13. 06 / 29

きれいな図面

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sekimoto

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> 仕事
> 思うこと


NHKのSWITCHインタビューで作曲家の千住明さんが,きれいに楽譜を書くときれいな音が出ると言っていたことに深く共感.スタッフから見たら,きっとどうでもいいと思うレベルまで僕は図面のきれいさにこだわるんだけど,きれいな図面を描くときれいな建築になる.これは本当にそう思う.

きれいな図面というのは,表現として美しいという意味だけではなく,いかに整理されているかということ.それは整合性のようなものだったり,全体が絡み合って一つの秩序を作り出せているかということもそうだし,誰が見ても解釈の幅が生まれない明快さがあるか,そこまで考え抜かれているか(見えているか)ということに最もこだわりたいと思っている.

きっと音楽であれば,何楽章にも連なる交響曲も,曲全体にいくつもの伏線となる旋律を忍ばせていることだろう.そこにはそのどの順番がひっくり返っても成立しない厳密さがあるように,建築にもまた一見して関連しない諸室の関係や別棟との関係においても,いくつもの伏線が張られて全体が構成されるようにしたいといつも考える.

だからその見えない線をどこまで描き込めるかが重要なのであって,見えている線にはそこまでの意味はない.見えない線が見えると建築はモノになる.見えない線が見えない建築は魂のない建築になる.

…とまぁそんなことを言っていても,まだまだ見えていないことばかり.いまだに100点が取れない.きれいな図面を描きたい,見えない線を描きたいといつも願って図面に向かう.

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sekimoto

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> 仕事
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梅雨に入る前に撮影して頂いた,昨年竣工した住宅の写真(2題)を以下の作品ページにアップしました.それぞれ別々の写真家にお願いしていますが,それぞれの個性と住宅の特徴がよく表れた写真となっています.どうか写真から実際の空間を思い浮かべてみてください.


〇白岡の家/S邸 (2012年9月竣工) 撮影:後関勝也
https://www.riotadesign.com/works/12_shiraoka/



〇DONUT/K邸 (2012年12月竣工) 撮影:新澤一平
https://www.riotadesign.com/works/12_donut/



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sekimoto

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> OPENHOUSE
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蕨市で現場進行中の住宅「窓の家」がまもなく竣工致します.
オープンハウス(内覧会)を行いますので,ご興味ある方は是非足をお運び下さい.

幹線道路に面したわずか14坪程の変形した狭小角地に建つ住宅です.
交差点に建つ住宅の佇まいがその角度によって色々な表情を見せるよう,外壁面を様々な角度に振り,随所に大小の窓を配置することで,室内には開放的な眺望と空間の奥行きを,外部からは楽しげな生活の雰囲気がこぼれてくるよう意図しています.

【窓の家】
日時:2013年6月29日(土) 13:00~18:00ごろまで

場所:埼玉県蕨市
JR京浜東北線「蕨駅」西口下車.徒歩約10分.

ご希望の方にはご案内をお送り致します.関本までメール下さい.
riota@riotadesign.com

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sekimoto

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> 弓道
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今日は所属する志木市弓道連盟の年中行事のひとつである志木市民弓道大会がありました.私は当日の幹事となり,またあろうことか急遽矢渡しの介添人を務めさせて頂くことになってしまいました.その指名を受けたのが先週の木曜日.

矢渡しというのは射会のはじめに行われる射礼のひとつで,射手1名に介添人が2名付きます.介添人には第一と第二があり,私が務めたのは第二介添人.第一は射手の補佐を,第二介添人は矢取りを担当するのですが,マァ,歩き方から立ち方から座り方,指先のひとつに至るまでびっしりと決まり事があり,ただでさえ複雑な弓道の所作の中でもかなりの難易度が要求されます.

事前に資料を読み込んで所作を頭に叩き込み,この一週間は忙しい仕事の合間を縫って平日の夜も道場に通い特訓を受けました.その成果もあってか,今日の矢渡しの介添人はなんとかつつがなく務めさせて頂きました.ホッ!

これで緊張が解けたのが良かったのでしょうか.続く本番の射会でもラッキーは続き,なんと四段以下の部で準優勝してしまいました(ちなみに私は弐段).
射会後の余興でも,見事小さな扇的を射貫いて花的賞も頂き,今日は出来過ぎな一日.きっと一週間のご褒美ですね!



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sekimoto

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> 仕事
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いきなり梱包にくるまれた荷物が届いた.愛媛に事務所を構えるうちの元スタッフ二宮からだった.中からは小さな椅子があらわれ,同封された手紙にはこう書かれていた.

「大変遅くなりましたが,事務所開設10周年のお祝いです.この椅子は松村正恒さんが日土小学校の図書室のために設計したものです.なかなか精度が上がらず今までかかってしまいました.ようやく完成しましたので第一号をお贈りします」

すぐに電話して久しぶりに二宮と話をした.そういえば,去年うちの10周年イベントをやった際,彼からは贈りたいものがあるのだけれど,間に合わないからもう少し待って欲しいと言っていた.もう忘れかけていたのだけれど,このことだったのか.

日土小学校は愛媛県八幡浜市に建つ古い木造の小学校.築57年.建築的かつ文化的な価値を認められDOCOMOMO20選や,昨年はワールドモニュメント財団よりノール・モダニズム賞なども受賞した.今では愛媛が世界に誇る建築遺産のひとつとなっている.

二宮はこの小学校の出身だ.彼はここで少年期を過ごし,今またこの近くで事務所を構えている.彼の大学の卒業設計も日土小学校がテーマだったし,地元出身の建築家として保存活動にも尽力した.彼の母校に寄せる愛着は並大抵のものではない.

彼はこの椅子を製作するにあたって,まず当時のオリジナルの図面を入手し,知人の突板職人(家具職人ではない)に頼んで,長いこと試作を繰り返していたらしい.なかなか精度が上がらず(そりゃそうだ,突板職人だもの)何度もやり直しを指示して,ようやく当時のオリジナルに近いものができたという.

実際に日土小学校の図書室にも,建設当時のこの椅子が残っている.ところが彼に言わせると,後ろ脚の形状など,この時点で既に松村氏のデザインより改変されてしまっているのだという.彼はそれを忠実にオリジナル図面に基づき,釘の打ち方ひとつに至るまでこだわって当初のデザインを再現した.

二宮に自分の椅子もあるのかと訊くと,試作段階のものは何脚かあるが,完成形といえるものはこれしかない.ようやくそれができたので贈ったのだという.だからおそらく世界に一脚.泣かせる男である.



△当時の椅子が残る日土小学校の図書室.こちらの椅子は背もたれにつながる後ろ脚が直線になっている.松村正恒氏のオリジナル図面では,ここは「く」の字型に曲がっているのだそう.