14. 12 / 09
ベーシックブレッド
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sekimoto
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現場の帰りによく寄るパン屋さんがある.
たまたまそこのパンを買ったら,とてもおいしかったからだ.
そのパンは定番ということなのだろう,ベーシックブレッドという名が付いていてそのパン屋さんでも一番安く,売れ筋の商品らしい.やがてそのパンを買って帰ると奥さんの機嫌が良くなるくらい,我が家では定番のパンとなった.
何度かそれを買ったあと,今度は少し欲を出してみることにした.
プレミアムブレッド,そのお店で一番高い商品である.
なんといっても一番安いベーシックブレッドがこれだけおいしいのである.プレミアムといったら・・もう想像するだけですごいことになるではないか!しかも,値段も100円も違うのだ.でも買える.(大人で良かった!)
思いきり期待して一口食べてみる.
ムムッこれは!さすがにおいしい.
ところが・・
結末は思いがけなかった.食べ終わって,奥さんと同時に発した言葉は
「ベーシックの方がおいしかったね」だった.
プレミアムには”どや感”があるのだ.普通よりいい材料たくさん使ってます.普通より手間かけてます.すべてにおいて最高を追い求めました.ねぇ,すごいでしょ?おいしいでしょ?ね?ね?
うるさいよ,もう.
私は何も主張しない普通がいいなあって思ってしまう.
だって毎日食べるものでしょ?たまにスペシャルがあってもいいけれど,毎日食べるとしたら,私は断然ベーシックだ.
これは我々も仕事で陥りやすいワナだと思う.
普通よりいい材料たくさん使ってます.普通より手間かけてます.すべてにおいて最高を追い求めました.ねぇ,すごいでしょ?格好いいでしょ?ね?ね?
うるさいよ,もう.
そういうんじゃなくていいから.普通でいいから.
でもね,私たちは近所のコンビニのパンじゃ嫌なんです.
顔の見える職人さんが,精魂込めて作った”普通のおいしいパン”が食べたいんです.それだけなんです.
そして,そういう家に住みたいと思っているんです.
14. 11 / 22
LOGO MAKER
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sekimoto
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LOGO MAKERというサイトが面白い。
ここに文字を入れると自動的にロゴマークを作ってくれる。
LOGO MAKER
https://stores.jp/logo/
上のロゴはこのサイトで作ったもの。所要時間は約3分。
これが面白いと思うのは、これはいわゆる「デザインあるある」だということ。そうそう、こういうロゴってあるよね?と思わせることで、"それっぽい"仕上がりを手軽に作り出すことができるというカラクリである。
そしてそれこそが、社会と我々デザイナー(建築家)との間の温度差であり、同時に現実なんじゃないかと思う。グラフィックをやっている人なら、一度は知人からロゴマークやサイトを"ちゃちゃっと"作って欲しいと頼まれたことがあるだろう。しかもほんの数万円で。
つまるところ、社会が認識している"デザイン"というものは、所詮このLOGO MAKERに放り込めば出来上がるようなことなのだ。それで十分。そう思われているところが根っこにある。
しかし我々は違う。本質としてのデザインはそんなもんじゃない。
そう反論したい気持ちはやまやまだろう。
だが甘い。だから叩かれるのだ。
やっていることはどうだ。一般の方に十分わかっていただける価値を、我々は本当に提供できているだろうか?こんなんだったら、フリーソフトで十分だという仕事に成り下がっていないだろうか?
そのうちフリーで"建築家風"の家をデザインできるサイトができるだろう。床が白くて、やたらとガラスを多用していて、コンクリート打放しで、らせん階段をつければできあがり。誰が見ても建築家が設計した家。
え、馬鹿にするなって?
いやいや、世間はそう思っているんだよ。
14. 10 / 22
ユーミンがユーミンであるように
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sekimoto
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創造を生業とする仕事は難しい.創造する側は常に自分の殻を脱ぎ捨て,新しい自分を発見したいと思う.それは時に勇気と称されることもあるけれど,実際には違う.退屈こそが最大の脅威.マンネリを避け,新しくなくてはいけないという強迫観念が我々を襲う.新しさこそが創造であると.
ところが社会の受け止め方は違うのだ.定まった価値をいかに持続させるか.それこそがロングセラーの秘訣である.子供の頃あって,今なお普通にあるもの.偉大なるマンネリズム.いや,それを私は普遍性と呼びたい.
プランニングをしていてふと気づく.またこのパターンかと.世に建築のスタイルは無数あれど,なぜ自分はこの枠の中に収斂してゆくのか,自分でも説明が付かない.気づけばこれなのだ.そして少し嫌になる.これは自分が小さな枠の中に囚われ,もっと大きな価値が見いだせていないのではないか.退屈こそが最大の脅威.新しくなくてはいけないという強迫観念が私を襲う.
ところが社会の受け止め方は違うのだ.定まった価値をいかに持続させるか.それこそがクライアントを満足させることのできる唯一の方法なのである.だって,クライアントは”リオタデザインのカタログ”を見て決めたのだから.開けたら違う商品が入っていたのでは,クレームになってしまうのである.
それを私は普遍性と呼びたい.
サザンがサザンであるように.ユーミンがユーミンであるように.
14. 10 / 09
歳とった
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sekimoto
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まず物忘れだ.自分が言ったことを覚えていない.スタッフに指示をして,その通りにやったのに「どうしてそうしたの?」と真顔で聞いてしまう.
次に相手が言ったことを覚えていない.
クライアントとの打合せは,目の前にクライアントがいるときは真剣に話を聞いているのに,次の打合せが始まったらもうだめ.あれはどこの誰が言っていたことだったのか,あそこをこうしたいと言ったのは,どのクライアントだったのか思い出せない.
だから担当スタッフは私専属の秘書みたいなものだ.あれって何だっけ?という私の突然の質問に即答できるよう,わが優秀なスタッフ達は常に訓練されている.
あと新しいことが入ってこない.これは最近気づいたことで衝撃だった.
たとえば音楽.電車などの移動中によく音楽を聴く.ところが入れている音楽のラインナップは,ほぼ20代の頃に聴いていた音楽と変わっていないことに気づいた.
10年前のヒット曲などつい最近の曲だと思ってしまう.20年前でも全然古く感じない.これがやばいのだ.今ハタチの子ならその頃生まれていないのだから.
あとわがままになった.自分がそうしたいと思ったら,そうするようになった.我慢をしない.仕事でもそうで,現場は大変だろうなと思っても平気で鬼のようなことを言ってるし,設計もすぐに変更する.昔は何をやるにももっと慎重だったような気がする.
我慢をしないのは人に対してもそうで,年下の若者に対して「こいつわかってないな」と思うと,すぐ説教をしてしまう.自分は教えてあげているつもりなのだけれど,きっと相手はうっとうしいと思っているに違いない.でもそういうことに対しても,何も感じなくなった.「そう思うんなら,それでいいんじゃない?ふふ~ん」となぜか余裕なのである.
また同世代の人間と会うと,無意識に相手の”若々しさ”をチェックしてしまう.これには悪意はない.ないのだけれど,心の中では勝手に(勝った)とか(負けた)という声がこだまする.先日会った知人は「そろそろ老眼でね」とこぼした.涼しい顔をしていたけれど,心の中ではガッツポーズしている.
自分だけは若いつもり.はい,これが老化の始まりです.
でも大丈夫.僕だけは大丈夫.
14. 09 / 24
ビストロ・ド・タニ
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ビストロ・ド・タニをご存知でしょうか?
いえ、この場合は知らないと答えて下さった方が好都合です。浦和にあるフレンチレストランで、我々が長年通うお店です。昨日は身内で集まり食事会がありました。
このお店でお料理を頂くといつも思うことがあります。これ都内の有名店で食べるよりずっと美味しいんじゃないかということ。
いや私もそこまでの食通ではありませんから、都内の有名店を制覇しているわけではありません。専門的なこともわかりません。けれども素人ながら言わせてもらうと、これまでいろんなものを食べてきた中でも、ここの料理は確実に数本の指に入ります。それが浦和の目立たぬ街角にぽつねんとあるのです。
こうしたことを、すぐに自分の仕事に結びつけてしまうのは私の悪い癖ですが、それでもやはり思うのです。あぁ我々の仕事と同じだなと。
私の事務所リオタデザインは埼玉にあります。私自身生まれも育ちも埼玉です。独学で建築を学びテレビにも引っ張りだこな安藤某さんと異なり、私の名前を出しても一般の方はきっと誰も知らないでしょう。同業の建築家だって怪しいものです。知らないと言われたって文句の一つも出てきません。
でも私のクライアントにはもしかしたら思って頂けているんじゃないかと思うことは、これ都内の著名事務所に頼むよりずっといいんじゃないかということ。(図々しいですが…)
たぶん私の事務所が青山や六本木にあったら、ちょっと状況が違うんじゃないかと思うんですね。ビストロ・ド・タニが青山や六本木にあったら、私はわざわざ食べに行かないのと同じように。
誰でも知っている有名店ではなく、知る人ぞ知る近所の美味しいお店。料理界的にはどんな位置づけかは知らないけれど、自分にとってはどこよりも美味しいと思えるお店。
今日のビストロ・ド・タニは予約客でいっぱいで、一般客はお断りの札が出ていました。予約を入れてある我々にとっては、優越感を持って入店する瞬間でもあります。
清潔感に溢れ、スタッフの目が行き届いた店内。過不足ないホスピタリティー。そういうお店っていいなと思うのです。
