。当日配られた資料の解説文に、そんな当時の宮脇さんの葛藤のようなものも垣間見れて、興味深かったです。


さてそんな宮脇さんの中山邸、本来はその外観やプラン構成などに多くの解説がなされるところですが、私はやはりそのディテールについ目が行ってしまいます。

しかし些末なことと侮るなかれ。そこにあったのは、まっすぐに注がれた設計者の愛情でした。神は細部に宿る?いえ、おもてなしこそが細部に宿ると思うのです。



たとえばこれ。屋根の開きを抑えるタイバーですが、通常は金属がそのまま露出するところ、わざわざ凝った加工を施した木で被覆しています。

しかも板のジョイント基準をタイロッド貫通部に合わせていることにも注目!工程としてタイバーが先行しますので、貫通する木部には割が出てきますが、それを意識させない仕舞いです。手段と目的を違えない。すべてがミリ単位で計算された空間であることが分かります。



続いてメラミン天板の小口処理。

一見なんてことないように見えます。しかしカウンター平面が曲面となっているところに注目!普通小口の大手材は無垢材ですので、こんなに自由自在には曲がらないはず。

よく見ると積層曲げ加工を施しています。これは北欧家具などに見られる曲げ木の技術のひとつです。トイレのこんな些末な部分であっても手を抜いていない。本気で取り組んでいるというところにぐっときます。私は背筋がピンと伸びる心境です。




続いてこれは寝室の出窓のディテールです。

これは宮脇さんも著書にディテール解説をされていて、宮脇さんの定番ディテールの一つだったようです。寝室の採光と通風を、まとめて出窓で解決するという方法です。

これはまだ若かりし頃本で読んで、住宅建築家はこんなことまで考えるのか!と舌を巻いたディテールでしたので、実物が見れて感無量でした。

私も寝室の枕元に出窓をよく作りますが、これは宮脇さんの影響によるものです。私はもっとディテールを簡略化させていますが、これは途方もなく凝っています。個人的には漏水や結露、コストが怖くてなかなか手が出せません(苦笑)



そしてこれは浴室の窓。

木製サッシュの内側に、さらにガラリ戸を設けています。意図としては、サッシュを開けるとその隙間から中が覗けてしまいます。こうしておけば、プライバシーは確保しながらも通風を取ることができる、安易にブラインドに逃げない、そういうことなのだろうと思います。

上部と、また浴槽がある下部にも窓があることにも注目!どうしてかわかりますか?

お風呂に入りながら、頬に外からの風が当たったら気持ち良いですよね。私もよくそういうことを考えます。また天井を見ると、


換気扇が埋め込まれています。おそらくこの形状からすると、換気扇が見えないようにガラリが嵌まっていたのではないかと推測します。

あぁ、と声を漏らしながらくつろいだ浴室で、天井を見上げたら無粋な換気扇が直付けされていたらどうでしょうか。きっとリオタデザインのお施主さんは今頃「あ、うちと同じ納まりだ!」と思っていることでしょう。

宮脇さんわかります!そうですよね。ひとつひとつに頷きながら、私と宮脇さんの対話は続きます。



次にこれはどうでしょう。わかりますか?上部のルーバー窓のオペレーターチェーンが、カーテンボックスを貫通して下まで落ちてきています。

これ自体は特段珍しいことではありません。しかしこの解決を見て下さい。5mmの穴を2つ開けているだけなんです。

大きめの穴をあけてチェーンを通すというのはうちもよくやるんですが、思えばボールチェーンは外れますから、その最小限の解決は5mmの穴二つでいいんです。どうして今まで気づかなかったんだろう?目から鱗とはこのことです。

手段と目的を違えない。ここでもひとつ頭が下がる思いでした。



最後にこちら。もはや説明はいりませんね。思わずニヤリ。

私は住宅設計の本質は”おもてなし”にあると思うんですね。全力で住まい手をもてなす。汚いところは見せない。気遣いを忘れない。

宮脇さんはそのエッセイやエピソードからも、毒舌家で豪快な人だったようです。しかしこうした設えの一つ一つを見ると、とても繊細で優しい人だったんだなということが伝わってきます。宮脇さんの背中がはるか遠くに思えます。

今回の見学会を主催して下さった住宅遺産トラストの皆さま、貴重な機会を誠にありがとうございました!

毎年夏になると学生のオープンデスク生(インターン)がやってきます。

今年は新潟の長岡造形大学の3年生、星成美さんがやってきました。3年前には現スタッフの砂庭さんも山形の芸工大からやってきましたので、私としては北から来る学生には思わず期待してしまいます笑

期間としては約一週間とすこしの間でしたが、前半の数日はまずは恒例の住宅の設計エスキース実習ということで、実際の計画敷地をモデルケースとして、住宅のプランニングをしてもらいました。

1日1プランを模型を含めて作成してもらい、一日の終わりに私がそれを添削してという作業を繰り返します。プランニングはひらめきではなく、果てしない論理の積み重ね、詰め将棋なんだということを理解してもらうのが目的です。

最後にはぎこちなくも?学生らしい個性的な形が立ち上がりました。まだまだつっこみどころはありますが、最後に私が考えた案を見てもらい、実務設計との違いを認識してもらいました。ここまでがLesson1。


次に彼女には別の課題を出しました。今度は制作の課題です

日頃我々ではA4サイズの大きさの模型を製作しています。これを運ぶ際に適当な袋がなく、いつもマチが大きめの菓子袋などで代用していましたが、今年はこの模型専用の手提げ袋をデザイン・制作してもらうことにしました。

しかし、ただの夏の工作課題と侮ることなかれ。要望と機能の整理、それに対応した寸法や素材の選択、その手配や制作期間の設定、ディテール処理など、そのプロセスはまさに建築そのものと言って良いと思います。

ともあれ彼女の悩みながらの制作の日々がはじまりました。


そして彼女が最後に作ってくれたのは合計3つのバッグでした。薄い紙でつくったもの、厚い紙でつくったもの、布でつくったもの。

彼女が最も苦労したのは素材でした。最初紙での制作を想定していたのですが、彼女には東京中のお店を探してもらいましたが、制作に必要な大きな紙がなかなか入手できません。これが思わぬ落とし穴でした。

建築にもそうした問題はつきものです。さて、どう解決するか?


彼女の制作は以下のプロセスを経ました。

タイプ1:適切な厚みを持った紙で作る/ただし大きさが足りない

タイプ2:十分な大きさのある紙で作る/ただし必要な強度が足りない

タイプ3:布で作る

この3つめの布で作るという選択肢に行き着いたのは、今回のファインプレーだったと思います。提出前夜、彼女は徹夜で針を縫ったそうです。ディテール処理もちゃんとしています。


紙袋のとじ方もなかなか可愛い。
こちらは紐付き封筒の応用ですね。


最後にスタッフによる使い勝手のチェック。

模型箱の出し入れもしやすく、上部もちゃんと留められるようになっています。シンプルなデザインはとても難しいのですが、学生らしい感性で、おしゃれで可愛らしいバッグが出来たと思います。





星さん、短い間でしたがお疲れさまでした!

アトリエ事務所の様子や、家づくりの現場がどう進んでいるかなど、なかなか学生には足が運べない場所まで案内させてもらいましたので、それなりに良い経験になったのではないかと思っています。

またこれからの学生生活も充実したものにされて下さい!


私の敬愛するデザイナーに深澤直人さんがいます。彼のデザインに対する思想は、僭越ながら私の建築への向き合い方とも重なる部分が多く、レクチャーなどでもよく深澤氏の「Without Thought」の話を引き合いに使わせて頂いています。

仮に深澤直人さんの名前を知らない人でも、彼のデザインを見たことがない人は少ないと思います。無印良品でよく買い物をするという方なら、無印良品に並んでいる製品の多くは深澤さんによるものですし、その他国内外の数多くの製品のプロダクトデザインを手がけていらっしゃいます。

そんな深澤直人さんの(意外ですが)国内初となる個展が、パナソニック汐留ミュージアムにて開催中です。

AMBIENT[深澤直人がデザインする生活の周囲展]
https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/170708/


深澤さんのデザインの特徴は、氏が毎年開催しているワークショップのタイトル「Without Thought」に象徴されるように、”無意識のデザイン”にあります。

私なりに咀嚼するならば、「デザインの本質は人が意識することなく、なにげなく普段の生活の中で行っている仕草や習慣のなかにこそある」といったところでしょうか。

もう少しわかりやすく例えると、雨の中家に帰ってきて傘をたたむとき、そこに傘立てがなかったらどうするでしょうか?おそらく人に尋ねるまでもなく、たたんだ傘を床のタイル目地と壁に斜めに立て掛けることでしょう。

深澤さんはこれが「傘立て」なのだと言います。「壁から15cm離れた7mmのタイル目地は傘立てである」というのが、深澤さんの主張です。

我々は傘立てをデザインしようとして、あるいは傘が立てられるものを求めて、つい玄関に筒型のオブジェクトを置いてしまいがちです。けれども本当にそこに求められていることは、必ずしもそこに筒を置くことではないのです。


深澤さんのデザインは、デザインが”普通”であることの大切さを説きつつも、その普通のディテールを極限まで洗練させてゆくと、けして凡庸ではない佇まいに行き着くことを教えてくれます。

それは我々の住宅設計にも同じことが言えます。住宅にとって大切なのは日常です。普通だけれど、普通を突き抜けた先にあるちょっと特別な日常とでも言いましょうか。

私の身の回りや事務所には、北欧デザインと同じくらい、深澤さんがデザインしたプロダクトがたくさん置かれています。私個人の好みもありますが、デザインは思想であり、共感する思想を常に手元に置いておくことは、ぶれない仕事のベンチマークになると考えています。


志木市で進行中の現場DECOにキッチン家具が入るということで、担当砂庭とオープンデスクを伴って現場へ。今回の家具も新潟の藤沢木工所にお願いしています。

そして今年のオープンデスク生は長岡造形大学の学生さん、ということでチーム新潟をパチリ。しかし写真に入りたがらない砂庭「私は青森ですっ」

そうかじゃあチーム新潟青森JVで!