11. 09 / 29

流儀とぼやき

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sekimoto

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> 仕事
> 思うこと


我々のようなアトリエ事務所は比較的閉じた環境で仕事をしているので,他の事務所がどんな風に仕事をしているかを知る機会は,ありそうで実はあまり多くはない.だからそんな機会があると,つい前のめりになっていろいろと”情報交換”をしてしまう.

先日は,実施設計では僕も図面を描くという話をしたら驚かれた.他の事務所では「所長は図面を描かない」らしい.図面どころか,現場もあまり行かないという人や,クライアントとの打合せもスタッフまかせという人もいるらしい.これを最初聞いた時はウソでしょって思った.

うちでは僕もばりばり図面を描くし,現場も行くし,クライアントとも僕が打合せる.スタッフに全面的に任せるのは確認申請くらいかもしれない.ひとつにはスピードや責任の問題もあるけれど,なにより自分の目で見て聞いて,図面を描かないとその空間が肉体化しないような気がするからだ.

だからうちでは何件仕事があっても,動かしている実施設計は常に一つだけ.だから一定のキャパシティを超えると,クライアントを延々とお待たせすることになってしまう.

同業に言わせると,そんな僕のやり方は理想だけれど非現実的で非効率的なやりかただという.反論を試みようとするものの,それでは仕事を廻せないでしょう?と返されると黙ってしまう.実際その通りだから何も言えない.

でもそんな流儀を貫いてきたことによって,これまでクライアントとの間にも大きな問題もなく,隅々まで配慮の行き届いた空間をつくってきたという自負があるのも事実.

だからたぶんこれからも基本的な仕事の進め方は変わらないのだろうけれど,ただ事務所を運営する立場として,もう少し上手いことやらないとしんどいなぁ…とぼやきに近いこともまた考えてしまうのだった.

さいたま市に計画しておりました住宅がこのたび竣工し,
お施主様のご厚意により,このたび内覧会を行うことになりました.
今回は既存住宅を二世帯住宅に再構築する全面改装計画です.

日時: 10月10日(月・祝) 11:00~17:00 ごろまで
※事前にご一報頂ければ,時間外でもご案内致します.
所在地: さいたま市大宮区土手町
最寄り駅: 東武野田線『北大宮駅』より徒歩約6分

[オープンテラスの家] ~住み継ぐ家
大宮公園にもほど近いゆったりとした敷地に建つ既存住宅を,一階を親世帯,二階を子世帯とした二世帯住宅として再構築する全面改装計画です.
計画は大きく分けて一階親世帯の部分改装と二階子世帯の全面改装+増築工事,また構造改修を伴った外装の一新と外構植栽工事の計4工区に分かれています.
メインとなる二階子世帯の計画では,大幅な増築と外部からの視線を遮り室内側からはゆるやかにつながる緩衝帯としてのオープンテラスを計画の骨子に据え,内部は上質な素材感と造作によりリゾートのような落ち着きある空間に設えています.またピーエス冷暖房設備の導入により,四季を通じて快適で安定した室内環境となるよう計画しました.
世代交代による住宅のプログラムの更新は不可避の問題ですが,生まれ育った住まいへの愛着を尊重し,親から子へ住み継いでゆく建築のありかたについて,クライアントと共に考え模索したプロジェクトです.


見学ご希望の方は,関本宛までメールをお願いします.
折り返しご案内をお送り致します.皆様のお越しをお待ちしております!


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sekimoto

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> OPENHOUSE



[くじらハウス]のオープンハウスにお越し頂いた皆様,昨日はありがとうございました.
涼しい顔で納めていますが,実はかなりのローコストでやっていることがどこまで伝わったでしょうか(施工業者は相当大変だったはず!).

ただそんなこととは関係なく,ゆったりとした大屋根の下で,皆さんといろいろなお話しができたことを,スタッフ一同喜んでおります.

いろいろ頂いた感想のなかで,「線がきれい」と言われたのはとても嬉しかったです.ただ単にシンプルということではなく,いかに線を整理するか,それは図面に引く線の太さ細さに至るまで,実は我々が設計で最もこだわっているポイントでもあるからです.天井の高さや全体のスケールに対する皆さんからのご指摘やコメントも大変参考になりました.

次回は,立て続けになりますが10月10日にさいたま市にて,既存住宅を二世帯住宅へ全面改装した計画のオープンハウスを予定しております(オープンテラスの家).こちらはある意味くじらハウスとは好対照の空間となるかもしれません.こちらもどうかお楽しみに!またこの場にて告知させて頂きます.

最後に,ハイサイド窓に切り取られた青空がきれいだったのでパチリ!
まるでマグリットの空のようでした.





[caption id="attachment_1946" align="alignnone" width="200" caption="大家族|ルネ・マグリット"][/caption]
※9/21追記 台風が去って23日は天気が良さそうです!
見学ご希望の方はご一報ください.


小平市に計画しておりました住宅がこのたび竣工致しました.
お施主様のご厚意により,このたびオープンハウスを行うことになりました.

日時: 9月23日(金・祝) 11:00~17:00ごろまで
※事前にご一報頂ければ,時間外でもご案内致します.
所在地: 東京都小平市津田町
最寄り駅:
JR武蔵野線『新小平駅』より徒歩約15分
または,西武国分寺線『たかの台駅』より徒歩約10分

[くじらハウス]
小平の閑静な住宅街に建つ家です.敷地には建坪率が40%と厳しい建築制限がありました.また敷地には北側から高度斜線がかかり,日影制限からも軒高を7m未満に抑える必要もありました.こうした制約のもと最大の空間気積を追求した結果,屈折点をもつ三次元の屋根形状と最大4.7mの天井高を持つリビング空間が現れました.複雑な屋根形状をあらわしにした天井は,なにやら鯨の骨格標本のようでもあります.ローコストながらも丁寧に作り込んだ空間をご覧ください.

見学ご希望の方は,関本宛までメールをお願いします.
折り返しご案内をお送り致します.皆様のお越しをお待ちしております!

11. 09 / 18

登竜門

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sekimoto

category
> 建築・デザイン


今から10年くらい前,僕がまだフィンランドに留学していた頃,バックパッカーとしてフィンランドにやって来ていたひとりの建築学生がいた.ヘルシンキ周辺の建築情報を教えながらも,見せてもらった彼のスケッチブックには旅先での建築がびっしり描かれていた.それがのちの建築家,光嶋裕介くんとの出会いだった.

彼はその後大学を卒業してドイツへと渡った.帰国後,独立の相談に事務所に訪ねてきた時は,僕も少々上から目線でアドバイスなどしたような気もする.

彼はその後,神戸女学院大学の元教授で武道家でもある内田樹(たつる)さんより自宅の設計依頼を受けるという幸運に恵まれる.彼にとってはじめての設計依頼となるその家づくりの顛末は,「ほぼ日」でもコラムが連載されている.とても読みやすく面白いので,是非一読してもらいたい.

ほぼ日刊イトイ新聞・みんなの家

彼のコラムを読むと,僕にとってはじめての設計依頼であったカフェmoiのことや,ILMA(Y邸)のことなどがつい昨日のことのように思い出される.そう,建築家にとっての処女作はどこからそんなにというようなバイタリティとエネルギーが沸き上がってくるものなのだ.

彼の「凱風館(内田邸)」の設計案はその後若手建築家の登竜門でもある「SDレビュー」にも入選したとの報せを頂き,今日はその入選展へと足を運んできた.幸運にも彼とも会場で会うことができ,しばし立ち話をした.

才気とバイタリティにあふれる彼の建築は,もっと自分の我を前面に出したようなものではないかと勝手に想像していたのだけれど,その手法は丹念にクライアントや材料や敷地に耳を傾けて作られていることが,そのプレゼンを見てもすぐにわかった.

これからきっと僕よりもずっと活躍してゆくであろう彼に,またしても上から目線からの感想を許してもらえるなら,彼ならきっと条件やクライアントが変わっても自分を見失わないで設計を続けてゆけるだろうと思った.

さらなる高みを目指してがんばってください.期待しています.