12. 09 / 13

セラン

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sekimoto

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> 生活
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青山通りと外苑の銀杏並木が交差するあたりにセランはある.
セランは無国籍料理で有名なキハチが提供するイタリアンレストランだ.秋になるとこの銀杏並木は通りを一面の黄色い絨毯に変え,それをお目当てに多くの人がやってくる.その頃にはセランの前には長蛇の列と,何ヶ月も前から予約をしていた人とでテラス席は賑わう.

昨晩は少し早めに仕事を切り上げて,このセランに家族と食事に出かけた.
今から14年ほど前,我々はこのセランで結婚式を挙げた.もともとクリスチャンでも敬虔な仏教徒でもない我々は,形式に縛られるよりも近しい方達を招いてのホームパーティのような挙式が望みだった.挙式は11月29日で,予定では2階席の窓辺は黄色く染まるはずだったのだけれど,思いのほか紅葉の時期がずれ,やや緑がかった銀杏が窓辺を覆うこととなった.

セランに訪れると,空間とは内装デザインのことだけではないことがよくわかる.一流の料理とスタッフ.きめ細かな対応や気配り.そして環境というすべてが調和してはじめてできあがるもの.その全てがこのセランにはあった.

そんなセランが,今月末でその歴史を終える.建物は残るけれど,来年の春にキハチ本店としてリニューアルオープンするという.もちろんこの素晴らしい環境や料理,そして最高のおもてなしは継承されるのだろうが,その空間はもはやセランではない.我々の思い出の場所がまたひとつ失われる.それがとてもつらい.

我々の結婚式を担当してくださったスタッフの藤木さんとは,彼女の退職後もずっとやりとりが続いていて,今回の閉店のお知らせを下さったのも彼女だった.おかげでこの貴重な機会を逃さずに済んだ.(本当にありがとうございました)

今回は最後の機会ということで,はじめて子供も連れて行った.最後に家族でこの空間で食事ができてほんとうに良かった.最後には僕が頼んだケーキに,奥さんがサプライズで仕込んでおいてくれた演出が加わってこちらもびっくりだった.(9月11日が誕生日でした)

最後まで最高の時間を過ごさせてもらいました.
ありがとう!そしてさようなら,セラン.



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sekimoto

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> 建築・デザイン
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常磐道の柏インター入口近くに「しばやま整形外科」の看板が出ていることは,ずいぶん前から知っていた.今日,柏方面に打合せに行った帰りに再びこの看板を見つけて,ふと寄り道してみようと思った.

「しばやま整形外科」は僕が前職の設計事務所,エーディーネットワーク時代に担当した作品で,竣工は1998年だからもう14年も前の話になる.

この仕事は新宿のOZONEが初めて住宅コンペを主催した,記念すべきOZONEコンペ第一号作品でもある(当時の担当北村さんは今でもOZONEにいらっしゃり,先日指名を受けたコンペで再会した).当時は公募制にしていて,この医院併用住宅の設計コンペには約60社ほどの設計事務所が案を応募した.我々エーディネットワークもそのコンペに参加を決めていた.

ほとんどの案は1階を医院に,2階を住宅にするというベーシックなプランだったのに対し,我々が提出したのは医院棟と住宅棟を別棟にし,敷地も分割,医院は鉄骨造,住宅は木造で解くという型破りなアプローチだった.住宅の居住性や医院の機能性をそれぞれ追求するならばまさしく理想的な計画とも言えたのだけれど,極限とも言えた低予算に対しそれはありえないだろう,とコンペ当選後もずいぶん他の事務所から揶揄されたのを覚えている.

でも我々の提案はダントツだった.予算の問題はなんとかなった.なんとかなったから建っている笑.建築というのは結局そういうもので,理念なきところに建築は建たないのだ.

もちろん相応に歳を取って老朽化している部分や,住みながら改変されている部分はあったけれど,先日棚橋先生にお会いした際も,今でもこのお施主さんとは連絡を取り合い,改装の折りには必ず相談を下さっているとのこと.そんな関係を続けて下さっている前職の先生にも感謝したい.

それにしても,没頭して図面に向かった建築というのは自分そのものなのだなとあらためて思った.14年前,自信もなくただ漠然と不安を抱えて仕事をしていた当時の自分がそこにはいた.ガラス越しに中を覗いてみる.当時僕が図面を引いた家具やサッシュの納まりが,そこに竣工当時から変わらぬ姿で佇んでいた.

経験不足からどうして良いかわからないところもいっぱいあったし,混乱する頭で必死に実施図面を描き,現場監理に当たっていたのだけれど,今見てもびっくりするくらい良くできている.ちゃんと納まっている.へぇあの頃の自分,意外とやるじゃん!(もちろん先生のおかげでもあるんですが)

そしてあの頃の自分に言ってあげたいのは,
「大丈夫,その先にちゃんと今の自分はいるよ」ということだ.

12. 09 / 03

県武道館

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sekimoto

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> 弓道
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昨日は埼玉県の勤労者弓道大会がありました。
前日の​付け焼刃的練習が多少は功を奏し、4射中2中。弓道では​これを羽分けと言います。自分の実力からするとまずまず​の出来ですが、2中した時点で意識してしまい、残りの2本​を外したのは悔しかった!まだまだ修行が足りません。

ところで会場の県武道館、設計は松田平田です。コンクリ​ート打放しのストイックな躯体とスチールを組み合わせた​木質ハイブリッド構造の屋根が特徴的で、伝統を現代的な​技術で表現した、なかなか品のある丁寧な設計です。構造​はSE構法の開発にも携われた幡繁さん。どうりで。弓を手にあちこちをキョロキョロ見て歩いている私は明らかに挙動不審だったと思います。

元松田平田の松原忠策さんも弓道を嗜​まれるそうですが、氏も計画に関わられたのかは今週お会​いするので聞いてみたいと思います。
住宅の設計に向かうモチベーションには3つの段階があります.

第一段階は,お施主さんのご要望を叶えること.
最初の面談やプロセスで聞き取ったお施主さんのご要望を,注意深く設計に落としてゆきます.これは仕事として当然であり,最低限の作業とも言えます.これは設計事務所のみならず,ハウスメーカーでも設計施工の工務店でも同じことが行われているはずです.

第二段階は,お施主さんの潜在的な欲求に応えること.
大概の場合,お施主さんは言葉にならない言葉を持っていらっしゃいます.言語化されない,潜在的な欲求をいかに拾い上げて設計に盛り込むか,というのもまたプロには求められることです.逆にそこまでやってはじめてお施主さんに満足して頂くことができるのだと思います.

この第二段階までをきちんと踏まえてやっていれば,まず間違いなくお施主さんからは感謝されるし,結果的にも良いものができます.良心的な設計士さんということで評判も立ち,仕事も途切れず事務所経営もうまくいくはずです.だから本当はそれで良いのだと思います.思いますが,私の心の中ではまだ満たされないものが渦巻いているのです.

第三段階は,建築的なテーマを見いだしたり,自己表現を求めること.
当然のことながら,これは第二段階までは踏まえた上での話です.これは必ずしもお施主さんからは求められていないことです.ある意味余計なことかもしれません.この第三段階に手を出すと,いろんな不都合が生じることがあります.お金が余計にかかったり,利便性が悪くなったり,メンテナンスにも手間がかかるようになることもあります.

おそらくは,自分たちの要望以外のことをされたり,余計にお金をかけて利便性が失われるなんてとんでもないと考える人もいると思います.だから我々はお施主さんの行動や言動をじっと観察して,そういうことに理解を示して下さる方かどうかを常に慎重に判断しています.

繰り返すようですが,住宅の設計は第二段階まででも十分だと思います.第三段階まで進むなんて無駄の極致です.けれどもその領域に設計を進めると,その建物は単なる住宅から「建築」と呼ばれるようになります.我々建築家が本来生業にしているのはこの「建築」を作ることなのです.

でもいくらお施主さんに理解があっても,家庭の事情や,周辺環境や,ご予算によってはそれが叶わないことも多くあります.建築専門誌を賑わす一線の建築家たちは,そういったステージをどのように進めているのでしょう.進んで建築家と心中しようという奇特な方々を引き寄せる才能がなせる業なのか,はたまた無理心中を計るのか・・・.

穏やかな話ではありませんが,少なくともうちの事務所では無理心中は致しません.すべてはお施主さんの心意気次第.しかし,現在も我が事務所にご依頼下さった”奇特な”(失礼!もとい,素晴らしい)お施主さんとの間には「建築」が生まれようとしています.

12. 08 / 23

もはやアート

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sekimoto

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> 社会
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いつも前を通るたびに思うのですが,埼玉県庁の耐震改修​ひどくないですか?
まさに満身創痍,もしくは地球外生命体に包囲されたSF映画のようです.

せめて色を塗ったらアートになりそう​!