12. 11 / 17
地に堕ちた
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sekimoto
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> 建築・デザイン
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[caption id="attachment_6277" align="alignnone" width="553" caption="新国立競技場|ザハ・ハディド案"]
[/caption]故スティーブ・ジョブズ氏の伝記を読んだ時,最も共感を覚えたのは,彼はすべてをコントロールしようとしていたということだ.大企業でモノを作る際には,どうしても個人の思惑や思い入れのようなものは経済や数の論理によって薄められてしまいがちだ.
そこを執拗に自分に引き寄せるようにしてモノを作っていたのがジョブズ氏だった.それが人には変人とかエゴイズムと取られることもあったかもしれないけれど,建築やデザインに携わる者にとってこれがどれだけ大切なことか痛いほどよくわかるはずだ.それがジョブズ氏の生き様だった.
2020年オリンピック招致に向けた,新国立競技場コンペの最優秀案が発表になった.当選案はロンドン在住の建築家ザハ・ハディド氏.難しい名前で一般の人には馴染みはないかもしれないけれど,建築を志す者なら知らぬ者はいない世界的な前衛建築家である.
このコンペに関しては言いたいことが山ほどある.なぜ今あるものを壊さなければいけないのか,その財源はどこから持ってくるのか,そのアンフェアな案の募り方など.けれどもそれらを全てここで封印したとして,案の好き嫌いは別にしたとしても,この手の競技場は常に大手事務所による卒ない設計でまとめられてきたことを考えれば,東京にザハの競技場が建つと考えただけでも,一建築家としてはわくわくする気持ちを抑えきれない部分は正直ある.
ところが,この結果を報じるネットの配信ニュースを見るとこうある.
『今後は、ハディドさんとデザイン監修に関する具体的条件を協議し契約を締結後、正式に新国立競技場の基本構想デザインに採用予定。設計チームは、あらためて基本設計、実施設計の設計者をプロポーザルで選定し組まれる』
ちょっと待て.なんだ基本構想デザインって.設計チームはあらためて基本設計,実施設計の設計者をプロポーザルで選定し組まれる,てことはザハは設計をしないのか.じゃあ一体彼女は何をするんだろう?
このくだりを読んでピンと来ない方がいたとしたら,それが今の日本における建築家の立ち位置であり認知度なのだろうと思う.建築家はけっして建築の表皮をデザインする人ではない.お絵描きをする人ではないのだ.景観はもちろんのこと,意匠と構造,予算,機能や設備や心地よさのようなものを総合的に”統合”する役割を担う人のことを差すのである.
その建築家からそれら全てを奪っておいて,数枚のCGパースだけでデザインを選ぶ.つまり「建築家は構造なんてわかってないし,お金の計算もできない.設備や機能のことなんて考えも及ばない人たちだから,体よく格好いいデザインパースだけを描いてもらって,国際オリンピック委員会にアピールしたい」という意図が見え見えなのである.
その後はおそらく”空気が読める”日本の事務所が設計をまとめるのだろう.そしてこのデザインパースによく似た建築ができあがる.でもそれは断じてザハの設計とは呼びたくない.建築家は全てをコントロールしなくてはならないのだ.
私は一建築家として,これ以上の建築家に対する侮辱はないと思っている.建築家を政治に利用しようとする主催者も主催者なら,それに乗っかる建築家も建築家である.そしてその審査委員長が安藤忠雄さんというのも,本当にがっかりさせられる.私は安藤さんに憧れて建築を目指していた部分もあったから,安藤さんにはこういうものに異を唱える人であり続けて欲しかった.
この案を募るタイトルには当初より「国際デザイン・コンクール」とあった.通常設計案を募る場合は「コンペ」と謳うのが通例だから,最初から違和感はあった.でもこれでその違和感がどこから来ていたのかがわかった.それは子供の「お絵かきコンクール」と同じ響きを持つものだったからだ.建築家も地に堕ちたものだと落胆を隠せないでいる.
[/caption]故スティーブ・ジョブズ氏の伝記を読んだ時,最も共感を覚えたのは,彼はすべてをコントロールしようとしていたということだ.大企業でモノを作る際には,どうしても個人の思惑や思い入れのようなものは経済や数の論理によって薄められてしまいがちだ.
そこを執拗に自分に引き寄せるようにしてモノを作っていたのがジョブズ氏だった.それが人には変人とかエゴイズムと取られることもあったかもしれないけれど,建築やデザインに携わる者にとってこれがどれだけ大切なことか痛いほどよくわかるはずだ.それがジョブズ氏の生き様だった.
2020年オリンピック招致に向けた,新国立競技場コンペの最優秀案が発表になった.当選案はロンドン在住の建築家ザハ・ハディド氏.難しい名前で一般の人には馴染みはないかもしれないけれど,建築を志す者なら知らぬ者はいない世界的な前衛建築家である.
このコンペに関しては言いたいことが山ほどある.なぜ今あるものを壊さなければいけないのか,その財源はどこから持ってくるのか,そのアンフェアな案の募り方など.けれどもそれらを全てここで封印したとして,案の好き嫌いは別にしたとしても,この手の競技場は常に大手事務所による卒ない設計でまとめられてきたことを考えれば,東京にザハの競技場が建つと考えただけでも,一建築家としてはわくわくする気持ちを抑えきれない部分は正直ある.
ところが,この結果を報じるネットの配信ニュースを見るとこうある.
『今後は、ハディドさんとデザイン監修に関する具体的条件を協議し契約を締結後、正式に新国立競技場の基本構想デザインに採用予定。設計チームは、あらためて基本設計、実施設計の設計者をプロポーザルで選定し組まれる』
ちょっと待て.なんだ基本構想デザインって.設計チームはあらためて基本設計,実施設計の設計者をプロポーザルで選定し組まれる,てことはザハは設計をしないのか.じゃあ一体彼女は何をするんだろう?
このくだりを読んでピンと来ない方がいたとしたら,それが今の日本における建築家の立ち位置であり認知度なのだろうと思う.建築家はけっして建築の表皮をデザインする人ではない.お絵描きをする人ではないのだ.景観はもちろんのこと,意匠と構造,予算,機能や設備や心地よさのようなものを総合的に”統合”する役割を担う人のことを差すのである.
その建築家からそれら全てを奪っておいて,数枚のCGパースだけでデザインを選ぶ.つまり「建築家は構造なんてわかってないし,お金の計算もできない.設備や機能のことなんて考えも及ばない人たちだから,体よく格好いいデザインパースだけを描いてもらって,国際オリンピック委員会にアピールしたい」という意図が見え見えなのである.
その後はおそらく”空気が読める”日本の事務所が設計をまとめるのだろう.そしてこのデザインパースによく似た建築ができあがる.でもそれは断じてザハの設計とは呼びたくない.建築家は全てをコントロールしなくてはならないのだ.
私は一建築家として,これ以上の建築家に対する侮辱はないと思っている.建築家を政治に利用しようとする主催者も主催者なら,それに乗っかる建築家も建築家である.そしてその審査委員長が安藤忠雄さんというのも,本当にがっかりさせられる.私は安藤さんに憧れて建築を目指していた部分もあったから,安藤さんにはこういうものに異を唱える人であり続けて欲しかった.
この案を募るタイトルには当初より「国際デザイン・コンクール」とあった.通常設計案を募る場合は「コンペ」と謳うのが通例だから,最初から違和感はあった.でもこれでその違和感がどこから来ていたのかがわかった.それは子供の「お絵かきコンクール」と同じ響きを持つものだったからだ.建築家も地に堕ちたものだと落胆を隠せないでいる.
12. 11 / 15
FILTER取材
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sekimoto
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> 仕事
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今日は「FILTER(U邸)」の取材がありました.FILTERの取材はこれでもう何回目でしょうか.相変わらず人気の高い住宅です.
”超”がつくローコスト住宅ですが,いつも感心するのはお施主さんの住みこなしのセンス.たとえば,予算調整で削ったキッチンの扉も,普通なら物が溢れんばかりの状況になるところにこの余裕.
ただでさえ収納が少ないのに全面飾り棚て.ここはギャラリーですか?と思わず突っ込みたくなるくらい,このお施主さんの住みこなしっぷりは超越的です.これでいて小さなお子さんが二人もいらっしゃいます.
Uさん,今日はご協力ありがとうございました.次回はまたゆっくりと.編集のTさん,また記事を楽しみにしております!
12. 11 / 11
段審査
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sekimoto
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> 弓道
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今日は熊谷運動公園弓道場にて,弓道参段の昇段審査がありました.今年の2月に弐段を取得して臨む初めての昇段審査となりましたが,結果から言うと”残念”でした.
段審査には学科(小論文)と術科(実技)があり,参段を取るためには体配と呼ばれる型や射形の審査もさることながら,的への確実な的中が要求されます.どんなに美しい射形でも当たらなかったら即不合格.そんな厳しい審査でもあります.
私は的に当たらなかったので,その時点で不合格なのですが,実のところ今回は自分でも自信がありませんでした.ここ数週間満足のいく練習ができておらず,また体配も直前になっても先生方から初歩的な指摘を頂くなど,自分としてもとても参段にふさわしい弓が引けていると思えませんでした.
ここで、もしまぐれ当たりでもして,何かの拍子に昇段してしまうと後がとても苦しくなるだろうとも思っていたので,案の上の結果となり,心のどこかでほっとしていたりもしています.きっと,歯がみするほどの悔しさを感じるようになるまでは,実力が追いついていないということなのかもしれません.
今回は仕事が忙しさを極めており,本来ならとても段審査に専念できるような状態ではありませんでした.でも社会人で弓を引く人は多かれ少なかれ,皆さん同じ条件で続けていますし,弓の練習はほんの2時間もあればできるものです.
どんなに忙しい人でも,1週間に2時間の時間すら取れないということはないはず!仕事をやりくりし,打合せと打合せの合間に道場に飛んでいったり,仕事を強引に終わりにして平日の夜に足を運んだり,はたまた仕事の移動時間や束の間の時間を惜しんで教本を読み込んだりと,今回の段審査のために必死に時間を作ってこの日を迎えました.
どれだけ途中で投げだそうと思ったことか笑.今日の審査が終わって心底ほっとしました.(同様に時間を作ってお付き合いくださった先生方,ありがとうございました!)
どんなに忙しくても投げ出さない.自分への試練として今後も弓は引き続けようと思います.目標は半年以内の参段取得!宣言したからには気合いを入れてがんばります.
昨日も非常勤講師を勤める日本大学船橋校舎へ赴き,昼食後天気が良かったのでおもむろにキャンパス内の図書館の方へ散歩していたら,そこには信じられない光景が.水盤の中に建つ図書館の外堀の水が抜かれ,全面デッキ張りとなっていたのでした.
え??いつから!?
思えば今から20ウン年前,日大に入学して初めて目にしたのがこの図書館でした.重厚でありながら美しく,水盤の中に建つ図書館という姿が,建築を志して入学した我々の心をわしづかみにしました.それが今ではこの有様.塞がれたウッドデッキも活用されているでもなく,その寒々しい姿は痛々しくもあります.
私と同じように志を抱いて入学してきた建築学生達は,この姿を見てどう思うのでしょうか.水盤の図書館は,今では板張りの図書館と呼ばれているのかもしれません.
もちろん防水や衛生,安全上の問題など維持管理上の問題があったことは想像に難くありませんが,一般の民間企業ならともかく,大学という文化を育む機関が下した措置としては”暴挙”と呼ぶほかありません.また同じキャンパス内に建築学科がありながら,このような暴挙を許してしまったこと,私も足を運ぶまで知らなかったという無知も含めて,今このキャンパスで学ぶ学生と,図書館を設計された小林美夫先生にも本当に申し訳ない気持ちになりました.
自分が設計者だったら…,と想像するだけで悲しくなります.
[caption id="attachment_6216" align="alignnone" width="540" caption="まだ池に水が張られていた古き良き時代の図書館"]
[/caption] 12. 10 / 30
緩斜面の家・着工
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sekimoto
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> 仕事
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昨日は埼玉県寄居町で計画してきた「緩斜面の家」の地鎮祭がありました.
どこまでもなだらかな緩斜面と,遠景に秩父の山々.本当にのどかで良いところです.敷地も150坪と大きいのですが,それ以上に視界に入る風景すべてが”庭”と呼べそうな立地でもあります.
緩斜面の家は個人住宅ですが,その家構えはまるで別荘のよう.窓からの眺めと,薪ストーブもあって,ここでの生活はちょっとした非日常感がありそうな気もします.ご主人はここから通勤されるとのこと.
これは常なのですが,設計では想像力が構想を追い越してしまい,敷地に張られた地縄を見て「ちっちゃ!」と思うことがほとんど.この大きな家でもやはり思いました.長年設計をやっていても,まだこの感覚には慣れません.ましてやお施主さんは…予想外の小ささにやはり驚いていました笑.
でも上棟すると,その空間が瞬時に膨らむんですよね.不思議です.この家はその架構もハイライトのひとつ.今から12月の上棟が楽しみです.
[caption id="attachment_6205" align="alignnone" width="560" caption="緩斜面の家|2013年3月竣工予定"]
[/caption]
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