年が明けると建設会社の方達が,入れ替わり立ち替わりご挨拶にやってくる.ほとんどが玄関先で社名入りのタオルを手渡し,頭を下げたらすぐに帰って行く.
今日は私の不在中に,都内で集合住宅を施工して下さっている中堅ゼネコンの辰(しん)さんがご挨拶に見えたらしい.アトリエ事務所の仕事をどこよりも多くこなしておられる辰さんの,新年のご挨拶はさすがに洒落ていた.
建築家・永山祐子さんのデザインしたオリジナル手ぬぐい.ちゃんと「SHIN」の文字も入っている.建築的アイコンである階段をデザインモチーフにしながらも,日本の伝統美を表現している.よくできたデザインだ.
ところがよく見ると,パターン全体が真ん中でくびれて意味深な模様が入っている.ハテ,これはどういう意味なんだろう?と眺めていたら後ろで奥さんが「富士山じゃない?」と一言.あぁ,そうか!デザインにもう一ひねり.さすが永山さんである.
いたく感心したので,これをスタッフがわかるかどうか試してみることにした.
「ねえUくん,このパターンの意味わかる?」
「あ,それさっき辰さんが富士山だって言ってました」
「・・・」
あのねえ,そこ絶対言っちゃいけないとこだよね?
わかっていても一応首かしげなくちゃいけないとこだよね?
ねえ?ねえ?
証拠にそのあと
「ねえYくん,わかる?」
「さっき,Uさんの聞こえちゃいました」
もう台無し
どんだけクリックしてんですか,というマウス.
見かねて,スタッフ全員のマウスとキーボードを一新することに.
朝机の上に置かれた新品に歓声を上げるスタッフ.
「ありがとうございます!」
「それ,今年のボーナスだから」
全員,ぴたっと止まった.
時計はアナログじゃないと時間がよくわからない.
私は時計の長針と短針の角度で直感的に時間を理解する.
たとえば8時20分ごろの「遅刻しそうな角度」とか,11時50分ごろの「のっぴきならない角度」,16時40分ごろの「一日が暮れかかっているぞ(やばいやばい仕事終わらない)」などなど.人には誰しも一瞬にして状況を悟り,「まずい」とか「ほっとした」と感じるそれぞれの針の角度があるような気がする.
そんな話を先日うちの若いスタッフ(20代)にすると,ですよね!と共感を得られるかと思いきや,ですかねえ?となぜか疑問形だ.思わぬ不意打ちに,私も「そうだよ,だって”16:40”とかデジタル表示された数字を見たって,今どんな時間かなんてイメージできないじゃないか」と返すと,
「そうですか?僕は小さい頃からずっとデジタル時計を見ているので,”16”と”40”の数字の組み合わせを見ただけで,直感的に時間を理解しますけどね」と一言.
ガーン!新人類か.
そして”新人類”という言葉が,すでに'80年代を象徴する言葉であったことに気づき,もう一度深く落ち込む私であった.
◇
余談ですが,時計の針は「10時9分33秒」の位置が最も美しく,無印良品の販売マニュアル(ムジグラム)でも針はこの位置にしてディスプレイすることが決められているそうです.冒頭の写真をぱっと見てそれに気づいたあなたは素晴らしい.
14. 06 / 12
akimichi design探訪
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sekimoto
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> STAFF
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akimichi design はうちに2011年まで在籍したOBスタッフ,柴秋路くんの事務所.話すと長いが訳あって,彼は今私がその昔設計した住宅(CRANE)に住んでいます.ちょうど仕事が一区切りしたこともあり,今日はスタッフを伴って彼の自宅兼アトリエを訪ねてきました.
CRANEはかれこれ9年ほど前に竣工した住宅.外壁の杉ルーバーは,今も一線で活躍されるクリエイターのクライアントTさんと,スイスの建築家ピーター・ズントーのイメージでデザインしたものです.もうだいぶ枯れてきていて,まさに設計当初に描いていたイメージ通りになってきました.
それにしても,当時クライアントTさんのために設計した住宅にうちのOBスタッフが住み,またその駐車場に彼のMiniと私のPandaが仲良く並んで駐車される日が来ようとは.人生は何が起こるか分からないものです.
まずは彼のアトリエ.この住宅はちょうど都合良く,1階にアトリエを設けていました.そこにちょうど彼の事務所が首尾良く納まった形です.なかなか様になっています.快適そうなアトリエですね.エントランスには彼の趣味の自転車が.
そこから2階へ.2階のテラスに繋がるリビングを見た瞬間におぉ!と声がこぼれました.奥さんの趣味だそうですが,素晴らしいセンスですね!空間が引き立っています.ちょっと感動しました.
そして元祖”ムーミン色”.いったい何組のクライアントさんが,「CRANEみたいな水色で」とその色を指定されたことでしょう.これはセブンチェアでおなじみのフリッツハンセン社の家具に「フロスト」という色があり,これが当時とても好きだった私は,これを壁一面に色合わせをして塗ってもらったというものです.
この絶妙な色は,その後何度か再現を試みましたが,これと全く同じ色は未だに作れていません.リオタデザインの住宅を象徴する色のひとつかもしれません.
ロフトに上がると,さりげなくこんなコーナーが.空間を大切に,慈しむように使ってくれていることがわかります.こういう居場所があると,住宅というのはとても幸せな場所になりますよね.ご夫婦で生活を楽しまれている様子が伝わってきます.
先日の”細かくて伝わらない”話ではありませんが,この住宅にもそんなディテールがあちこちに山のように散りばめられています.うちの元スタッフである柴くんは,入居してしばらくはこうしたディテールの一つ一つを発見しては,その裏側の労力,そして気持ち悪くなるくらい張り巡らされた神経にやられ,逆に鬱になったと言っていました(なんじゃそりゃ).
まぁ,元上司の私が常に隣に立っているようなものですから,無理もないでしょう.
お気の毒に・・笑
私も当時の張り詰めていた仕事ぶりや,この住宅にまつわる事件?の数々を思い出し,懐かしいやら冷や汗が出るやら.柴くんとスタッフを囲んで,いろいろ当時の思い出話に花が咲いたのでした.
柴くん,忙しいところご案内ありがとう!
今後とも大切に使って下さいね.
「君たちもうクロームにしてる?」
スタッフA,B
「クロームってなんですか?」
だからIEの問題で.
「IEの問題ってなんですか?」
君たち何も知らないのか!
週明けから世間は大騒ぎしてるじゃないか.
スタッフCが帰社する.
「C君はもうクロームにしてる?」
スタッフC
「クロームってなんですか?」
だからIEの問題で.
「IEの問題ってなんですか?」
はぁ?まったく!
全員「いやうち新聞取ってないんでー」
仕方なく新聞を見せる.
「おー,新聞久しぶりに見た」
「へぇ,これって大問題じゃないですか」
だからそうだって言ってるだろ!
まったくうちの事務所は平和だよ.
「でもこれって都内だけとかじゃないんですかね」
ああそうかもしれないね.
うち埼玉だしね.
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