先日友人の建築家と呑んでお互いの建築観について話をした。以前から薄々気づいてはいたけれど、どうも私の考える建築というのは少し違うのかもしれない。
たとえば、私は自分の仕事を「作品」と呼ばれることに抵抗がある。
世間的には設計事務所の仕事は「作品」と呼ばれることが多いし、私のサイトにもやはり「これまでの作品」などと書かれている。けれども、本当は少し違和感がある。私は自分の仕事を「作品」ではなく、ただ「仕事」だと思っている。
作品を作る人が「作家」だとすれば、私は「職人」なのだと思う。
作家とは表現したいことがあり、自らの表現のために資金を作る人のことだ。職人は表現はせず、依頼に対してただ忠実な仕事をする人である。
私には表現したいことはなく、自分はからっぽだといつも思う。
関本さんの建築ってどんな建築ですか?と聞かれるのが一番困る。私は依頼主のことにしか興味がない。その人がどういう人で、住まいや家族に対してどういう考えを持っているのか。それを聞き出し、咀嚼することが私の仕事である。
板前が目の前の活きの良い魚に鮮やかな手さばきで包丁を入れてみせる。目の前にさっと皿が出てくる。私はそんな仕事に憧れる。自分の仕事もそうありたいと思う。
たとえば、私は自分の仕事を「作品」と呼ばれることに抵抗がある。
世間的には設計事務所の仕事は「作品」と呼ばれることが多いし、私のサイトにもやはり「これまでの作品」などと書かれている。けれども、本当は少し違和感がある。私は自分の仕事を「作品」ではなく、ただ「仕事」だと思っている。
作品を作る人が「作家」だとすれば、私は「職人」なのだと思う。
作家とは表現したいことがあり、自らの表現のために資金を作る人のことだ。職人は表現はせず、依頼に対してただ忠実な仕事をする人である。
私には表現したいことはなく、自分はからっぽだといつも思う。
関本さんの建築ってどんな建築ですか?と聞かれるのが一番困る。私は依頼主のことにしか興味がない。その人がどういう人で、住まいや家族に対してどういう考えを持っているのか。それを聞き出し、咀嚼することが私の仕事である。
板前が目の前の活きの良い魚に鮮やかな手さばきで包丁を入れてみせる。目の前にさっと皿が出てくる。私はそんな仕事に憧れる。自分の仕事もそうありたいと思う。
ここ一ヶ月ほど、ブログもなかなか更新できずにいました。珍しく更新が滞ったので、一部の方からは「最近忙しいみたいですね」と声をかけられることも多かったのですが、物理的な忙しさというよりも、メンタル的に追い詰められた状態でした。
そういうときは何事にも積極的になれず、とことんネガティブに、何をやってもうまくいかないような気分になってしまうものです。私にもそんな時があります。
もう梅雨明けくらいまで土日もびっしり仕事のスケジュールが埋まり、半ば強制的に仕事に向き合わざるを得ない状況。この辺で気分をアゲていきたいところです。
◇
そんな折り、目下見積調整中で来月からは着工を控えているTOPWATER(I邸)のクライアントがやってきました。この日は最後の見積調整の日です。
ところが事務所の入口を入ってくるIさんが見えた瞬間、思わず笑ってしまいました。Tシャツに短パン、トートバッグを下げたその姿に、思わず「海びらきですか!」と心の中で突っ込んでしまいました。
そう、Iさんはそういう人なのです。
無類のルアーアングラー、しかも最もギャンブル性の高いトップウォーターしか狙わないというスタイル。プカプカと自らも水面に浮かんで釣るそのスタイルのために、計画の住宅にもカヤックが2艇吊れるようにしてあります。(同じくカヤックを吊った「暁の家」のクライアントも、実は同類のトップウォーター・アングラーです)
まさかカヤック積んできたんじゃないでしょうね?と冗談交じりに突っ込むと、そのまさかでした。家づくりに対する気負いや緊迫感が全く感じられない(ように私の目からは映る)その姿に、私も脱力状態。もう笑うほかありません。
なんでしょう、このIさん。このノーガード戦法でこれまで連戦連勝、家づくりのプロセスにおいてはこれまで負けなしの快進撃を続けているのです。
我々との出会いからはじまり、ローン、ご家族、お仕事、いろんなものが狙ったようにこの時期全てがハマってゆきました。まるで今、ここに家を建てるために、すべては仕組まれていたのではないかと思うほど。
そして、工務店からの金額も予算にぴたりとはまり、いつもはシビアな予算調整の打合せも、ものの30分で終わったのでした。こんなこと、滅多にあることではありません。
Iさん曰く「自分はきっと面倒くさい施主になる」と思っていたそうですが、我々からの提案を受け、予想に反して?ほぼ何の抵抗も抱かなかったのは「奇跡に近い」感覚だったそうです。
図面はPDFで常に持ち歩き、電車の中や出張先でも、隅々まで読み込みを続けたとのこと。それはIさん曰く「長編小説を読むような」気分だったようで、それが本当に楽しかったのだそうです。
会社でも同僚に図面を見せ、デザイナーの多い職場では、Iさんの家づくりネタで大いに盛りあがっていたとのこと。時には上司までプランに口を出してくることもあったとか?全ての線がぴちっ!と納まっているのが快感だったというマニアックさは、もはやクライアントとしては”変態”の域と言えるでしょう。(もちろんIさんへの最高の賛辞です)
予算調整のはずがほとんど雑談で終わり、Iさんはカヤックを積んだ車でこの日のメインフィールドへと発っていったのでした。笑う門には福来たる。梅雨空にも、私の心にも晴れ間が覗いたそんな日でした。
そういうときは何事にも積極的になれず、とことんネガティブに、何をやってもうまくいかないような気分になってしまうものです。私にもそんな時があります。
もう梅雨明けくらいまで土日もびっしり仕事のスケジュールが埋まり、半ば強制的に仕事に向き合わざるを得ない状況。この辺で気分をアゲていきたいところです。
◇
そんな折り、目下見積調整中で来月からは着工を控えているTOPWATER(I邸)のクライアントがやってきました。この日は最後の見積調整の日です。
ところが事務所の入口を入ってくるIさんが見えた瞬間、思わず笑ってしまいました。Tシャツに短パン、トートバッグを下げたその姿に、思わず「海びらきですか!」と心の中で突っ込んでしまいました。
そう、Iさんはそういう人なのです。
無類のルアーアングラー、しかも最もギャンブル性の高いトップウォーターしか狙わないというスタイル。プカプカと自らも水面に浮かんで釣るそのスタイルのために、計画の住宅にもカヤックが2艇吊れるようにしてあります。(同じくカヤックを吊った「暁の家」のクライアントも、実は同類のトップウォーター・アングラーです)
まさかカヤック積んできたんじゃないでしょうね?と冗談交じりに突っ込むと、そのまさかでした。家づくりに対する気負いや緊迫感が全く感じられない(ように私の目からは映る)その姿に、私も脱力状態。もう笑うほかありません。
なんでしょう、このIさん。このノーガード戦法でこれまで連戦連勝、家づくりのプロセスにおいてはこれまで負けなしの快進撃を続けているのです。
我々との出会いからはじまり、ローン、ご家族、お仕事、いろんなものが狙ったようにこの時期全てがハマってゆきました。まるで今、ここに家を建てるために、すべては仕組まれていたのではないかと思うほど。
そして、工務店からの金額も予算にぴたりとはまり、いつもはシビアな予算調整の打合せも、ものの30分で終わったのでした。こんなこと、滅多にあることではありません。
Iさん曰く「自分はきっと面倒くさい施主になる」と思っていたそうですが、我々からの提案を受け、予想に反して?ほぼ何の抵抗も抱かなかったのは「奇跡に近い」感覚だったそうです。
図面はPDFで常に持ち歩き、電車の中や出張先でも、隅々まで読み込みを続けたとのこと。それはIさん曰く「長編小説を読むような」気分だったようで、それが本当に楽しかったのだそうです。
会社でも同僚に図面を見せ、デザイナーの多い職場では、Iさんの家づくりネタで大いに盛りあがっていたとのこと。時には上司までプランに口を出してくることもあったとか?全ての線がぴちっ!と納まっているのが快感だったというマニアックさは、もはやクライアントとしては”変態”の域と言えるでしょう。(もちろんIさんへの最高の賛辞です)
予算調整のはずがほとんど雑談で終わり、Iさんはカヤックを積んだ車でこの日のメインフィールドへと発っていったのでした。笑う門には福来たる。梅雨空にも、私の心にも晴れ間が覗いたそんな日でした。
昨年相次いで竣工しました猫をこよなく愛するご家族(愛猫家)の住宅2題につきまして、以下に写真をアップしました。どうかご覧下さい。
・暁の家 (写真:新澤一平)
https://www.riotadesign.com/works/15_akatsuki/
・OPEN-d (写真:新澤一平)
https://www.riotadesign.com/works/15_opend/
[これまでの作品]
https://www.riotadesign.com/works/
◇
昨年はどういうわけか愛猫家住宅が立て続けに竣工しました。先にアップしましたA-FLATも最上階は猫を愛するオーナーさんのフロアでした。もともと私は猫派なのですが、家の中で飼った経験はなく、どうすれば猫にも気に入ってもらえるような家になるのか、最初は戸惑いもありました。
いろいろ研究を進めてゆくと、今度はずいぶん設計が楽しくなってきました。要は猫の気持ちになって設計すれば良いのですね。
「暁の家」では、吹き抜けに文字通り”キャットウォーク”を張り巡らせました。これはずいぶんと楽しい設えとなり、また随所に猫窓を設けて、猫が外を眺めて寛げる場所もいくつも作りました。
極めつけは、アルヴァ・アールト設計のマイレア邸などに見られる藤巻きの丸柱をモチーフにした猫柱。ここでは籐ではなく、麻紐を巻き付けています。
これはさすがにアールト先生に怒られるかなと思いましたが、これは”猫愛”と共に”アールト愛”の結晶、アールト住宅へのオマージュと受け止めて頂きたいところです。(これも実に猫たちのお気に入り。猫柱とは、要は猫の爪研ぎ場ということです)
▲暁の家(千葉県柏市|2015.10)
◇
また「OPEN-d」では、キャットステップをデザインモチーフとして壁面全体を構成した部分があります。どうしてもペット住宅というと、デザイン的にはイマイチで、機能性にウェイトがかかりすぎたエッジの丸いものが多いように思います。そこにペットがいることが絵になるような住宅をここでは目指しています。
リビング全体に巡らせた梁を猫が縦横無尽に歩き回ります。そもそも中庭住宅にしたのも、猫が自由に外に出られるようにというクライアントの思いが形になったものです。
どちらの住宅も主役は家族であり、「楽しくなければ住宅ではない」を形にしたものです。どちらも人間の家族のみならず猫たちにも大好評で、設計意図通りにすんなりと受け入れられているとのこと。もちろん、どちらも私の大いにお気に入りの住宅です!
▲OPEN-d(千葉県木更津市|2015.11)
☆☆☆
最後にスタッフ情報も更新しております。
4月より入りました、新スタッフの砂庭を紹介させて頂いております。
皆さま、砂庭をどうか可愛がってあげてください!
https://www.riotadesign.com/about/
世田谷区で進めておりました住宅「馬事公苑の家」が、本日無事引渡しとなりました。今回はクライアントのご要望もあり、オープンハウスは行いませんので、どうかご了承下さい。
クライアントのSさんとの家づくりは、実は東日本大震災のあった2011年にまで遡ります。当時土地探しのご相談に乗っていたものの、震災が起こり凍結となってしまいました。そして一昨年再び土地探しがはじまり、土地探しも困難を極めましたが、現在の土地での家づくりがようやく再開し、現在に至りました。
Sさんは設計時より、本当にこまめにショールームに足を運んで下さいました。おそらく、設計図に書かれたほぼすべてのメーカーのショールームに行かれたのではないでしょうか。また現場にも、ほぼ毎週のようにご夫婦で足を運んで下さいました。その熱心さにも頭が下がる思いでした。
時には我々も気づかないような点もご指摘下さり、ありがたい反面、冷や汗が出る場面もありました。
敷地面積は23坪弱と小さく、敷地には現況で1m程度の高低差がありました。ビルトインガレージのご要望もあったことから、玄関部より奥に行くに従って半階ずつスキップする、スキップフロア形式としています。
スキップフロア形式の特徴は、なんといっても室内に広がりが出ることです。ひとつのフロアから2つのフロアを視界に捉えることができるので、平面形式に比べても空間を広々と視認することができます。結果的にご家族の気配もわかり、家族が各フロアで別々のことをしていても、ひとつの空間で暮らしているという感覚を持って頂けると思います。
結果的に生まれたリビングの天井高は実に5.9m!吹き抜けの高さでは、過去最高の高さです。これはお見せできないのが残念なくらいの迫力で、ロフトから下を覗くと足がすくむくらい。おそらく外部からは、内部にこんな空間が隠されているとは思えないかもしれません。
他にも売りはいっぱいあるのですが、続きは竣工写真ができてからのお楽しみということで。
今回は施工を、今回2回目のお付き合いとなる宮嶋工務店さんにお願いしました。前回と同様、精度の良い施工と、隅々まで配慮の行き届いた対応をして下さいました。我々にとって、こうした優秀な工務店さんとの協働は最近は益々不可欠となってきています。今回は我々の至らぬ点も多く助けて頂きました。
クライアントのSさんからは、最後に以下のような記念品を頂きました。「かまわぬ」の手ぬぐいに、このような刻印が入れられるのですね。しかも馬事公苑にちなんで”馬”の図柄が笑。どうもありがとうございます!お昼もご馳走になり、午後も仕事があるのにほろ酔い気分で帰路につきました。
Sさん、長い間大変お世話になりました。
今後とも末永いお付き合いをお願い致します!
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