14. 03 / 15

アタマの現場

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sekimoto

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> 建築・デザイン
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ギャラリー間で開催されている,建築家内藤廣さんの展覧会にようやく足を運ぶことができました.私は大学時代内藤さんの事務所に面接に行ったことがあるくらい氏の建築を敬愛してやまないのですが,今回の展覧会もとても素晴らしかったです.

内藤廣展 アタマの現場
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex140118/index.htm

今回の展覧会は「アタマの現場」と名付けられているように,今回の展覧会のために作られた模型などではなく,内藤事務所にあるスタディ模型や図面の数々を,事務所の内部をそっくり再現してお見せするという趣向のようで,内藤さんのデスクまわりも実物を運び込んで忠実に再現されていました(現に,現在内藤さんの机は事務所にないそうです・・).

私がもっとも感銘を覚えたのは,その図面です.前述のように展覧会のために特別に描かれたものではなく,実施図面が素っ気なく置いてあるだけなのですが,その密度と精度,そして美しさに脱帽しました.私の事務所も比較的図面を詳細に描く方ですが,我々の何十倍も大規模な建築であるにも関わらず,細部に至るまで実によく考えられているのです。

また驚いたのは仕様書で,例えばコンクリート打放し仕上げなら,我々なら図面にその旨の記載と打放し型枠の使用,撥水剤の指定くらいで,あとは現場監督や職人さんと相談しながら進めてゆくというのが通常なのですが,内藤事務所の図面には詳細な型枠の組み方,目違いを防ぐための方法,端部の処理,万が一失敗した際の処置の仕方に至るまで,図解入りですべて記載してありました.(撮影が許可されていたので産業スパイのように大量に撮ってきてしまいました.これ出版してもらえませんかね?)

内藤さんの建築はとてもシンプルで美しく,出来上がった後にはその手の痕跡が見えることはありません.ただ我々にはわかります.こんな涼しく建築が作れるはずがないんです.そのナゾがひとつ明かされました.この綿密に計算され尽くした図面,蓄積されたノウハウ,わかりやすい指示書がそのすべてを物語っていました.やっぱりすごいな,内藤さんは.うちもバリバリ図面描かないと!

年表を見たら,内藤さんは30代の頃は意外にも佳作で,40代から爆発したように大きな仕事を次々手がけていったことがわかりました.私も大いに励まされて会場を後にしたのでした.


14. 03 / 09

DONUT取材

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sekimoto

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> メディア
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今日はDONUTにて「住まいの設計(扶桑社)」の取材がありました.なんといっても,この冬に7・8月号の取材ということなので,お施主さんも衣類を一枚はがされて少々気の毒でしたが.

先の環境デザインアワードでは,高い断熱性能が内部の快適空間と,より外部に開いた設計を可能にしているという評を頂きましたが,撮影のため一時的に中庭を開け放っても室内の温度はほとんど下がることもなく,安定した温熱環境が保たれているという点も,あらためて再確認することができました.

ただ,言っても北欧住宅のように冬でも半袖で暮らせるような家というわけではなく,暖房をしない状態で室内温度は15~6度くらいでしょうか.それが昼夜を通じて安定しているということが重要なのだと思います.「もっとも安い暖房器具はユニクロのダウン」という,今日のご主人の名言にもシビれました笑

窓際の日だまりに幸せを感じます.観葉植物が育ちすぎて困るのだとか.
ポカポカと温かい縁側のような家です.

14. 03 / 07

だいすき

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sekimoto

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> 仕事
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「せきもとさんだいすき」
人生でそう何度も言われるセリフではありませんよね.2010年竣工のFILTERで,浴室を一部リフォームすることになり,現調のため訪れると,奥様より娘さん(5歳)から預かっていたという手紙を手渡されました.こういうのは本当に嬉しいものです.

ただ,なんでしょうね.これだけ読むと私はこの娘さんにとっても懐かれていたように思われるかもしれませんが,意外とそんなことはありません.当時は私はお施主さんとの打合せで精一杯でしたし,まだ幼児だった娘さんを構ってあげられる余裕などもありませんでした.どちらかというと,当時の女性担当者の方が人気で,私だけ来ると「今日はお姉さん来ないの?」と言われてよく傷ついたものです笑

それが「だいすき」とは,どういう心境の変化でしょうか.この娘さんだけでなく息子さんも,最近私が平日に来ることを知ると,学校に行って会えないことをひどく悔しがるのだそうです.それもとっても嬉しいのですが,なんで急に人気者になってしまったんでしょうね.

私はこういうのって教育なんだろうなと思います.つまりこのご両親は,普段も食卓などで私のことを話題に上げて下さり,それも好意的な文脈で語って下さっているのでしょう.また普段からお子さんに,この家は関本さんが設計してくれたこと,大工さんたちが一生懸命作ってくれた家なんだということを言って聞かせているのだと思います.

ありがたいことです.お子さん達が家に愛着を持ち,大切に使って下さっているのだなあと思うと幸せな気分になります.

14. 03 / 05

トラウマ

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sekimoto

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> 仕事
> 生活


設計中の案件で,とある建材メーカーさんにご協力を頂いている.かなり大胆な採用となるため,慎重な検討が必要だ.幸い前向きに取り組んで下さっており,施工図面や技術的なバックアップをして頂いている.

私の学生時代に亡くなった父は,祖父が創業したこの建材メーカーの経営者だった.私は「社長の息子」だと言われるのが大嫌いで,それを言われることは私にとって当時は”いじめ”に等しいことだった.うちは普通じゃないということが心底嫌だったし,将来は社長になるんだろ,と言われるたびに深く傷ついた.

本人の実力とは無関係に,下駄を履かされている感覚に馴染めなかったのだと思う.挙げ句の果てには,友人が自分に優しくしてくれるのは自分が社長の息子だからだろうか,と訳のわからない被害妄想に陥った.そして固く決心した.何があっても社長にだけはなるもんか!と.

しかし杞憂だった.父は早世し,そこそこの規模になっていた企業を当時学生だった私がどうにかできるはずもなく,またそんなつもりも,そんなオファーすらも微塵もなく,私は自分の望み通り,父とは関係なく自分の実力だけが頼りの世界へと飛び込むことになった.

建築関係者であればおそらく誰でも知っているであろうその企業に,私も時折お世話になる.そこの営業担当者などを呼ぶときは不思議な感覚で,その企業名を口に出すと今でも心の奥がズキッと痛む.幼少のトラウマを思い出してしまう.そのくせ商品知識をわきまえていなかったり,応対の仕方が悪かったりするとやけに腹が立ってしまう.しっかりしてくれよ,と思ってしまうのだ.

ちなみに冒頭のご協力を頂いている案件では,もちろん一切余計なことは言っていない.向こうも私を数多くいる設計者のうちの一人として対応してくださっている.今では創業家の名前を出しても,知る社員などもはや少数に違いない.父が亡くなって20年が過ぎ,今こうしてそれぞれの立場で対等に仕事ができていることが,ただ嬉しいのだ.

幼少の自分にはもちろん,今私がこんな仕事をしていることなど想像もつかなかったわけだけれど,もう一つ誤算があったとすれば,今私は当時あんなに忌み嫌っていた社長になっているということだ.

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sekimoto

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> 子ども
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うちにはあまり息子の友達が遊びに来ない.うちの子もあまり遊びに行かない.近所に同世代の子が少ないせいもあるけれど,自分の頃はそれでも自転車でよく遠征したものだった.休みの日はひたすら家にいてゲームをしたり,コレクションのカードを並べたりと妄想の世界でひとり遊びをしている.本人としてはそれが楽しいようなので,それ以上言うこともないのだけれど,ただ少し寂しく思ってしまう.

先日ふと「遊ぶ友達とかいないの?」と尋ねると,「う~んいない.クラスの友達とも話し合わないし.もう3日くらい友達としゃべってないかも」と言うので結構衝撃を受けてしまった.昔はだれかれ構わず話しかけて,すぐに友達を作ってしまう特技の持ち主だったのに.うちの子は明るさだけが取り柄,と私もよく冗談交じりに言っていた.いつの間にこんなに変わってしまったんだろう?

いじめ?いやそんなことはないと思うけど…。
こんな時の,親のどんよりした不安感というものもはじめて経験する.

それが昨日,珍しく友達がたくさん遊びに来た.帰ってくるなり「今日は友達が来るから!」と大きな声で宣言した.しばらくして友達がやってきたあとのうちの子のはじけぶりと言ったら!下の仕事場まで高笑いが聞こえてくる.それもほとんどうちの子の声で…。そうかそうか嬉しかったんだな,友達が来てくれて.その笑い声を聞いていたら,こっちもなんだかとても嬉しくなってしまった.

昔よく友達の家に遊びに行くと,お菓子やジュースが出てきたけれど,あの意味が今ならよくわかる.「うちの子をよろしく.どうか友達でいてあげてね」