21. 11 / 08

分相応

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sekimoto

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> 仕事
> 思うこと


「分相応」という言葉を聞くたびに、いつも考えさせられる。

「分相応」の意味を引くと「その人の能力・地位にちょうどふさわしいこと」とある。しかし、その人の能力や地位にふさわしいものって一体何だろう?

家づくりの際にもこの言葉はよく使われる。たとえば収入の安定しない若い建て主さんにとっては、時に我々のような設計事務所に頼むことは、「分不相応(=贅沢)」であるとも考えられがちだ。

けれど、その人がこの先も出世することも所得も上がることもなく、現状維持のまま一生を終えるのであればその通りかもしれないけれど、多くの場合はそうではないだろう。(と信じたい)

人生は常に希望に向かって進むものだ。私はその人にとって今が「分相応」であるかよりも、この先その人がなりたい自分になったとき、それが自分と釣り合っているものであるかどうかのほうがもっと大事なことだと思う。もう少し言えば、その器を先に作ることで、その人はなりたい自分になってゆくのではないだろうか。

子育てにおいても、子供に贅沢をさせるべきではないという意見がある。それは正論だし、ある意味正しいとも思う。苦労もなく簡単に良いものが手に入ったとしたら、その子はそれを手に入れるための努力やプロセスの尊さを学ぶことができないからだ。

しかしこうも言える。それなりに値が張るものには、相応の機能やしっかりと手間をかけた工程があって、作り手の創意工夫やデザインがそこに込められていたりするものだ。

世の中には、そうした本物に触れることでしか得られない学びというものもあると思う。それを贅沢だからといって与えないよりも、時にはそこに下駄を履かせることも教育なのではないだろうか。

人生とは未来への投資そのものだ。身の丈に合った生き方と言えば聞こえは良いけれど、少し背伸びをして、指の先がぎりぎり触れることが出来る選択肢を選び続けることにもまた意味があるように思う。

「分相応」という言葉のもとに、きっと辿り着けたであろう未来を簡単に放棄して欲しくない。余計なお世話だろうけれど、この言葉を聞くたびにいつもそんなことが頭をよぎる。

21. 11 / 07

すべて正解

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sekimoto

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> 仕事
> 思うこと


少しまえに面談で言われたことがあって、一般のクライアントさんから見るとうちはとてもデザイン性の高い住宅を作る設計事務所で、性能(断熱など)のことはあまり聞いてはいけない印象があったという。

へぇそうなんだ。とても意外。

うちは断熱のこともちゃんと考えているし、そしてもちろん耐震のことも。進行中のクライアントさんなら皆さんお分かりのことでしょう。

もちろん、我々もデザイン性の高い美しい空間にしたいと思っているけれど、雑誌の表紙を飾るような突き抜けたデザインはあまりやらないので、自分の中ではうちはデザイン的には「ちょっと弱い」とすら思っていたりする。

外から見た印象はずいぶん違うのだとあらためて思った。

また私のブログをよく読み込んで、気に入ってご依頼くださる方も多い。もしかしたら、外から見たら自分はずいぶん「いい人」に見られているのだろうか…。

それを言われると、いつもとてもプレッシャーで、いつ自分の「素性」がバレるかとはらはらする。いつも近くにいるスタッフは、優しくない私をたくさん知っている。「いい人」だけではこの仕事はやっていけないのだ。

いい人だと思っている人には、あとでガッカリされるのが怖くて、わざと意地悪なこと言ってしまうことも。自然体でいようと心がけているけれど、どれが自分の素性なのか、正直自分でもよくわからない。

あなたから見えている私の印象、たぶんそれすべて正解です。

今年2月に竣工しました横浜市「壇の家」につき、先日ようやく竣工撮影を終えましたので写真をアップしました。以下よりご覧下さい。

[壇の家]
https://www.riotadesign.com/works/21_dan/
写真:新澤一平

今年は秋も梅雨のような長雨で、撮影日程も延び延びになってしまいました。そのうち木が落葉してしまうのではないかとハラハラしていましたが、ぎりぎりセーフでした。

、、と思いきや、撮影当日は快晴の予報のはずがまさかの雨!うそでしょ、と心が折れかけましたが、そこは新澤さんの撮影マジックでなんとかカバーして頂きました。シャープな光の差す写真というわけにはいきませんでしたが、こんな優しいソフトな光で包まれた空間もなかなか良いものです。

南側に隣家が建つため、建物を北向きに配置し、ハイサイドから北側奥のリビングまで光を取り込んだ住宅です。設計上はそのように言うのが一番わかりやすいので、対外的にはそのような説明をしていますが、この空間で最も大切にしたのは空間の奥行き感、空間のひだのようなようなものとでも言いましょうか。

あまりに抽象的で理解してもらえないと思うので、へぇそうなんだと流してもらって大丈夫です。

21. 10 / 05

収穫の秋

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sekimoto

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> 仕事
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川越のさつまいも農家さんからのご依頼で、母屋建て替えのご相談。

農家さんの家をやるのははじめてだったので、畑仕事から帰ってきてからの動線処理など想像力が追いつかず。また農家らしい佇まいと現代らしい暮らしとのあいだで行ったり来たり。大いに手こずって、プランニングだけで2ヶ月もかかってしまいました。延べ67坪…でかい。

今日はそんなラフ提案でしたが、拍手喝采せんばかりの大喜びで受け入れて頂き、長かった苦悩も報われました。これはその方の性格にもよるとは思いますが、日々自然を相手にお仕事をされておられる方は、本当に懐が大きくてその寛容さにこちらも包み込まれる思いです。

最後はさつまいもと大根を山ほど!さつまいも農家さんは今が最盛期。週末の観光農園はさつまいも渋滞になるほどだそうです。



JIA関東甲信越支部の会報誌、Bulletin秋号が無事発刊されました。編集長としてまとめた2号目になります。ご寄稿や取材にご協力下さいました皆さま、誠にありがとうございました!

秋号の特集は「ビルダーとの協働」。
我々建築家が図面を描いただけでは建築は出来ません。我々とフラットな立場で、共に協働くださる監督や職人さんとの協働関係を今号では取り上げています。

○Bulletin秋号・オンライン記事はこちらより
https://www.jia-kanto.org/kanto/bulletin/2021/index.html


本編を読んだスタッフも、大工などとはよく話をするが、現場の電気設備の職人がここまで深く考えて仕事をして下さっているとは想像がつかなかったとのこと。確かに設備系の職人さんとこういう仕事論のような話をすることは希かもしれません。

設計者がよく現場で「ここにもコンセント(照明)を追加して欲しい」と言うことがありますが、電気設備職人の富永茂さんに言わせれば(そう言うと予測して)いかに段取りを組んでおけるかが肝になるとのこと。「3日かかる仕事を1日で済ませる」のが職人としてのやりがいであり、段取り力なのだそうです。

ほかにもスーパー板金職人の新井勇司さん、創業180年の老舗工務店、大和工務店の初谷仁さんなど、一流の現場の仕事人達へのインタビュー記事になっています。激アツの現場の流儀、会員以外の方も是非オンラインでお読み頂けたら嬉しいです!

■「ビルダーとの協働」
https://www.jia-kanto.org/kanto/bulletin/2021/files/pdf/feature_289.pdf

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