14. 05 / 31

上棟2題

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



今週は忙しさのピークで,本当に分刻みで東奔西走しておりました.また大きな実施設計案件の大詰めでもあり,寝ても覚めても気が休まる暇がありませんでした.

そんな中,忙しさに拍車をかけるように上棟が2軒もありました.
「竹林の家(守谷市)」「トンガリの家(日野市)」

上の写真は「竹林の家(守谷市)」.7寸勾配の切り妻屋根が特徴のシンプルな住宅です.切り妻屋根はいわゆる”家型”といって,子どもに家を描かせたら,大概こういうトンガリ屋根を描くことでしょう.そんな定番の屋根なのに,実は設計するのははじめて.シンプルな架構ながら,内部の空間は少しひねりも利いていて,外とのつながりも含めなかなか楽しそうな空間になりそうです. 

一方下は「トンガリの家(日野市)」.3角形の変形敷地に建つ,複雑な屋根架構を持つ家です.特に頂部に集まってくる5本の梁と,その立体交差は今回のヤマ場の一つでした.全体に構造もねじれていてもうワケわからない!というところから,ようやくここまで辿り着きました.架構にあたっては,長野にある日本有数のプレカット技術を持つ斉藤木材工業さんにも技術協力を頂いております.

片やシンプル,片や複雑の極み.上棟は仕上がっていない分だけ,その住宅の本質的な部分がよく表れます.これからの現場監理も楽しみながら,完成まで見届けたいと思います.



先週土曜日,荒川区にて進行中だった住宅「町屋の家」のオープンハウスがありました.今回の住宅は多世帯かつ,計画道路や法的なことなど,実に複合的かつ複雑な問題が絡み合っていた難しい計画でした.

ただ出来上がった住宅は実にシンプルで,もしかしたらご覧になった方も「どこをそんなに苦労したの?」と不思議に思うような仕上がりだったかもしれません.往々にして建築というものは,どんな複雑な問題も,鮮やかに整理すると何事もなかったようなシンプルさに辿り着くものです.


それはさておき,オープンハウスには同業の建築家仲間も含めて,いろんな方に来て頂きました.同業が見るポイントと一般の方が見るポイントというのももちろん違いますが,もしかしたら,プロである同業すらも見落として帰られたかもしれないであろう,”細かすぎて伝わらない”地味なポイントもあるので,今日は特別にそれらをご紹介しておこうと思います.


まずは換気扇のニッチ.
こんなのは序の口ですね.うちでは普通です.珍しくもありません.


でもこれはどうでしょう?ポップアップする給気口とスライド収納との干渉を交わしています.これはたまたまではありません.ちゃんと図面の段階で予見して,意識して納めています.こういうところを気づいてもらえると,設計者としてはとても嬉しい気持ちになります.


これは地味の極み.ここは家具で納めています.と言うと,一般の方は「?」同業ならニヤッとするかもしれません.家具製作で納めるときは,ボードが仕上がった段階で家具を入れるので,カウンターと壁との間に隙間が出ます.どうがんばったって,3ミリは必至でしょう.

ここにはそれがありません.家具を入れるタイミングとボードを張るタイミングをずらしているからです.現場は嫌がりますが,こういうことを地味にやると結果的には”なんてことないように”納まります.


これはわかるでしょうか?
今回SE構法という金物構法を使っているので,梁にはスリットの穴があいています.でも壁際のクロスとの取り合いに穴が開くと,壁の中が見えてしまってきれいに納まりません.そこには部分的に楔を打って梁下のラインを揃えています.

もうちょっと言うならば,楔もすべてスリットをつぶすのではなく,最小限にとどめて解決しているというのもポイントです.あくまでSE構法でやっているという主張は残しつつ,仕上げは美しく見せる.別にどうってことはありません.ありませんが,こういう所に気づいてあげると,これまた設計者は嬉しくなるものです.



続いてここも激シブのポイントです.
アルミアングルの関止め.既製品だとゴツイのしかありません.これは製作ですが,ポイントは扉を閉めるとアングルが面一になって隠れるというところです.どうってことはありません.ありませんが,こういうことを地味にやっている同業を見たら,この人はちゃんと完成形が見えているんだなと,私はニヤリとするでしょう.


最後にこれは板金のコーナー.
これはファインプレーです.なんてことないように見えるでしょう.しかしこれはウルトラCです.私はいつもこういう風に納めて欲しいと思っているのですが,それを実現出来る職人というのは滅多にいません.コーナーに役物を使わずに横葺きを連続して納める.こんなことができるのは世界広しといえども日本の職人だけです.日本人に生まれて良かった.え,見過ごした?それは残念でしたねえ.

繰り返すようですが,上記のようなディテール展開はほんの序の口です.そして我々にとっては当たり前の部分です.竣工写真には写りません.雑誌にも載りません.でも重要なんです,こういうところが.


私はそういう部分は建築の”所作”のような部分だと思っています.
私の好きな弓道にも,このような所作が無数にあります.それぞれの動きには意味があり,的に当たる当たらないという以前に,それが備わっている人の射は美しく品格を感じさせるものです.

弓道では,それらはすべて相手に対する「敬意」から来るものだということを知りました.建築もまた,それを使う人やそれを外から眺める人への敬意を考えたら,おのずとそこにはディテール(所作)が生まれるのだと思います.

オープンハウスに来たら,是非そんな隠れたポイントを発見してみてください.そして発見したら私やお近くのスタッフに小声で教えて下さい.景品はありませんが,きっとニンマリすることと思います.

14. 05 / 02

クローム

author
sekimoto

category
> STAFF
> 仕事



「君たちもうクロームにしてる?」
スタッフA,B
「クロームってなんですか?」
だからIEの問題で.
「IEの問題ってなんですか?」

君たち何も知らないのか!
週明けから世間は大騒ぎしてるじゃないか.

スタッフCが帰社する.
「C君はもうクロームにしてる?」
スタッフC
「クロームってなんですか?」
だからIEの問題で.
「IEの問題ってなんですか?」

はぁ?まったく!
全員「いやうち新聞取ってないんでー」

仕方なく新聞を見せる.
「おー,新聞久しぶりに見た」
「へぇ,これって大問題じゃないですか」

だからそうだって言ってるだろ!
まったくうちの事務所は平和だよ.

「でもこれって都内だけとかじゃないんですかね」

ああそうかもしれないね.
うち埼玉だしね.

14. 05 / 01

できるかな?

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



昨日は「トンガリの家」のプレカット打合せ.
この立体架構,並のプレカット技術ではできません.現場の手加工ならできますが,途方もない時間と手間がかかります(前回の隅切りの家で懲りました・・).

今回は山田構造事務所の紹介で,高いプレカット技術を持つ千葉の大三商工さんと,長野にある国内トップクラスの立体加工技術を誇る斉藤木材工業さんの協働作業で挑むことになりました.

こんなのできるんかいな?
設計しながら何度も思いました.積算時に工務店各社からも言われました.
こんなのできるんかいな?

でも大丈夫!できるんです.
というか,ハードルをう~んと高く設定すると,それをなんとかできる選りすぐりの人間が引き寄せられてくると言った方が良いでしょうか.といっても簡単ではありません.この日もプレカット図を前にみんなで腕組み.そして難しいのは架構だけではありません.現場監督も「正直こういうのはやったことないので…」とつい本音がポロリ.

不謹慎なのでずっと控えていましたが,私は内心楽しくて仕方がありません.うわ~みんな眉間にしわ寄せてるよ.てことはやっぱ難しいんだなあ.でも大丈夫,できるできる!

やっぱ仕事はこうでなくちゃ!

14. 04 / 25

CRANE

author
sekimoto

category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48



CRANEは約10年ほど前,2005年竣工の住宅で,私にとってはじめての住宅,ILMAを雑誌で見て設計を依頼して下さったクライアントの住宅だった.

ご予算もILMAに負けず劣らず厳しく,困難を極めた調整プロセスを経てようやく着工した住宅だった.ローコストながらも一切手を抜くことなく,当時は私も若かったこともあり,鉄骨のディテールの端部に至るまで,現場には無理を言いながら神経をすり減らして監理をした住宅でもあった.

そんないろんな意味でギリギリのディテールで納めたこの住宅は,私にとっては思い入れのある仕事の一つになっている.そんなCRANEのクライアントからご相談を受けたのは去年のことだった.ご事情から別の住宅に移ることになり,移転先の住宅のリフォームもお願いしたいとのこと.ところが,当時はこちらもてんてこ舞いで,仕方なく事務所OBの柴くん(akimichi design)にこの仕事をお願いすることになった. 

ところが話はここで終わらない.
空き家となるこのCRANEに,結局柴くんが入居することになったのだ.

彼なりにリフォームを施して,ちょっとばかりアレンジされたこの家に今彼は住んでいる.因果というか,ご縁というのは不思議なものだ.

私も当時クライアントのために設計した家に,まさか自分の元スタッフが住むことになるとは想像もしていなかった.もっともクライアントにとっては,建築を理解する人間に大切に住んでもらうことができ,彼も念願の自宅兼アトリエを手に入れることができたのだから言うことはない(元々アトリエ併設の住宅だった).

そして私としても・・自分の設計した住宅が第三者の手に渡ることなく,しかも元スタッフが”常駐監理”してくれるというオマケまでついた.みんなハッピー.
クライアントと柴くんの,益々のご発展をお祈りしています.

(私のサイトの作品写真で,トップの写真に写る二人の人物が実は柴くんとクライアント.竣工して数年後に,二期工事であった外構工事が完了した際に撮った一枚だったのだけれど,なんだか未来を予言しているような一枚だったと後で気づきました)

Before/After(右側が改装後写真)