先週末は東京都美術館「フィン・ユールとデンマークの椅子」展へ。デンマークの椅子といえばハンス・ウェグナーが知名度では群を抜いているものの、本当の椅子好きならフィン・ユールの名前が先に出ることだろう。アームチェアはお尻ではなく指の先で座るもの。その究極の感覚を体現した最右翼がフィン・ユールなのだ。

展示の最後に、実際に座れるフィン・ユールチェア群があるので、その意味はそこで検証いただくとして、断片的にしか認識のなかったフィン・ユールの家具と彼の生涯を、ここまで系統立てて学べたのは本当に素晴らしい体験だった。

その家具エレメントの徹底的な分節と、重力に逆らうかのように浮遊させた軽やかな造形美は極めて建築的で、それも彼の職人ではなく建築家としてのキャリアが大きく作用していることも理解できた。

デンマーク家具界の異端児、フィン・ユールは早熟の天才であったことを知れたことも収穫だった。そして晩年に至るほど失速してゆく(ように感じた)という悲哀もまた考えさせられるものがあった。

SADIでもお世話になっている多田羅景太さんによる展示構成も実に明快で、その並びもまた椅子好きにはたまらない内容となっていた。地味に展示の外に立てられていたデンマーク界のレジェンドデザイナーの相関図はなかなかに秀逸。これも多田羅さんの力作。僕はこれだけでご飯3杯はいけるなあ!

フェティッシュな写真ばかりですみません。





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sekimoto

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2010年に竣工した「ひなたハウス」の建主さんより、手狭になったので1階部分を増築したいというご相談を昨年頂きました。

しかし当時は仕事が立て込んでいたこともあり、建主さんのご理解のもと、暮れにちょうどうちを退職して独立予定だったスタッフの矢嶋宏紀くんに、独立最初の仕事にしてみたらとこの仕事を託すことにしました。

うちの仕事に手を入れるということで、彼も相当プレッシャーを感じたようです。退所前には何度か彼の案にも目を通してアドバイスなどをしていましたが、最後は彼なりに建主さんとの対話を重ね、ようやく完成したので見てほしいとの連絡がありました。

正直、どこを増築したのか一瞬わからないほど全体が馴染んでいましたが、随所には彼の思考の痕跡が見て取れました。わずかな面積の増築でしたが、そのゆとりが家族の衝突を回避し、穏やかで自然な空間の佇まいを見せていたことにも、とても好感を持ちました。

建主さんも大変満足されており、彼との間にも信頼関係を感じることができました。私の後を託されてさぞや大任だったことと思いますが、私も駆け出しの頃、小さな増築仕事を苦労してまとめたことを思い出しました。

矢嶋くんお疲れさまでした!新たな創作にも期待しています。

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ご報告になりますが、先週にかけて新型コロナに罹患しました。対外的にもらったものではなく家族感染でした。ただ、すでに療養もあけてほぼ全快し、今は通常通り仕事をしています。一部の方にはお伝えしていましたが、大変ご心配とご迷惑をおかけしました。

私のケースでお伝えすると、症状自体は発熱は38度前後をうろちょろといったところで、喉の痛みが特にひどく、それが治まってきたら次第に咳が出始めて、咳は全快した今もまだ少し残っています。もともと咳が出始めると長引く体質なので、こればかりはやっかいだなと思っていますが。

接種も3回受けていたためか全体には軽症で、食欲もあり熱も比較的すぐ下がったので、そこまでつらかったということもありませんでした。それよりも自分がかかることによって周囲に与える影響やインパクトの大きさをあらためて感じました。

先週はオンラインながらもセミナーの進行役や、登壇者として参加する予定だったものもありました。いずれも代役を立てて頂いたり、打合せなどは延期してもらったり、オンラインにさせて頂いたりしました。こちらもご迷惑をおかけしました。

一番厄介だったのはスタッフとの距離感で、うちは自宅に事務所があるので、ある意味毎日テレワークしているようなものではあるのですが、私が事務所に出入りできなくなると支障があることもいくつかあり、事務所への入室時は消毒を徹底したり、マスクを二重にしたりと苦労も絶えませんでした。

ただ健康の時は意識していませんでしたが、人って案外いろんなところに触っているんですよね。例えば入室して手を消毒したとしても、その前に扉を開けている時点で未消毒の手で引手にさわっているじゃないかと思ったり。

消毒した後もつい口元のマスクなどに触ってしまうことがあると思いますが、その手にはすでにウイルスが付着しているんじゃないかとか。飛沫感染にはマスクは有効だと思いますが、手を消毒したとしても、その後どこかを触ってその手で目を触ってしまったとか、これは到底徹底できることではないなと感じました。

感染してしまった人間ってそういうこと考えるんですよ。それまでは比較的無頓着でしたが、感染すると自分自身がバイキンになってしまったような気持ちになるんです。

幸か不幸か今回家族も全員感染し、そして全員完治して仕事にも復帰しています。ただこういうことを書くのは不謹慎かもしれませんが、全員かかったことで感染拡大の報道を見ても怯えることはなくなりました。

ただもう二度とかかりたくないですね。そのくらい身の回りに与える影響の大きいウィルスだと身に染みてわかりました。

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リオタデザインの初代スタッフで、現在は愛媛の八幡浜市で設計活動をしている二宮一平くんから名刺入れを贈って頂きました。

素材はヒノキ、木目が美しく通った逸品です。びっくりするほど軽く、また非常に精度高く作られています。それまで私はナラ材を使った名刺入れを長らく愛用していましたが、これからはこちらを愛用させて頂こうと思います。

この名刺入れは彼自身がデザインをしたもので、地元の仲間の家具屋さんや突き板屋さんの協力のもと製作しているとのこと。YAMAKAN21という活動だそうですが、職人さん達と酒を酌み交わしながら、あんなことできないか、こんなことできないかと語り合いながら、良いアイデアが思いついたら形にしているそうです。

YAMAKAN21
https://21archi.com/yamakan21/

こういう肩肘張らない活動にはとても共感します。こういうものって、企業から依頼されてデザイナーの立場で関わることも当然あるでしょうが、その場合は企業側の利益もしっかり考えなくてはいけませんしプレッシャーもかかります。より素朴な視点で、自分が欲しいと思うものをまずは作ってみるというのは、創作活動として重要な視点かもしれませんね。


実はこの名刺入れは、彼と同郷の編集者であるエクスナレッジの西山さんが持っていたものを見せてもらったのが最初でした。職人さんが手が空いているときしか作れないので、対外的にはほとんど注文は受けていないとのことでしたが、その後彼と連絡を取った際にその件を訊ねたら在庫していたものをひとつ贈ってくれました。

パチッと閉まるフタのキャッチには極小のマグネットが埋め込まれています。このあたりのディテールも精巧にできています。

二宮くん、どうもありがとう!
まわりにも自慢します。

彼によると、年間で小ロットながら製作はしているそうで、職人さんの手が開いたときしか作れないので表向きは注文を受けていないそうですが、納期を気長に待てる方であれば二宮くんに相談してみると良いかもしれません。

彼の活動はこちらより。

二宮一平建築設計事務所
https://21archi.com/


昨年度、新建新聞社さんによる「飯塚豊の工務店設計塾」の講師を務めさせて頂いたのですが、そのスピンオフ企画ということで、8月にアルヴァ・アールトのお話をさせて頂くことになりました。

このテーマでは既に過去何度か、限られた関係者のセミナーなどでお話しさせて頂いていますが、今回参加費無料で、誰でも参加できるオンラインセミナーとのことですので、この場をお借りして告知させて頂きたいと思います。

◇◇
『北欧アルヴァ・アールトに学ぶこと』
講師:関本竜太(建築家|リオタデザイン主宰)

・日時:2022年8月3日(水)18:00~20:00
・開催形式:ZOOMウェビナー
・参加費:無料
・対象:すべての方

参加方法:
以下URLから参加登録ください
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_67msJ127S06aYsXCmuehhg

新建新聞社告知ページ:
https://www.s-housing.jp/archives/280304
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アルヴァ・アールトに学ぶこと、、果たしてそれはどんなものでしょうか?

アールトは私にとって、天才肌で、直感的で、そしてとてもミステリアスな存在です。アールトの建築って、きっとこういう感じと思った次の瞬間には裏切られる。あれ、やっぱり違うのかなあ、、?こうして私のアールト探求の旅は続きます。

その謎を解こうと観念的な記述を読んでもわかったようなわからないような。いつしか、アールトはその空間を見て感じたことがすべてだと思うことにしました。これは私が何度もアールトの建築に足を運んで、勝手に感じて受け止めたメッセージみたいなものです。

すごすぎて、明日から実践できるようなノウハウなどは1mmもありませんが、心の中に蒔かれた種がじわじわと時間をかけて芽吹くような、不思議なアールト体験を共有できたらと思っています。