告知しておりました脇田美術館のアールトシンポジウムが無事終了しました。大きな大きな肩の荷が下りました。

今回はアールト財団やフィンランド建築関係者、脇田美術館、松隈先生など大きな繋がりと収穫がありました。特に念願だった吉村順三氏設計の脇田山荘を見学できたのはとても大きな体験でした。実際に見ると小振りで、非常にスケールの良い居心地の良い空間でした。

一緒に登壇予定だった平山先生が風邪でダウンするなどハプニングもありましたが、今回は松隈先生のリードのもと、アールト財団側の知見やいろいろ聞いてみたかった質問などを投げかけることができ満足しています。

今回の機会を作って下さった脇田美術館の脇田館長、岩田さま、お誘い下さった益子先生にも心から感謝致します。ありがとうございました。




16. 10 / 08

the chair ≠ a chair

author
sekimoto

category
> 北欧



表参道のスパイラルにてARTEKのドムスチェア展がはじまり、昨日はオープニングレセプションへと足を運んできた。今回はミナ・ペルホネンの皆川明さんとのコラボ作品も同時に発表され、トークセッションには非常に多くの方が会場に詰めかけていた。

ドムスチェアといえばフィンランドのデザイナー、イルマリ・タピオヴァーラの代表作の一つであるが、日本では一部の愛好家を除いては無名に近い椅子とも言えるかもしれない。正直言って、ぱっと見でもイームズの椅子のような洗練された印象は受けないし、むしろちょっとモサっとした印象すら受ける。好き嫌いがはっきり分かれる椅子とも言えるかもしれない。

けれども私はタピオヴァーラの椅子に強く惹かれる。フィンランドを代表する椅子はアールトではなく、タピオヴァーラではないかと思うほど。この椅子が発するオーラはフィンランドという国そのものという気がする。


いつから「北欧=おしゃれ」という構図になったのだろう。

日本のメディアの取り上げ方によって、日本での北欧の立ち位置はずいぶん変わったような気がする。北欧の中でもとりわけフィンランドに関していえば、おしゃれな国というより、素朴で、ちょっと田舎で、都会的洗練とは真逆にあるような国、というのが私の印象だ。

だから惹かれる。日本で気を張り詰めた生活をしていると、バランスを取るようについフィンランド的なものを求めてしまうのだ。


写真は私の所蔵するドムスチェア。見ての通りひどい程度のものだ。これは2001年にフィンランドから帰国する際に、フィンランド人の友人の工房にあったものをもらい受けたもの。

こんな汚い椅子どうするんだ?と訊かれたけれど、どうしても持って帰りたかった。幸い半分壊れかけていたので、バラバラにして郵便小包で送った。今でも座ることは出来ない。

フィンランドに渡ったとき、とある階段の踊り場に置かれていたのがこの椅子だった。かわいらしい椅子だと思った。当時フィンランドに強く惹かれていたから、この椅子の魅力はフィンランドという国の魅力そのものだと、その時直感的に思った。だからタピオヴァーラの椅子は、私にとって原点のようなものなのだ。


過去にはクライアントの希望もあり、「隅切りの家」という住宅にドムスチェアを入れたこともある。その強い個性は、より強い個性の家の中でこそ輝くとその時しみじみと感じた。

クセのある椅子だけに、私はクライアントにはタピオヴァーラは一切勧めない。前述のような話をしたこともない。それなのに、うちのクライアントはタピオヴァーラを選ぶ確率が高い。相当難易度の高い椅子だと思うのだけれど、クライアントの感性がそれを呑み込むのだろう。そして私のそれともその瞬間につながることになる。


アルテック ドムス チェア展覧会 
“the chair ≠ a chair” (ザ チェア イズ ノット ア チェア)

会期:2016年10月8日(土)-16日(日) 入場無料 会期中無休
時間:11:00~20:00
会場:スパイラルガーデン (スパイラル1F)
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_2050.html


来週10月16日ですが、軽井沢の脇田美術館のアールト関連シンポジウムに、SADIの益子先生、平山先生らと共に登壇させて頂きます。アールト作品の保存問題、いろんな角度から問題提起ができそうです。

SADIではどんなに告知しても北欧関連講演で50人集めるのは至難の業なのですが、さすが脇田美術館100人集めるというのですからすごいです。遠いですが、いらして頂くと吉村順三氏設計の脇田山荘の見学もできるそうです。

今日はその打合せでしたが、益子先生、平山先生のお話を聞きながら、ゆっくりお酒が飲めるというのも私にとっては最大の役得だったりします。

詳細はこちらより

脇田美術館|軽井沢で学ぶ建築デザイン [近代建築デザイン講義] 2016
http://www.wakita-museum.com/event/event/wood_design_2016/index.html