昨年度、新建新聞社さんによる「飯塚豊の工務店設計塾」の講師を務めさせて頂いたのですが、そのスピンオフ企画ということで、8月にアルヴァ・アールトのお話をさせて頂くことになりました。
このテーマでは既に過去何度か、限られた関係者のセミナーなどでお話しさせて頂いていますが、今回参加費無料で、誰でも参加できるオンラインセミナーとのことですので、この場をお借りして告知させて頂きたいと思います。
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『北欧アルヴァ・アールトに学ぶこと』
講師:関本竜太(建築家|リオタデザイン主宰)
・日時:2022年8月3日(水)18:00~20:00
・開催形式:ZOOMウェビナー
・参加費:無料
・対象:すべての方
参加方法:
以下URLから参加登録ください
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_67msJ127S06aYsXCmuehhg
新建新聞社告知ページ:
https://www.s-housing.jp/archives/280304
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アルヴァ・アールトに学ぶこと、、果たしてそれはどんなものでしょうか?
アールトは私にとって、天才肌で、直感的で、そしてとてもミステリアスな存在です。アールトの建築って、きっとこういう感じと思った次の瞬間には裏切られる。あれ、やっぱり違うのかなあ、、?こうして私のアールト探求の旅は続きます。
その謎を解こうと観念的な記述を読んでもわかったようなわからないような。いつしか、アールトはその空間を見て感じたことがすべてだと思うことにしました。これは私が何度もアールトの建築に足を運んで、勝手に感じて受け止めたメッセージみたいなものです。
すごすぎて、明日から実践できるようなノウハウなどは1mmもありませんが、心の中に蒔かれた種がじわじわと時間をかけて芽吹くような、不思議なアールト体験を共有できたらと思っています。
この週末、伊勢原から秦野に移転しリニューアルオープンした北欧家具taloさんにお邪魔してきました。
taloのオーナー、山口太郎さんとはここでもたびたび書いているように幼なじみで古い友人。うちの建て主さんなども、竣工時の家具などでお世話になっている方も多いことと思います。
以前のガレージのような店舗も魅力的でしたが、元本屋さんだった場所にリニューアルしたお店は家具もとても見やすくなり、都内方面からだとアクセスもほとんど変わりませんでした。品揃えはこれまで通り!
路面店になったことで、通りすがりの人が次々と来店されていました。太郎さん、リニューアルおめでとうございます!
北欧家具talo リニューアル
https://www.talo.tv/shopbrand/ct539/
ちなみに、北欧家具taloではビンテージの北欧家具(アールトやウェグナーなど)以外にも、新品のARTEK製品のラインナップも扱ってます。お店では定価販売ですが、リオタデザインの建て主さんの場合は(新品に限り)特別割引もありますので、どうかお気軽におっしゃって下さい!
我々の設計する住宅には必ずと言って良いほど、ダイニングなどに北欧照明が下がり、置かれている家具も(建て主さんのチョイスではあるものの)北欧家具が置かれることも多かったりします。
一方では、そういう照明を提案したいのだけれど、金額などから、なかなか建て主さんに受け入れてもらえないという設計者の話も良く聞きます。
これまで半分は意識的に、もう半分は無意識にそのようにしてきた部分もあったのですが、今回あらためて、なぜ私が北欧照明や北欧デザインのものにこだわっているのかということを書いてみたいと思います。
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もしかしたら一部の方からは、私が北欧のフィンランドに留学経験があることから「関本=北欧が好き⇒だから北欧照明を使う」と思われているような気がしますが、必ずしもそういうことではありません。それは、それが本物のオリジナルであり、時代を超えて愛されている普遍的なデザインアイコン(timeless design)であるということが、とても大きな意味を持つからなのです。
たとえば、冒頭の写真のダイニングに下がる照明は、アルヴァ・アールトのデザインによるゴールデンベル(A330S/artek)ですが、これがデザインされたのは1936年です。今から85年前。すごいのはそこではなく、そこからほとんどデザインを変えることなく、現在もそのままの姿で売られ続けているということなのです。
この写真に写る黒い座面のスツールもアールトのデザインによるStool60ですが、こちらが生まれたのも1933年です。今から88年前。やはり当時からほとんど形を変えることなく、現在に至るまで全世界で売られ続けています。
1930年代といったら、時代背景としてはこんな感じです。この時代に生まれた椅子が、現代の新築の住宅の中においても、まったく古びることなく存在できるってすごくないですか?
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一方で、最近我々北欧関係者の間で物議をかもした椅子に、こんな椅子があります。ひどいものです…。
こういうものを無知や無意識であったとしても、家の片隅に置いた瞬間に、その家はニセモノになってしまいます。家に何千万円もかけて細部にもこだわったとしても、この瞬間にそれは水の泡となってしまうのです。
テレビのバラエティ番組でありますよね、一流芸能人を仕分けるやつが。一方は1億円のバイオリン、もうひとつは数万円の初心者用。音を聞いて、さて1億円の音はどちらでしょう?というやつ。先のような”ニセモノ”に囲まれて育った子供の美意識や感性は、やはりそれが「普通(あたりまえ)」になってしまうのではないでしょうか。
Stool60はけして高い椅子ではありません。でも数千円では買えません。でもどうでしょうか、ただ安いという理由だけで、「ただ座れれば良い」のであれば、家も「ただ食事をして眠れれば良い」のだとも言えますし、「雨漏りしなければ何でも良い」ということにもなります。
本当にそれで良いのでしょうか?
残念ながら、そんな世界には我々のような者は必要ないということになりそうです。
またこうも言えます。
家電製品や自動車は頻繁にモデルチェンジを繰り返しますね。消費者を飽きさせず、特定の周期で買い換えてもらわないと、企業としては都合が悪いわけです。スマホもそうですね。使いもしない機能ばかりがどんどん増えて、新しい機種に買い換えるよう迫られます。
そんな時代のめまぐるしい変化のなかで、80年以上も形を変えずに売られ続けているという事実は、本当にすごいとしか言いようがありません。それはモノとして変えようがない、「本質そのもの」がそこにあるからではないでしょうか。それが北欧のtimeless designなのです。
こちらはアールトの自邸ですが、竣工は1936年です。
アールトは世の中に新しい素材が出てきても、けして飛びつくことはなかったそうです。木や鉄、コンクリート、ガラス、そしてレンガ。これまでずっとあり続けたものだけを使って生涯建築を作り続けました。そんなアールトの建築もまた、その後80年以上経ってもその価値が損なわれることはありません。
だから照明器具も同じなのです。
家の中に一つだけでも良いので、けして価値の変わることのない不朽の名作を下げることは、その空間のあり方を決定づけると私は思っています。「これまでも変わらない、これからも変わらない」それが我々が住宅に込めている思いです。
誤解のないように申し添えると、なにも北欧のものだけが良いと言っているのではありません。国内にも素晴らしい照明や家具はたくさんありますし、北欧以外の国にも同じくらい素晴らしいものがあります。
大切なのは値段ではなく、また有名かどうかでもなく、それが本物であること。機能や素材やデザインにこだわりがあるもの。ひとことで言えば「そこに愛があるもの」ということではないでしょうか。
さもなくば、きっとあなたやその家は”そっくりさん”、もしくは”映す価値なし”として画面から消えてしまうことでしょう。
昨晩、JIA住宅部会+SADI北欧建築・デザイン協会共催によるオンラインセミナー、『北欧 アルヴァ・アールトを巡る旅 Ⅱ~アルヴァ・アールトとフィンランドの名建築を巡る旅』が終了しました。
事前申込みで500人超、当日は300人超の参加者数となり、大変多くの方にご参加頂きまして、誠にありがとうございました!
前半の私のレクチャーでは、超駆け足でアールトからブリュッグマン、レイヴィスカまでを紹介させて頂きました。当然、全力ディテール解説付き。レイヴィスカのくだりなどもっと話せるネタがあったのですが、それはまたの機会に。一般の方が多かったので、広く浅くを心がけました。物足りなかったかな?
セイナヨキ現地中継では、一部通信の乱れもありましたが、その後リカバーして、個人的にはJKMMのアピラ図書館からアールトの図書館に至る地下通路がゾクゾクしました!とっても贅沢な空間体験だったと思います。
フィンランド中継を担当下さった遠藤悦郎さん、池元マウル和恵さん、本当にありがとうございました!そしてなんといっても、オンライン番長中澤克秀さんの全力バックアップにも助けられました。
写真は、セミナー後の会員向け懇親会で遠藤さんが共有下さったクオルタネにあるアールトの生家!記念碑が建ってる笑
ともあれ楽しい体験でした。ご参加下さった皆様ありがとうございました!
7月に私が登壇する北欧建築のオンラインセミナーがありますので、以下共有させて頂きます。ご興味ある方は是非ご参加下さい!(すでに参加申込みが300名を超えました)
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昨年秋に開催し大きな反響を得ましたJIA住宅部会主催のオンラインセミナー「北欧 アルヴァ・アールトを巡る旅」の第二弾を、このたびSADI北欧建築・デザイン協会との共催にて開催致します。
前回の開催ではアールト自邸、マイレア邸、サウナッツァロ村役場といったアールトの名作を紹介させて頂きましたが、今回は前回紹介しきれなかったアールト建築に加え、近代~現代のフィンランドが誇る名建築についてもご紹介します。
また後半は、フィンランド在住の遠藤悦郎氏(SADI海外会員)ともつなげてリアルタイムによるリモート建築案内(セイナヨキ)も予定しています!
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オンラインセミナー
『北欧アルヴァ・アールトを巡る旅 Ⅱ
~アルヴァ・アールトとフィンランドの名建築を巡る旅』
ガイド役
関本 竜太 氏 (建築家・SADI理事/JIA住宅部会副部会長)
遠藤 悦郎 氏 (グラフィックデザイナー・SADI海外会員)
日時:2021年 7月7日(水)18:30~20:45 (ZOOM入室 18:15~)
会場:オンライン開催(ZOOMウェビナー使用)
参加費:無料
定員: 500名(事前申し込み制)
★詳細は以下より
https://sadiinfo.exblog.jp/30549990/
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