先日の中村拓志さんセミナーでの進行メモ。

進行役(モデレーター)をお引き受けするときは、心の準備や相手の情報のインプットはある程度行いますが、当日話すことはいつも全くの白紙です。相手の話を聞きながら、どういう組み立てで進行するかめちゃくちゃ考えるのですが、たぶん視聴者の誰よりも私が相手の話を聞いていると思います。

一視聴者として参加するときも、質疑時間の時になにを聞こうかずっと考えています。全部で5~6個くらい考えて、一番質の高そうな質問をひとつ選ぶというトレーニングは、自身の質問力を高めてくれます。

先日はまだまだ質問し足りなかった!
特に中村拓志さんの建築に見えかくれする北欧建築に対する憧憬については是非聞きたかったのに、時間がなくて残念でした。

こちらのブログでも告知をしていましたが、一昨日はJIA住宅部会による中村拓志さんのオンラインセミナーがありました。事前登録では約380名ほどの登録者となり、当日参加者は290名ほどでしたが、盛況かつ大変内容の濃いセミナーになったと思います。

セミナー配信は建築家会館大ホールより、支部で購入した最新の配信機材を使った初のセミナーとなりました。住宅部会の中澤さんはじめ、多くのメンバーのノウハウを結集し、滞りなく終えることができたこと、この意味は大きいと思います。

また中村拓志さんのお話が素晴らしかった!スライドもため息をつくような美しさでした。その後のセッションでは、私がモデレータを務めましたが、日頃から聞いてみたかったあれこれを直接聞けて、また納得のゆく答えも頂くことができました。

このような企画のご提案を下さった、部会長の中村雅子さんにも心よりお礼申し上げます。ご参加下さった皆様、ありがとうございました。そして関係者の皆さま、お疲れさまでした!



今年2月に竣工しました横浜市「壇の家」につき、先日ようやく竣工撮影を終えましたので写真をアップしました。以下よりご覧下さい。

[壇の家]
https://www.riotadesign.com/works/21_dan/
写真:新澤一平

今年は秋も梅雨のような長雨で、撮影日程も延び延びになってしまいました。そのうち木が落葉してしまうのではないかとハラハラしていましたが、ぎりぎりセーフでした。

、、と思いきや、撮影当日は快晴の予報のはずがまさかの雨!うそでしょ、と心が折れかけましたが、そこは新澤さんの撮影マジックでなんとかカバーして頂きました。シャープな光の差す写真というわけにはいきませんでしたが、こんな優しいソフトな光で包まれた空間もなかなか良いものです。

南側に隣家が建つため、建物を北向きに配置し、ハイサイドから北側奥のリビングまで光を取り込んだ住宅です。設計上はそのように言うのが一番わかりやすいので、対外的にはそのような説明をしていますが、この空間で最も大切にしたのは空間の奥行き感、空間のひだのようなようなものとでも言いましょうか。

あまりに抽象的で理解してもらえないと思うので、へぇそうなんだと流してもらって大丈夫です。


私が所属するJIA住宅部会にて、来月(11月)にオンラインセミナーを企画しています。

講師には、今年度日本建築学会賞(作品賞)を受賞した上勝町ゼロウェイストセンターの設計者でもある建築家・中村拓志氏をお招きし、氏の建築に対する思いやそのプロセスに迫るお話を頂く予定です。

後半には私が進行役となって、対話形式によりさらにその内容を深掘りしてゆきます


『祈りの庭と建築』
講師:中村拓志 氏 (建築家・NAP 建築設計事務所代表)

司会:中村雅子(JIA 住宅部会・部会長)
進行役:関本竜太(JIA 住宅部会・副部会長)

日時:2021年11月10日(水) 18:30~20:30(ZOOM 入室 18:15~)
会場:オンライン開催(ZOOM ウェビナー予定)
参加費:無料 (事前申込をお願いします)
対象:すべての方(JIA 会員/一般)
定員:500 名 (申込先着順)

★お申し込み/詳細は以下サイトより
https://www.jia-kanto.org/jutaku/news/2073/

ご興味ある方は、是非上記よりお申し込みの上ご参加下さい。
建築関係者でなくても、一般の方でも受講可能です!

我々の設計する住宅には必ずと言って良いほど、ダイニングなどに北欧照明が下がり、置かれている家具も(建て主さんのチョイスではあるものの)北欧家具が置かれることも多かったりします。

一方では、そういう照明を提案したいのだけれど、金額などから、なかなか建て主さんに受け入れてもらえないという設計者の話も良く聞きます。

これまで半分は意識的に、もう半分は無意識にそのようにしてきた部分もあったのですが、今回あらためて、なぜ私が北欧照明や北欧デザインのものにこだわっているのかということを書いてみたいと思います。


もしかしたら一部の方からは、私が北欧のフィンランドに留学経験があることから「関本=北欧が好き⇒だから北欧照明を使う」と思われているような気がしますが、必ずしもそういうことではありません。それは、それが本物のオリジナルであり、時代を超えて愛されている普遍的なデザインアイコン(timeless design)であるということが、とても大きな意味を持つからなのです。

たとえば、冒頭の写真のダイニングに下がる照明は、アルヴァ・アールトのデザインによるゴールデンベル(A330S/artek)ですが、これがデザインされたのは1936年です。今から85年前。すごいのはそこではなく、そこからほとんどデザインを変えることなく、現在もそのままの姿で売られ続けているということなのです。


この写真に写る黒い座面のスツールもアールトのデザインによるStool60ですが、こちらが生まれたのも1933年です。今から88年前。やはり当時からほとんど形を変えることなく、現在に至るまで全世界で売られ続けています。

1930年代といったら、時代背景としてはこんな感じです。この時代に生まれた椅子が、現代の新築の住宅の中においても、まったく古びることなく存在できるってすごくないですか?


一方で、最近我々北欧関係者の間で物議をかもした椅子に、こんな椅子があります。ひどいものです…。

こういうものを無知や無意識であったとしても、家の片隅に置いた瞬間に、その家はニセモノになってしまいます。家に何千万円もかけて細部にもこだわったとしても、この瞬間にそれは水の泡となってしまうのです。

テレビのバラエティ番組でありますよね、一流芸能人を仕分けるやつが。一方は1億円のバイオリン、もうひとつは数万円の初心者用。音を聞いて、さて1億円の音はどちらでしょう?というやつ。先のような”ニセモノ”に囲まれて育った子供の美意識や感性は、やはりそれが「普通(あたりまえ)」になってしまうのではないでしょうか。

Stool60はけして高い椅子ではありません。でも数千円では買えません。でもどうでしょうか、ただ安いという理由だけで、「ただ座れれば良い」のであれば、家も「ただ食事をして眠れれば良い」のだとも言えますし、「雨漏りしなければ何でも良い」ということにもなります。

本当にそれで良いのでしょうか?
残念ながら、そんな世界には我々のような者は必要ないということになりそうです。


またこうも言えます。

家電製品や自動車は頻繁にモデルチェンジを繰り返しますね。消費者を飽きさせず、特定の周期で買い換えてもらわないと、企業としては都合が悪いわけです。スマホもそうですね。使いもしない機能ばかりがどんどん増えて、新しい機種に買い換えるよう迫られます。

そんな時代のめまぐるしい変化のなかで、80年以上も形を変えずに売られ続けているという事実は、本当にすごいとしか言いようがありません。それはモノとして変えようがない、「本質そのもの」がそこにあるからではないでしょうか。それが北欧のtimeless designなのです。


こちらはアールトの自邸ですが、竣工は1936年です。

アールトは世の中に新しい素材が出てきても、けして飛びつくことはなかったそうです。木や鉄、コンクリート、ガラス、そしてレンガ。これまでずっとあり続けたものだけを使って生涯建築を作り続けました。そんなアールトの建築もまた、その後80年以上経ってもその価値が損なわれることはありません。


だから照明器具も同じなのです。

家の中に一つだけでも良いので、けして価値の変わることのない不朽の名作を下げることは、その空間のあり方を決定づけると私は思っています。「これまでも変わらない、これからも変わらない」それが我々が住宅に込めている思いです。

誤解のないように申し添えると、なにも北欧のものだけが良いと言っているのではありません。国内にも素晴らしい照明や家具はたくさんありますし、北欧以外の国にも同じくらい素晴らしいものがあります。

大切なのは値段ではなく、また有名かどうかでもなく、それが本物であること。機能や素材やデザインにこだわりがあるもの。ひとことで言えば「そこに愛があるもの」ということではないでしょうか。

さもなくば、きっとあなたやその家は”そっくりさん”、もしくは”映す価値なし”として画面から消えてしまうことでしょう。